紙の本
「現実は小説より奇なり」を、小説にした感じ
2012/10/05 10:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
密室ミステリーや鉄道ミステリーみたいに、「殺人」その物は物語の一つのエレメントでしかないような物もそれはそれで面白い。パズルやロジックを楽しむように読めて、フルに頭を回転させて考えて、最後に大ドンデン!なんて感じは気持ちいい。
しかし実際に起きる刃傷事件なんかではパズルもロジックもほとんど関係なく、いわんや密室なんて事もまぁあり得ない。その要因の大部分は人間の感情によって起こるワケで、その人間の感情こそ、ミステリーなんだと思う。
人が人を思う気持ち。強く思う気持ち。それこそ自分を押し殺してでも思う気持ちにこそ、ミステリーが生まれるのかもしれない。それはもちろんプラスの思いばかりじゃない、とても暗くネガティブな物もある。だからこそ、日常では想像すらできないような事件が起きる。でもだからこそ、どこか、共感できてしまう。そんな人間の強い愛憎を描いた、5編の短編が納められています。特に最後の「私の叔父さん」は色々な意味で染みる。少女の、口には出来ない、「叔父さん」への、人生をかけての強い思い。そして因果は巡り、母娘が同じ道を辿っていく・・・。
エログロもなく、しかし人間の感情の強さ、業や因果といった物を感じさせてくれ、そして何とも言えない、ノスタルジックとも寂寥感とも言えない物を心に残してくれる良作。これからの季節に、とてもぴったりの作品でオススメです。
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ごく普通の恋愛小説。どこにでもありそうなお話。でも、それを素敵に、表情豊かに言葉にできるって、作家ってすごいです。うらやましい。
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ちょっといい話の連続なんだけど、
どこにでもありそうなんだけど、
読み終わったあと、ふっと心に沁みるものがあって、
それは結局、とても良質な話を読んだことなんだろうな、と思った。
そんな感じ。
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これは最近映画になったとかいうことで、なんとなく買ってみた一冊。
連城三紀彦(れんじょうみきひこ) 余談ながら作家らしいカッコイイ名前である。
常人の感覚からは離れた様々な愛について書いてある。小説というよりもシナリオ、という感じがした。映像にしたら別の映え方をするんじゃないか、というものばかり。女の人からしたら「小説中の女が都合よく扱われている」という気持ちにさせられることもあるのかもしれない。
地の文と会話が独特の混ざり方をするので、何となく慣れず読みにくいと感じたこともあった。これについては著者がミステリー作家である、というのを知ってなんとなく腑に落ちた感がある。
本当にその人のことを好き、ってのは果たしてどういうことなのかとぼんやりと考えさせられる。
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この作者のどの話も映像化しやすそう。(実際いくつか映画化されてる)
男性目線(しかも年配)で女を描くとこんなふうになるのか〜。
(良い意味でね)
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良かった。と同時に、上手い。と感じた。
あとがきに書いてあったのだけど、「素人の名優」たちの一瞬の名場面からあれだけの話を紡げるのがすごい。
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この小説を書いているのは男なのだ。恋文なんてとても勝手な話だけど十分にありえると思ってしまう私は、男的な恋愛なのかしら??
