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冥土めぐり みんなのレビュー

147(2012上半期)芥川賞 受賞作品

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みんなのレビュー162件

みんなの評価3.3

評価内訳

162 件中 1 件~ 15 件を表示

電子書籍

捉えどころがない

2012/08/05 21:23

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぽから - この投稿者のレビュー一覧を見る

ストーリー、登場人物ともに捉えどころがないように感じた。薄暗く、浮き沈みのない淡々とした時間が只管流れていくような。60年代のフランス映画を観ているような気分。色で表わすなら薄い水色がかったグレー。

登場するのは、精神疾患を装って得た金で生活する母。カード地獄に陥って家族のマンションを売るはめになった弟。その2人の影響を受けて低空飛行の生活を鬱々と続けている主人公の女性。唯一幸せ?なのは脳の病を患って悩みを忘れた夫。その夫の車いすを押して、幼少時に訪れた時は高級ホテルだったという錆びれたホテルへと短期間の旅に出かける。そこに何かドラマが起こる訳でもなく、主人公の朧気な心象風景が淡々と描かれる。

こうした作品は非常に好き好きが分かれるところだと思う。退屈といえば退屈だけれど、意図的に読み手の感情を刺激しコントロールする小説よりはずっと好ましいようにも感じられる。特に大きな感動はないけれど、どこか心の底にゆっくりと澱が沈んでいくような気だるい魅力が流れており、そうした雰囲気が好きな人にはおすすめできる小説ではないかと思う。

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紙の本

冥界をさまよう魂を救済するものとは?

2012/09/30 15:34

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん  - この投稿者のレビュー一覧を見る

奈津子の夫・太一は結婚してまもなく脳を患い手術を受けた。奈津子は頭の働きが鈍麻し、四股が不自由になった夫を介助している。パートで貯めたお金を持って奈津子は一泊二日の小旅行に連れ出す。東京から新幹線で近い距離の観光地。一泊5000円の区の保養所。今でこそ安上りの宿泊施設だが、かつては高級リゾートホテルで、奈津子の母が幼い時分、祖父家族と贅沢な生活を送っていた頃の象徴である。奈津子は母の栄光のなれの果てを訪ねることで「あんな生活」と呼ぶ結婚前の過去と向き合ってみたかったのだ。「冥土めぐり」とは奈津子が旅行中の列車、保養所、美術館、海辺などで次々と想起する過去である。

贅沢な生活が一変したあとも奢侈、驕慢の真似事を続けたため、借金が膨れ自宅を売り払うまで追い詰められた母と弟である。二人は過去にしか生きられない亡者なのだ。奈津子にカネをたかり、精神をいたぶり、彼女を徹底的に食い尽した。タイトルの「冥土」とはこの境遇を指している。いっぽうで奈津子はこのサディスティックな家族を忌避するだけの強い意思はなかった。結婚してなお奈津子はこのしがらみから抜け出すことができないでいる。彼女もまた亡者の一人であったのだ。

思いもよらなかった転落。努力しても這い上がれない現実。救いを求めることもなくただ現状にもがいている。抽象的な言い方をすれば、どこにでもありうる情況ではないか。奈津子はどこにでも存在する人物なのだ。………と読み進むにつれこういう見え方がしてきたのです。

このどうしようもないやりきれなさが保養所に向かう新幹線での次の一文に表われている。
「太一の頭越しに新幹線の窓から見える山々、浅春ののどかな景色のそれぞれは、奈津子の心の静寂を乱す雑音そのものだ。奈津子はそこから逃れるように、深い追憶に浸った。」
常識からすれば煩わしさをまぎらす旅行のはずなのだが、のどかな景色を「心の静寂を乱す雑音そのもの」と受け止め、逃れるように深い追憶に向かうというのである。未来はない、未来につながる現在もこれほどまでに希薄なのだ。逃れるように向かう過去は亡者に食いつくされた冥界の日々。こんなみじめなことがあるのだろうか。

だが夫・太一との旅で何かが起こったのだ。
洗練された印象的な文体がその何かを語っている。
奈津子は過去が断ちきれそうだと思えるようになった。現実に足を置けるようになった。少しだけ前を向けるようになった。そしてまるで空気のようであった夫・太一という存在の質量にあらためて手ごたえを感じることになったのだ。これは「救済」というものなのだろう。

母と兄から屈辱的仕打ちを受けた太一はそれを我慢するのではない、もちろん反発するものではない。ただそれをそのまま受け止めるに過ぎない。一方で太一は人に好かれる。障害者になってからは特にそうなった。奈津子はこの太一を見る。
「人生でこんなにも理不尽に嫌われ、理不尽に愛されることがあるだろうか。少々の理不尽は誰にでもあるだろう。だけど、こんな理不尽を体験したまま、淡々と生きていられるものだろうか。」

わたしは全く脈絡なく遠藤周作の『沈黙』、そこに描かれるキリストあるいは神を思い起こしたのです。救済といっても奇蹟を起こすことはない神です。拝んでも御利益を期待できない神です。ただ弱いものにそっと寄り添ってくださる神です。

