紙の本
考え抜く力を育てる一冊。
2017/01/11 21:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
マイケル・サンデル教授の専門は政治哲学で、ハーバード大学で
教えるようになって三十年以上です。
正義と銘打った講義を設けたら大変人気が出て、これまでに
14,000人以上の人が履修しました。この一冊は、長年にわたる
講義を元に構築されています。
哲学ですから、書かれたというより積みあがっている感じがします。
例示も具体的で、カントやアリストテレスなど、誰もが知っている
思想家からの引用も多いです。
名前は聞いたことはあるけれど、中身はよく知らないという人が
多いのではないでしょうか。
大学の講義がベースなので平易とは言えない部分もありますが、
素人でも手に取れるようかみ砕かれています。
多面的に議論を展開しているので、哲学の入門書としても
最適です。
第一章は「正しいことをする」
ここから議論が始まります。
メキシコ湾で発生したハリケーンの被害により、電気が止まり、
屋根の上に木々が倒れかかり、緊急避難的にモーテルで
寝泊まりするはめになった人がいました。
ところが、そこで請求された金額が法外なふっかけだったのです。
あえて法外なふっかけと書きました。
市場原理主義者なら、需要と供給に則っただけとの考えに
なるでしょう。業者にしてみれば、大量のバックオーダーを抱え、
作業条件も悪く作業員の確保もままならないわけですから、
不当な金額を請求したわけではないとの思いもあるでしょう。
正しい価格とは何でしょうね。
古代から現代まで、脈々と受け継がれる哲学を学ぶ必要性が
言及されています。
正義と権利、義務と同意、名誉と美徳、道徳と法。
政治哲学者は、このような理念について考え抜いているのです。
わたしは、市場原理ですべて決まる的な考え方に違和感を持って
いましたし、事件があった時にまき起こる自己責任という言葉も
気になっていました。そんな感覚に考え方を示してくれる本でした。
理想通りにいかないことはいっぱいあります。
この本を読んで、心が少し整理されました。
答えは一つではないかもしれませんが、考えることが大事ということが
伝わりました。
紙の本
哲学はおもしろい
2015/09/13 17:19
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねったいぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学というと、おもしろくないイメージがあります。その負のイメージを一新した一冊なのではないでしょうか。具体的で身近な例を出してくれるので、自分ならどうするかということを考えさせられます。哲学に興味がない人も、この本は楽しみながら読むことができるでしょう。
電子書籍
正義、平等、自由について簡単に学べる
2017/11/17 08:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キユ - この投稿者のレビュー一覧を見る
民主主義かつ資本主義国の日本では、正義、平等、自由というと、当たり前にそこに在り、漠然と享受されている気がする。
この本はそんな当たり前のものについて、哲学的なアプローチから問いを投げかけ、尚且つ哲学なんて難しくてとっつきにくそう…と思う私たちに過去の事例と語り口調でわかりやすく解説してくれている。
もちろん教養があるとより深く理解できるが、この本はカントもベンサムも知らない人に対して彼らの理論を理解するよい入門書であると思う。
紙の本
考えるきっかけに
2024/03/02 12:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
当時まだ大学生だった後輩が、サンデルは上から目線と言っていた。
正義は主観的であいまいだから、主張されると上から目線に感じてしまうかもしれない。
それでも各人が考えなければ始まらないので、この本は考える良いきっかけだと思う。
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久しぶりにノンフィクション。サンデルが共同体主義に肩入れしていることはわかるが、自分の所属する共同体に愛着を持ってない人には通用しないような。あるいは俺のように古い共同体に所属してそれに辟易している人からみると、自分の共同体を無批判で受け入れる(わけじゃないかも)のはちょっと違うような気がする。だからといって個人主義をレイサンできないことにおいては筆者に同意
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教育テレビの番組を見ていたので、店頭で山積みになっているのを見て、ブームが去ったら買おうと思っていたものの、ついつい手を出してしまい一気に読了。
本書では、分配的正義がいかにあるべきかについて、功利主義やリバタリアン、リベラリストのアプローチではうまく説明できないことを、身の回りで起きている、あるいはいかにも起きそうな実例を元に考えていきます。
構成や話の順番が番組と少し違っているようなので、番組のtranscriptと期待して買うと途中で挫折するかもしれませんが、番組とは別のwordingでじっくり読んでみようという人向けでしょうか。首を傾げたくなるような翻訳がほとんどないのも本書のすばらしい点です。
最近の政治哲学や憲法の人権論を勉強する学生さんがどのような本を読んでいるのかわかりませんが、教科書で憲法の人権論の背景にある議論を理解するうえでも本書のような書籍を読んで欲しいなと思いました。
