紙の本
坊っちゃんファンは必読
2017/08/12 21:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
「坊っちゃん」の3年後、ある事件の真相を探るべく、山嵐とともに再び松山へ。
お馴染みの人物が総登場し、物語は展開。「全ての現実が裏返る」と坊ちゃんは語りますが、あの牧歌的な物語の裏側を見事に描きます。時代背景も書き込み、その緻密な構成に脱帽です。
とにかく「坊っちゃん」の続編として読んでも、全く違和感はないほど空気感や時代感を再現しています。「坊っちゃん」は青春活劇の最高傑作と私は思いますが、その続編がまさかのミステリー。
坊っちゃんファンは必読。坊っちゃんを読んでいない方は、是非セットで読むことを勧めします。
紙の本
祝・復刊!『 贋作『坊っちゃん』殺人事件』
2011/01/23 17:39
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ずっと読みたかった本書。集英社文庫でずっと絶版になっていたのだけれど、この度めでたく角川文庫から復刊となった。角川書店から出版された『ジョーカー・ゲーム』シリーズが好調なお陰だろう。スパイ小説は好きではないので(心臓に悪い)読む予定はなにけれど、そのお陰で読みたかった本が読めるのだから、喜ばしい。
柳さんを読むのはこれが『吾輩はシャーロックホームズである』に続き二作目。『吾輩はシャーロックホームズである』では、著者のホームズと漱石に対する深い愛情を感じたのだけれど、本書でも漱石に対する思い入れががんがん伝わってきた。
本書の始まりはこうだ。
親譲りの無鉄砲で小共の時から損ばかりしている。
小学校に居る時分、学校の二階から飛び降りて一週間程度腰を抜かした。よく光る西洋ナイフを日に翳していたばかりに、危く自分で自分の指を切り落としかけたこともある。
この外にも無茶は大分やった。いずれも別段深い理由があるわけではない。みんな親譲りの無鉄砲からきら失策である。
ちなみに元祖『坊ちゃん』(角川文庫)の書き出しはこう。
親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かしたことがある。なぜそんなむやみをしたと聞く人があるかもしれぬ。べつだん深い理由でもない。(略)
著者は漱石の文章の特徴をつかみ、漱石らしい「雰囲気」で本書を仕上げている。殺人事件だから、原作とは内容は似ても似つかないのだけれど、それでも大まかな雰囲気だけを見れば、「漱石が書いた殺人事件」という体をなしている。
内容に関して言えば――ひとことでいうと――意外、だった。赤シャツの正体も、何もかも。しかし時代背景を考えるとそれほど不思議でもないのかも…と浅はかな知識ではそう思ったり。
漱石を踏襲するだけでなく、著者のオリジナリティをふんだんに盛り込んでいる。それでいて、漱石の雰囲気を壊していないのだから恐ろしい。
著者の漱石への畏敬と愛が溢れる一冊だった。
投稿元:
レビューを見る
「坊ちゃん」を読んだことがありません…^^;
読んでなくても楽しめる作品。
「ジョーカーゲーム」や「トーキョープリズン」とかとは違った面白さでした。
投稿元:
レビューを見る
原作の番外編のようで、まったく違う物語でもある。まさに本歌取り。
私は原作の「坊っちゃん」自体の細部がうろ覚えだったけど、おそらくミステリでもなんでもない原作をよくこう仕立て上げたなあ。
この本は原作を読んでいてもいなくても、といわれるものの、私は先に読んでおくのをお勧めします。原作の事柄がでてきたときに「あ、そうだったっけ?」ってなるから。
「坊っちゃん」の模倣作、というよりも割り切って「坊っちゃん2」、というスタンスで取り掛かったほうが楽しめます。きっと。
投稿元:
レビューを見る
自分は原作を読んでからこちらを読んだ。
時代背景と共に、坊ちゃん自信を作者が良く細部まで読めているのだろうなと感心した。原作と比べて、裏側ではこんなことがなされていたのかとついつい思ってしまう。非常に面白い作品だった
投稿元:
レビューを見る
「坊ちゃん」を読んだ事がないので、この本を読んで読んでみたくなった。内容的にはおもしろかったが、思想の話が後半は続いていて難しかった。
投稿元:
レビューを見る
夏目漱石の「坊ちゃん」といえば、近代小説の定番名作。
ということで学生時代にサラっと読んだっきり、だいぶ内容を忘れていたんですが、
この小説を読んで、明治時代の社会情勢を重ね合わせると、こんなに深読みできるのか!
