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葉室麟の初読は、義将立花宗茂の生涯。 戦乱の終わりから、泰平の世への時代の過渡期に、義を通し所領没収から旧領へ復帰出来たのは、処世術ならぬ、徹底したリアリズム『立花の義を立てる。』その生き様と対照的に描かれる『徳川家の義』。 天下泰平への大義の為には、謀をも厭わないと説いた家康、本多正信の信念もまた潔く感じられる。 “莞爾と笑う。” ニヒルな雰囲気を随所に匂わす宗茂。もてたんだろうなぁw 人物の魅力的な描写が葉室氏の魅力のひとつなんでしょうね。
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関ヶ原の戦いの後、九州・柳川藩の藩主、立花宗茂を主人公にした物語。
作中にしばしば「立花の義」と言う言葉が出てきます。ところが宗茂の行動からは余り強く「義」というイメージが涌きません。行動で示せないところを言葉で補おうとしている様に見えます。
大きな流れでいえば、秀吉に取り立てられた宗茂は関ヶ原までは西軍に付くのですが、最終的には大坂の陣で東軍武将として働くのですから。それならば、東軍についても最後まで豊臣を存続させようとして加藤清正の方が、もっと「義」のように見えます。
もっと小さなエピソードを積み重ねる様に「義」を描いて欲しかったなあ。そうすれば説得力が出たと思えるのですが。
それよりも優れた武将としての宗茂を描くのが良かったか、いっそ奥さんの?千代を主人公にした方が良かったかもしれません。
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立花宗茂の人生を描く
名前だけ知っている人物でどんなひとなのか全然知らない状態でこの葉室麟さんが優しい表現で書いているので好きな武将の1人となった。
2016.10.02読了
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2017.10.30 読了
決して裏切らぬ立花の義、これを生涯貫いた宗茂。文武両道の達人でもあった宗茂、小早川隆景を通じた毛利家との因縁で関ヶ原では西軍に属し戦後浪人となったが、最終的に柳川十三万石に復帰できたのも家康ほか徳川方にも人物を見る目があったということだろう。関ヶ原敗戦後に中央突破してきた島津軍を父の仇であるにもかかわらず助けて九州に引き揚げさせたこと、家康と島津の仲介役を引き受けて島津の本領安堵に貢献したこと、いちいち胸を打つ。
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立花宗茂が主人公のお話。秀次の切腹について語る信繁が出てきて堺雅人さんの声で脳内再生されます。真田家が主君をコロコロ替えた話も「真田丸で観たやつだ!」と思いました。「つまるところ真田の義とは生き抜くことでござる」
立花宗茂を説得する黒田如水と加藤清正がそれぞれ岡田准一さんと新井浩文さんで脳内再生されてしまうのは完全に大河ドラマの影響です。
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立花宗茂を主人公とする歴史小説である。宗茂は大友家家臣としての戦場での活躍を豊臣秀吉に見出され、大名に取り立てられた。文禄の役では日本の撤退戦において味方の窮地を救う大活躍をするなど戦功には華々しいものがあり、何よりも忠義を重んじる武将としての名声が高かったのである。
ところが秀吉が死ぬとその地位は揺らぎ、関ヶ原でも西軍についたため、命運は尽きようとしていた。小説では正妻〓(門構えに言)千代の献身的な愛情も描かれる、子をなさぬ仲ながら常に宗茂の心に寄り添う存在として支えたのである。また、立花が信義に生きる家であることを確認しあう仲であった。
牢人となった宗茂は家康に認めてもらうために江戸に向かう。そして微禄に与るのだが、その際にも通したのは武士として誇りと信義とであったというのだ。そしてついには旧領に復することになる。
戦国時代から江戸時代への生き残りは容易ではなかったことは様々な例から察せられるが、立花宗茂のような忠義一徹の武士がいかにして身を処したのかを物語にした作品であるといえる。もちろん史実ではない部分も多いと考えられる。激動の時代を生き残るためにどのような方法があるのか、その一つを示すものと考えればいいのだろう。
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立花宗茂という人物。
名前を聞くけれど、どんなことをしたのかよく知らない。
