投稿元:
レビューを見る
ここ数年、芥川賞作品は大体購入して読んでいる。芥川賞作品に共通する感想は変な作品ばっかだなというのと、こんなの国語の教科書に載せられないだろというもの。今回も国語の教科書に載せるのはどうかと思うw
主人公北町貫多はある意味父親の逮捕など環境によるところもあるだろうがちょっと凄絶な人生だが、性格的にはやっぱりDQNと呼ばれる部類だろう。一人称が「僕」であるところがギャップを感じてなんかよかった。
併録の「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」も北町貫多の21年後40歳の話だが、こちらの方が面白く感じた。雑誌発表順の関係だろうが、先に発表された「落ちぶれて~」の方にはルビが振ってある漢字も、「苦役列車」にはルビがない。単行本化にあたり「苦役列車」が先に掲載されているのだから、あとに載ってる方にルビ振っても意味がないよ。出版社にはこういったところもしっかり見てほしい。
投稿元:
レビューを見る
中学卒業から19歳になる現在まで、日雇い労働者を続け1人無気力に生きる貫太が、専門学生と仲良くなったりもするんだけど、やはり違う世界に住む人だと気付かされる。そしてその間、彼やその彼女に、嫉妬や憎悪、葛藤の感情を繰り返すが、彼貫太はまた無気力に日々を生きる。
芥川賞を取った作品の中でも、著者の経歴が逮捕歴や日雇い労働者として過ごすなど異質だったため、興味があって読んでみました。
彼自身をモデルにしているこの著書ですが、文章の力強さが凄いです。
上手いわけでもないし、表現の仕方もはっきり言えば気持ち悪いんですが、生き様というかリアリティが伝わってきます。偏見に満ちていて自分勝手で小心者で、そして3大欲を常に垂れ流しです。
ただ貫太と同じような境遇にいる人が世の中には沢山いるんでしょう。そして貫太と専門学生のように生きるステージが違えば、やはり考え方、生き方も変わりますよね。しかし、自堕落に過ごしていたら、すぐそのような境遇は手招きをしてきます。
貫太のような人物を完全な反面教師にして、逆に強くしっかりと生きようと思わしてくれる一冊でした。
投稿元:
レビューを見る
「どうで死ぬ身の一踊り」に比べて、文章ははるかに熟達しているが、そのぶんこの作家独特の粗削りかつ異様な迫力は薄れているようにも思える。とまれ、こういう私小説の書き手が他に見当たらない状況下では、西村賢太の存在感は大きいね。
投稿元:
レビューを見る
9割が事実という私小説なのでリアリティがあって結構面白く読めた。男なら誰でも主人公のようなコンプレックスを抱えたり周りと比べたりするし。日下部の彼女を見て15点と判定する所なんかは確かにあるあると思ったりしたかな…これってある意味、青春小説でもあるように感じた。最近読んだ 錨を上げよ の短篇みたいにも思えたかな。
投稿元:
レビューを見る
文体が昔風に書かれているが、リアルで隠すことない描写でぐんぐん読み進めました。私小説なので作者自身の経験そのままなのか・・・。まあ人間謙虚に誠実にが一番だなと思う。
投稿元:
レビューを見る
すごく面白くて一気に読めた。汚い感情や惨めさをストレートに書いてるところに好感が持てる。タイトルにある「苦役」は、作品を読む前は日雇い労働の辛さのことを言ってるのかと思ったら、ちがった。変われない自分を抱えてずっと生きていかなきゃいけないことが苦役なんだ。まさに人生そのものが苦役。こんなこと考えてりゃそりゃ鬱屈した気持ちになりますわよ・・・。
投稿元:
レビューを見る
第144回芥川賞受賞作。
先に読んでいた同時受賞の朝吹真理子『きことわ』とはまったく違う、対極に位置するような作風であり、続けて読んだことによって正直かなり面食らった。こちらはド直球の文学作の趣きで、強烈な私小説でした。
西村賢太を文字った北町貫多という男が主人公であることからもわかるように、実体験をもとにした私小説であることが大きな特徴。文学作品は多かれ少なかれ私小説的な要素が含まれるとは思うのだが、中卒で家賃も払えない状況下で日雇いのその日暮らしをしていたという現在では珍しい経験を持っているとなると、その劣等感丸出しの激しい心情吐露には相当なパワフルさが加わっているように感じられ、インパクトも強かったです。
