紙の本
本当の準大手ゼネコンが社員を使ってまじめにアニメ世界の建築物の製作を検討する。そのまじめっぷりが素晴らしい。
2012/04/21 10:50
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なかなか可愛らしいカバーの中身は、真面目かつ楽しい建設の話である。元は会社のWeb企画。建設業界を身近に感じて欲しい、わくわくすることを発信したいというのが発端だったらしい。
フィクションの中の建築物(ここでは「マジンガーZ」地下格納庫)を依頼されたという設定で、製作が真面目に検討されていく。マジンガーZを知っている世代にはそれだけでも十分面白いだろう。登場する社員のオタクっぽい発言も交えての会話形式の文章も楽しい。図面や見積もりなどは、紙の上で見るとさらに現実味が感じられる。
しかしそういう面白さだけでは終わらない。現実的な疑問や検討を真面目に進める経過を読むうち、土木建築にも詳しくなれる。原発事故での漏水対策に使われた「水ガラス」もダム建設などには良く使われることなども、改めて読んで話がつながってきた。「穴を掘って出た土はほぐされるので量が増す」なども、現場ではあたり前に重要な知識なのだろう。
本書にはさらに、重要な「既存データ」として、会社の実績が上手く組み込まれている。解説の言葉をいただけば「コロンブスの卵のような」会社紹介でもあるのである。
私事であるが、現在居住中のマンションで改築を検討したことがある。住民に説明はあるが、いきなり設計図や見積もりの内容を見ても、わからないことだらけであった。受注した会社自体、どう評価していいのやら。会社紹介にもこんなのがあったら喜んで読めるのに、と思った次第である。
出てきた「マジンガーZ」地下格納庫の見積もり額は72億円、工期6年5ヶ月。10年前のものなので見積もり期限はとうに過ぎているだろうし、技術も進歩したので数値は今ではかなり小さくなったのではないだろうか。それにしても、こうして具体的に数字になると、ほんとにつくりたくなりそうである。問題は如何にして「秘密」に作業を進めるか、か・・・。
2005年36回星雲賞ノンフィクション部門受賞。実際に存在しないものを存在させるとしたら、のSFを建設する側から真面目に迫ったところはたしかに受賞にあたいする面白さであった。続編も出ている。スカイツリーも完成したことだし、建築も楽しく活気付いて欲しい。
紙の本
軽快にして重厚
2013/01/27 21:48
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投稿者:部屋住冷飯郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひところ空想科学読本が流行って、私もハマッて読んだものですが、本書も概ねその系統に属するといえます。ただし、今までの類書が個人の、それも基本的には評論家的な立場の人々によって書かれていたのに対して、本書の場合はそのものズバリのご商売にされている企業が取り組んでいるところが大いに違います。つまり単なる知見を有するという意味での専門家ではなく、知識と経験と実績を有する職人さん的な意味合いでの専門家が、しかも組織として書いている。それこそが、今までの類書にはない内容的な厚みを加えているのです。
とはいえ、それゆえに私はしばらく敬遠していたのです。実はウェブサイトでこの企画が掲載されていた時は、チラっと見ただけで「専門的で難しそう」と思ってそれで終わっていました。ところが今回本書を読んでみると、そんなことないんですね。非常に読みやすい。素人向けに書かれているし、素人でも読めるように充分工夫されている。建設の知識ゼロの自分でも、無理なく読み進めていけました。しかし内容は軽くなく、とても重厚。まさに、軽快にして重厚。
本書ではマジンガーZの格納庫の設計見積をしているわけですが、読み終えての率直な感想としては、今はもう未来なんだなということです。テレビで見てたアレが、たしかに建設費用はメチャ高いてゃいえ、現実に建設可能というすごさ。小さいころい思い描いていたほど21世紀は華やかじゃななあ・・・なんて思っていたけれど、自分の気づかない知らないところでこれほど世界が進歩していたとは思いませんでした。
あらためて、科学技術ってすごい。そして建設業ってカッコいい!
・・・なんて、完全に前田建設の思うツボにはまってしまった自分がいます。
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架空を建設
2020/05/28 17:57
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
アニメに出てくる建造物を綿密にリサーチして、工費から納期、見積りまで制作してしまうこだわりようにビックリです。自由なアイデアと想像力が、会社と人を育て上げていく秘訣なのかもしれません。
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120323 購入 読了
想像の内容を実際の知識、技術を盛り込んで検討する。SFだわぁ。
真面目に馬鹿する企画って素敵よね。
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大手ゼネコン前田建設株式会社が、ゼネコンについてのあまり良くないイメージの払拭と、具体的にどんな仕事をしているのかを一般の方々に楽しく知ってもらうために前代未聞の「ファンタジー営業部」を始める。
アニメでおなじみの建造物を真剣に見積もるとどうなるのか?