そんな人物に脚光をあてていた小説だったので読んでみようと思った。
内容としては、立花宗茂を題材にしたNHKの大河ドラマみたいで、立花が行けば全て上手くいく。
そんな雰囲気を漂わせる内容で個人的な感覚だった。
評価を星2つにしたのは、立花宗茂の伝記を読みたかったのに立花宗茂がかっこよすぎて伝記じゃない程に現実離れしているような気がしたから。
ただ立花宗茂の歴史が知れたという点でよんで良かったと思える本だった。
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関ヶ原以降どうやって復活したか詳しく描写されているのが良かった。ただ、真田幸村や伊達政宗の登場のさせ方がやや強引。
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太閤のもとでは「西国無双」と呼ばれたバリバリの戦士。一方、徳川のもとでは泰平のための「画竜点睛」として平和に徹した一人の人間。義を守り、ひとに仕えるという武士の生き様とはこういうことなのか。尾崎行雄の言葉を借りるなら、まさしく「人生の本舞台は常に将来に在り」。
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面白かった
実在の人物、立花宗茂の半生を下敷きとした物語。
ストーリとしては、
秀吉によって筑後柳川十三万石の大名に取り立てられながらも、関ヶ原の戦いで西軍に加担したことにより、家臣とともに浪人の身に。
そこから、さまざまな苦労・苦難を乗り越え、ついに十数年後、領地に返り咲くという展開です。
Wikiによると関ヶ原の戦いで改易後、旧領を回復した武将は宗茂ただ一人とのこと。
本作のテーマは、自らの「義」を貫き通す姿。
立花の義は「決して裏切らない」ということ。
戦国から江戸の初期で、逆境に耐えながらもその義を貫き通す姿に引き込まれます。
また、それを支える家臣たち。
そして、本作では様々な「義」が出てきます。
真田の義は「生き抜くこと」
徳川の義は「泰平の世を作るためには、手を汚すを恐れぬ」こと
それぞれの武将の想いが伝わってきます。
さらに、本作では、正室の誾千代との関係が睦ましい。
こういった時代小説だと、そもそもの逸話を知らないので、どこまでが史実でどこからが創作なのかがわかりません(汗)
とはいえ、とても楽しめました。
お勧め
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裏切りや下剋上が当たり前の戦国時代において、義を重んじ紆余曲折ありながらも、筋の通った生き様で戦国時代を生き抜いた、西国の雄立花宗茂を描いた、時代小説らしい清々しい一冊。
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戦国武将の生涯を描いた小説ながら、躍動感はあまりない。でもそれは決してマイナスではなく、淡々とストレスなく読み進められ、自然に主人公に寄り添いながら物語が追えるということ。むしろ、謹厳実直な西国無双に相応しい文体。
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筑後柳川の立花宗茂は、秀吉の九州攻めで勇名を馳せ、関ヶ原で西軍に属して改易となり、のち旧領に戻れた唯1人の武将である
葉室/麟
1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2007年、「銀漢の賦」で松本清張賞を受賞
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秀吉に「東国にては本多忠勝、西国にては立花宗茂、ともに無双の者である」と讃えられた立花宗茂の一生を描いた歴史長編。
宗茂は婚礼のおりに、新妻誾千代から「立花の義とは、裏切らぬことでございます」と告げられる。
関ヶ原の戦では西軍に属した為、流浪の身となるが、その言葉通りに、生涯自らの道を歩み通す。
誾千代の「お前様は西国無双の武将にございます。必ずや返り咲いて、誰にも負けぬ無双の花を咲かせくださりませ」との言葉を胸に、十数年の浪人生活を耐える。
やがて、本多忠勝の推挙もあり、家康に領地を与えられる。
大坂の陣の際、家康から「秀忠とやがて将軍となる世嗣の傍を離れぬな。決して人を裏切らぬ立花の義を世に知らしめよ。さすれば秀忠と次なる将軍もひとを信じることが出来よう」とさえ認められる。
そして、旧領地へ大名として戻り、誾千代の願いを果たすことができる。
宗茂と誾千代との愛情物語として読むこともできる。
後年、宗茂とともに領地へ赴く菊子が京の公家葉室頼宜の姫とあるが、著者の筆名との関係は?
