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江戸中期、京都に住む俳人の与謝蕪村を中心とした短編集。
蕪村は芸者の小糸に老いらくの恋をするが、門人に反対され別れさせられるところから、最後はやはり小糸に終わる。
全篇が恋の話で、所々に蕪村の読んだ句が挟まれたつくりになっている。
現代では芸者という職業がどうの不倫がどうのとやかましいのだろうが、それはそれ。
当時の京都の住民の人情話を読んだ、みたいな感覚。
「牡丹散る」で見せた円山応挙の男ぶりがッコイイ。ラストの「梅の影」もよかった。
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蕪村の俳句などを題材にした、全編恋の短編集。
華やかさはないが、心に沁みる情愛にあふれています。
たぶん年を重ねた人には響く物語なのかもしれません。恋の儚さに思いを馳せるでしょう。
ゆっくり味わって読むことをお勧めします。
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与謝蕪村を含めその周囲の人々の恋模様を語った連作短編集。
俳句が散りばめられた構成で、それぞれの恋のわびしさ、切なさが感じられます。
全部で7編
「夜半亭有情」
蕪村が恋する「小糸」。
蕪村の家をたびたび訪ねる与八。
与八と小糸の関係は?
与八の正体は?
そこには、蕪村の若い時の恋の思いがありました。
「春しぐれ」
蕪村の娘「くの」の物語。
くのが離縁された経緯が語れています。
そこには哀しい物語がありました。
「隠れ鬼」
蕪村の弟子「大魯」の物語。
文左衛門として蔵奉行を務めていましたが、遊女の小萩と駆け落ちを企て失敗。藩を追放されます。その後、蕪村の弟子となり大魯と名乗りますが、あることから、自分の駆け落ちが仕組まれたこと知ります。
そこで、再び出会った小萩。小萩との会話から自分の生きざまを振り返ります。
「月渓の恋」
蕪村の弟子「月渓」の物語。
恋した「おはる」は女衒に売り飛ばされてしまいます。
太夫にまでなっていた「おはる」ですが、周りの力をかりて、身請けできることに。ようやく、二人は夫婦となりますが、そこには哀しい結末が。
「雛灯り」
蕪村の女中「おもと」の物語。
源太騒動にまつわる「おもと」の哀しい過去。
その騒動の真相と、おもとの思いが語られています。
「牡丹散る」
蕪村の弟子「応挙」の元に訪れた夫婦、七重の物語。
応挙の元に通う七重に恋するようになった応挙。
そんな中、国許に帰る必要がある七重の夫、新五郎。
国許から離縁を迫れれる七重。応挙と七重のいく末は?
「梅の影」
蕪村の弟子で、遊女の「お梅」の物語。
蕪村が亡くなった後、「お梅」と「小糸」が出会う事に。二人の蕪村を思う気持ちが伝わってきます。
ゆっくりと流れる時間の中で、さまざまな思いが伝わってくる物語でした。
じっくり読みたい物語。
お勧め。
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久しぶりの葉室麟
66歳という若さで逝ってしまわれた
これは与謝蕪村を核に周りの人たちの恋を描く
心の奥に降るしぐれのような
散りばめられた俳句がピリッとしめる
切なくて愛おしい
≪ 淡やかに 時雨のごとく 恋のいろ ≫
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内容(「BOOK」データベースより)
京に暮らし、二世夜半亭として世間に認められている与謝蕪村。弟子たちに囲まれて平穏に過ごす晩年の彼に小さな変化が…。祇園の妓女に惚れてしまったのだ。蕪村の一途な想いに友人の応挙や秋成、弟子たちは驚き呆れるばかり。天明の京を舞台に繰り広げられる人間模様を淡やかに描いた傑作連作短編集。
令和3年1月1日~3日
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与謝蕪村の恋のはなし。
だけではない。
蕪村に関わるたくさんの人たちの
想いがある。
皆、懸命に生きて、
あるひとは芸術に、
あるひとは恋に、
それぞれに生きていく時間の中で
関わる人を大切に想い
その姿が美しく、悲しい。
中でも、ある登場人物の言葉
「叶うはよし、叶いたがるは悪しき」
は、ずっと心に残る。
折々に入る蕪村の歌も
より一層、ものがたりへの
感動を深めてくれる。
しみじみと美しく、
懐かしく、恋しい作品だった。
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第145回直木賞候補
付箋
・世の中、悪いことばかりやない。自分がしっかりしてたら生きていける。死んだらしまいや。生きた者が勝ちや
・ひとが日々努力し、おのれの命を全うしようとする姿こそが美しく、愛おしい
・糸のように細く、しかし途切れることのない雨
・生死で別れても切れることのない男女の絆 そばにいなくても、ひとりではないのだ
・想うことと、ともに生きることは一緒ではございません
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与謝蕪村を取り巻く人々の絵や俳句に込めた想いを綴った物語、歳の離れた小糸との恋も
純粋で蕪村の心情が伝わった内容だった。
蕪村の家は京都の仏光寺近くとある。休みの日にでも行ってみたい。
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蕪村の残した句から、こんなにたくさんの奥深い物語を書く葉室さんって凄い人だ…と感動した。
静かに小川が流れるように進むお話しに心が和みました。
西條奈加さんの ごんたくれ は、
蘆雪と箏白目線の物語で、
こちらは月渓の目線で、どちらも同じ時期に読めて良かった。
再読の時も、ごんたくれ→恋しぐれ で読もう。