紙の本
昭和の色濃い山岳小説
2008/01/28 23:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
実在の登山家・芳野満彦をモデルにした山岳小説。
主人公・竹井岳彦は日本人初のマッターホルン北壁登攀に成功する。物語はこの華々しい記録をクライマックスとするが、始まりは太平洋戦争中の少年時代からである。上下二巻、全四章からなる本編は、第一章で岳彦の登山への目覚めを描く。二章では31年正月に北岳バットレスを成功させ、山の世界で名が知られるようになるまでを、三章では恭子との出会いと結婚までを、四章ではアイガー北壁挑戦の失敗とヨーロッパ三大北壁の一つ、マッターホルン北壁制覇までを描く。
山岳小説であるが、一章「傷ついた戦後派」では山よりも戦中・戦後の市民の生活や、空襲の様子などが描かれ、私のような戦争を知らない世代には興味深い。戦後の混乱や八ヶ岳での怪我が余計に岳彦を山へ向かわせる背景となったことは、なんとなく理解できた。当時は大学受験など目標を持てる者はよかったが、彼のように山にしか気持ちを向けられない者も多かったという。そういう人が戦後、数多くの記録的な登山をやったりすることになる。
足の一部を凍傷で失った岳彦の登山は凄まじい。登山靴の中を血でグショグショにして困難な岩壁に挑むのである。最期のマッターホルン北壁登攀も鬼気迫るものがある。読む方も緊張の連続。しかし登頂後、栄光の岩壁を眺めながらも、彼を虚しくしたものは何であったのだろう。達成感もあるが、多くの人々に迷惑もかけた。屈折した青春時代もあった。ハンディのある足で山に登るために人一倍の努力もした。全てはこの日のためにあったのだと実感した瞬間、全ての重荷から解放されたという虚脱感のような感覚だったのか?ケジメがついたとも思えたのだろう。
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日本人で初めてヨーロッパアルプスの3大北壁の一つを制覇した実在の人物をモデルにた物語
友人と足の半分を失った若き日の悲しみから、いかにして山への思いをつなぎ続けたかが語られる
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登山中に凍傷で両手足の大半を失った主人公が、山への思いをいっそう強め壮絶な執念で岩壁に張り付く。上巻
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★は…4.5.
限りなく5に近い。
大好きな新田次郎の作品。
珍しくハッピーエンドだし、読後感がよい。
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主人公の人の好さにちょっとイライラするかもw登山の描写も詳しく、読者も山に惹かれてくる。下巻の展開に期待。
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竹井岳彦という男の生涯。
岳彦は、山で足に凍傷を患い、両足の先を失います。
でも、岳彦は山を諦めませんでした。
失った足をゆっくりゆっくり前に運び山を続けるうちに
足は蘇り始めたのです。
『「おれの足が蘇ったぞ」岳彦は、その喜びを力いっぱいの声で叫び続けた』
これは登攀中に、
感覚がないはずの義足に倦怠感を覚え、手でそこをさすったら治った時です。
本物の自分の足には普通のことだけれども、
義足が本当の足になったという瞬間と。
すごく感動しました。
また、岳彦とザイルを組んだ人は3人とも(岳彦の責任というわけではなく)、
事故にあい山で命を失ってしまいます。
岳彦は心の中で責任を感じていますが、
そののち、
その命を落とした仲間は岳彦が遭難にあいかけたとき、
不思議な体験として岳彦の元へ戻ってきて助けてくれるのです。
岳彦と山を結び付ける何か。
これを、全編通して心の中にぐいぐいとせまってきます。
本当にすばらしい。
常に、3行先が気になる。
早く読みたい。
早く知りたい。
こんな気持ちであっという間に読んでしまいました。
最後の部分もすごく味わい深い。
決して単純な終わり方をせず、何か影を落としています。
単純な趣味ではない、自分に取り憑いた山というものを
マッターホルン成功した岳彦は、どういう気持ちで見つめていたのか。
彼が義足という障害を乗越えた先にみたものは、達成感と何であったのか。
余韻にひたってしまう作品です。
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2010/9に読了。
ずっと読んでみたいとお思いながら、古本で安く購入したあとも、なかなかすぐには読まなかった。このころは興味の幅が広がったため、読みたい本がたくさんあった。
なかなか迫力ある半生で、途中、三浦雄一郎と吉尾弘がモデルとなった脇役が出てきて面白い。これも半分は史実に基づいていて、三浦雄一郎と接点があったということも面白い。
