紙の本
脱成長という成長
2014/06/21 10:42
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシアや中国の前時代的・帝国主義的な領土拡大の動き、それに対し自国経済ばかり慮って煮え切らない欧米諸国の対応、地球資源が枯渇するまで収奪していく人類の姿勢等々に漠然とした不安を誰しも感じているのではないでしょうか。一方、今の日本の閉塞状況を、金融緩和や相変わらずの公共事業依存のアベノミクスで打破できるのでしょうか。
本書は、このようなバラバラに起きているように見える事象を、「利子率革命」「空間革命」「価格革命」といったキーワードで、理論的・歴史的に検証・分析し、資本主義の終焉という結論に至っています。とにかく、迫力かつ説得力のある内容に、あっという間に読み終わりました。特に、第3章のアベノミクス批判は、そのとおりと納得しました。人類は資本主義の限界に気が付き、修正できるのでしょうか。読後は、日本の未来、地球の未来を悲観し暗澹たる気持ちとなりました。
ただ、本書はポスト資本主義への言及は、次のように避けていて、物足りなさを感じました。
「その先にどのようなシステムをつくるべきなのかは、私自身にもわかりません。定常状態のイメージこそ語ったものの、それを支える政治体制や思想、文化の明確な姿は、21世紀のホッブズやデカルトを待たなければならないのでしょう(209ページ)」
本書では現状分析と問題提起に止まるとしても、次回作は不十分でも構わないので、水野氏なりの仮説を出してもらいたいものです。批判だけなら、もっともらしく理由づけをすれば良いわけで、創造的な仮説を示すことこそが学者の本来の仕事だと思うのです。水野氏には逃げないでもらいたいものです。
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結論どおりになるのか?
2015/05/04 00:27
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投稿者:RN205 - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に大きな視点から俯瞰的に資本主義を解剖していく著者の手腕は、明確なロジックに裏付けされており傾聴に十分値する内容。著者は資本主義の終焉及び脱成長社会を結論として想定しているが、果たしてそうなるだろうか。人間の成長への希求は無尽蔵で、あらたな成長空間の創設が待っているように思えてならない。現実の動きを注意深く見守りたくさせる好著。
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これからの世界がどうなっていくか…
2017/03/10 17:11
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投稿者:Tori96 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界各国の経済史を通観し、金利に着目しながら現在のグローバル経済と資本主義について、鋭い論述をしている点が興味深い。タイトルから一瞬仰々しい内容かと思いきや、あくまで新書なのでわかりやすく読みやすい内容だと感じた。EUもアメリカも新たな局面に立つ今、これからの世界がどうなっていくのか、考える一助となると思う。
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資本主義の終焉と歴史の危機
2015/10/25 14:40
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投稿者:hideさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
リーマンショック後、世界各国は低金利経済に陥り、政策金利は、概ね0の状態が続く。利子率の歴史からは、極めて異常な状態である。著者はこれを、利子率=資本利潤率から、世界中に投資が行き渡りフロンティアがなくなってしまい、資本に投資機会が見つけられない状態、つまり「資本主義というシステムの死」と分析している。今の時代には新しいシステムが必要であるが、日本のアベノミクスをはじめ先進国は成長重視の政策を採って、かえって中間層の没落、格差の拡大を強めている。現在が長期の利子率革命の時代にあることを認識し、新たなシステムの追求に着手するべきであると著者は警告している。
本書を読んで、最近アメリカが金利上げを試みたが、未遂に終わった原因は大局的にはこのことによるものと思う。
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売れている理由が分かる
2015/09/23 17:22
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投稿者:さんぴん - この投稿者のレビュー一覧を見る
資本主義の本質は金利にあり、その金利を下げて、お金をじゃぶじゃぶ市場に流す今の政策を痛烈に批判しており、一読の価値あり。買い。
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フロンティアはもうないのか?
