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いつでも全てにおいて誠実でありたいという想いが人物たちから感じられる。
読んでいると「白河の清きに魚のすみかねてもとの濁りの田沼こひしき」といううたを思い出した。菊池さんの作品が面白いのは人物が水であると同時に、魚であるところ。
全て面白かったけれど忠直行状記が特に印象に残った。
後は芥川龍之介の俊寛も読んでみたくなった。
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「藤十郎の恋」もよかったけど、「ある恋の話」「俊寛」「恩讐の彼方に」etc
以前は、菊池寛の作品は、作者が意味をこめすぎている気がして(なんだっけ?里見弴と激しく論争とかしてたんだよね)苦手だったけど、知らぬ間に平気になってた。逆に、構成とか考え抜かれている感じがして好感。
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文豪の名に相応しい一冊ではないかと思います。
ほとんど現代の出来事ではなく、歴史上の出来事。
想像はできても、自分達と違う世界の物語。
違う世界故に入りにくいのではないか・・・という危惧がありましたが。
情景等は確かに昔の世界観だけど、完全に登場人物の心は今も昔もそう変わりない。
日本人が、持っているなんていうか道徳心とかそういったもの。
倫理と情がぶつかりあうところ。
そんなところがいきいきと書かれていて、本当に素敵な作品だとおもいます。
「形」とかブラックユーモアの効いた作品もあり、楽しく読ませてもらいました。
おすすめの一冊です。
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国語で習った作家ではあるが、作品は読んだこともなく、代表作も知らなかった。
調べてみると、表題作『恩讐の彼方に』がそうだろう、ということなので、手に取った。
短編集なので、いくつか収録されているけれど、中でもやっぱり表題作の2編は秀逸。
『恩讐の彼方に』は、仇討ちの愚かさを描いた作品。
どんなに悪事を重ねても、死をもって償うことだけが償いではない、と思い知らされる。
『藤十郎の恋』は、歌舞伎役者の偽りの恋の話。
自分には経験のない間男役を演じるために、たまたま居合わせた知人の奥さんに言い寄ってみる。
そうとは知らず、奥さんがその気になって……って話。
どちらも、凄く面白い。
ほかの収録作品も、するする読めて笑えるものも。
『極楽』なんて素晴らしい。
日々精進を重ねて極楽に行ったのに、毎日毎日変わることのない美しい風景を、ただ蓮華の台に座ったまま眺めるだけの生活。
痛みはない、飢餓も感じない、ただ退屈な毎日。
唯一、二度と行くことができない地獄のことを想像するときだけが退屈を紛らわしてくれるっていう逆説は、笑ってしまう。
菊池氏、いまさらわたしが言うまでもなく、素晴らしい作家だ。
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後悔のつのる短編集。とても読みやすく、内容も分かりやすい
自分というものをよく理解したいる登場人物が多い印象。もしくは合理化が上手いのか…菊池寛の外の作品にも手を伸ばしたくなった。
収録作品:『恩を返す話』『忠直卿行状記』『恩讐の彼方に』『藤十郎の恋』『ある恋の話』『極楽』『形』『蘭学事始』『入れ札』『俊寛』
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「恩讐の彼方に」が、ゲスト参加した読書会の課題図書だった。ずっと以前に読んだことはあるが、こんな機会でもないと菊池寛を読むことはなさそうだ。いわゆる「青の洞門」を穿つ物語だが、上田秋成の『春雨物語』中の「捨石丸」にほぼ同じ話が収録されている。また改心した高僧の物語としても同じ『春雨物語』の「樊 噲」がそうだ。おそらくは、そのあたりに出典が求められるだろう。また菊池寛の小説にはいずれもその傾向があるが、わかりやすく語るために説明がやや過剰になり、想像力の余韻に乏しくなってしまうという欠点を併せもってしまう。
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さっと目を走らしただけでも、言葉の流れの美しさを感じた。
そのリズムで紡がれる短編集の味わいといったら・・・。
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非常に読み易い文章、名文家ではないかな。
説明が多くて読者に想像の余地を残さない感はあるが、明瞭かつリズミカルさで補って余りある。
それにしても先代猿之助の会見での発言は、ここに繋がってるんですか、恥ずかしながら全く知りませんでしたわ。
こういうところにも当方の教養の無さを覚える次第。
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九州旅行に際して表題二作目めあてで手に取った本。古典的で難しい言葉遣いも多いけど、素人目にも洗練を感じさせる文章でおもしろく読めた。ひとの感慨について、オリジナルでたくさんの表現を持っているのだなぁ。
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菊池寛氏初期の佳作集。氏の作品は初めて読んだが、どれも非常に面白く人を勇気付ける感じを受けた。
人生どこかに救いはあるといった人間に対する優しさを感じた作品。
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江戸中期~後期を舞台とした作品を纏めた短編集。
表題の作品である前者はそこまでピンと来なかったが、後者の「恩讐の彼方に」はかなり惹きつけられた。冒頭の設定を読んだだけで、あ。これこの後こうなるな。と予想はつき、読み進むにつれて「火の鳥」の鳳凰編らしさを感じたが、それでも既視感が拭えなかった。洞窟を掘り進める後半に当たりようやく思い付いたのが映画「エル・ポト」に似ている!!だったが、まさか同映画の元ネタの作品だったとは思わなかった。
作者は、人間の心情描写が上手いと思う。
それも、人間の狡さや、その狡さを相手に見せない様にする虚栄心だったり、自分を騙す心を上手く描いている。
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菊池寛の作品が描く世界は結構悲惨なものが多い。けれど読後あまり暗い気分にならない。フィクションとして安心して読めるからかな。そして純粋に面白い。
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短編揃いながら抜群のストーリーテラーのベスト盤。文豪という名声にビビッて手を出さないのはもったいない存在。
殿様が故の心の疎外感をあぶり出した忠直卿行状記・ドリアングレイの肖像をモチーフにしたある恋の話・芸事を極めるために人情を切り捨てた藤十郎の恋、地獄の火焔は天国の退屈をも凌ぐものであることを諭させる極楽・見た目が人にとっていかに大事かを示す形・杉田玄白と前野良沢の諍いをとりあげた蘭学事始・小物の自尊心の滑稽ぶりをあぶり出した入り札・巷語られる史実よりも救いある俊寛、そして、何よりも極悪人の一生をかけての改心に感動を抑えきれない恩讐の彼方に。
どれもこれも抜群に面白いです。注釈が多いですが知ってる用語は注釈を読まないほうがスラスラ楽しめるでしょう。
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【リアリティーショウ】
世にある、人の惚れた腫れたをネタにするリアリティーショウというのが好きではない。どちらかというとお金を払って芸事を楽しむということには積極的なの方だと自覚しているけど、地上波でセミプロ同士がじゃれ合ってる様子を楽しむおおらかさは僕には無い。
それほどまでにシナリオ通りか、そこを踏み外した本気なのかのせめぎ合いを楽しみたいのなら菊池寛の「藤十郎の恋」を読めばいい。
青空文庫にもあって無料で手に入るし、20分くらいで読み終わる。
これを読めば、芸事に人のリアルな気持ちを持ち込むことの危うさと、もしそれをやるとするならばどれだけの覚悟がいるかが分かる。決して愉快な気持ちになんかはならない。
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「大正から昭和の初めに当って、菊池氏の作品ほど、大衆の思想的、文化的啓蒙に貢献した作品は少ないと、いってもよい」(解説より)。なるほど、短編の中に教訓めいた展開が詰め込まれているように感じられたのは、意図的なようだ。歴史を題材としながらも創作の部分がかなり大きく、現代よりもよほど自由度が高い。