普通の学生生活を送るヤツらに対しての憎悪と羨望が滲み出ていて、来るところまで来ちゃっている感じ。ある種の嫉妬は誰でも持ったりするが、ここまで研ぎ澄まされて肥大化されてるものが、文章を通じて表現されてくるとやはり圧倒される部分はあるし、同時に不快感までも残ってくる。
世間をすべてを敵に回すような貫多だが、会話での一人称は常に「ぼく」になっていた。相手を罵るときでも「俺」ではなく「ぼく」を使うので迫力が薄れていて、それが貫多という男の弱さを暗示していたと思う。そんな憎めない部分が、実は滑稽にも見えてとても印象的でした。
投稿元:
レビューを見る
主人公がどうしようもないやつだと、メディアを通して聞いていたので、どれほどの奴かと手に取った。
主人公は、根暗、父親が性犯罪者という、先天的にも後天的にも堕落する性質を備えている。実際主人公は日雇いのバイトをたびたびするだけで、家賃もままならない文字通りのその日暮らし。人に優越感を抱くことで自分を保っているようなクソ野郎である。
正直、私はこの小説を読んで、主人公がそれほどどうしようもない人間だとは思わなかった。確かにその自虐的な描かれ方は誇張されて凄まじさは感じるが、嫌悪感はあまり受けない。
むしろ「小さい」という言葉の方が適当だと思う。主人公は主人公なりにある意味まっすぐで素直な人間にしか僕には見えない。その身に授かった何かが彼をそうさせているだけのようにすら見える。
身に授かったものに対するスタンスだけ取ってみれば、こういう風に生きている人間は、それこそ社会の底辺にも頂上にもいるだろう。
主人公の言い訳がましくないところに、私は好感を抱く。こういう人間がいたっていいと思う。そう思わせるリアリティがこの小説にはあった。頑張ることができるだって才能なのかもしれない。その言葉が僻みでなく肩の力の抜けた救いとしてこの小説からは聞こえてくるような気がする。
投稿元:
レビューを見る
私小説は苦手と思っていたけど、これはそんな感じもなく面白く読めた。
突き放しているというか、客観性のある書き方というか、それが良かったのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
屈折してるなあ。一度陥ってしまった悪循環のループ、抜け出すのは至難の業。人は本来怠け者だから、楽な方へ楽な方へ行きたがる。でも楽な方に行っても決して楽じゃないし、満足できない。現状から抜け出したいのに出来ない悶々とした心情に共感。
投稿元:
レビューを見る
話題の経歴話題の受賞作だったから、とにかく読んでみたかった。
しかしながら、話が推測でき、ワクワク感や
結末の面白さがあまり感じられなかった。
一気に読むことのできる読みやすさはあった。
投稿元:
レビューを見る
一生経験するはずのない物語なのに、極めて普遍性を持つものだった。
読み進めながら感じた苛立ちや惨めさは主人に対するものでありながら自分に対するものでもあった。
嫉妬とか、惰怠とか、弱さと下らないプライドからくる心の一番醜い部分を抉られているような感覚を喚起する小説だったと思う。
ただ、友人の彼女を犯す妄想の下りは少し読むのに耐えられないものだった。
投稿元:
レビューを見る
読み終わったあとの、居心地の悪さこそが小説。文体は洗練されている。
人間の弱さや醜さがヒリヒリする。
芥川賞のあとどんなテーマで書いて、どんなメッセージを込めてくるか、注目したい。
投稿元:
レビューを見る
文芸春秋の芥川賞発表
受賞作二作前文掲載号を購入した
思えば
「限りなく透明に近いブルー」の時に買って以来かな
さて
今回の受賞作の内
どちらから読もうと思って
どっちが好きかっていうと
絶対「きことわ」なんだけど
まるでこの作品の深みに
ずるずると引きずり込まれてしまった
そういう作品なのだ
「これあんまり好きじゃない・・・」
って頭では思っているのに
そこに引きずり込まれる
投稿元:
レビューを見る
読む人によってはイライラの塊。途中で投げ出したくなるような作品。好き嫌いはっきり分かれる作品だと思う。
俺はというと、悲しいくらい共感してしまった・・・。
主人公(作者)と境遇は違うが、性格的にどこか似ている所があるんでしょうね。あまり嬉しくないけど。
共感してしまった身、作品自体は好きな類です。
でも反面教師じゃないけど、これを読んで、共感してしまう自分の性格をちょっとは変えたいと思ったね。