2020/07/02 12:51
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
「フロンティアがなければ資本主義は死ぬ」という著者の主張は説得力がありそうな主張に見える。この説の根拠として、利子率と仮定してみて、過去数百年間の利率(=資本利益率)の推移と、実物空間 電脳空間のフロンティアの量の推移の相関を挙げている。さらに実感としての最近の資本主義経済の手詰まり感がある。
疑問点3点
1.電脳空間フロンティアはITバブル崩壊で縮小してしまったのか?最近AIブームは一過性のもので終わるのか?
2.電脳経済と実物経済を分けているがこれは妥当か?例えば今読んだ電子書籍はどちらか?
3.問題点は分かったが対策は?みんな平等に貧しい共産主義社会か?
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グローバル資本主義の生き詰まりが新システムを生むのか?
2017/08/10 16:00
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投稿者:セーヌ右岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「16世紀の価格革命が封建的生産様式を資本主義的生産様式に置き換えた」が、「1995年の国際資本の完全自由化の進展」により、「21世紀の価格革命」が始まった。「グローバリゼーションによって加速した近代資本主義に生じたバブル危機、国内格差、環境問題など」の危機の発生は、「資本主義とは異なるシステム構築のチャンス」であり、「それを構築した国が次の覇権を握る」ことになり、「日本がその可能性を最も秘めている。」その一方で、盤石な近代システムを前提として、「定常状態となったゼロ金利、ゼロインフレ」を活かすことと逆行する政策をとる現政権の危険性を説く。成長戦略に与しない著者の主張は一つの有力な見解ではあるが、新たなシステムは見いだせていないとの結論となっている。問題提起のみで終わっているのが残念だ。
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今後は…
2015/12/25 08:11
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投稿者:ぽにょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
新自由主義・市場原理主義による資本主義の行き着く先が上手く書かれていたと思う。今後の経済体制の仕組みを考えることが非常に重要だということがよく分かる。小説「人類資金」合わせて読みたい。
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共産主義は失敗に終わり資本主義が勝利したように思っていましたが、以前読んだ本には「いずれ資本主義も滅びる」ようなことが書かれていて、それがずっと気になっていました。この本のタイトルと帯を見て、この本を手に取りました。
この本の著者である水野氏によれば、それは「国債長期金利の低さ」が、資本主義の死を意味するとのことです。日本の長期国債金利は長い間1%を切るという低金利で、これが日本の強さだと多くの本に書かれたように私もそう思ってきました。
この本を読んで、長期間に亘る低金利は、日本の経済が強い弱いという問題とは別に、日本では資本主義がそろそろ終わりに近づいていることを意味しているのかもしれませんね。
資本主義が終わることは必ずしも国民全体のためには悪いことではないかもしれません、どのような形がそれを引き継ぐかは、水野氏は明確に記述していないように思いましたが、その方向性らしきものはあったかもしれません。
私が社会人を引退する10年後には、その形が見えているのかもしれません、もしかしたらもっと早く多くの分野で芽生えているかもしれませんが。
この本で最も印象を受けたのは、冒頭にある部分で「なぜ利子率の低下がそれほどまでに重大事件かと言えば、金利はすなわち資本利潤率と同じだから、利潤率が極端に低いということは、すでに資本主義が資本主義として機能していないという兆候である(p16)」、という部分です。
以下は気になったポイントです。
・利子率が低いのは17世紀初頭のイタリアで見られた、当時の著書にも、ローマ帝国衰退以来、欧州の歴史において初めて資本が提供された、これは革命である(利子率が下がっていること)と述べられている(p16)