閑話休題。

太一。それは神でもなく仏でもないのだが、祈りというべきものかもしれない。そしてこれは信仰の起源なのかもしれない。

この作品は宗教的清浄さの余韻を残して爽やかなラストがあった。

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紙の本

作家の独特の才能を感じさせる一冊

2013/02/14 22:47

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る

先ごろ、史上最高齢での受賞が話題になった芥川賞が発表された。
鹿島田真希この本も、昨年2012年の芥川受賞作である表題作、そして「99の接吻」の2編を収めたものである。
だがわずか一年なのに、もはやこの本の影は薄い。
受賞時には当然話題にもなったし、新聞などの書評でも取り上げられたが、
その後あまり目立たない印象で、
たとえば昨年末の毎日新聞の「今年の三冊」などでは、
小説で取り上げられていたのは『東京プリズン』『火山のふもとで』などで、
この作品は取り上げられなかったと思う。
地味なのである。
内容的にもこれまた一般受けする作品でもあるまい。

しかしもちろん魅力はあって、個人的には楽しんで読んだ。
題材としては、脳に障がいのある夫のいる女性奈津子の話で、
血のつながった母や弟からもある種の圧力を受けて、相当に辛い人生だ。
これが実話の雑誌記事や、あるいは悲惨さを強調するような私小説だったら
ちょっと耐えられなかったかもしれない。

しかし逆にそこに、芸術と事実の違い、あるいはこの作家の優れたところを見出すことができる。

実は夫太一との関わりは、もちろん実際には大変だという設定だろうが、
描かれている範囲では、読んでいてそれほど辛いわけではない。
本当の問題は母親と弟である。
金や地位や名声、つまり空疎な形や記号や意味(実際は無意味なわけだが)を追い求めて
死んだような人生を生きる二人に翻弄される奈津子が辛いのだ。

しかし切っ先がきつくても予想されるほど生々しいとかドロドロした感じにならないのは、
これを語る作者の強靭な意志と抑制された知性があるからである。
それがいい。

そして主人公にとってそうであるように、読者にとっても救いなのは、夫太一の存在だろう。

妙に明るくて能天気に見えるこの人物、障がいのせい、というのもあるのだろうが、
もともと強さでもあるようなおおらかさを持っている人なのだろうと感じられる。
何も考えてない、というのは、奈津子の視点から作中にも出てくる言い方だし、おそらく正しいのだろう。
しかしそれが、一般に想定されるように苦痛の種になるのか、というとそうばかりともいえない。
それは、母や弟の歪んだ自意識の前では、
風の吹き抜ける高原のように無垢なものであり、救いになり得るのだ。
そしてそれだけでもない。

太一は奈津子のことを、不自由な自分を助ける当然の存在として理解し信頼している。
それは奈津子にとっての負担にもなり得るもののはずだが、
無条件に彼女を信じきり頼りきっている太一の姿勢には、何か限りなく優しいものがある。
たとえば爽やかな空気や澄んだ水や暖かい日の光に対する人の思いに似ているともいえるだろうか。
本質的に必要なものに対する本能的、あるいは絶対的な無意識の信頼。
あくまで打算的な母や弟の依存とはなんと違ったものであることか。
それが奈津子を救うことにもなる。

あくまで地味で、かつ辛い内容にもかかわらず、そこに何か強い芯のある安心を覚えるのは、
私だけではないと思う。
 
一緒に収められた「99の接吻」は相当癖の強い小説で、だから好みもかなり分かれそうだ。
感覚的で官能的で濃厚で残酷で毒があって、それでいてどこか透明感もある不思議な小説。
「冥土めぐり」とはまるで趣が違うので、別の本にして欲しい気もしたが、
一方でこの作家の底の深さを知ることができるのはいいとも思う。

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紙の本

セレブが廃れて

2022/05/09 22:25

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

栄華を誇った奈津子の一族が没落していく姿と、高級ホテルが庶民の宿に鞍替えしていく様子が上手く重なっています。不治の病を抱えながらも前向きに生きる、夫・太一のキャラクターも秀逸です。

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紙の本

本当の幸せとは何かを自覚できない厄介な眷属との決別

2015/08/28 10:02

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:T.H. - この投稿者のレビュー一覧を見る

一族の過去の栄光の幻想にしがみつき、実態は寄生虫のごとく主人公につきまとって搾取しようとする母と兄。どうしようもない身内と決別するための冥土めぐり、と称する?過去への旅。過去の栄光の象徴たる古ぼけたホテルに半身不随の夫と宿泊して、主人公の決意は固まる。夫を襲った不幸ですら、寄生虫から逃れることが可能となった僥倖なのだと感じつつ。

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2012/07/30 19:24

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2012/08/16 15:21

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2012/07/18 02:25

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2012/07/24 13:13

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2012/10/21 22:44

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2012/08/05 16:19

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2012/08/06 23:35

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2012/09/10 00:11

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2013/05/29 09:40

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2012/08/12 02:01

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