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アリストテレス、ロック、カント、ベンサム、ミル、ロールズ、名前を聞くだけでも頭が痛くなるよな哲学者の話がさんでる教授の手にかかるとアーラ不思議。ものすごく今日的な内容になってしまいます。
先日やっと読み終えました。内容もさることながら扱っているテーマも相当難しいものです。しかし、いろいろなことが起こっている今だからこそ、自分の軸がどこにあるかを確認するために必須の文献であると確信します。この本は自身の講義である『正義(ジャスティス)』から出来たものですが、自分の授業に『正義』と冠することからでもサンデル教授のすごさと並々ならぬ覚悟と、あふれるような自信が解ります。
僕は2011年の年明けにNHKで放映されていたさんでる教授の講義をまとめて一気に見るという三が日を送っていたので今ではこの本がどれだけすごいかを実感する日々です。先日、サンデル教授が東京大学の安田講堂で公開授業を行ったときの様子を見たことと、先日の震災の特別講義を拝見させていただいたときに『前の世代が行った過ちを今の世代の人間が受け継ぐべきか否か』などの非常に難しい課題を扱っていて、その授業に引き込まれる自分がいました。
そして、地震があったときの様子をさんでる教授が独特の切り口で講義を進めていく様子は圧巻の一言でした。この本をもう一度改めて本格的に読んだのはその後です。今までこういう哲学が軽視されていたからこそ、サンデル教授の授業がスポットライトをこうして浴びるのはある意味では必然であり、個人的にもにうれしいことです。
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ハードカバーで購入・既読したので、小さくなったからといって、買いませんけど、
ハードカバーの大きさ・重さで手に取るのを躊躇していた方々には、この文庫化は朗報ではないでしょうか。
今まで躊躇っていた方々にも、是非、お手に取っていただきたい!!
正義を論じている割には、とても取っつき易く、読み易いです。
熱烈、オススメ!!
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ずっと読もうと思ってたけど、値段が高すぎて手が出せずにいた。文庫化でようやく。
これこそ、「適正価格」の問題じゃないか(笑)
うーん、おもしろかった。カントさんのくだりが。
でも、やっぱり西洋人の論理で納得いかんとこも多々。
次に期待。
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これからは、さまざまな社会的、政治的事象、あるいは身近な出来事に対する感じ方、捉え方が変わるかもしれない。自分自身のプリンシプルを固めるのに役立つだろう。
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書いている内容は当然だが、NHKの「白熱教室」と内容が被る。
しかし、正義とは?と言うと、1つしかいないように思ってしまうが
同じ状況でもしょうがないと感じることもあれば
それは絶対に許されないと感じてしまう事があるし、
同じ事象についても、判断が人によって異なるなど、
多面的な面があるんだと、分かっていたがそこを深く追及することで
相反する価値の存在が混在している事が鮮明になる。
これからもっと、多元的価値観が混在する世の中になるので
自分の考えの根源を深く考えるきっかけになる本だと思った。
因みに自分の奥さんは、NHKをみて、なんでこれが凄いの
学生と議論しているだけじゃない?と言っていた。
限られた時間の中で聴衆に議論をさせてつつ、あらかじめ
用意していたコンクリフトに気づかせ、説明するという事が
如何に高度で、練りに練られた準備をしないといけないかが
わからないのかなぁ・・・。
気づかせて、
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これからの正義の話をしなくちゃね。でもそれはこの一世紀程、あえて避けて来たところに踏み込まざるを得ないんだけど。公共と道徳を語ることは危険と隣り合わせなんだけど、それに触れぬようにしてきたことで、結局現在の危機に面していることも確かだし。
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とても読みやすいのだがスゴく頭を(思考回路を)刺激された。
それゆえ自然と時間がかかってしまった。
サンデル先生の自作も予定されているが期待出来る。
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うん、目の前の一人を犠牲にすれば、より多くの人が助かるとか哲学的なん分かりません 途中で断念しました どうしたら読破できるんでしょ?
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TVですっかり有名になったサンデル教授の正義とは何か?という問いを自問自答し続ける本書。古くはアリストテレスの事例からマイケルジョーダンまで
様々なケースに基づき正義の多面性を解説してあるのが面白い。
こういった哲学をアメリカ人が研究していること自体が僕には驚きであった。
最初は人名の数を比べるような正義だけかと思っていたのだが,アリストテレスを現代風に解説してあるのが興味深い。
残念ながら,僕には理解できない部分が結構あった為に☆4。
政治家がみんなしっかりとした信念をもって政治を運営してくれたらもっといいせかいになるよねぇ。。
本書の中でサンデル教授は正義とは何かを結論付けてはいないが,幸福の最大化,自由の尊重,美徳の促進が正義の要素であると語っている。