か弱い大人の望み
2017/06/25 16:32
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょっと変わった出目の人たちの話だけど、作品のテーマは至極普遍的だ。あまりに普遍的すぎて、ふつうの人なら、なかなか話題にしづらいから、特殊な人たちが主人公になっているのだと思う。
樹里の父親だった人が、しらふでは自分の劣等感を告白できなかったところにグッと来た。自分の弱さを認めるのは中々大変だ。
親だって人間だから、大人らしく、親らしくありたいと思っても、自分の弱さから逃げられない。子供だって偉そうにしている大人が大したことないことはわかっている。それでも何かしら理由をつけて、親として自他ともに認める必要があるのだ。血縁なのか、一緒に過ごす時間なのか。もっと広い、当人のしあわせを願う気持ちなのか。
親だって、認められたい。それがか弱い大人の望みだった。特殊な出目の子供の視点からそんなことが描かれている。
夏の子供たちが大人に
2020/05/23 23:27
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
サマーキャンプを一緒に過ごした少年少女たちの、意外な繋がりに引き込まれます。大人になってそれぞれの道のりを歩んでいく姿も感動的です。
答えの出ない問題
2015/11/05 09:46
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投稿者:akiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
難しい、答えのない問題に取り組んだ作品だと思う。一人ひとりの性格がとてもうまく書き分けられていて、それぞれに共感したりいらいらしたり、面白く読めた。
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1970年代後半、精子提供者のプロフィールが明らかにされた非配偶者間体外受精によって生まれた7人の子たち。
小さいころ毎年夏に集まったキャンプの記憶をたよりに、それぞれ大人になった彼らは再会する。
これから子を持ちたいと思っている私にとっては、いろいろ考えさせられるテーマだった。
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角田光代さんの作品の中では珍しく?希望に満ちた小説だった。
エピローグがいい。負の感情を抱え続けていた紗有美が希望を語るところに、胸がいっぱいになった。
世の中には、子どもを持ちたくても持てない人がいる。子どもを持ちたいという思いは、女性なら誰しもが抱く感情であると思うし、反対に、男性と女性では出産に対する意識が全くと言っていいほど異なるのだと思った。
不妊治療や代理出産など、子どもを持つための医学は日々進歩しているが、血のつながりを大事にする家社会の日本はこれからどうなっていくのか。考えずにはいられない。妊娠、出産を経験していないから尚更かな。
家族のあり方には多様な価値観があっていいと思うし、幸せっていうのは他人に決められるものではないと思う。
この小説の中で登場人物たちは、それぞれの方法で、自分のあり方、生き方、人生の意味を模索している。解説にもあったように、その様は、現代の日本をそのまま投影しているのだと思う。
ー善きことは、その子が生まれてからじゃないと与えられない。だってその子は私たちと違う世界を生まれたときから持っていて、その世界では何がしあわせか、わからないでしょう
ねえ樹里、はじめたら、もうずっと終わらないの。そうしてもうあなたははじめたんでしょ。決めたときにはもう、はじまってる。悩んでる場合じゃないわよ
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幼いころ、夏の数日間だけ集まる7組の家族。
子供たちはきょうだいのように仲良く過ごすが、ある年を境に交流は途絶え、大人たちはそんな日々がなかったかのように振る舞う。
キャンプの日々から大人になるまでを7人の子供たちの視点が入れ替わりながら物語は進む。
登場人物が多いが、ちゃんと読んでいけばそう混乱はしないだろう(斜め読みだとわからなくなりそう)。
子供たちになんとなく出生の秘密があることは感じられ、中盤までピリピリとした緊張感が漂っている。
最初はキャンプの思い出に固執していた子供たちだが、ほどなくその記憶は遠いものとなるが、30前後になった7人はふとしたきっかけで互いの消息を掴み再会する。
ここからどう展開していくのか、と思ったけれど、ストーリーで驚かせるのではなく人間を深く描くお話だったようで、端的に言ってしまえば出生の秘密に関するオチはなかった。
真実を受け入れた7人は改めて自分の人生や親のことを考える。
そのためかキャンプの場面〜みんなが集まっていくまではかなり面白く先が気になってどんどん読めるものの、終盤失速。
人物のリアルさと掘り下げ方は見事であるが、7人がバラバラとしてしまって誰にも感情移入ができなかった。
最後綺麗にまとまってしまいちょっと消化不良な感じは残る。
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角田さんの本はするする読めるほうだと思うのに、読み終わったらもやもやっと残る。
感動なのかなんなのかわからないが、ぼーっとするというか。いや、やっぱもやもや、だ。
非配偶者の精子バンクから生まれた子供たちを主人公にしたこの作品。重い。重いっす。
結婚したこともなければ子供を持ったこともない私にとっては、ファンタジーのような内容のはず。
なのに、重い。
紗有美、という「もっさりした」登場人物が嫌で嫌で(同属嫌悪だと思う)たまらなかったのに、最後は彼女のおかげで救われた気持ちになった。
軽くはならなかったけれど。しこりは残ったままで。
結論として、すごい作品だということです。
