紙の本
戯曲と小説
2016/01/14 02:40
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校演劇をモチーフにした、著者初の小説。無論、青春小説のカテゴリだが、問題として取り上げるならプロとアマの差。演出の高橋を著者に重ね合わせているようで、高校生だったら、こんな演出はないだろうという疑問が、しばしば出てくる。自身の作品にも使われている「銀河鉄道の夜」もアマチュアの感覚ではあるまい。
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災害や疫病や飢餓は常時中世の人々を苦しめた。ある者はその辛さに耐えられず首をくくったり、身を投げたりもしただろう。死の誘惑に負けなかった者は、何らかの形で仏教の力に縋ったのではないだろうか。庶民の仏教に対する姿勢は、解脱より俗世間での安逸を求める方に向かったのである。
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非常に面白い。史料的なところではマイナスだが、それは自分でもとを調べればよいこと。とっかかりとして役に立った。
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中世の貧民——説教師と廻国芸人』小栗判官の物語は、鎌倉大草紙の数行ぽっちの記述から、美姫、人食い馬、蘇った横山党を巻き込んだ、とんでもない物語にどのように育ったのか。現代を歩く著者の紀行と小栗の物語が交錯する
Lv【初心者】~
・小栗判官という人物に興味を持っていると面白い
・足利持氏という人物を知っているともう少し面白い
・タイトルから、例えば鎌倉・室町期の貧民層とか社会構造を想定するとちょっと違う。
・サブタイトル!サブタイトル!
・あと、あくまで作家さんの紀行文だから!楽しんで!
※詳しく史実を知りたい→吉川弘文館「古河公方と伊勢宗瑞」
※民俗学的な小栗判官の物語の位置付けを知りたい→せりか書房「酒呑童子の首」
カテゴリを「宗教・民俗」にするか迷ったが、
冒頭に書いた理由で中世東国を知る本に分類。
えーっと、足利持氏殿です。何処にでも出てきます。小栗判官のモデルとなったと言われるのは、持氏殿に攻め滅ぼされた常陸小栗氏。俺様的に小栗判官の物語は「何故?」が多かったんだよ。なぜ、当時でもマイナーと言える常陸小栗氏を取り上げたのか。なぜ相模から旅したりとか、滅んだ筈の横山党が現れたのか……もう色々。
その辺を史実や説経節(けっして宗教的なものでなく、娯楽の一種な。紙のない紙芝居っつーところか?)を照らし合わせつつ、なぜこのように変容したのか。なぜ鎌倉大草紙という軍記物に異色の物語が僅かとは言え書かれたのか。結論はハッキリ出さないんだけど納得した。
横山党の登場についてはあまり触れられていなかったが、
・(真偽はともかく)横山党は小野篁の末裔を名乗る
・小野篁と小栗判官は相似した閻魔大王伝説が有る
辺りに触れていただけたら、もっと嬉しかったかも
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日本の貧民研究といえばこの人だと思うのだが、本書は小栗判官の説経に従って、鎌倉末期の庶民の生活や思想に切りこんでいくというユニークな視点で書かれている。
小栗判官の物語は、時代考証という点では荒唐無稽なものになってしまっているようだが、当時の下層の人々が求めているものは何だったのか、という観点からの解説は非常に興味深い。
余談だが、子供の頃に見ていたNHKの新八犬伝に、小栗判官と照手姫が登場していたのを思いだす。確かに姫が、判官の乗る車を引いていたような気もするのだが、記憶は定かではないし、当時はその意味も勿論知らなかった。
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目も見えず耳も聞こえず口も利けず、そして歩くこともできない六根片端の身となった小栗判官。その身体を癒すため熊野へと向かう長い長い道行き。小栗判官と照手姫の伝承に題材にした五大説経節のひとつ「小栗判官」から、中世の下層民の有り様を描き出す。
関東の荒れ野から始まる小栗判官の道行を順番に追いながら、原始伝承の成り立ち、説経節としての作品ができ上がる過程、そしてそれらの背景として存在する中世の下層民たちの生き様を考察するという独特な構成をとる。小栗判官の物語とそれ以外の要素は明確には区分されず、境界を曖昧にしたままに語られる。説経節の引用と伝承・その他の引用、著者が加える考察、さらなる空想、それらがとは渾然一体となり論考とも小説ともつかない特異な作品となっている。その意味では学術的な成果を一般向けに記したものとは言えない。厳密性と引き換えに、著者は想像力を目一杯広げて小栗判官の世界へ深く深く潜り込む。そうした空想によって小栗判官の背後に潜む豊穣な世界が引き出される。
「中世の貧民」という書名からは相当に逸脱した作品ではあるが、その一方でただの概説書にはない、この書籍、この著者にしか描けない世界がある。
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説教節「小栗判官」を材材にして、中世に生きた庶民の生活を活写している。小栗判官が土車に乗せられた神奈川県の当麻山無量光寺から熊野の「つぼ湯」までの道行きを丁寧に説明しているので観光案内として読んでもいい。お勧めの本である。