・16世紀のイタリアは山の頂上までワインのためのブドウ畑になっていた、ワイン製造業は当時の最先端産業なので、ブドウ畑を新たにつくることがないとは、利潤を生み出す投資先がもうないということを意味した(p17)
・利潤率の低下は、設備投資をしても、十分な利益を生み出さない設備、つまり過剰な設備になっていることを意味する(p19)
・ラテン語を独占していたローマ・カトリックと俗語(ドイツ語、英語)でしか情報を得られないプロテスタントとの戦いであった(p43)
・金融緩和の有効性を主張する人達の言い分は、貨幣数量説に基づく、貨幣の流通速度は、一定のもとで「貨幣の数量が物価水準を決定する」という理論、MV=PT(M:貨幣数量、V:速度、P:物価水準、T:取引数量)、しかしこの理論は低金利のもとでは崩れている(p44)
・アメリカは石油価格の主導権を取り返すために1983年に石油先物を取引するWTI市場を作った、これは石油を金融商品化することを意味する、これでメジャーの都合のいい値段で売り買いできるようにした(p50)
・本来は1970年代で終焉の始まりを迎えたはずの資本主義を、アメリカは「電子・金融空間」を創設することで、延命させた(p57)
・1477年のピーク時を100とすると、実質賃金は1597年には、24まで下がった、1477年と同じ水準に回復するのは、1886年となる(p70)
・長い16世紀の新興国であったイギリスでも消費者物価が1477年から上昇し続けた、イギリスの一人当たりのGDPが当時の先進国のイタリアに追いついた時点で価格革命は収束した、それは17世紀半ば、同様に中国の一人当たりのGDPが日米に追いついた時点で、21世紀の価格革命は収束する。日本の成長率を1%、中国を8%として、およそ20年かかる(p79)
・1995年までは、国境のなかに住む国民と資本の利害は一致していたので、資本主義と民主主義は衝突しなかった(p82)
・日本の国内の中小企業の利潤率は1973年にピークをつけた、その時点で国内において拡大路線が終わったことを示唆している(p107)
・長い16世紀のスペイン帝国が戦争を繰り返したのは、当時のシステムが転換しようとしているにも拘わらず、過去のシステムを強化してなんとかしのごうとしたから。今の先進国の経済政策は、当時のスペイン帝国に似ている(p126)
・近代欧州の歴史を理解する上でのターニングポイントとなったのは、16-17世紀にかけて海の国イギリス(英国教会)と、陸の国スペイン(ローマカトリック)の間で起きた戦争である(p141)
・現在は、海の国であるアメリカの覇権体制が崩壊し、EU・中国・ロシアといった陸の国が台頭しつつある(p142)
・12世紀のイタリア、フィレンツエに資本主義の萌芽を認める出来事があった、1)利子を容認、利子と取るという行為は神の所有物である「時間」を人間が奪い取ること(1215年ラテラノ公会議)、2)イタリアのボローニャ大学が、神聖ローマ皇帝から大学として認められた、13世紀にはローマ法王からも認可、中世においては「知」も神の所有物であった(p158)
・知の所有については、宗教改革で、ラテン語から俗語への交代劇を実現させた(p159)
・どの時代であっても、資本主義の本質は、中心・周辺という分割にもとづいて、富やマネーを周辺から集めて、中心に集中させることには変わりは無い(p165)
・世界総人口のうち豊かになれる上限定員は15%前後である、20世紀までの130年間は、先進国の15%の人々が残りの85%から資源を安く購入して、その利益を享受していた(p166)
・日本のキャッシュフローにおいて、家計部門と企業部門を合わせた資金余剰は、48兆円であり、対GDP比率で10.1%もある、これが銀行・生保の金融機関を通じて国債の購入費に当てる事のできる金額(p191)
2014年3月22日作成
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水野氏の著書は(私にとって)山本七平に勝るとも劣らず外れなしですが、今回も得られるインプリケーションが大きく大満足。
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資本主義は終わると思っていたが、とんでもない、既に終わって30年以上経っていたなんて。
資本主義に取って代わる、皆が豊かで楽しく暮らせる社会システムを、皆で知恵を絞って考え、構築して行こうぜ。(^o^)/
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新自由主義とかグローバリズムとかに本能的に疑惑を感じている僕なのですが、この本はかなり役に立ちました。
