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恋愛の美しい部分だけを切り取ったような短編集。
恋愛における「嘘」が軸になり、どれも切ない余韻を残す作品となっています。
自分のためであれ、相手のためであれ、恋愛を取り巻く嘘はどれも哀しすぎる。
「恋文」
登場人物の誰もが少しずつ欠落した部分を持っていてそのちょっとずつの見栄とか同情とか強がりとか中途半端な優しさとかが小さな嘘となって、最終的にどうしようもなく切ない気持ちにさせてくれる作品。
「紅き唇」
いつもいつも他人を優先にしてきたおばあちゃんの最初で最後のワガママの叶え方が、なんともいとおしい。パチンコの景品を自分へのプレゼントにするおばあちゃんのいじらしさ。
「十三年目の子守唄」
これだけ妙にミステリー色が強い。
テーマも恋愛ではなく父子。
「ピエロ」
優しすぎる旦那を試すように裏切ってしまうなんて哀しすぎる。「失敗をもっと大きな失敗で庇う旦那」という設定が最後に生きるあたり、さすが連城さんだと思う。
「私の叔父さん」
こんなかっこいい叔父さんいたら好きになるのは当然。でも、お互いに選ばなくてよかったんだと思う。
好きになるひとと、結婚するひとは別って話をカメラのレンズを通して描くところが巧い。
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『私の叔父さん』が一番好き。
「大人ってのは、嘘をつけることだ」
「本当のことでも言ってはいけないことなら口に出さない人のことだ」
「十九年前、俺も夕季子も真実の気持ちを全部嘘にしたのなら、今この嘘を全部真実にしてやる」
5枚の写真が語った言葉を知った瞬間は震えた。
解説で、この本はミステリーだと言っていたが、確かに、ミステリーだと思う。
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ところどころ・・・各ページに1か所ぐらい、手を止めてしまう描写があり、数ページに1回、本を閉じたくなる。
いつまでたっても私なんておこちゃま。そんな気がした。
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表題作・恋文・私の叔父さんを含む5編の短編集。
個人的に「紅き唇」と「私の叔父さん」が好き。
六十四になるまで働き続けたタヅの死んだ娘婿を借りた1年間だけの結婚生活を描いた「紅き唇」。
姪から叔父へ5枚の写真に遺されたメッセージが印象的な
「私の叔父さん」。
どの作品も自己犠牲の上に成り立つ嘘が印象的。
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年下の夫に寛大すぎる妻とわがままを突き通す夫、一見なんとも後味が悪い関係性だけれど、それを覆す究極の愛が描かれている。難しい、実に難しい判断だけれど妻はよくやった。そして最後の夫への言葉。受け止めろよ夫。2話目、亡くなった妻の母、義母とある男の物語。この話が一番好きだ。集まってみれば全員他人である登場人物が労り合って、気遣い合って人生を歩もうとしている。義母の奥ゆかしい去り方。そして男の新しい妻になろうとしている女のさりげない優しさ。みんなが思いやりを持ち寄れば家庭は築ける。3人笑い合っている絵が浮かぶ。
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結構読んでいない作家作品があり、連城さんの著書は初めて読みました。「恋文」は直木賞受賞作品で、「恋文・私の叔父さん」と改題されています。
さて物語は。、男一人・女二人の三角関係になっているのですが、不思議と世間一般に連想される愛憎劇とはならないのです。
どういうことか?要はダメ男を愛した女二人が・・・。
それにしても母性という感情は不思議なものですね。恋愛ミステリーかな?氏は上梓に至るまで、意識して書いていたのでしょうか? おもしろい!
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内容(「BOOK」データベースより)
マニキュアで描いた花吹雪を窓ガラスに残し、部屋を出ていった歳下の夫。それをきっかけに、しっかり者の妻に、初めて心を許せる女友達が出来たが(「恋文」)。二十一の若さで死んだ、姉の娘。幼い子供を抱いた五枚の写真に遺された、姪から叔父へのメッセージとは(「私の叔父さん」)。都会の片隅に暮す、大人の男女の様々な“愛のかたち”を描く五篇。直木賞受賞。
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とにかく文章が美しい。気障な表現や難しい言葉を使っているわけではないのに、なんでこんなにも心に響くのだろう。極限まで美しいものを見たとき、人は言葉をなくすというけれど、それにプラス涙も出ることをこの小説を読んで知った。
今世では経験することができない、風情のある男女の話。
意地っ張りで不器用だけど、とても愛おしい。
5作品すべて好きだけど、私の叔父さんは号泣した。
永遠のような時間をありがとうございました。
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今まで読んだ著者の作品には、『恋文』に出てくるような女を振り回す身勝手な男ばかり出てきてたけど、なぜか憎めない。その身勝手を許して受け入れてしまう気持ちがわかってしまう。
『紅き唇』のタヅさんの想いが切ない。
『私の叔父さん』が一番好きかな。
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設定の妙と人間の心の襞を絶妙な言葉で紡いだ冒頭の「恋文」に一気に引きずり込まれたが、5篇の中でのベストは何と言っても「私の叔父さん」です。恋文の時もでしたが、最後のどんでん返しとも言うべき展開、5枚の写真に秘められたメッセージには胸が熱くなりました。
若い頃はただ純粋に好きと言える恋愛が、歳を重ねて再燃する恋愛には深い事情が存在し、そんな感情の二人が成就することもあるかもしれません。
そういえば5篇のうち3篇は年の差恋愛ですね。自分には少しときめくものがあります。
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大事な人を思いやって尊重するために自分の本心と折り合いをつけてカッコつける人たちが出てくる短編集。令和の今となってはそのカッコつける感じはキザで古くさくてカッコ悪い気もするけど、そのカッコ悪くて不器用な感じが一周回ってカッコよくも思える。
自分はどちらかと言うと大事な人にこそ自分の本心をぶつけて、それに対する反応を踏まえて落とし所を探ったりどっちかに判断したりする。自分が楽しくないと人を楽しくさせることはできない みたいな思考回路だ。そして大事な人にもそんなように遠慮なく振る舞ってほしいと日頃から思ってる。でもふと冷静に自省としては、相手がどうしたいかを考えることはそんなにないし深くもない。
不思議なのは、20年くらい前にこの恋文をドラマで見てけっこう感動し、その後原作も読んでときめいた記憶があるんだけど、今回また読んでそういうときめく気持ちはなかった。昔と今とで考え方が変わっているのかもしれない。時代のせいか?
