紙の本
「生命」や「自由」にせまるのはなかなかに難しいですね。
2012/03/09 16:18
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前略 福岡伸一様、
「動的平衡2」を読みました。副題が「生命は自由になれるのか」。第一章は『「自由であれ」という命令』で、副題が「ー遺伝子は生命の楽譜に過ぎない」。「動的平衡」の上に現れる生命の存在にどんな形で「自由」の命令があるというのか、興味を持って開きました。
いきなりで恐縮ですが、生物学を少々勉強した小生にとっては、これまで書いてこられたことはそれほど意外、新しいというわけではありませんでした。私だけでなく、学生時代の友人たちもかなり似たことを考えていた気がします。
ですが、生物学の世界に馴染みの少ない読者には新鮮かもしれません。それらの考えを専門に学ばなかった人たちにもわかるように、と書くことができる才能には敬意を表したいと思います。
本書ではこれまでのご著書よりも文章の角が取れ、よさが伝わりやすく感じられました。美しい文章ですと、少し言葉が足りなくてあいまいでも、雰囲気でわかった気になってしまう。そんな、文章の美しさに惑わされるような所がかなり少なくなった気がします。
全体を見渡すと、基礎的な生物学知識の解説のような章がいくつかありますね。「第5章 バイオテクノロジーの恩人ー大腸菌の驚くべき遺伝子交換能力「とか「第6章 生命は宇宙からやって来たかーパンスペルミア説の根拠」とか。本書全体の理解に必要、と思われたのでしょうが、副題の「自由」にどうつながっていくのか、少しわかりにくかった章でした。
個々のお説には異見もある、と感じることもありますが、映画や小説などの題材に実際の生物学的意味をつなげていくところなどは面白い解説だと思いました。でも、その「わかりやすい生物学」のような部分が浮いてしまって、まわりを回りながらも主題に近づいていく、、そんな気分にはなれなかったのが残念なところです。幾つかの新聞や本での連載をまとめなおしたとのことですので、それぞれのカラーがお互いなじみきっていないのかも。「まとめて一冊に」というのはなかなかに難しいものかもしれません。
「生命」や「自由」にせまることも、またなかなかに難しいことです。「遺伝子は生命の楽譜に過ぎない」から「第8章 遺伝は本当に遺伝子の仕業か?-エピジェネティックスが開く新時代」「第9章 木を見て森を見ず」への流れがもう少しみえたらよかったと思います。第一章では『「遺伝子の中には自由であれという命令が含まれているのでは」。これが本書のあらたな課題だ。』とありましたが、提出された課題へのお考えの流れをもう少し字数をかけて説明していただいてもよかったと思います。
小生といたしましては、遺伝子には「自由であれ」と書かれているわけではなく、「どっちでもいい」とその場に余地を残しているだけ、という気もするのですが。
今後の著作で、またご説明くださることを楽しみにさせていただきます。
紙の本
研究者と一般読者のあいだ
2012/01/31 17:38
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こーじこーじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前書「生物と無生物のあいだ」「動的平衡」と同様、とても楽しく読みました。
福岡氏は、科学読み物を執筆している研究者としては、文章構成力と表現力が秀逸ですね。
立花隆氏も科学読み物を書かれていますが、基本的に実験研究者ではないので
根底に流れるトーンがちょっと違っている様に思います。
(嫌いなわけではありません。「精神と物質」など、大変お勧めです。)
また森博嗣氏や瀬名秀明氏のように、科学的知識を小説に取り込んで面白味を出しているわけではなく、
科学的な話題をそのままで、これだけおもしろく書けるのは凄いと思うわけです。
福岡氏が過去にドーキンスの本などを翻訳していた経験が、活かされているのかも知れないなと思ったりもします。
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生命とは何か。前著からの問いに、更に深みを増した考察でこたえようとした一冊。遺伝子によって全てが決まるのではない、生命には自由であろうとする存在である。そんな新仮説も読み応えたっぷり。随所にみられる謙虚さ、そしてその先の真の知識人としての凄み。生物学を超えて、あらゆるジャンルにいきる人の参考になる一冊。
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この本もビンビンキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!
動的平衡で死生観、環境問題、生物多様性、持続可能性すべてが語れる。
動的平衡とは生物学であり科学であり地球学であり哲学であり人間学であり地球学だ!
詳しい感想は後ほど!
