紙の本
カミングアウト、再び
2014/01/11 22:14
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本経済新聞HP「NIKKEI NET」の2002年11月から8年にわたって連載した「食べ物 新日本奇行」の一部を編集したもの。
「天ぷらにソースをかけますか?」の続編となる。
タイトルにもある
「納豆に砂糖をいれますか?」
という問いから始まって
「すき焼きに入れるこんにゃくは"しらたき"?"糸こんにゃく"?」
「メンチ?ミンチ?」
「せんべいは米粉?小麦粉?」
「お正月は鮭か、ブリか?」
等々の質問が並ぶ。
納豆に砂糖を入れるのは、聞いた事があるので、それほどの衝撃ではなかったが、今回も自分の「常識」が崩れ去る瞬間が多々あった。
上に挙げた質問で言えば、すき焼きに入れるのは"しらたき"。
スーパーでは"メンチカツ"が普通に売られている。
本書でも指摘されていたが、生のひき肉の状態では「ミンチ」と呼ぶのに、油で揚がった瞬間、「メンチ」になる、という事には、なぜかこれまで疑問さえ持たなかった。
実家は「草加せんべい」の影響が強力だったので、せんべいと言えば、米粉以外には考えられず、瓦せんべいなどの小麦粉が原料のものは、名前こそ「せんべい」とついているものの、コバンザメがサメでないのと同様に、せんべいとは別物である、という認識でいた。
また、正月(というより、直前の年の瀬)は日本全国、新巻鮭が「回遊」しているものとばかり・・・。
そして、またしても浮かび上がってくる、日本を東西に分断する「糸魚川-静岡構造線」
本書の最後の章は「糸魚川-静岡構造線」を辿り、ネギ、カツ丼、醤油などを指標とした調査結果レポートとなっている。
「糸魚川-静岡構造線」上の南北方向の食の境界線を探す旅。
なお、この章で醤油に甘いものが存在する事や、(カニカマ、笹カマボコ以外で)板についていないカマボコが存在する事を初めて知った。
面白いのは、山や川といった明確な境目がない場合でも、食の境界線が存在するケースもある、という事。
一体、食(文化もだが)の境界線は何が「くさび」になるのだろう?
それにしても、本書で紹介されているような食べ物の分布状況は、食材の入手のしやすさ(鮮魚が手に入りにくい地域で、動物性たんぱく質を摂取するために昆虫を食べる等)以上のものがあるような気がする。
要するに同じ食材でも、いろいろな食べ方を工夫する事に情熱を傾けるのが日本人の特徴の一つでは?と思えてくる。
あとがきでは、エジプトの「モロヘイヤ」は、現地ではスープでしか食べないが、日本ではパン、天ぷら、クッキーなどにして食べている例が紹介されていた。
ハンバーガーでも「テリヤキバーガー」が、アメリカへ逆上陸しているが、そこまでいかなくても「ご当地バーガー」は豊富に存在する。
果たしてアメリカのハンバーガーには、このようなバリエーションはあるのだろうか?
