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紙の本
見渡すかぎり阿保ばっかり。愛すべき腐れ学生たち。
2011/04/17 16:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YO-SHI - この投稿者のレビュー一覧を見る
yom yom、小説新潮、ユリイカといった小説誌に掲載した短編が7編収められた短編集。掲載誌が3誌あって、掲載された時期もまちまちなのだけれど、登場人物たちがほぼ共通しているので、連作短編といって良いだろう。
単行本の刊行順で言うと、本書の前が日本SF対象を受賞した「ペンギン・ハイウェイ」、その前は「宵山万華鏡」。著者の作品と言えば思い浮かぶ「腐れ学生」モノからは、ちょっと距離を置いた作品が続いた。そして本書は..「四畳半神話大系」を彷彿させるタイトルでお分かりだろう。愛すべきダメダメ学生たちが帰ってきた。
最初の一編「四畳半王国建国史」に慄いた。「四畳半王国」の国王が、京都は東山ふもとにある「法然院ハイツ」の一階の四畳半に、いかにして無限の空間を有する「王国」を築いたかが記されている。もちろん妄想が全開した産物だ。著者の作品の愛読者の私も、最初からこのペースで飛ばされたのでは付いて行けない、と思った。巻末の初出一覧で、これが現代思想誌の「ユリイカ」に載ったの知って、再び慄いた。
このように最初の一編はなかなか手強かったが、二編目の「蝸牛の角」以降は大丈夫だ。大丈夫というのは、これまでの著者の「腐れ学生」モノのペースが戻った、ということ。「阿呆神」という、京都の無益な営みに明け暮れる学生(つまり「腐れ学生」)が奉じる神様の周辺の物語。詭弁論部や図書館警察などお馴染みの組織や、大日本凡人會、四畳半統括委員会などが活躍(暗躍?)する、著者のメイン路線とも言える作品。
私はとても楽しんだ。「蝸牛の角」に登場する黒髪の乙女のセリフが、本書を端的に表している。
「見渡すかぎり阿保ばっかり」
紙の本
三浦さんて、絶滅黒髪少女みたい、関西には多いのかしら、いや逆に少ないからあんな歌が流行る? でも、大阪はともかく京都はやっぱり黒髪、三浦さんの天下。で男がパンツ一丁でたたずむなんていうのも京都なら許せる、はずもないか・・・
2011/12/09 20:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的には、今回の古屋兎丸の装画は失敗。だって人間が下手なんだもの。特に主人公らしき男性、ま、うざったい大学生を表現しているとはいえ、これじゃ素人の絵でしょ。無論、狙っているところはあるんでしょう、いわゆる下手上手(ヘタウマ)。でも、そこに古屋の限界みたいなものが見えちゃう。うーん、こういうのが好きな人がいるんでしょうけど、やっぱデッサンはしっかりしてないとねえ。ある意味、お話の内容とはうまくマッチしているようではありますが、装幀の新潮社装幀室は、これをどう思っているのかしら・・・
で、です。森見登美彦の今までの流れを汲む作品なのですが、私はその後見たアニメの『四畳半神話大系』の印象があまりに強いので、どうしてもその原作、みたいな感じで読んでしまいます。ちなみに、私は小説の『四畳半神話大系』を読んでいないため、なおさらその感が強いのかもしれません。それにしても、あのアニメはよかったです。2010年12月8日、2010年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を受賞したというのも肯けます。さすがマッドハウス。そういえば傑作アニメ『パプリカ』もマッドハウス。私とは相性がいいのかも・・・
早速、目次に従って各話の初出と内容紹介(前半は、森見のHPから引用)。
「四畳半王国建国史」(ユリイカ 2006年2月号「四畳半国開拓史」を改題):一人の四畳半主義者が不退転の決意をもって四畳半という空間に挑み、素晴らしい王国を作り上げるまでの栄光の物語である。登場人物はほぼ一名である。恋の予感はない。(「法然院学生ハイツ」の建物の一部にある王国の建国史が、一人称で宣言のごとく語られるいささか堅苦しいお話・・・)
