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みんなのレビュー96件

みんなの評価3.9

評価内訳

95 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

同じ場所にありながら、見ないことで存在するもう一つの国家

2012/02/16 00:39

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:相羽 悠 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 二〇〇九年は『都市と都市』が出版された年。SFの歴史を綴る本にはそう記されるだろう。本書は、アメリカでヒューゴー賞にローカス賞、イギリスで英国SF協会賞にアーサー・C・クラーク賞、さらには世界幻想文学大賞と名だたる賞を手中におさめた。

 という受賞歴に加えて、SFの枠内だけに収まらない懐の深さも読者を魅了する。作者ミエヴィルは自作に関してファンタジー、SF、ホラーといったジャンル分けを嫌っており、「ウィアード・フィクション(奇妙な小説)」という総称を早くから提案している。本書ではミステリの要素も加わった。だからこそ、海外の書評ではP・K・ディック、レイモンド・チャンドラー、フランツ・カフカなど、ジャンルの異なる作家の名前が引き合いに出されている。

 東欧にあるらしい都市国家ベジェルから物語はスタートする。過激犯罪課に所属する警部補ボルルが若い女性の死体遺棄現場に到着した。第一発見者の証言を聴取して監察医の所見をきいてと捜査は順調にすすむが、現場のボルルは、ふと目をそらしたときある女性と目が合い大慌て。彼女はそこにいないはずで、見てはいけない相手だった。通りすがりの女性との間で何が起きているのか。ここから本書の仕掛けが明かされていく。

 ベジェルには、体制が異なるのに、地理的な理由で変則的にむすびついている都市国家がある。ほぼ同じ場所に存在する、モザイク状に組み合わさったウル・コーマだ。貧困で質素なベジェルと裕福で洗練されたウル・コーマ。対戦経験もある二国家では、互いの自治を守るための制約があった。相手国のものが見えそうになったら、すぐさま視線をそらして見えないふりをすること。見てしまうことはブリーチ(違反)になり、違反した国民を裁くための組織「ブリーチ」も存在する。両国の人々は、子どものころから、服装、歩き方、しぐさの違いから互いを見分けるように訓練されている。

 全裸で発見されたことと厚化粧から、殺された女性は売春婦と思われたが、実は考古学専攻のアメリカ人留学生。ウル・コーマの大学で分裂前の遺物について研究していた。研究途上で見つけたテーマがきな臭い。見ないふりをすることで共存するベジェルとウル・コーマの隙間に第三の秘密都市が存在するというのだ。化粧は死後に施されたものらしい。どこの国の人間が彼女を殺したのか。殺されたのは研究テーマのせいか。彼女はウル・コーマにいたはずなのに、なぜ死体がベジェルで発見されたのか。はたして第三の都市は本当に存在するのか。この異常事態にブリーチは反応するのか。

 なぞがなぞを呼び、だれが味方でだれが敵なのか判然としない。そうしたダイナミックな展開のおもしろさはもちろんのこと、架空の存在でしかない二つの都市の書き分けがすばらしい。本書の題名からして都市が主人公なのは自明だから、当然と言えば当然なのだが。ベジェルとウル・コーマでは使われている言語が違う。アルファベットも違えば、響きも違う二言語。それぞれの言語の用例をあげたり、状況次第で言語を切り替える人々の機知を見せたりと、作者の遊びがストレートに伝わってきて楽しい。

 それぞれの都市に関して、まずボルルの目からベジェルが描写される。イスラム教徒とユダヤ教徒が平和裏に共存するさま、警察に非協力的な関係者を拘束できる「半逮捕」制度、町にたむろするアカ、ナチス、統一主義者の連中、政治的なあるいは経済的な理由でウル・コーマを追放されベジェルに暮らす人々、そうした人々が故郷の料理の匂いをかぐためやってくるウル・コーマ・タウン、さびれた古い市街。一方、ボルルが捜査のため出向いたウル・コーマでは思想統制が終焉しており、新しいビル群が並び、金融市場には活気があふれ、ソフトウェア会社、CD/DVDショップ、ギャラリーのある明るい市街が見られる。異なる体制の書き分けに関しては、ロンドン大学で国際法の博士号を取得した作者の腕の見せどころ。とても架空都市を写し出したとは思えない。