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関ケ原の戦いで西軍に与しながら、旧領に戻れた唯一の大名・立花宗茂の半生。
『その忠義鎮西一、剛勇また鎮西一』と秀吉にも激賞された宗茂が婿養子として入った立花家の義は『裏切らぬということ』。
秀吉に大名として取り立てられた宗茂は秀吉に対する義を通して関ケ原の戦いでは西軍に与するが、その西軍は寝返る者が次々現れ、毛利は宗茂が大坂城での籠城を進言しても決断出来ない煮えきらなさに愕然とし憤って九州へ戻る。
いくら『立花の義』を貫きたくても、その戦いがそもそも『不義の戦』であるのだから何と張り合いのないことだろうか。
ここからが宗茂の長い戦いの始まり。九州においては黒田如水や鍋島直茂に攻められるのを躱し、加藤清正の援助を受けるも彼の家臣になることを厭い京へ出て、一大名となる道を探る。
何となくのイメージで奥州南郷の大名となるまで様々な交渉や裏取引みたいなこともあったのなかと思っていたが、京の日々はただただ耐えるだけだった。
厳しい日々になることを承知でついてきた二十数名の家臣たちはそれぞれ身分を隠して金を稼ぎ、主である宗茂がいつしか大名として返り咲く日を『夢』として耐え忍んでいた。
印象的なシーンがある。
家臣たちが庭先に干飯を作るために飯を干していたのに、急な雨が降り出して留守を守っていた宗茂は慌てて室内に取り込もうとする。
たまたま客人として来ていた本多忠勝が『暮らしに窮して主が日頃にないことをするのを目にして不甲斐なき思いをいたすのは家臣の方でござろう』と稽める。
後に帰ってきた家臣たちの中にはせっかくの干飯がダメになって落胆する者もいるが、長年使えてきた重臣は宗茂の主たる態度に胸を張る。
武士は食わねど高楊枝の更に上をいく、主たる矜持に切なくなるも感心する。
その後、大坂城での戦いを前に徳川家に召し抱えられることになるのだが、宗茂は最初徳川家康に対してあまり良い印象を持っていない。
それはいわゆる真っ向勝負ではなく、『汚い手を使っ』た天下取りだったからだ。
しかしそこにこそ家康のいう『徳川の義』があることを知り、将軍家に『立花の義』を尽くそうと決意する。
この作品には様々な『義』が登場する。
『徳川の義』に『真田の義』、家康に仕え様々な謀を用いてきた本多正信にもまた彼なりの『義』があった。
印象的な人物は正室の誾(ぎん)千代。
父・道雪から立花城の城督を譲られていた彼女は、宗茂を婿養子として迎える際に『この城の城督はわたくしで、あなたは代官です』と言い切る。まるで「女城主直虎」のようだ。
女ながらに武者姿で屋敷を守り、夫・宗茂を助けるために清正勢に向かって女武者たちに銃を撃ち牽制したり、賊に襲われていた公家らしき姫君を助けたり。
これほど勇ましい女性だけに周囲からは『鬼女』と呼ばれることもあるようだが、宗茂にとっては優しい妻であり同志だった。
宗茂が京で耐え忍ぶ生活をしている最中に病死してしまったのが残念。しかし妻亡き後も宗茂は常に彼女のことを思い、彼女なら何と言うだろうと考えながら���動している。
当時の男性だけに側室や継室もいるが、いずれも自ら積極的に動いたということではなく成り行きでそうなったという感じ。実際のところは分からないが、主として慕われるのとは違いモテモテというタイプではなかったようだ。
十九年の時を経てついに旧領へ戻るシーンは感慨深い。心の中で亡き妻と対面するのも映像が見えるようで良いシーンだった。
何より不遇の時をずっと支えてきた家臣たちの感慨は如何ほどだったろう。共に『夢』を持ち続けて良かった。
いつか大河ドラマの主役に取り上げ欲しいなと思う。