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ガルガンチュアとパンタグリュエル 5 第五の書 みんなのレビュー
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紙の本
もっと破壊と笑いを
2016/07/10 12:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
パンタグリュエルの一行は前作「第四の書」の結末の続きで、「聖なる酒壜」のお告げを受け取る旅に出たのだが、そこで出会う様々な島と奇妙な人々の物語だ。パニュルジェが結婚すべきかどうかという、実にしょうもないことについてのお告げであり、その時点で既にこの旅のナンセンスさが規定されてしまっている。それに船を仕立てて旅立つという王様の一行とは、まことにのんびりした連中ということになる。
こんな筋立ての話をユマニストの端くれたるラブレーが執筆する理由があるのかと言えば、それはもう前作の売れ行きがよかったからなのだろう。そしてそれがラブレーの死後に刊行されたとなると、当然別人による贋作と誰しも考える。実際に歴史上の評価もそうなっていたらしいが、ラブレー自身の未発表の草稿をまとめたものという説もあるらしく、それにしてもラブレーの完成品として認めるには、筋も新鮮味も薄い作品ではあるだろう。
大洋を幾日も進んで、様々な島の王国を彼らは訪問しつつ旅を続ける。それぞれの島々には、奇態な人々が住み、奇妙な社会を形成している。その奇態さは、「山海経」かアラビアンナイトかと思うような奇抜でファンタスティックなもので、しかし社会体制や人々の性向は、おそらく当時の頑迷なる勢力を風刺しているもののようだ。それらの例えや修辞の一つ一つが、過去のラブレーのシリーズ作品に繋がっていて、本作がラブレー風刺の集大成めいているのが、なんとも小賢しく、そこがこれが贋作であると言いたくなる理由だ。
どちらであれ、ラブレーの本領の一面が現れているのだろうが、やや理に勝ちすぎていて、パンタグリュエルの豪放さのままに暴れて騒いでめちゃめちゃになって、挙句に最後は「飲もうじゃないの!」で落ちる、いつもの破壊的なまでの神話性が薄れてしまっている。ラブレーは当時のスターだったのかもしれないが、破滅志向をも孕ませたファルスの文学は貴重であり、この系譜がもっと評価されてよいように思うのだった。
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