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みんなのレビュー55件

みんなの評価3.6

評価内訳

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紙の本

芸術家、哲学者、教育者、なんでもいいんですが、所詮は人間です。芸術家にもいい人もいれば悪い人もいる。人格者もいれば犯罪者だっている。犯罪者にだって善人も悪人もいる。理想郷の中の人間を赤裸々に描いています。

2011/12/15 18:18

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

ともかく力強いカバー画です。力強い線、強烈な色、絵そのものとしてみても、これだけの作品にどれだけ出合えるか。装画の福井利佐って、何者だろうと思ってしまいます。ということで、いつものようにネット検索。素敵なHPを発見、そうですか切り絵作家さんですか。しかも、ポリティコンの原画展まで開かれている。1975年生まれ、多摩美卒、美女です。年齢をどうどうと書くだけの自信が溢れているというか。そして、掲載されている作品は、それも強烈、もの凄いパワーです。受賞暦も立派、こんな人がいるんですね、と感心。

こういう人を見つけて、自分の仕事で使うというのは装幀者のセンスであり、張り巡らしたアンテナの力でもあります。装幀の関口聖司にも拍手をしておきましょう。2010年の装幀、というかカバー画を振り返るとき、ともかく何らかの形で触れずにはいられない仕事です。では、この画につつまれたお話のほうは、どのようなものでしょうか。この本を見かけた人、誰もが抱く疑問です。

出版社のHPの言葉を、借りましょう。
                  *
大正時代、東北の寒村に芸術家たちが創ったユートピア「唯腕(いわん)村」。1997年3月、村の後継者・東一(といち)はこの村で美少女マヤと出会った。マヤは北田という謎の人物の「娘」として、この村に流れ着いたのだった。自らの王国に囚われた男と、国と国の狭間からこぼれ落ちた女は、愛し合い憎み合い、運命を交錯させる。過疎、高齢化、農業破綻、食品偽装、外国人妻、脱北者、国境……東アジアの片隅の日本をこの十数年間に襲った波は、いやおうなくふたりを呑み込んでいく。ユートピアはいつしかディストピアへ。今の日本のありのままの姿を、著者が5年の歳月をかけて描き尽くした渾身の長編小説!
                  *
ちなみに、ここでいう著者がかけたという5年の歳月ですが、初出データは

(第一部)週刊文春 2007年8月16・23日号~08年11月27日号
(プロローグ及び第二部)
別冊文藝春秋「アポカルプシス」を改題。2009年1月号~10年11月号

と記されていて、この期間で言えば3年と少し。ただし、対談によれば「タイトルも構想も二〇〇五年には出来ていた」そうですから、それならば5年といってもおかしくはない。でも、出版社は本の紹介文の中に「構想から7年、単行本としては著者初の上下巻となるこの大作」と、さらに2年遡ることまで書きます。これは対談には出てこない数字。なんだかなあ、日本の起源を年毎に遡らせ、古くからあったから偉いんだ、みたいな文部科学省のやりかたみたいで、いやだなあ、こういうの。問題は小説の中身でしょ、ねえ。

で、です。実際にこういう村はあると思います。でも、私は幸いにして、というか不幸にしてというか、自分の目で確かめたことはありません。ただ、ユートピア村でなくとも、多くの地方の村では住民の高齢化が進み、若い人は村を出て行き、村自身の存立があやうい、という現実は実際に目にします。そして、そういうところにも、というかだからこそ農業は破綻し、生きていくために食品偽装も行い、外国人妻を迎え入れざるを得ないといことになっている。

そういう意味では、芸術家の村に限定する必要は少しもありません。似たような状況は日本中いたるところに存在します。しかも、そういう数多ある村のなかで、見事に復活するところも数少ないながらあります。無論、単純に農業村として蘇るのではなく、観光化しながら生き残る。どこにその違いがあるか、となれば経済小説になるのですが、桐野が描きたかったのはあくまで人間です。それも男女関係。それが村の後継者・東一と村にやってきた美少女中島マヤとの間のことになります。

東一は全く魅力のない尊大な27歳の男で、彫刻家・高浪素峰の孫。唯腕村で生まれ育ちました。若者が離村するなか、村に残った唯一の若者です。地元の高校を卒業後、養鶏をし、雪を下ろし、年寄りを助けて村の雑事に奔走しています。村に恋をしたくなるような女が一人もいないことが最大の不満。しかし、唯腕村自分の「祖国」なので、見捨てるわけにはいかないという気持ちが強く、外見は「熊のように醜い体に、美しい顔が乗っている」といわれます。

マヤの本名は真矢、子供のころ、「仲間」と「友達」に囲まれて暮らしていました。父はロシア人の血を引く朝鮮人、母親は日本人で、そのせいか誰もが振り返るような美少女です。父親は家族を捨てて行方知れず、母親・悠子もマヤが高校二年のとき、中国に旅行に行く、といって家を出たまま失踪失踪しています。マヤは「真っ黒な髪を横で分けて、胸のあたりまで垂らしている」美貌の持ち主で、高校二年に進級する春に、父親代わりの「北田」に連れられて唯腕村に来ました。

そう、マヤの家族は複雑です。いや、本当の家族については一緒に暮らしていた「仲間」と「友達」が何者であったかということや、両親の失踪については問題があるものの、それ以外は決して難しいものではありません。でも、唯腕村に来た時の彼女の家族は、普通ではありませんでした。まず、北田実ですが、マヤの母親の「仲間」だった人物で、母親とかつて交際していたといい、母親の失踪後、マヤの父親代わりになるといい、唯腕村に入り込むときに、「北田」と名乗ります。

父親代わりの北田に対して、母親代わりとなるのがスオンです。彼女は中国朝鮮族出身で日本の農家に嫁いで、アキラを出産後、文化が合わずに離婚――したことになっていて、北田の妻、マヤの母として唯腕村に入り込みます。アキラことアンヒョルは、マヤの弟という扱いですから、偽装家族としての入村ということになります。

東一とマヤ、二人の間の男女関係を描く、といっても相思相愛、ではありません。マヤを東一が追いかけるというのが正しい。マヤにとっては、東一は周囲に数多いるオヤジたちの一人でしかありません。だから、桐野の筆は彼ら二人のすれ違いを描くよりも多くを、芸術家村生え抜きのメンバーたちの生活、あとで参入してきた新住民との問題なども、村と外部との関係なども描いていきます。

羅我誠と高浪素蜂ば村を作った背景にあるのは、藝術を背景にした理想の行き方を追い求めるというもので、白樺派の武者小路実篤がつくったという新しき村を思えばいいでしょう。私もこの文章を書くため調べていて初めて知りましたが、実は、その新しき村、2011年現在も埼玉県入間郡毛呂山町に健在なんだそうです。驚きでした。

でも、この話で特徴的なのは、入村した北田たちに誘われるようにしてベトナムや中国の女性が身を寄せてくるあたり。ともかく、一見浮世離れした村ですが、経済的な波に翻弄されながらも生きる道を模索するあたりも含めてまさに現代日本。東一とマヤ、二人の間の男女関係を描くと書きましたが、全体的に見ればマヤの峻烈な若々しい行き方に共感を覚える私でした。日本を動かすのは、やはり若い力でなくては・・・

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2011/11/03 22:56

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