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事実を淡々と積み重ねていく。最初のうちはこれがどのように物語の筋につながっていくんだろう、なにか伏線があるのだろうかと思っていたが、人物や当時の社会の動きを浮かび上がらせていたということだ。
そのうち大津事件が起こり、話が盛り上がっていく。司法と行政がそれぞれの思惑で事件を解決しようとするが、、、
この事件は話としては知っているが、それがその当時の社会にどのような意味を持っていたかは知らなかった。
歴史の勉強と言うものはこういった物語を読むことによってもすべきだと思う。(図書館)
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大津事件をめぐるお話。
大津事件は司法の独立の問題としては知っていたけれど、それ以外の面はほとんど知らなかった。
犯人の心情やその当時の日本の立場などを知る事ができたのは良かったなぁと。
でも、裁判の部分はもう少し掘り下げて書いてみてほしかった。
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ページ数は多くないのに読むのにかなり時間かかりました。日本のニコライの歓迎っぷりがすさまじいんですが、ニコライの紳士ぶりにもかなり感動しました。こんなにみんなで頑張ってこの事件で戦争が起きなかったのに、結局日露戦争が起きてしまったのがなんだか微妙ですね;
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山風の「ラスプーチンが来た」しか知らないので、大津事件の実相、興味深かった。児島惟謙だけが偉いのではなく、裁判団や新聞がこぞって死刑に反対していたという話は興味深かった。
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吉村昭氏の「史実を歩む」を読んで、この作品を読みたくなった。
明治24年、まだ、明治維新から24年しか経っていない日本に、当時、世界一の大国・ロシアから皇太子ニコライが日本に訪れた。
国賓でも最大級のもてなしをし、長崎、鹿児島、神戸、京都と訪れ、滋賀の大津で暴漢に襲われる。
その大津事件までと後の展開がみごとに綿密につづられている。
いつもながら、淡々とした書き口のようで、登場人物であるニコライ皇太子、天皇陛下、西郷ほかの大臣、児島大審院長官などの「人物像」がよく伝わってくる。
この事件の後に起こる、日露戦争、ロシア革命と、主人公の運命にも感慨深いものがある。
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明治24年に起こった大津事件の前後を描いた歴史小説。
史実が淡々と積み上げられていくので、どこまでが本当のことで、どこに作者の想像が入っているのか全く分かりません。非常に細部にまで史実にこだわった作品です。
日本のロシア皇太子の歓迎ぶりは現代に生きる自分が読んでいると、滑稽にまで感じてしまうのですが、それだけ当時のロシアの力の強さ、開国から間もない日本の苦慮の部分が見えます。ロシア皇太子のはしゃっぎぷりはなんだかかわいらしく思えたのですが(笑)
事件が起こってからの司法と内閣の犯人の量刑をめぐっての軋轢は描写は決して多くないのにそれでも引き込まれます。司法側が頑なに法律を守ろうとしただけでなく、国益や国の威信のことも考えた上での判断だということが印象的でした。
自分の教科書では数行で片づけられてしまっていた大津事件ですが、こうして小説で読むと全く違う見方が得られました。教科書だけじゃ歴史の面白さってわからないなあ。
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「ニコライ遭難」吉村昭著、新潮文庫、1996.11.01
380p ¥608 C0193 (2021.12.20読了)(2008.10.12購入)
【目次】(なし)
一~十七
あとがき 1993年7月
参考文献
勇気と誠意の物語 山内昌之(1996年9月)
☆関連図書(既読)
「青天を衝け(一)」大森美香作・豊田美加著、NHK出版、2021.01.30
「青天を衝け(二)」大森美香作・豊田美加著、NHK出版、2021.04.30
「青天を衝け(三)」大森美香作・豊田美加著、NHK出版、2021.08.10
「青天を衝け(四)」大森美香作・豊田美加著、NHK出版、2021.11.20
「雄気堂々(上)」城山三郎著、新潮文庫、1976.05.30
「雄気堂々(下)」城山三郎著、新潮文庫、1976.05.30
「論語とソロバン」童門冬二著、祥伝社、2000.02.20
「渋沢栄一『論語と算盤』」守屋淳著、NHK出版、2021.04.01
「論語と算盤」渋沢栄一著、角川ソフィア文庫、2008.10.25
「渋沢栄一 社会企業家の先駆者」島田昌和著、岩波新書、2011.07.20
「明治天皇の生涯(上)」童門冬二著、三笠書房、1991.11.30
「明治天皇の生涯(下)」童門冬二著、三笠書房、1991.11.30
「正妻 慶喜と美賀子(上)」林真理子著、講談社、2013.08.02
「正妻 慶喜と美賀子(下)」林真理子著、講談社、2013.08.02