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杓子定規な考え方からの脱却。
人間はものごとを単純化しすぎなことに気づかされた。
遺伝子だけですべてが決まる。
遺伝子だけでは決まらない。
冷静に考えると、これほど複雑な生命が、遺伝子だけで継承されると考える方に無理がある。
でも、そう思い込んでいた。
でも、本を読んで、世の中はそういうことじゃないんだと、もっと全体的な調和とバランスで成り立っているんだと、新しい見方ができるようになった気がする。
ただ、やはり人が人の形でとどまっていられることは、とても不思議だ。
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高度にIT化された現代において、私自身システムを過信しすぎている気がします。無意識のうちに世界を恒常的なもの、完璧なものとして思い込み、日々効率的に管理されていることに甘んじていることで思考が停止します。無思考に日常を過ごすことでエントロピーが増大し、気付けば自分を見失っている気がします。食べ物においてもしかりですが、情報、知識も自分の頭で咀嚼し、継続的に取り込んでいく必要があります。
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「この世に因果律は存在しない」
この一言がとてつもなく救いに感じられる。
様々なことが同時に起こり、その関係性でいろんなことが変わっていく。
なんと自由なのだろう。
1の方を読んだときも思ったのだが、この「動的平衡」という考え方をすると、臓器移植について懐疑的になってしまう。
現在の技術としてはある程度有効なのだろうが、しかしその本質的なところは?と考えると立ち止まってしまう。
生き物は、その単体のすべてのつながりによって成立しているのだとすれば、他の個体の部分と取り替えることは果たして意味があることなのだろうかと思う。
エピジェネティックスという考え方は大変興味深い。
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今しがた読み終わったわけだが、やはりこの著者の本は面白い。どんな話が面白いのかを熟知してるというか。
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福岡伸一、実は会社(某食品メーカー)に入社した時の直上のリーダーと同窓、その他にも多くの卒業生を弊社に送り込んでいる、京大農学部・食品生物科学専攻・栄養化学研究室の出身ということで親しみがある。
著者の本は『生物と無生物のあいだ』から読み始めたけど、流れるような文体と、大学時代に携わっていたバイオサイエンス・遺伝子組み換えを含むサイエンス・ノンフィクションが両立していた希有な本で、これは非常に面白かった。その後、彼の公演会に出てみたり(場所・日時失念、独特の風貌とオタクっぽいしゃべり方が印象的)しばらくウォッチしていたけど、次に読んだ、『世界は分けてもわからない』がイマイチだったので、もう読まないなと思っていた。
ところが本屋で、発刊ホヤホヤのこの本の目次に「必須アミノ酸」「池田菊苗」「エピジェネティックス」など、自社に因んだ章があるのを見て、ちょっと迷った末購入。
まえがきの流れは『世界は分けてもわからない』を思い出させ、失敗したかと思ったけど、本文は好きだった頃の福岡節が炸裂していて、当該の章以外も面白く、あっという間に読み切った。
会社の部下にも「冬休みの課題図書」として貸し出し中。
『動的平衡』も読まねば。。。
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「動的平衡」で、命の不思議さという面の知的好奇心を大いに刺激されたのを思い出し、本書も読んでみた。文化・芸術面にも明るい生物学者が、興味深い話題を生物学の観点から分かりやすく解説してくれる。生命の深遠な世界は哲学にも通じる。。。
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一言でいうと、「美しい」本だと思う。
もちろん内容が、である。
※
「真偽」「善悪」の次のフェーズとして「美しいか、美しくないか」という「美醜」のレベルがあるように感じている。(p247)
まさにその通りだと思う。
そういう価値観を持つ人が増えれば・・・。
そんなことを思った。素晴らしい一冊。
今年最後にして、最高かもしれない。
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阿川さんとの共著「センスオブワンダーを探して」の内容と被っている箇所が散見されたが、フェロモンの話などは面白く読めた。今まで読んできた作品(ルリボシカミキリの青など)に比べると、文章から立ち上る魅力がパワーダウンした印象だが、気のせいだろうか。
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前作の動的平衡はまだ未読だが、動的平衡とはという内容前提なので不明点が多かった。ただ内容としては、楽しめたので、前作も読んでみたい。
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まずは福岡伸一の知識量に圧倒される。
この人すごいんだなーとしみじみ思った。
そして。
遺伝子とかDNAとかいまだにうまくイメージできないというか、どう解釈していいのか迷う部分はあるのだけれども。
いろんなところに「動的平衡」という概念は通用するのではないかという示唆に富んでいた。
面白い。
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私たちは、遺伝子によって脳から命令される「産めよ、殖やせよ」という命令に背くことが出来る。とすれば、遺伝子の中には「産めよ、殖やせよ」という命令の他にあらかじめ別の種類の命令が含まれていることになる。それは、「自由であれ」という命令だ。