(日本以上に存在したりするかもしれないが・・・)
かつて、日本人は「エコノミック・アニマル」と呼ばれた時期があったが、それが如何に一面しか見ていないものだったか、というのがよく分かる。
(元々は褒める意味だったそうだが、次第にマイナスの意味が強くなったらしい)
投稿元:
レビューを見る
日本経済新聞のホームページ「NIKKEI NET」で読者との双方向企画として連載された「食べ物 新日本奇行」(企画は残念ながら'10年3月で終了している)から、既刊「天ぷらにソースを入れますか?」に続いてこの連載をまとめたもの。
とはいえ著者の中では最初から2分冊、前後編での書籍化のつもりだったそうで、つまり本書は「天ぷら~」でのボツを集めたものではない、らしいw
まずタイトルの「納豆に砂糖」が、個人的にはえぇぇ……である(解説を書いた久住昌之氏と全く同じw)。が、ある地域の人たちの”納豆に砂糖を入れる”という食慣習について、本文で示された合理的な理由には「なるほど」と納得させられる。
さらに「すき焼きに入れるこんにゃくは『しらたき』か『糸こん』か」で、両者の区別(実のところ、それも現在では曖昧になりつつあるようで)を初めて知り、「せんべいは米粉か小麦粉か」で「煎餅つったら米菓でしょうに」という思い込みが、実は食の方言であったことに気付かされ、「メンチカツorミンチカツ?」では一転、両者の分布の根拠が提示されぬことにモヤモヤし、「飴について」では”飴ちゃん”という言葉が単なる幼児向けの言葉でないことを知る……等々の10章のテーマで、今回も日本全国の食の多様性というものを―身近な料理や食材をテーマにすることで、窺い知ることができる。
前編である?「天ぷらに~」と比べ「二者が東西ではっきりと分かれる」というネタよりも、ある地帯が突出して変わっているというネタが増えたような。これも著者が意図して振り分けたものなのだろうか。
終章の第11章では「糸魚川―静岡構造線を行く」と題し、新潟県長岡市から隣の富山市までの日本海沿い、さらにフォッサマグナに沿って南下しながら長野県内、山梨県を経て静岡県富士宮市まで18日間で移動しながら、カツ丼はソースかつ丼か煮カツ丼(卵とじ)か、薬味のネギは青か白か、馬肉食や虫食の分布などなど、食の境界線の東西南北を確認していく。前編では東海道を辿りながら東西の食文化の境界を確認していたが、今回はそれにも優る労作であり、興味深く面白いレポートになっている。
詳しくはこちらに。
http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2013-10-12
投稿元:
レビューを見る
≪目次≫
第1章 納豆に砂糖
第2章 すき焼き
第3章 せんべいについて
第4章 メンチvsミンチ
第5章 大根と仲間たち
第6章 飴について
第7章 「突き出し」か「お通し」か
第8章 汁かけ飯について
第9章 ニッポンの食堂
第10章 鮭とブリ
第11章 糸魚川ー静岡構造線を行く
≪内容≫
「てんぷらにソースかけますか?」に続くニッポンの境界線シリーズ第2弾(第1弾を読んでないけど)。確かに旅をすると感じることがあるけど、ここまで徹底的に調査すると面白い。うまくインターネットも使っている。でも、やっぱり第11章のように、現地を回りながらのリポートの方が面白い!
投稿元:
レビューを見る
大学時代、所属していたゼミでは毎年長野県の蓼科牧場周辺(厳密には、女神湖周辺)で合宿を行っていた。専門分野の勉強や合間にご当地名物食べ歩きなどの思い出以上に鮮明に記憶に残っている出来事が、合宿中の朝食に度々出される納豆であった。砂糖入りで、しかもかなり強烈にかき混ぜ糸引き天国(いや、地獄!)状態なのである。納豆が名物である水戸生まれの自分のほか出身者の多かったゼミのメンバーのほとんどが、この砂糖い入り納豆を食べることが出来ず残し、宿泊施設の調理担当者がそのたびに怪訝な顔をしていた。そこである時、自分はその調理担当者に「納豆に砂糖をいれるという体験は生まれて始めてなのですが、これはこの地方独特の食べ方なのですか?」と尋ねたところ、「長野だけでなく、隣の新潟や北陸地方では砂糖を入れることが多いはず」という返答を頂き、ますます混乱したものであった。
そんな懐かしい思い出を、書店で本書を見つけた時思い出すと同時に、日本全国で納豆に砂糖を入れて食べる地域がどこくらいあるのか知りたくなって思わず購入した次第。