「維新前夜」鈴木明著、小学館ライブラリー、1992.02.20
「旋風時代 大隈重信と伊藤博文」南條範夫著、講談社、1995.09.20
「伊藤博文 知の政治家」瀧井一博著、中公新書、2010.04.25
「マンガ日本の歴史(43) ざんぎり頭で文明開化」石ノ森章太郎著、中央公論社、1993.05.20
「マンガ日本の歴史(44) 民権か国権か」石ノ森章太郎著、中央公論社、1993.06.20
「戦艦武蔵」吉村昭著、新潮文庫、1971.08.14
「零式戦闘機」吉村昭著、新潮文庫、1978.03.30
「遠い日の戦争」吉村昭著、新潮文庫、1984.07.25
「三陸海岸大津波」吉村昭著、中公文庫、1984.08.10
「平家物語(上)」吉村昭著、講談社、1992.06.15
「平家物語(下)」吉村昭著、講談社、1992.07.20
「桜田門外ノ変 上巻」吉村昭著、新潮文庫、1995.04.01
「桜田門外ノ変 下巻」吉村昭著、新潮文庫、1995.04.01
「生麦事件(上)」 吉村昭著、新潮文庫、2002.06.01
「生麦事件(下)」 吉村昭著、新潮文庫、2002.06.01
「死顔」吉村昭著、新潮文庫、2009.07.01
「戦艦武蔵ノート」吉村昭著、岩波現代文庫、2010.08.19
「彰義隊」吉村昭著・村上豊絵、朝日新聞、2005.08.19
(「BOOK」データベースより)amazon
明治24年5月、国賓のロシア皇太子を警護の巡査が突然襲った。この非常事態に、近代国家への道を歩み始めた日本が震撼する。極東進出を目論むロシアに対し、当時日本は余りにも脆弱であった―。皇太子ニコライへの官民を挙げての歓待ぶり、犯人津田三蔵の処分を巡る政府有力者と司法の軋轢、津田の死の実態など、新資料を得て未曾有の国難・大津事件に揺れる世相を活写する歴史長編。
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吉村昭の初読み。
堅苦しい文体だが、不思議と最後まで引き込まれて読み続けられた。“事実”が持つ重みがそうさせたのだろう。
読前、筆者についてWikipediaにて検索してみた。吉村昭の特徴は“記録文学”であるという。
筆者の主観・創作は一切交えず、取材に基いた記述をただひたすら積み上げる……。
例えば、乗った列車の発時刻や史実上の天候に至るまで、資料に取材し忠実に描写する“ノンフィクション文学とも呼べる”的な記載があった。
そういう執筆姿勢で描かれた作品であるという事実が、歴史の重みを作品に加えていたのだろう。だからこそ“引き込まれ”た、と思う。
ただ楽しく読んだだけでなく、得るものの多い一冊だった。
★4つ、7ポイント半。
2015.09.11.図。
●ニコライは……何の悪気も、腹の一物もなく、典型的に無邪気な“良家のお坊ちゃん”だと感じた(笑)。よい意味で“育ちが良い”と。
(一国の皇太子を指して“良家”もないものだろうけど)
※皇后(母)の、盲目的な溺愛ぶり(今の世にも通じそう)が、見ていて哀しくなった。
●巻末解説者の「勇気と誠意の物語」に、共感。
●司法関係者たちの勇気と判断と、実践に感銘。
●津田三蔵の死……唐突な発病と病状の急変。
残された資料が語る“史実”は描写の通りであるとしても、史料に残されない闇の動き(?)によっての暗殺である可能性もあるのでは……?と、下品な想像も働いてしまった(笑)。
●↑の仮定をもとにした、大津事件を題材とするフィクションで映画など作ってみたら、なかなか面白いエンタテイメントになりそうだな・・・。
●同じ題材、同じ史実をもとに、他のフィクション作家が描いたら、どんな作品になるだろう……と妄想してみた(笑)。
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明治24年にロシア皇太子ニコライが来日し、長崎、鹿児島、京都、滋賀と回る中で大津で警備を担当していた津田三蔵巡査に襲われた事件、いわゆる大津事件について描かれた小説。小説というか、吉村昭の作品は(というほど多くの作品を読んだわけではないが)、事実関係を丹念に取材して周辺情報まで含めて細かく書かれている一方で、小説が小説たる感情のもりあがりだとか登場人物の内面描写がないため、まるで解説記事を読んでいるような気分になる。それはそれでとても勉強になるのだが、ハマって一気に読破!みたいなことはない。
長崎でのニコライのお忍びに対する長崎県庁の苦慮や、津田三蔵の処分に対する政府対裁判官の戦いなど、なるほどフムフムと思いながら読んだ。今も昔もVIP対応は大変だ。
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司馬遼太郎の作品は印象的な書き出しが多いと思いますが、一番好きなのは「坂の上の雲」です。
「まことに小さな国が開化期を迎えようとしている」
明治維新後のちっぽけな日本が近代的国家として歩み始めた時代を、この短い文章は簡潔に表現しています。