1つめの建造物はマジンガーZの地下格納庫。
メンバーはマジンガーZのアニメや設定集などを何度も見て検討し、工事の方法、建設地、設計、低コスト化等々を考え抜いた末、最終見積書を作成する。
最初の方で出てくる営業情報速報を見ただけで先が楽しみになってくる。
個人的にこのような内容に関する職場にいた経験があったので、内容も説明も専門用語もよく分かった。
知らない人が読んでもとても丁寧に解説してあり、どうやって建造物の工事が進むのかが分かって面白いと思う。建設機械図鑑や書類関連の中身だけでも興味深いのではないだろうか。
最終的に出た見積書はなんとなく想像していたよりも工費も工期も少なくて驚いた。工費72億円、工期6年5カ月。
「マジンガーZが前田建設株式会社に配備されたら」というコラムなどもあり、楽しく読めた一冊だった。
一緒に銀河鉄道999編も購入したので次も楽しみ。
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ほんとに感動した!企業ブランディングとしても目指すべき姿だと思う。ユーモアがあって真摯で真剣で、でも伝えたいことはキッチリ伝わる。こんなんやりたい!
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大きな会社のいい大人たちが、いったい何をやってるのか!と笑えてしまうが、実例を取り入れながらの真剣な検討・考察をすることで、本当に実現を出来てしまいそうな事を感じてしまいます。
しかし、地球上に存在しない材質が出ると、支給品になってしまうところが、同等業種に居るものとして、クスッと笑ってしまいます。
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現在(実際は10年前だけど)の建設業界の技術というものがおぼろげながらわかる。
専門家がこのような空想の仕事に対して、真剣にチャレンジしているところが非常に魅了を感じた。ただ、言葉が難しくて、門外漢からすると言葉だけを追っていくだけで精一杯でうまく面白さが伝わらなかったところが残念だった。
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実在のゼネコン、前田建設による、アニメに出てくる設備を実際に施工したらどんな見積になるでしょう?という本。「空想科学読本」の類を読んだことがないのだが、ノリは似ているのかも? 実業務に即しているので、いろんな業種の仕事ぶりをわかりやすく知りたい自分にはありがたい本。
これは第1弾ということで「マジンガーZ」の地下格納庫の見積シミュレーション。マジンガーZを全く知らないのでその点であんまりニヤニヤするところがないのは残念なのだが。
必要要件はいろいろあるけれど、「マジーン、ゴーッ(掛け声?)から10秒以内で地上へ持ち上げる」といった無理難題に対していちいち真面目に検証していくのが面白い。現実的(技術的にも予算的にも)なアイデアが次々と出てくるところなど、技術屋さんのすごさを感じる。かっこいいね。
ふーんと思ったところは、土を掘るだけでなくて、その堀った土(「ズリ」と呼ぶらしい)をどこかへ持っていくところもきっちり予算と時間を見積もっておかないといけないという点。情報システムでもデータの有効期限(このデータは何年保持します)のような、作るだけでなくてその廃棄の仕方を設計するけれど、少し似ているのかもな、と思った。
ちなみに前田建設さんの見積では費用72億円、工期6年5カ月でできるらしい。
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「ところで、さっきから思ってるんだけど、マジンガーZそのものは建設機械に使えないの?」
確かに…!
いや~面白い!しかし実際のアニメ制作の現場でもこんなに細かく格納庫の設定等考えてるのかすごく疑問!
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リアル建設会社が空想世界の建設物をマジに作る見積もりを。
マジンガーZ格納庫(光子力研究は除く)、あの懐かしいプール(じつは浄水場だそうです)の下から出て来るあれですよ。
開くプール、せりあがるマジンガーの台、
今作ったらどんな工法でどう作って、
期間は?お値段は?
本気で考えるから楽しいですね~。
建設の工法なんて知りませんがかいつまんで解説もあるんで、
なんとなくわかった程度で楽しめます。
72億であなたのお庭に、どうぞ。
続編の銀河鉄道999メガロポリスステーション発車高架橋一式編もどうぞ~!
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アニメに出てくる建築物を、現在の技術で本当に作れるものなのか。本物の建設会社が本気でシミュレーション!おもしろかったです。
各部署への試算発注だとか、なんなら社内だけでなく、関連会社にも。頼まれたほうも本気で考えてアイデア提案してくれたり、本気の遊びがすごくいいです。
他のシリーズも読んでみたい。
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日経ビジネスオンラインでこのコンテンツのことを知り、あまりにおもしろそうだったので即決で購入したのですが、実際に期待に違わぬおもしろさでした。
あのマジンガーZのプールしたの格納庫を、現代日本の工学技術で実際に作ることができるのか、できるとして、その工期と費用はどのくらいになるのかを、詳細な施工アイデアとCADの図面を用いて大まじめに(もちろん「厳密に」とはいくわけはありませんが)検討し、官庁営繕の入札に使われるような「見積もり」まで作るというのは、もう感動と言うしかありません。
10年前のコンテンツだそうですが、今までこれを知らなかったのは不覚としか言いようがない。早速、2冊目も注文しました。
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2012年刊行。先に第2弾「銀河鉄道999」の発着橋脚を読んで、本書と同じ感想を持ったが、大真面目に、しかも実現可能性を徹底的に追及してやっているところがいい。本書は、70年代ロボットアニメの金字塔「マジンガーZ」の発進シークエンスに欠かせない、汚水処理場からせり上がり発進する建築物を作るとしたら、というものである。SF関連の星雲賞を受賞したのもむべなるかな。
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恥ずかしながら、
映画の予告を見て知った次第です。
こんなに面白いものがあったのに、
全く知りませんでした。
昔、空想科学なんとかという本を
読みふけっていましたが、
真面目な会社が、
それをやるとは。