 ミエヴィルは、自作が特定のジャンルに限定されることを好まない。SFの枠を超えてミステリの要素を取り入れたのと同じように、ファンタジーの枠も超えていると仮定できないだろうか。政治的な、経済的な、宗教的な、階級上の違いがあるから、互いを見ないようにして生きている人々は、意外なぐらいわたしたちの近くに存在する。

 ジャンルを超越して、何を仕掛けてくるかわからない作家チャイナ・ミエヴィル、その名前を覚えていても損はない。

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紙の本

こんな世界は見たことない

2017/04/29 22:53

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る

性質が相容れない二つの国家が、同じ地域に存在している。互いの国民は、存在しないものとして、無視し合って生きている・・・

今までにこんな世界を描いた作家がいるのでしょうか。
私には心当たりがありません。SFファンなら一度は読むべき作品だと思います。

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紙の本

社会学的SFとでも

2016/02/28 23:22

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナツメ - この投稿者のレビュー一覧を見る

架空の都市国家での生活を観察した社会学的な内容は、まるでドキュメンタリーのような印象を受けます。
事件に都市国家の在り方そのものが絡んでくるという構成は、とても緻密な想像力を必要とする執筆活動だと思います。

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紙の本

すべての多重世界に

2012/09/15 17:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

二つの都市が一つの土地に、モザイク模様のようにそれぞれの占有地を持って同居しているという町。それぞれが異なる文化、異なる言語を持ち、越境は禁止されているどころか、お互いを見ることさえも許されていない。これはなにか現実世界のアナロジーなのか、純然たるファンタジーなのか。
二重化された都市と言えば例えばエルサレムであり、この作品の構造はかの地から争いを無くす格好の手段に見える。するとここは未来のエルサレムだろうか。そうかもしれない。違う理由は無い。場所こそ小アジアかバルカン半島のどこからしいが、明示されてないが隣接しながらも対照的な性格を持つ文化は、アジア風とヨーロッパ風と見えないこともない。
そこまでストレートに読まなくても、かつてのトルコ帝国の影響の残るキリスト教国かもしれず、ヨーロッパ諸国における大量のイスラム系移民との文化共存の縮図、あるいはEU内での各国間格差かもしれない。この地球を一つの都市と見れば、そこに様々な価値観、文化の混交と断絶が限りなく存在していることは連想できる。民族主義と経済発展の双方向での道を模索し、その結果、紛争に明け暮れる国々にさえ重なる。
対立を孕みながら、共通のリソースの上で共存しているというのも、また現代の世界の実情に合致する。それぞれに歴史的経緯を理解するからこそ、現状を維持しようとする意思があり、一方で改革勢力、時には極端な排外主義、融和主義も、そして過激派も存在する。アカデミックな視点でその認識を深めようとする人々も、イデオロギーに寄生するだけの無頼漢もいる。
ベジェル、ウル・コーマ、二つの名前を持つこの都市で、違法な越境<ブリーチ>をしてきたのは一つの死体だった。この殺人事件の被害者を巡るサスペンスが繰り広げられる。越境行為を取り締まる機関もまた<ブリーチ>と呼ばれている。このダブルミーニングが象徴的だ。禁止であって不可避なもの、それは禁忌ということ。理性でなく埋め込まれたコードとして機能するレベルであり、長い歴史上の必然が強制しているということなのだ。
この地上のどこにも似ているが、どことも異なるように、注意深く構築されたこの都市には、さらに僕らの無意識に訴えかけるような様々なコードも埋め込まれ、重い存在感を得ている。二つの都市の間に第三の領域があるという、いかにもありがちな都市伝説の存在すら、日常に隣接する空間としてのいかがわしさを備えている。
ハードボイルドタイプの主人公の警部補、あっけらかんとした相棒、しかし物語全体から漂う不気味さは、現実の中の悪夢的なものを次々に連想させる。隠された陰謀など無い、陰謀はある、どちらにしても居心地の悪さ、気味悪さは拭えない。それはあらゆる局面で二重化された、あるいは多重化されたこの世界で、僕らが見ない振りをしている様々なことを思い起こさせる契機になるだろう。

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2012/02/23 20:02

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2011/12/30 12:55

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2011/12/26 23:13

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2012/01/15 12:46

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2012/01/06 22:10

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2013/05/12 01:47

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2012/01/24 01:13

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2012/02/21 19:51

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2012/01/29 07:53

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2012/01/30 02:52

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2012/02/05 10:39

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