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深い深いところを彷徨って、
静かな狂気が、
絶妙な言葉使いとともに迫ってきます。
わたし、本当にこの本のメッセージが、
すべて受け取れているかといわれれば、不安ですが、
確実に、わたしの中につよく残り、
血の中に溶けました。
すごい本です。中村文則さんはすごいです。
ひたひたとやってくる悪意は、
異常にリアルでした。
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主人公に共感できるところが多いか少ないかで、自分がどちら側の思考の人間で、どちら側への理解を努力するべきなのかわかる作品。
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この作家の作品は初めて。
まずは、ということでこの薄い小説を選んだのだけど、タイトルで伺える通りなかなかヘビーな内容だった。
主人公が高校生の時に突然発病した原因不明の重病、というあたりの描写はとても信憑性があり、医学的な説明がとても上手だと感じた。
そこが丁寧だったことで、その後病を克服したにもかかわらず主人公が精神的に病んで行く様がまた非常に現実味を帯びていた。
若者だからこそ描けた繊細さと理不尽さが溢れる世界を恐る恐る読んだといったところ。
読んだ後もしばらくこの主人公のことを考えていた。
とても残念で、私がこの子の母親だったらどうしただろうか、絶対こんな風にはさせなかった、としなくてもいい後悔をしてみたり…。
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某芸人さんが書かれた帯に惹かれて手に取った作品。
この作家さんの作品は初めてでした。
過度な装飾や不自然な気張りのないシンプルな文章で、ことばがすんなり体に入ってくるような読みやすさを感じます。
内容は、手記の体裁をとった殺人者の独白構成で、決して愉快ではないです。心が健康なときに読まないとひきずられてしまいそう。。
淡々とした文で、でも温度をもっているような語りには説得力があってのめりこんでしまいます。
この作家さんの入門としては断然『掏摸』をお奨めしますが、独特の世界に触れられる大変興味深い作品です。
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生存率2割の難病に冒された15歳の少年は、奇跡的な回復で日常生活に戻る。
しかし闘病の苦しみから開放され、生き続けることになった少年は死を強く覚悟していたからこそ、まだ生き続けなくてはいけないという現実に馴染むことが出来ず、奇行を繰り返した末に親友を殺害してしまう。
悪意に囚われながらそれに快感すら感じてしまった少年は、親友を殺しても平然と生きる人間になろうと決意する。
発病から自首までの日々を手記という形で綴る独白記録。
サイコパス的な描かれ方ではなく、罪を背負ってどう生きてきたかを辿る、破滅的な物語だと思う。
いろいろな読み方、解釈の仕方があるだろう。
本書のテーマは「なぜ人は人を殺してはいけないのか」ということだ。
悪意という感情が、社会的に”罪”と判断される輪郭の曖昧さを重く複雑に考えさせられた。
誰にだって昏い衝動というものがあり、それに身を任せるかどうか、もし実行した場合犯罪と呼ばれる結果となるか、またそれが発覚するかとか、いくつもの些細なめぐり合わせの変化によってそれが罪かどうかが決められる。
その線引も法律という、国や時代によって大きく変化するもので規定される。
罪と判じられることと、本人の罪の意識というものがどれだけ一致するのかわからなくなる。
殺したいと思った時点でその人は悪となるかもしれない。
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大病の苦しみに耐えるために世の中を恨み、その恨みに耐えるために、より強い苦しみを自ら選択してしまう。それこそが動機なき殺人というものの一つの理由なのでは?というのがテーマ。
しかし、重くて暗い。
しかも、なぜそんなことで、という点が多く、共感はなかなか得られなかった。
自分は文学よりエンタメ寄りなんだな、と少し悔しい感じで認識を新たにした。
中村氏の作品を幾つか読んできて、概ね好みではあったが、狙いがわかるだけにこれはちょっと、と思った。
2014.4.20読了
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どう考えても連休初日に読むような内容ではない。
悪を究めようとする理屈は、よくよく考えてみると、自分が可愛くてしょうがないというところに行き着きますね。
机上の理想と現実の行動。このせめぎあいがよく伝わってくる小説。
ああもう中村文則ぜんぶ読んだろかな。
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なんかドロドロしたお話が読みたく、探していた所この本に出会いました。内容は殺人をしてしまった男の苦悩と葛藤が書いてあります。でも最後の一行で自分の読み落としがあるかなと思いまた読もうとおもいます。
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ちょっと共感できる部分もあり、、、自分も何かの拍子にこんな風に狂っちゃう気がして怖かった。それぐらいリアルな狂い方。
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ダークサイドのお話ではあるんだけど、決してそれだけでは終わらないお話だなぁって思った。登場人物の誰かに共感するのはとても難しい。でもわかるなぁ…って感じることもあって。
ここまで突き詰めて考えるのが怖いから、見ないようにしていた思考の先を見せられたような本でした。
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「どうして人を殺してはいけないのか?」という、真っ向からは聞きにくい、考えにくい問題がテーマになった本です。
私は、この主人公を嫌いにはなれませんでした。でもきっと、個人差はあると思います。
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人間の持つ悪意にフォーカスした作品。
善意と悪意がせめぎあう、究極の選択を強いられた主人公が無意識に選んだのは善だった。
他人を欺くことはできても、自分を欺き罪悪感から逃れることはできない。
主人公は愛を知ったが故に罪悪感を受け入れることができたのではないか?