吉村昭さんが描く「ニコライ遭難」は、この時代、明治24年に起きた大津事件に戦慄する日本人の姿です。大津事件は車夫がロシアの皇太子ニコライに軽傷を負わせた事件。圧倒的な軍事力をもって極東進出を目論むロシアに対して日本は「七五三のお祝いに軍服を着た幼児」。事件をきっかけに天皇を始め日本中が震撼します。当時の刑法では犯人津田三蔵は懲役刑。しかし、武力報復を恐れる政府有力者は処刑を主張。対して、司法関係者は公正に津田を裁こうと政府に挑みます。この小説の最大の読みどころは、近代的法治国家の将来を見つめた司法対政府の手に汗握るギリギリの戦いです。この事件により、日本の三権分立の意識は高まったといいます。
それと、この小説の魅力は前半のニコライへの歓待の風景。長崎、京都、大津と日本の威信を賭けて歓待する官民の姿が詳細に活き活きと描かれます。特に、ロシア帝国最後の皇帝となるニコライが入墨を自らに彫らせたり、番傘に興味を示したりと人間らしい愛嬌を持っていたことは意外でした。
他にも、津田の死の真相、ニコライを助けたことにより多額の賞金を得た2人の車夫の運命、西郷隆盛生存説など読みどころはたくさんありますが、この小説の最大の魅力は、大津事件の歴史的重大性と開化期の日本人の特性が理解できることです。
久しぶりの★★★★★。是非、是非、お読みください。
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大津事件に関しては、司法の独立を守ったは良いが裁判官の独立についてはどうなのよ、という意見があるのだが、そこはちょっとスルー気味。山内昌之氏の「勇気と誠意の物語」という青年明治風の解説はちょっと私は違うと思った。
吉村昭の文体はとにかく淡々としているのだが、それを積み重ねていって最後らへんにやけに視覚的なハイライトを持ってくる。ちょっとずつ注ぎ入れた水がコップからあふれるような感じ。この本では、最後の西郷従道が馬場停車駅から帰京するところ。
今回もええもの読ませていただきました。
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超大国ロシアへの恐れと疑心暗鬼も相まって、その対応に四苦八苦する明治政府。欧米列強に対しても、国内世論に対しても、対応に四苦八苦するできたて政府の姿が哀れでもあり滑稽でもある。再演で観た、三谷幸喜脚本+東京ヴォードヴィルショー公演の「その場しのぎの男たち」は、まさにこの政府要人達の滑稽なまでの慌てふためきを描いている。
芝居とは異なり、実際の当事者たちは日々蒼白だったに違いないことが本書を読むとよく分かる。それにしても登場人物がなんと多いことか。事件に関わった或いは関わらざるを得なかった人たちのその後が気になる。彼らは日露戦争中やその後の時代をどう生きたのだろう。
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1891年5月11日、来訪中のロシア帝国皇太子・ニコライが滋賀県大津市で、警備中の巡査である津田三蔵にサーベルで襲われた──
当時の日本人のロシアに対する感情は、複雑であった。
軍事大国ロシアに征服されるかもしれないという恐怖。
その中でのニコライの訪日。
『このようなことがあっても、日本人民の好意に対する私の喜びの感情には変わりない』
ニコライのこの言葉は、襲われた後に、なかなか言えることではない。
そして、当時の日本国政府の焦慮、ロシアに対する恐怖が手に取るように分かった。
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1891年来日したロシアの皇太子ニコライを、巡査の津田がサーベルで頭を切りつけた大津事件。事件より前のニコライの日本での過ごし方や、事件後の政府高官たちが、津田を死刑にしようと暗躍する様を描くドキュメント小説。
とっても面白かった。
ニコライが来る時に流れたデマが、実は西郷隆盛が生きていて西郷がやって来るのだというのが面白い。ロシアで西郷を見かけたという噂が流れたそうだ。西郷に帰ってきてもらっては困るので、ニコライ(=西郷?)をやっつけなくてはならないと考える輩がいるので、警戒が厳重になったとか。
ニコライは日本滞在を大いに楽しんだそうでその辺も面白い。
最大の読みどころは、松方首相や大臣の西郷従道たちが、津田を死刑にしようとするところ。ニコライは死ななかった(国に帰ると殺されちゃうけどね)ので、謀殺未遂にしかならない。その場合最高で終身刑。それだとロシアに怒られそう(世界最大の陸軍大国だし)なので、死刑にするために、刑法116条の天皇や皇太子に対する場合を適用しようとした。しかし、大審院長児島は日本の皇室にしか当てはまらないとして、政府と闘う。
結果は歴史の教科書に書いてあるけれど、それをただ読むだけと、前後のエピソードを色々読むのでは、だいぶ違うわだなと改めて思った。
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ずいぶん前から積み読になっていて、読み始めるも冒頭で挫折を何回も繰り返しやっと読破!
いや結果、面白かったし、為になった!
この事件、凄い出来事なのに、多分知られていない。こと無き得たから良かったものの、一歩間違えたら歴史が変わってたであろう。
この前に佐木隆三氏の「司法卿 江藤新平」を読んでいたので、裁判についても興味深く読めた。
法律とは、漠然と守らなければならないものという認識しか無かったけど、これを読んで法の何たるかを少し理解できたように思う☺️