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どこにでもあるようなキャンプでの出来事。が段々に意味深な話しになって行く。サスペンス調になりながら人間描写が面白いり
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家族って遺伝子で決まるわけじゃないよね、と確認したくなる。
自分が生物学的に親の子でなかったら、という話し。出生の秘密を知った時にどう感じるのだろうか。
日本には、昔から養子縁組が普通に行われてきた。そうやって考えると、なにもそんなに難しく考えなくても……。と思ってしまった。
でも、今回の場合は少し違う。出生の秘密を変な風に親に隠されて、それを知りたがり、悩む。知って、さらに悩む。これからどうすればいいか、悩む。
結局は、自分はここにいるんだ、いていいんだ、ということを確認できたので、すっきりした。
でも、なかなか重いネタだった。
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テーマ重いのに、深くない。
角田さんの家族もの好きだし一気読みさせるリズムはあった。でも震える場面がなかった。なんか入り込みきれなかった。
唯一共感できたのは紀子かな。温和な旦那の、強迫的な一面に怯えて自分を押し殺す。これは共感できたし、だからこそそんな旦那から離れる決意をした紀子にはカタルシスをおぼえた。
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女性としては特に興味のある話題ではなかろうか。非配偶者間人工授精で生まれた7人の子どもたち。
大人になり、その時の親と同年代になった7人たちのそれぞれの想い、生き方、考え方。どれもとてもリアルでノンフィクションなんじゃないかと思うほど。角田さんの作品ははっきり答えが分かるものではないけど、自分で答えを出すために導いてくれる。7人が後悔なく「これで良かった」と思う生き方ができればいいな。
最後の波留のメッセージは泣けました。前に一歩踏み出すのは自分。留まってないで、先に進もう。
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非配偶者間人口授精AIDにより生まれた7人の目から考える生と幸せ。
冒頭のキャンプ時代から、突如廃止されたときの不自然さ、不可解な様子が子ども目線で描かれるところは不気味で先が気になる面白さがありました。
それぞれがおとなになってからは、個々の人間性を抱えながら出生の事実と向き合う葛藤が丁寧に描かれます。人間の光も闇もいやみなくあらわすところがこの作家さんのよいところなのかもしれないな、と感じた作品。
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一年のうち、夏の数日だけを一緒に過ごす子供たちとその親たち。ある年、突然その集まりが絶え、子供たちは互いのことも、集まりの目的も何も知らないまま、会わない時間が過ぎて、やがて大人になった・・・。
7人の子供たちは、それぞれまちまちの環境でまちまちの人生を歩んでいる。家族ってなんだ、子供を産むというのはどういうことなのか、人生ってどう生きるのか、アイデンティティの根源は? テーマはたくさんちりばめられていて、7人それぞれの視点で多角的に描かれていて、興味深いし、いろいろと考えさせられる。
きれいな終わり方だと思う。だけど、角田氏の作品(といってもそんなに数は読んでいないけど)って、結末の落としどころがどんな位置に設定されているにしろ、読後感がねっとりしているように感じる。決して不快な粘り気ではない。あんまりなんでもかんでも爽やかなのも違和感あるけど、作品として提示されたものが、自分にまつわりついてくるので、いやでもいろいろ考えさせられる。言葉の力、言葉の羅列の力って不思議だ。
いろんな人生がある。7人はそれをしっかりと教えてくれるし、その親たちも含め、それぞれ個性的で印象がぼやけることもないのだけれど、誰にも感情移入できなくて、読んでいるこちらも「三人称」にしかなれないもどかしさを感じる。ただ、私は、しいて言えば、樹里のお母さんのような人でありたいと思うし、彼女が一番自分に近いようにも感じている。そこが、小さな誇りというか、なんとなくちょっとうれしい。
しかし、「血」っていったいなんなんでしょうね? こればかりは本当によくわからない。きっと理屈を超えた、もっと動物の本能に近いものなのかもしれないな、とは思うけれど、そうであればあるほど、「理解」はできないのかもしれない。でも、本当に「血」のせいであることって、世の中にいったいどのくらいあるんだろう。
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毎年決まって行われたキャンプ。
7人の子どもたちは無邪気に遊び、親たちにも笑顔が溢れていた。
だが、そんなキラキラした記憶も、キャンプが途絶えた後に感じた違和感も薄れた頃、真実を知った7人は再会を果たす…。
ドロドロとしたところへ進んで行くのかと思いきや、終盤、それぞれが自分の生に向かって力強く再生していく展開はお見事。
主人公が1人ではなく7人ということもあり、それぞれの特殊な出生についての受け止め方がちょっと浅くサラッと描かれてしまった感じはあったけれども。
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当たり前の日常は当たり前でない。
自分で環境、状況が変わることを待っていても何も変わらない。
自分で変えようと、扉を開けようとしなければならない。
AIDという夫以外の第三者から精子の提供を受けて、子どもを授かること。
私がもしお父さんの生物遺伝子的子どもでなかったら、、そんなこと考えてもみたことはなかったけど、世の中にはそういうこともあるんやなあと感じた。
そのストーリー事態も人間の内面が描かれてて面白かったけど、ハルとさーちゃんのやり取りなどが印象に残ってる。
さーちゃんの何でも人のせいにするところやハルの冷たさの中の優しさ。
待ってるだけじゃ何も変わらない。