僕はもう20年くらいクルマの広告に携わっています。クルマをつくる人達は凄いんですよ。パーツひとつ何銭単位でコストダウンして、1円安くするために寝ないで設計して。そんな思いを重ねてつくった製品を売って、利潤を得る。…でも、輸出比率の高い我が国の場合、為替相場が1円動けばそんな努力は関係なく、一瞬で数億円が吹っ飛んだりするわけです。しかもその相場を動かしておるのが、現代ではヘッジファンドと呼ばれる一私企業であったりするわけで。
どうもこれはおかしいだろうと思っていたのです。
そもそもバブル時代に、実際にモノをつくるメーカーよりも、株や土地を売買するだけのブローカーの方が何倍も儲かるという事になった時にも、ものすごい違和感を感じていたのですが、
本書によって、その疑問が解き明かされました。
「金利ゼロっておかしくね?」とか「生産拠点を中国からベトナム、ミャンマー、次はアフリカ?その次はあるの?」とか疑問に思っていたことをしっかり押さえてくれる。
やはり資本主義はそれだけでは解決できないところまできてしまった。ゼロ金利というのが、既に資本主義の賞味期限が尽きてしまったことを知らせています。これは十六世紀のイタリア・ジェノヴァ以来と言うことで、その「長い十六世紀」と言われた停滞は、まだヨーロッパ、アジア、アメリカ新大陸に存在していた空間的フロンティアの開発によって突破することが出来ました。しかし現代ではもうフロンティアは存在しません。
資本主義は「中央」に「周辺」から富が集まるシステム。そのために常にフロンティアを必要として膨張を続ける。ロシア、東欧、中国、BRICS、アフリカと来たところで空間的フロンティアは打ち止め。(アメリカは電子空間にフロンティアを求めた)その結果同じ国の中で「周辺」を作り出すことでシステムの延命を図る。それが各先進国内での経済的弱者の増加である。中産階級を貧困に転落させて「周辺」とし、経済的優位者=中央はますます富んでいく。という説明が実に腹に落ちました。
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ゼロ金利、ゼロ成長は経済の一時的な停滞ではなく資本主義がもはや正常に機能しなくなった結果だと説く。そのため、現状を打破するには従来型の成長戦略ではなく資本主義に代わる新たなシステムや価値観への転換が必要で、それは「脱成長という成長」を志向するものになる。
民主主義と資本主義は必ずしもセットではない、ということに気付かされた。それどころか経済がグローバル化する過程で資本主義が最優先された結果、知らず知らずのうちに民主主義がなおざりにされつつあるという事実。資本主義は本質的に格差を生む性格を持っている。
そんな資本主義ではあるが、私たちは成長という観念を捨ててそれに代わる価値観を持つことが出来るだろうか?
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拡大することが資本主義の本質だが、物理的空間も電子金融空間もフロンティアはもうない。新興国が成長してきたのでエネルギーを安価に入手することは困難。民主主義は価値観を同じくする中間層があってはじめて機能する。中間層の没落は民主主義の基盤の破壊。グローバル資本は国民国家を超える。などなど大変刺激的。とすると戦争でガラガラポンでやり直しって感じになるのでしょうか。そっちに近づいている気はします。
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本書は2014年3月に発行された本だが、小生は2014年4月に一度読んでいる。このほど再び本書を読み、時の流れと共にさらに説得力を増してきたと思った。
「西欧的な近代化は、途上国から資源を安く購入することで成り立っていたが、途上国の近代化によってその条件はもはや消滅した」。まさにその通りではないか。本書を高く評価したい。
以下は2014年4月に読書した時のレビュー。
『本書は,「経済書」なのか「政治書」なのか、それとも「文明書」なのか、とにかくすごい本である。
本書によると、資本主義はもう「終わっている」となる。 なるほど昨今のウクライナ情勢を見ても、本書の見解は理解できないわけではないが、はたして・・・。
本書が語る雄大な歴史的見解は、まるで著者が「マルクス」であるかのようにも思え、しばしばうなづきながらも、ところどころでは首をかしげた。
著者の今までの著作よりも、一段と読みやすく、わかりやすい「経済書?」であると高く評価したい。』