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本自体は短編集で最初の「恋文」から始まり、「私の叔父さん」で締められています。私は短編集だと読み終わるころには最初の方の話がぼんやりしてしまうのですが、私の叔父さんでは写真という形でラブレターが残されていて、初めの恋文を思い出させてくれました。一つ一つの話も短編とは思えないくらい深い味わいがあり楽しめました。
愛ってなんなんだろーなー
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自己犠牲が通底している純愛短編集。『紅き唇』『13年目の子守唄』が印象深かった。直木賞受賞の表題作は今ひとつチューニングが合わなかった。チューニングが合わないと、タバコを海岸に棄てたりするそんな些末なシーンですら気に障ってしまう。おもしろいものだ。
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恋愛小説をあまり読まない私には、連城さんは縁がない作家さんだと思っていました。表題作の『恋文』を読んだら「やられたー!まずいなぁ」と思いました。いいじゃないですか、とっても。女心も男心も共感せずにはいられません。いや、本当はダメな男は好きではありません(苦笑)が、ヒロインの女性にしてみれば、そんなところもほっとけなくて愛しいのではないだろうかと思うわけです。
『紅き唇』も好きです。
この短編集に登場するのはどちらかというとダメ男さんが多いですが、女性は気が強いタイプが多いですね(笑)
物語が美しいというか情緒的というか、連城さんの恋愛小説は絶品ですね。(この本しか読んでいないですけど^^; ) 本当に困るのです。とっても素敵な文章で間違いなく好みなのですが、こうオンナオンナしているのは読んでいて気恥ずかしいというか自分の痛さに触れるというか、居心地が悪いというか…。雰囲気は好きだけど、ストーリーは好きじゃないというのが今の私の心境です^^;
でも好きじゃないけど、きっと連城氏の作品を読んでしまうのだろうなぁと(笑)
それだけ魅力的でした♪
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直木賞を受賞した短編集です。全5編で、どの作品も男と女の人生が描かれています。有名なのは、表題作『恋文』と『私の叔父さん』でしょうか。
私は恋愛に関する小説というものが苦手で、これまであまり読んでいません。なぜ苦手なのか考えてみると、なんとなく馬鹿馬鹿しいというか、そのような印象を受けるのです。
しかし今回の作品達はどれも興味深く読むことができました。それはきっとミステリーだからだと思います。特に好きなのは『恋文』と『ピエロ』です。『恋文』は「愛とは相手に一番やりたいことをやらせる勇気」という言葉とラブレターが感動でした。『ピエロ』は男性の生き方が素敵でした。
ぜひ読んでみてください。
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恋愛の美しい部分だけを切り取ったような短編集。
恋愛における「嘘」が軸になり、どれも切ない余韻を残す作品となっています。
自分のためであれ、相手のためであれ、恋愛を取り巻く嘘はどれも哀しすぎる。
「恋文」
登場人物の誰もが少しずつ欠落した部分を持っていてそのちょっとずつの見栄とか同情とか強がりとか中途半端な優しさとかが小さな嘘となって、最終的にどうしようもなく切ない気持ちにさせてくれる作品。
「紅き唇」
いつもいつも他人を優先にしてきたおばあちゃんの最初で最後のワガママの叶え方が、なんともいとおしい。パチンコの景品を自分へのプレゼントにするおばあちゃんのいじらしさ。
「十三年目の子守唄」
これだけ妙にミステリー色が強い。
テーマも恋愛ではなく父子。
「ピエロ」
優しすぎる旦那を試すように裏切ってしまうなんて哀しすぎる。「失敗をもっと大きな失敗で庇う旦那」という設定が最後に生きるあたり、さすが連城さんだと思う。
「私の叔父さん」
こんなかっこいい叔父さんいたら好きになるのは当然。でも、お互いに選ばなくてよかったんだと思う。
好きになるひとと、結婚するひとは別って話をカメラのレンズを通して描くところが巧い。
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『私の叔父さん』が一番好き。
「大人ってのは、嘘をつけることだ」
「本当のことでも言ってはいけないことなら口に出さない人のことだ」
「十九年前、俺も夕季子も真実の気持ちを全部嘘にしたのなら、今この嘘を全部真実にしてやる」
5枚の写真が語った言葉を知った瞬間は震えた。
解説で、この本はミステリーだと言っていたが、確かに、ミステリーだと思う。
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ところどころ・・・各ページに1か所ぐらい、手を止めてしまう描写があり、数ページに1回、本を閉じたくなる。
いつまでたっても私なんておこちゃま。そんな気がした。
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表題作・恋文・私の叔父さんを含む5編の短編集。
個人的に「紅き唇」と「私の叔父さん」が好き。
六十四になるまで働き続けたタヅの死んだ娘婿を借りた1年間だけの結婚生活を描いた「紅き唇」。
姪から叔父へ5枚の写真に遺されたメッセージが印象的な
「私の叔父さん」。
どの作品も自己犠牲の上に成り立つ嘘が印象的。