本書は、野瀬泰申が日経新聞HPに連載していた『食べ物 新日本紀行』の一部を編集したもの。タイトルにもある「納豆に砂糖を入れるか」のほか、「すき焼きに入れるのは、しらたき?糸こんにゃく?」「あなたの土地のせんべいの原料は小麦粉?米粉?」「メンチカツ?ミンチカツ?」「飲み屋で出てくるのは、お通し?突き出し?」など、身近でありながら地域によって呼び方や中身が変わってくる食べ物にまつわる疑問を、読者からのメールとアンケート調査結果を列島地図化している。特に、読者のメールや地図化の結果が予想通りだったりまったく違ったりして、思った以上に読み応えのある内容だった。
投稿元:
レビューを見る
2013/11/07-12/7
なかなか読み進めなかったのは、それだけ興味深かったからである。「納豆に砂糖をかけるかって?なんという愚問。」と考える浅はかさに気づかされる。
何事にも理由がある。
投稿元:
レビューを見る
前作同様、面白かった。
納豆に砂糖は実は理由があってのことだったり、魚缶を料理に使うか使わないかなんて考えたことがなかった。
「飴ちゃん」と確かに周りの人は言うけど、「飴」としか未だに言わない自分のことも改めて考えてみた。やはり飴ちゃんとは言えない。
巻末の糸魚川ー静岡構造線レポートも興味深い。
投稿元:
レビューを見る
前作の「天ぷらにソースをかけますか?」に引き続き、食文化の地域差を、ネットでの投票を通じて、そして筆者自ら歩いて明らかにしていくもの。
前作も興味深く読んだけど、食の地域差って面白いものだ。この範囲がこの文化で、あの範囲があの文化っていう風にきれいに分かれるところなんか感動すら覚える。なじみのない食文化には一見「えー……」と身構えるものだけど、それぞれいろんな理由があるものですね。納豆に砂糖……私はやらないが、そんな理由があったとは。個人的には納豆がどうしてもだめな地域(人ではない)があることが、知ってはいたものの改めてびっくり。面白いな、文化って!!
投稿元:
レビューを見る
前シリーズ「天ぷらにソースをかけますか?」に続いて購入。
メンチvsミンチは、疑問に思っていたことだったので、なるほどと。
投稿元:
レビューを見る
狭い日本でも、食の文化が全く違う。
そういう例を集めた1冊。
第11章「糸魚川ー静岡構造線を行く」は、食の文化が分かれるといわれるラインを実際に歩き、確認していく旅。
ネギが違う、かつ丼が違う、稲荷寿司が違う。
たしかに境目らしく、隣の町に移動しただけなのに違う食べ物文化圏になっていたりする。おもしろい。
投稿元:
レビューを見る
「天ぷらにソースを〜」の続編。少し小粒になった感もあるが変わらず面白い。最終章では糸魚川ー静岡構造線を辿り食の境界を検証。カツ丼の差異が興味深かった。
投稿元:
レビューを見る
『東海道でしょう!』で前著『天ぷらにソースをかけますか?』を知ったのだが、現在は古書でも手に入れ難く、本書を購入した。電子メールでの投稿を紹介していき、各章の最後でVOTE(投票)結果を示す第10章までは、ラジオ番組でも聞いているような感じ。それよりも「糸魚川ー静岡構造線を歩く」の書きぶりが好きだ。実際に食べ物の境界線を食べ歩く旅も面白そうだ。特に、現地の食堂やスーパーで売られているご当地食は、旅行者には縁遠い存在だと思われ、これからの旅の参考にしたい。
投稿元:
レビューを見る
「天ぷらにソースをかけますか?」の続編。
納豆に砂糖を入れる地域とその理由は?等々、
日本国内の食の境界線を探り、食文化を考える内容。
NIKKEI NETの連載「食べ物 新日本奇行」の一部を編集。
第一章~第十章・・・食に関するテーマを投げかけ、読者から
寄せられたメールを紹介。読者からの投票(VOTE)結果の発表。
第十一章・・・東西&南北の食の境界線を探る旅。
糸魚川ー静岡構造線を辿り、ネギ、カツ丼等の種類を探る。
様々な経験に基づいたメールが自然環境や生活文化、習慣、
輸送等、食生活における影響を知らしめてくれます。
大根は地域によって異なる種類栽培があり、せんべいは材料が
異なります。なんと、納豆に砂糖は理由があったのか!
特に、長岡~富士宮、十七泊十八日の食の境界線を探る旅が良い。
各地を辿り、スーパーや飲食店等で“食”を探っていく。
海岸と山間部のみならず、近隣の地域での違いがあります。
上諏訪と下諏訪での違いには驚き!
旅で余裕があったら探ってみたい、そんな気分にさせてくれます。