最初から最後まで楽しめた。
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詐欺にひっかかり続ける人を見るのは辛い、というのが読後の率直な感想。でも、これまで読んだ新田次郎作品の中で一番山の臨場感があって夢中になって読めた。
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山屋、と呼ばれる人がいる。
主人公、岳彦もその一人である。
18の時に遭難し、足の大半を失う。
それでも、山への情熱を捨てきれず、リハビリを始めるのだが・・・
岳彦の同級生がこの上ない小物っぷりを見せてくれる。
だからこそ、岳彦ががんばれるわけなのだが。
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足の指、踵を失いながらも山に生き、数々の初登攀を成し遂げてきた男の話。
日本中の期待を背負ってアイガー北壁に挑むも、天候に恵まれず断念するのだが、その判断力を賞賛していた点が印象的。
命懸けの登攀は決してかっこよくはない、それは今後、私の山行を支えてくれる鉄則となるだろう。
謙虚であるということもだ。
モデルの芳野満彦氏の婿入り先が、地元のモリ商会だったことに驚き。
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若くして凍傷により両足の指先を全て失いながらも、果敢にクライミングに挑んでいく岳彦の人生を描いた、実在の人物をモデルにした傑作。
伯爵や元帥などの涸沢貴族と呼ばれるユニークな山仲間も登場します。
クライマックスのマッターホルン北壁を血にまみれた「足のない足」とともに一歩一歩登っていく姿は壮絶です。
自分の力を極限まで使い、様々な困難にひとつずつ打ち勝っていく姿に感動します。
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ハッピーエンドの感動作。
アイガー北壁に失敗し、翌年マッターホルン北壁に成功する主人公。そして彼を取り巻く魅力的なパートナーたち。
特にザイルを組んだパートナーとの呼吸や日本に残した妻への思いがラストで一気に&爆発的に表現されクライマックスを迎える。
実在の人物が
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「栄光の岸壁」の主人公・竹井岳彦は10代で遭難し、凍傷により両足先の大半と片足のかかとを失うのですが、不屈の精神力でリハビリを行い、未登攀の岩壁を次々に征服します。
「足のない足」で「登山」だけでなく、岸壁の「登攀」をするのですからすごいです。
そんな主人公に現在故障中で走れない私が自分を重ね合わせていることは言うまでもありませんw
主人公のモデルが実在の人物であることも、私の興味を大きくします。
主人公・竹井岳彦と私では身体的ハンデの大きさ、それを克服する心の強さ、どちらも天と地の差ではありますが・・・。
「孤高の人」の主人公・加藤文太郎、「栄光の岸壁」の竹井岳彦、どちらもすさまじい「山バカ」なのですが、どちらもとても美しい女性と幸せな結婚をします。子どもにも恵まれます。
山岳小説って主人公が亡くなってしまうパターンが多いって聞いていて、確かに「孤高の人」の加藤文太郎は妻と幼い子どもを残して山で死んでしまいます。
なので、竹井岳彦がそのようなことにならないか、下巻を読み始めてから物語の最後の山行から無事に生還するか気になって先に結末を確認してしまいましたw
はたして結末は・・・是非読んで確認してくださいw
山岳小説を何冊も読んで、山には行きたくて仕方がありませんか、小説の主人公のように厳冬期の山には恐ろしくて到底行きたいという気持ちにならないですね~。もう小説の中だけで十分です。
いずれは夏山でいいので八ヶ岳あたりの山とか登ってみたいです。
まずは故障が直ったら、いつも走って登ってた猿投山を歩いて登ってみるかな・・・。
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クライミングの描写がいまいち。表題から想像できるとおり、ハッピーエンドなのは個人的には好きです。登山好きな人にはおもしろいと思います。
昨日のテレビで登山の本を見て、昔読んだなと思い出して記載。
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他の人の山の本を読んだ後に新田さんのに戻ったら
やっぱりすごいなー、と感動。
よくわからないけど別に分からなくても山に魅了されている姿が
描けていればいい。それがすごく伝わるし
説明の仕方とかもやはりスマート。
主人公は相変わらずダメダメなかんじだけど
読んだら、なんかホームに戻って来たような感じでほっとした。