逆に言えば愛を知らなければ、罪悪感を逃れることだけに翻弄され、
罪の深さを見つめることはできなかっただろう。
不可思議で奥深い人間の心を、巧く描いていると思う。
「遮光」に続き二作目。
どちらも救いようのない暗い話なんだけど、中村さんの作品は心が感応する何かがある。
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なかなかの重厚感。
殺人を究極的には悪と捉えながらも、生きることの意味を悪意・甘え等に陶酔する主人公を通して投げかけてくる。戦争未経験の世代にとって、出来る範囲での究極の探求とも思える。
この作家はやはり追いかけるに値する作家の一人と再認識。
しかしこれを読むとドストエフスキーの濃密さに改めて想いをはせる、それこそ重い話を短編でなく延々と語り続けるんだから。
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ある意味での不幸に魅入られて壊れた一人の物語。
病気を患い死を意識し、そのことを受け入れ、しかしその致死率の高い病は治り、急に元の環境に戻るというのは、生きることに気が抜けたような、そんな印象さえ抱かされた。
彼は悩み、常に死というものを常に考えていたような気がする。
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15歳のとき、百万人に一人がなるという奇病に冒されてしまう主人公。
突然「死」というものを突き付けられる。
症状が悪化し全身に激痛が走るようになりながら
ジワジワと死の恐怖にのみ込まれてゆく。
自分以外の人間に当たり前のようにある「生」
生を、光を否定し、憎悪が増してゆく。
憎悪が増すことで、
これまでになかったチカラが彼を動かす。
彼は親友を殺してしまう。
人殺しは人殺しであることを悩まずに生きていくことができるのだろうか。
そして人はなぜ人を殺してはいけないのか。
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理屈ではなく、どうしようもなく、
膨れ上がってしまった憎悪の中で、
闇の中で、
溺れるようにもがき苦しむ人間の感情の襞を
その襞の震えを
この小説の中で感じる事が出来る。
~引用~
「近頃の異常な犯罪に、明確な動機があるかい?
あいつらは絶対に人間を殺すということをしでかさなければならなかったのかい?
いや、そんな事をする必要はなかったんだよ。
そんな必要はないのに、彼らはそういう事をやるんだ。
『人を殺してみたかった』
そんなのは言ってみただけだよ。
少なくともそう信じ込んでいるだけだよ。
こんな不可解な言葉が、
その不可解さゆえに、
世間からもっともらしくセンセーショナルに聞こえる事を、彼らは知ってるんだ。
なら、なぜ彼らは人を殺したのか。
絶望がそうさせるんだよ。
少なくとも、彼らが絶望だと思い込んでいる彼らの生活や、
人生の状況がそうさせたんだよ。
人間を殺すことに直接結びつかない、
例えば両親の不仲や、
仕事に就けないことや、
引き籠って自分の人生に希望が持てないだとか、
そういう関係ないことが理由になってるんだ。
ならなぜそういった絶望した人間の行動が殺人へと繋がるのか、わかるかい?
今のその状況を変えるために、だよ。
こういう言い方は妙に聞こえるかもしれない。
でも僕はそう考えてるんだ。
昔、東京で刑事していた時、色々な犯罪者を見てきたよ。
堕ちる所まで堕ちていく。
自分の人生を一度破壊したい。
凝縮された悪意が爆発を望む場合もあるだろう。
でも彼らが潜在的に考えているのは、その後さ。
犯罪を犯すことで、警察に救いの手を求めている、と言っても言い過ぎじゃないかもしれない。
逮捕される瞬間、この手の犯罪者はほとんど抵抗を示さないんだ。
普段の生活から逃れるように犯罪を犯す。
もちろん状況はより絶望に近づくだろう。
でもその状況が嫌で仕方がない場合、
自殺をも視野に入れてる場合は特に、
幾らかの自棄の感情も手伝って、
この現状を終わらせることが出来るのならどうなったって構わない、
この目茶苦茶な俺をどうにかしてくれとでも言うように、
犯罪を、しかも注目されるような犯罪をして��
警察に助けを求めるように逮捕されて連れていかれる事を望むんだ。
彼らは居場所を求めていて、
結果的に、警察はそれを与えることになる。
自殺する代わりに人を殺してるようなものだよ。
あとは何もしなくていい。
将来の事も、自分の生活の事も考えないでいい。
弁護士や検察が勝手に話し合い、自分の処遇を決めてくれる。
まるで赤子に戻る事を望んでいるかのようだよ。
勇気が出ずに死にきれなかった自分を、
他人の手が、死刑と言う形で丁重に殺してくれる場合だってある。
彼らはね、結局自分の事が可愛くて仕方がないんだ。
少年事件なんて、もっともその傾向が顕著だよ。
捕まれば、鑑別所や少年院の中で、
今まで経験したことのない暖かさと熱心さで、囲んでもらえるんだ。
非行の原因は寂しさであって、
自分を見てもらいたいがゆえの行動であるなんて、よく知られた事だよ。
犯罪が酷ければ酷いだけ、皆が注目する。
彼らは絶望を口にするが、潜在的に救いを求めてるんだ。
本当に迷惑な奴らだよ・・・」
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