紙の本
独特の世界観はあるものの
2015/12/17 10:14
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投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
道尾作品はいつも、独特の世界観に包まれている。それは物語全体を飲みこんで、靄がかかったような、何とも不思議な物を感じさせる。そしてページが進むに連れその靄が段々と晴れていき、これまた独特で不思議なエンディングを迎えたりする。その独特の感触が非常に気に入っていたりするのですが。
本作品も、やはり序盤からどうにも掴みどころがない感じ。タイムカプセルに入れた未来の自分宛の手紙に、ひどいいじめをしてきた相手の名前を綴った中学2年生の敦子。それを何とか取り戻したいと、主人公の同級生逸男に頼む。どうやら敦子は、いじめを苦に自殺を考えているらしい。また逸男は旅館を営む家庭で暮らしているが、どうやら一緒に暮らす祖母いくには、過去に何か秘密がありそう。この二つの問題が逸男を悩ませる。そして逸男が出した、答えとは。
いわゆる道尾ワールド観は他作品に比べれば薄い感じですが、独特の郷愁は漂っていますし、また他の作品にはない甘酸っぱいような感覚も感じられました。ただいわゆるサスペンス的な仕掛けはないので、そこらへんを期待して手にするとがっかりになっちゃうかも。
紙の本
描写が丁寧
2015/11/05 13:17
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投稿者:akiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
道尾作品はどれも描写が丁寧なところがいいです。重苦しいところもあるけれど、私は最後は救いを感じられました。
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道尾秀介で少年が主人公なので、てっきりミステリだと思っていたのだが、切ない青春小説だった。
ある程度、ミステリ的な構造を持ってはいるが、登場人物の過去や心の動きがメイン。
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道尾さんらしい心の描写が綺麗な作品でありながら、
物語の情景が最後まで響かなかった。
ダムに沈んだ村、その村に大事なものを置いてきた祖母、家庭環境から執拗ないじめをもらうクラスメイトと、旅館の息子として平凡に過ごす主人公の想いを描いた作品。
ちょっと苦手は道尾作品でした。
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どこかに大どんでん返しがあるのかなと思いながら読み始めましたが、そういう感じの作品ではなかったんですね。どこかノスタルジックで感傷的な作品でした。
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タイムカプセルに託した未来と,水没した村が封印した過去,時計の針を動かす彼女の嘘.同級生の敦子に学校に埋めたタイムカプセルの手紙を取り換えたいと懇願される逸夫.
彼女の秘めた真意とは.すっかり騙された.道尾作品なのだから当然と言えば当然かな.ちょっと切なく物悲しいミステリ.面白かった!!
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平凡な毎日を憂う逸夫は文化祭をきっかけに同級生の敦子と言葉を交わすようになる。タイムカプセルの手紙を取り替えたいという彼女の頼みには秘めた真意があった。同じ頃、逸夫は祖母が五十年前にダムの底に沈めた「罪」の真実を知ってしまう。それぞれの「嘘」が、祖母と敦子の過去と未来を繋いでいく。
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初期の作品と比べると、随分趣が変わった作品だ。悲劇が起こるかと思いきや、ハッピーエンドで終わる。途中重苦しい雰囲気が、最後は清々しい気持ちにさせられる。
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相変わらず秀逸な題名を用意する作家だと、読んでいる最中に何度も頷いてしまった。言葉に出来ないもどかしさが言葉で表現されていることにも驚いてしまう。蓑虫と人間の共通点。何の意味もないかもしれない、けれど必要だった儀式。乗り越えるため、そして忘れるためには。
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光は、闇があるからわかる。
闇は、光があるから感じる。
それを本当に濃く、感じた物語だった。
ふたつの、全く時代の異なる出来事が同時に明るい場所に出てこなければ、全く違う夏を彼らは迎えていたんだろう。
皆でダムに行くこともなく、光を改めて感じることもなかったかもしれない。
光は、闇があるから気付く。
闇は、光があるから生まれる。
誰のなかにもあるだろう闇と、誰もがきっと見つけられる光。
自分の日常を、どんなかたちにだとしても変えていくのは、自分でしかないのだ。
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なかなか奥が深い作品。いくつかのトリック的な事もありまんまと騙されてしまった。でも結果的には騙されよかったかな。
内面や目に見えない事を言葉にしたり、内容にするのがいかに難しくまた、それを読者にわかりやすく想像させてくれる道尾秀介はやはり凄い。
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おばあちゃんの過去が胸に迫り、いじめに苦しむ敦子の現在とリンクするクライマックスはとても美しかった。過去を変えても未来が変わるわけではない。都度、埋葬と、再生を繰り返して、進んで行くのだと。
しかし騙されました。読み進めても暗い結末しかないと思い込んで読んでいました。さまざまなピースが終章で綺麗にひとつにつながる手法はさすがです、道尾先生。
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確か、数年前に道尾秀介氏が「情熱大陸」に出た時、執筆していたのがこの小説ではなかったかな。
いじめ、自殺、そして成長…と、道尾作品にとってはいわば定番とも言えるような舞台設定がなされ、プロット自体もシンプルで、込み入ったミステリーなどのような仕掛けはまったくない。
にも拘わらず、真骨頂とも言える叙述的な筆運びや、"天泣"、"蓑虫"、"お化け屋敷"などといったモチーフを巧みに絡める高い技術と相まって、しっかり読ませる力はさすがだ。
終章に入ってからの盛り上げ方など、本当に上手いと思う。
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辛い生活の渦中にいながら隠している敦子。辛い過去を隠し通して生きてきたいく。逸夫が取った行動の波紋にドキドキする。逸夫が考えたことに同意する時もあれば疑問を感じることもあったけれど、最後の場面ではあぁ良かったと思えてほっとした。
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老舗旅館の長男である主人公の少年・逸夫を中心として、その祖母、同級生の敦子がそれぞれかかえてきた秘密を巡る切ない物語。タイムカプセルの手紙を取り替えたいという同級生・敦子の頼みを聞くことにした逸夫。同じ頃、逸夫は祖母が50年前にダムの底に沈めた「罪」の真実を知ってしまい…。この著者のトリッキーな作風はミステリに限らないので最後まで飽きないのはたしか。でもやっぱりミステリ作品での大どんでん返しみたいのが好きっす。本作もノスタルジーな雰囲気で興味深く読めたけど、最近この感傷的なパターン多くてそろそろ食傷気味かも…。