「蝸牛の角」(小説新潮 2007年7月号):きわめて特殊な四畳半的宇宙の構造について書かれた物語である。どこかで登場した人物たちが大勢入り乱れる。これを読めば四畳半的宇宙とは何かという漠然とした問題について、漠然とした回答を得ることができよう。(「下鴨幽水荘」の二階で、阿呆神について議論を始めた四人の男女、無精ひげを生やした四畳半の主、ぬらりひょん男、文学青年風阿呆、饅頭消費機関黒髪乙女と、その一人の鞍馬彷徨譚・・・)
「真夏のブリーフ」(小説新潮 2008年9月号「真夏の人々」を改題):水玉ブリーフの男をめぐるミステリアスな夏の日の物語である―こう書くと、何か神秘的な奥行きのある作品のように感じられるのが筆者も不思議であるが、今まさに読者が期待したような内容とはぜんぜん違うということだけは保証できる。(三浦さんが報告する自分のマンションの前の空き地風景。そこに立つ黄色地に紫の水玉模様ブリーフ一丁で日傘を持って立っている男とは・・・)
「大日本凡人會」(yom yom vol.9):凡人を目指す非凡人のための集い、すなわち「大日本凡人會」の男たちが、唐突に出現した最強の敵と死闘を繰り広げる物語である。そして、彼らの真の戦いはここから始まるのだが、その先のことは登美彦氏にとって知ったことではないという。(四畳半数学者が掲げる「妄想的数学によって自分に恋人が存在することを証明する」という目標の行方は・・・)
「四畳半統括委員会」(yom yom vol.14):謎であることが目的であるような謎の組織「四畳半統括委員会」をめぐって、さまざまな人々の思惑が交錯する物語である。ほとんど、交錯するだけなのである。(謎を呼ぶ組織、それを恐れる上松康平、注意を喚起する新入生向けパンフレット、『四畳半神話体系』からの引用、そして唐変木のブログ、統括委員会の議事録、さまざまなものから浮かび上がるのは・・・)
「グッド・バイ」(小説新潮 2010年3月号):己は誰からも好かれていると満腔の自信で「はちきれそう」になっている一人の男が、友人たちにサヨナラをしてまわる物語である。タイトルは太宰治の短編小説からだが、内容はあまり関係ないようである。(別れを告げる男に、彼を好いていると彼自身が思いこんでいる人々の反応、毒舌の三浦さん、芹名、茅野、初音さん、丹波、楓さん、そうそうたるメンバーは・・・)
「四畳半王国開国史」(yom yom vol.17「四畳半国開国史」を改題):一人の四畳半主義者が不退転の決意をもって四畳半という空間に挑み、素晴らしい王国を作り上げた。その後、彼はいかなる冒険の旅に出たか、という物語である。登場人物はほぼ一名である。恋の予感はやっぱり、ない。(全宇宙の四畳半を遍く支配する阿呆神、そして図書館警察、詭弁論部、大日本凡人会。四畳半の内と外、そしてブリーフ男?)
まず、初出が「ユリイカ」2006年2月号っていうのが凄いなあ、って。ま、「ユリイカ」は過去に渋澤龍彦や西尾維新の特集も組んでいるので、やるときゃやるしかねぇ、なんて思わせもしますが、この雑誌に載るっていうのは、純文学誌や一般文芸誌で扱われるのとは一味も二味も違うわけで、驚きました、はい。
三浦さんて、年齢は上ですし、アニメでみるとショートカットなので違うんですが、でも印象関には〈絶滅黒髪少女〉だな、なんて思います。ま、京都の女の子と大阪の女の子は阪急電車で一時間足らずの距離でしかないのに、全く違う言語を使うし、関西人でくくるなんて到底無理ではあるんです。踊りのできない三浦さんではNMB48は無理。でもPNT48(ポント48)ができたら、面白いキャラで採用されたりして・・・
ともかく、三浦さんは理知的な眉をした黒髪の乙女で、全自動乙女型饅頭消費機関のように饅頭を頬張るところが可愛らしい。怒らせると、その舌鋒は炎のごとく燃え上がるそうです。某大学の詭弁論部に所属する学生ではありませんが、楓と一緒に見学に来たことはあります。鈴木と付き合っているような、いないような・・・水玉ブリーフの男がことのほかお好き?
そう、今回のお話で女性読者の脳裏を離れないもの、それは空地に佇む黄色地に紫の水玉模様ブリーフ男の姿。ま、日傘を持っているというのが、なにか無意味に滑稽ではありますが・・・