紙の本
大人からみると他愛もないかもしれないが
2019/01/23 23:35
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
今もし読めばきっと他愛のない内容だと感じるかもしれない。ジョエルという少年の目で見た南部の地方都市。ジョエルは幼稚でわがままだし、周辺の人物もみな奇矯でこんなのあるわけないと思う。筋も一貫していないし書きようも思わせぶり。ゴシックそのものの異様な作品世界で、確かに壊れている。でも、始めて読んだ時には大げさでなく衝撃的だった。文章表現がすごく凝っていて、例えばジョエルがようやく着いた新居ではじめて目を覚ます場面。美しいばかりでなく、異様で怪しく歪んでいるジョエルの目を通して見た作品世界。子供の世界にこんなことがあっていいのかと言いたくなる最後の場面まで忘れがたい。早いうちに読むほうがいいと思うが、今読んでも、他愛なさを遥に上回って鮮烈な印象を受ける。
紙の本
遠くて近くに感じる本
2000/10/24 22:01
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投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る
題名の「遠い声 遠い空」も“Other Voices, Other Rooms”の訳で本の内容も加味されているいい題名。内容としてはサーチ&ロストもの(探し当てた時には、探していたものは失われている)だけど、独特の風景・人物描写とあいまって読み応えがある。いい作家ってデビュー作にほとんど全てがあるものだと思う。詳しくは
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イノセンスといえば、カポーティ。ニューヨークでもLAでもない、アメリカ南部の独特の空気が、肌の上にじわっとのしかかってくるような文章です。
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繊細。まさに。でも二回読んだけど、あんまり内容が記憶に残ってないんだよね。印象というか、後味がすごくいいんです。
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部分部分、面白いと思わせる箇所が結構あったが、全体的になにが言いたい小説だったのかはつかみかねてしまった。まとまった時間をとって再読したい作品。
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恐ろしく読み終わるまで時間を要してしまった。解説のライブラリー誌の批評を記しておきたい。「アル中的作品、病的煩悩の妄想に走り、支離滅裂。」うん、同意だ。だけど、それは私に想像力と読解力が欠けているが故なのだ。素晴らしい作品なのだ。常人には描けない世界なのだ。一読の価値あり。
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モノトーンの風景と、極彩色のシーンが交じり合い、湿り気を含んだような文章。物語自体は、実は淡々と時間の『流れ』とそれを留めておきたい記憶の中にとらわれた人々という理解。
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主人公の少年ジョエルは、中性的で破天荒過ぎる少女アイダベルに淡い恋心を抱くのですが、アイダベルが非常に魅力的に描かれており、しかし物語の終盤、意外なほどあっさり退場することが不思議ですけれども、ジョエルが少年時代を経て大人になっていく時間を13歳という時間の中で描いている物語。カポーティの自伝的要素の大きな小説と言われています。ここではないどこかへ行きたい気持ちって、子供はほとんど皆、抱くときがあるのではないかと思いますけれど、そんな時期の少年少女の繊細さを、一緒に、或いは大人になってからだったら再度体験させてもらえるような小説。
二人が家出した先で出会ったサーカスの小人の女性が、ジョエルと二人、観覧車に乗った時に、自分は20歳になっても恋人が出来なくて、母親のセッティングした見合いで老人と結婚しそうになったし、自身もそれでいいと思ったけれどもすぐに振られ、出会った少年たちもすぐに大きくなってしまうと嘆き、サーカスで世界をめぐっていて、美しい恰好をして王族に招かれてもいるんだけれどもどうしようもない孤独の中にいることを独白をしてさめざめ泣いたそのあとに、アイダベルを評して「かわいそうに、あの子も自分が人並みでないと思い込んでいるのかしら?」と悲しそうに言いながら、自分ではどうしようもないようにジョエルの股のほうへと指先を伸ばそうとする場面があって、その時にジョエルが、ありとあらゆるすべての存在を傷つけたくないと思い、できることならば、愛している、と言ってあげたかった場面に、異様な緊張感と慈しみを感じる。
どういうものか物凄く強く、ジョエルの気持ちに同調してしまう。
あるいは二人で街を出ようとなった時に、どこへ行くのだと聞かれたアイダベルが、「外へ行くの。外で歩きまわっているうちには、どこかいいとこが見つかるわ」と語ったその言葉こそほとんどの人たちの青春時代に張り付いたことのある言葉なのではなかろうかと、少なくとも、したいことやなんかはあっても、明確な目標など持っていなかった時には、頭の上にぐるぐるしているであろう様な言葉に、不思議と胸に悲しさを感じる。
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カポーティの処女小説。
幼年期の幻想と青年期の現実の狭間で揺れるジョエルの姿を描いた作品。
これそんないいか?と正直思った。
確かに文章表現は精緻だし、比喩も生き生きとしてるけど、衝撃を受けるようなものはなかったなぁ。
まぁ、カポーティにとっては、セラピーとしてこの小説を書くことが必要だったのかもしれんけど。
同じテーマならサリンジャーの『ライ麦』とかトウェインの『トム・ソーヤー』の方が好きです。
そっちの方が、一人称で主人公の見る世界がそのまま描かれてるからかな。
内的な変化を外側から描くってのは難しいんでしょうね。
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2009/06/18
原題「Other voices Other rooms」
13歳の主人公ジョエルの心理を
安易に純真な少年として描くのでなく、
虚ろでゴシックな情景描写を交え、
繊細な心理の移ろいである
怯えやためらい、孤独感を表現する一方で、
屈折したしたたかさや傲慢さを表しめている。
読みすすめていくと徐々にその世界観に入っていくが、
歪んだ現実と淡く霞んだ夢想が、
切れ目なく流れるように綴られていき、
水の中でまどろんでいるような気分にさせられる。
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ひとがこどもからおとなになる瞬間とは
木から葉が散っていくようなものなのだと知った。
その散っていく一枚一枚の葉を丁寧に描写したような作品。
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2009/
2009/
38夜
当時の恋人ニュートン・アーヴィンに捧げられた長編デビュー作です。
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別れて暮らす「父」から「一緒に住もう」との手紙をもらい、訪ねた先では、奇妙なことばかり。母との決別、父への憧憬、少年時代の透明な魂があますことなく表現された一冊。
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多感なひとりの少年が父親を探しにアメリカ南部の小さな町を訪れ、様々な出来事を通して大人になってゆく様を瑞々しい文体で綴った半自伝的な処女長編。行ってしまった。と風は云っていた。コカコーラを飲もうと書かれたTシャツを着たアイダベル。読後17年経っても不意に文章のひと筋と情景が頭をよぎる名作。
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誰もが通過する道、それは子供から大人への成長。自身にもそんな過去があったんだと読後に思いに耽った。すばらしい描写力、表現力。是非原文を読んでみたい。これが2年掛けて書き上げた処女作だという事実にただ唖然としてしまった。これは価値ある一冊。