だからなんだというものでもないし自分を改めるつもりもほぼないけど、読み終わってそんなことを考えた一冊でした。
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愛というのはその対象を選ばす、何に対しても惜しみなく注がれるものだと思っている。飼っている猫や育てている植物、勿論本にだって。
でも恋は違う。
一般的には、両親や兄弟、子どもに対して抱く感情ではない。そして大抵は一対一のものであり、自分と同じ気持ちでいることを相手に求めてしまうし、始まりがあり終わりがあるものなんじゃないかと思う。
『恋文』に出てくる郷子と将一は夫婦であり、優という小学生の子供がいる。将一は郷子より一つ歳下で教員をしているが、ある時突然「昔の恋人が不治の病にかかり残り少ない命なので、せめて残された時間を共に過ごしてあげたい」と家を出て行ってしまう。
恋人の名は江津子といい、漢字は違うもののわたしと同じ名前だ。郷子は将一の居場所を突き止め、話をする。そして彼が江津子の最期を看取ることを認めてしまうのだ。そして更に将一の従姉妹と偽り、定期的に江津子を訪ね、話し相手になってやる。
郷子のこの行動を、勤め先の編集長は健気だけど見栄っ張りだと言った。わたしもそう思う。でももしわたしが彼女の立場なら、おそらく同じことをしただろう。周りの目を気にして、自分自身に同情しないよう、傷に塩を擦り込んで早くその痛みが気にならなくなるように。
離れて暮らすようになり、郷子は初めて将一を夫としてではなく一人の男性として意識するようになった。もともと最初から、夫婦愛と家族愛で成り立っていた関係だった将一に恋をしたのだ。でもその恋仇の江津子は、彼女にとって唯一心を許してなんでも話し合える親友のようになっていた。ただひとつ、この苦しい恋心を以外は。
さて、この複雑な三角関係はどのような結末を迎えるのか。そしてそれがまた一対一に戻ったとき、二人はどんな決断をするのか。
郷子が最後に流した「それまで忘れていた涙」の忘れていたものはなんだったのか。彼女の心情に思いを馳せれば、この物語の余韻も更に深くなり、美しくて儚い数々の情景と共に、しみじみと心に染み入るものになる。
それ以外の作品ももちろん『恋文』に負けず劣らず素晴らしいものだった。特に女のいじらしくも哀しい想いの描き方は秀逸だ。作中に引用される詩のひとつひとつも心に強く残った。
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<感想>
初・連城作品。
評判の良かった短編集から読んでみた。
もともとはミステリー作家だったとのこと。本短編集はヒューマンドラマがテーマのようだが、ミステリー的などんでん返しもあり、作家の力量の高さを感じる。
ミステリー要素と「切なさ」を絡めるのが本当に上手い。
ただ、女性の描き方が昭和感を感じさせる。令和の感覚だとヤバいおじさんの恋愛小説と感じる人もいるかもしれんない。
●恋文
別れた女の最後を見取りたいと言い残して消えた夫。妻が最後に送ったものは…。
●赤き唇
死んだ妻の母と暮らす主人公。新し恋人ができるが義母の辛辣な態度で距離ができてしまう。死んだ娘のことは忘れて早く新しい相手を見つけなさいと言うのだが…。
●十三年目の子守歌
いい歳になった母が自分より若い男と再婚した。離婚して実家に戻っていた主人公は新しい継父との付き合い方が分からない。母が知人から引き取った血のつながらない弟はすっかり懐いている。主人公も次第に心を通わせるようになるが…。
●ピエロ
何をしても怒らない夫。妻は夫に嘘をつき高校の頃の同級生に会いに行く。相手は約束の場所に現れなかったが、睡魔に襲われ一泊してしまう。帰宅した朝、夫に浮気したと嘘をつくが逆に夫から意外に言葉が…。
●私の叔父さん
姉の孫が妊娠した。その父は主人公だと言うのだ。トラブルに巻き込まれるうちに、主人公は死んだ姪のことを思い出す。残された5枚の写真に秘められた思いとは…。
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知り合いにおすすめされて読みました。『恋文』は感情の表現が素晴らしい。特に好きなシーンは、鉄幹作の小説のことを江津子と話合っているときの描写です。
「郷子の胸が冷たい一滴を覚えた時である。」
「今まで胸の奥に隠していた感情が一挙に爆発し、流れ出した気がしたのだった。」
ラストで離婚届をラブレターと表現するシーンも好きでした。全然共感はできないけど、何故か泣けます。
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久しぶりに文学の世界に入り込んだ気がした。
男と女 こんなに深い関係があるのか??
ただ溺れるのではなく、精神的に。
5編の短編集。
「恋文」、「紅き唇」、「十三年目の子守唄」、「ピエロ」、「私の叔父さん」
どれもよかった。
一番よかったのは、、、選べない、、、
ブクログさんのおすすめだったのだけれど、本当にこの本に出会えてよかったと思いました。。
これは手元に置いておいて、何度も読み返しますね。