と感心しきりで、(解説の方の言うとおり)「坊ちゃん」を読み直したくなりました。
無鉄砲な坊ちゃんは、気持ち良いくらい真っ直ぐな心の持ち主。
そんな坊ちゃんの視点から見る、明治の人々に、現代の日本人にも通じるところを感じ、
明治から現在にいたるまで、日本の社会とか、日本人の心ってのは、とんでもなくひねくれてこんがらがってめんどくさくなってしまっているんだな~と思いました。
投稿元:
レビューを見る
またしても柳広司。夏目漱石の「坊ちゃん」が大好きなので、読まずにはいられなかった。
読んでいて、違和感がなく「夏目坊ちゃん」の続きを読んでいるかのようで楽しかった・・・、けれど中盤あたりから飽きてしまった。やっぱり夏目とは別モンでした。
投稿元:
レビューを見る
3年ぶりに再開した山嵐から、赤シャツの自殺を知らされた坊っちゃん。しかし山嵐は赤シャツは誰かに殺されたと疑っていてーー夏目漱石『坊っちゃん』から3年後を舞台に据え、大胆な新解釈と二次創作を加えた作品。
とかく、この人の試みは応援してる。ホームズやら漱石やら中野学校やら、実際に確立した物語を再構築して新たな物語を作ろうって、あなたそれどんな同人スピリットよと突っ込みたくなるけど......そういう作風がまた、ツボ。
この人の作品には、緻密な伏線が絡み合った末に創作が公式を塗り替える瞬間があって、その一瞬がもう、鳥肌モノなんです。
惜しむらくはいっつもラストが弱い。
途中あれだけゾクゾクさせるのにっああもう!と、憚りながら取り乱しそうになる。本作も然り。
よくも悪くも、一瞬の強烈なアドレナリンを出させる。そんな作品。
投稿元:
レビューを見る
高校生の読書感想文で『坊っちゃん』を読んだ。20余年たって、大人になって読んでみると、その猪突猛進ぶりが楽しかった。
この作品は、ぼっちゃんが江戸にもどって3年、教頭が亡くなったということを聞く。よくよく聞けば、自分がぼこぼこに殴った日に自殺していたのである。
その真相をつきとめようと、松山に戻ると、あの時には知らなかった事実が次々とでてきて・・・
投稿元:
レビューを見る
「虎と月」は印象悪かった。山月記がそれ程、名作とは思わない。だけど、ひどく現実的な話に解釈して何の得るところがあるのだろうか。
さて、本作。面白かった。坊っちゃんのエピソードを材料に、オリジナルとまったく違うミステリーの世界を作り出している。あの話がそういう裏があったという再構築は、驚きの連続。でも坊っちゃんはこんなに行動的な人間じゃないと思うけれど。
ちゃんと、坊っちゃんを読みなおそうかな。
投稿元:
レビューを見る
夏目漱石「坊ちゃん」のパスティーシュ。漱石の文体がそのまま蘇ったかのようなテクニックは見事!時代背景的に、社会主義がどうの、自由民権運動がどうのと忘れかけていた事柄が出て来るが、それもまた楽しい。
投稿元:
レビューを見る
『ジョーカー・ゲーム』シリーズも気になりつつも、パスティーシュシリーズの文庫表紙が鈴木康士で、これまた気になっており、悩んだ挙句『坊ちゃん』のパスティーシュ作品であるこれを手に取ってみた。
パスティーシュのシリーズはあと『吾輩は猫である』のと『シャーロック・ホームズの冒険』のがあるんですが、思えばホームズが一番よくわかるからそっちにすればよかったかしらと今更思ったり。
でもまぁ解説者曰く、原典を知らないで読んでも面白いとしていたのでまぁいっか。
オマージュ的なものはアンソロジーなんかでもよくありますが、この本はかなり原典をしっかり絡めた作りのようで、原典の時間軸から三年後とはいえ、登場人物から何からすべて同一。むしろもう一つの物語として解釈もできるくらいの緻密さらしい。とはいえ自分は原典知識が教科書のあらすじ程度なので、通常の殺人事件のミステリーとして読んだわけですが。まずしっかり文体模写なので、ちょっと古めのリズムで、謎が謎のまま進んでいくとちょっとついていくのが大変。
それでもそんなに長い話ではないので、どうにか終着点へ。時代背景だとか思想だとかが絡んで、最終的にはちょっとうやむやな終わり方だったので、読後感はちょっと歯切れが悪い印象。
清さんのくだりの部分だけは、思想とは関係ない心情の動きだったので、共感できた。やっぱり原典ちゃんとわかってから読んだ方が楽しめそうな気がするので、次に読む本無くなったときはホームズを選ぼう。
投稿元:
レビューを見る
巧みだ。
夏目漱石の『坊っちゃん』の3年後を柳広司が勝手に描いた本作。
パスティーシュ(文体模写)と言うらしいが、元ネタの『坊っちゃん』の登場人物や設定、物語だけでなく、夏目漱石の文体まで似せられていて、本物の続編かのように読めた。
と、同時にミステリーとしても面白かった。
なぜか『坊っちゃん』で引かれた伏線を回収していくようなストーリー展開。
『坊っちゃん』で起きた出来事が「実はそういう意味だったのか」と附に落ちていく(本当は違うはずだが)
パスティーシュというものを初めた読んだが、なんとも巧みだな、と。
投稿元:
レビューを見る
うーん、今いち。原作「坊ちゃん」に絡めて、ミステリーのストーリーを展開する構想はうまいなぁと思ったのだけど、全体にあまり面白みのある内容ではなかった。