紙の本
ひねりのきいた雰囲気はいい、でももうひと押しほしい気も。
2015/09/21 16:25
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょっと皮肉をきかせた、明るい短編集というところだろうか。そのひねりに、にやりとくるところもあれば疑問を感じるところもあり、共感できないところもあり。
例えば、何でもきる彼女が隠していた「片づけができない」という欠点が明らかになる話。料理の終わった後の台所がぐちゃぐちゃだったというが、それは片づけの良し悪しと言うより、むしろ料理の慣れの問題では…。料理ができる人ほど片づけながら流れを考えてやるものだ。片づけの話をしたいなら料理と切り離すべきだった。
よかったのは、「ラストシーン」。キューバへ向かう飛行機の中、どんでん返しがある映画の結末を客のひとりに見せるかどうかで、キャビンアテンダントと他の客が対立する。それは単なる映画を見るかどうかに留まらず、共産主義の国から外国へ出る機会はほとんでないという話につながっていく。ある意味ヘヴィなテーマを含みつつ、話自体は軽やかなテンポで進んでいくところがうまい。こういう話がもう少し多ければよかった。
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この本、「架空の球を追う」からの続き物だったのね。
前作は全般的に薄味と評して★★しかつけなかったのだけれど、買ってからそれに気がついた。
私、この作家を別に嫌いでないし、「カラフル」や「DIVE!!」なんかは良かったと思っているのだけど、これらの短編集にはいまいちピンと来ないですね。
今回も強いてあげれば、暗闇の中でそこだけ白々と照らされたサーチライトの下で黙々とスコップを振るう若者の姿が目に浮かぶ「夜の空隙を埋める」くらいかなぁ。
解説の中で、「クジラ見」の主人公の男について『文句たれの鼻持ならない男という印象を持つが…愛らしい存在に思えてくる』とあったけど、男の私からすれば、彼は女の気まぐれに付き合わされる、端から可哀想な男にしか思えず、そういう捉え方ではこの作品は面白くないんだな、きっと。
この辺が、この作品に対して、クスリとなったりハッとなったりすることが出来る分かれ目なのかなと思った。
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短編集は作家の作風や文体を育てる(練習する)場所と以前聞いたことがあるが、とにかく短編がうまい作家も多い。森絵都さんと言えば個人的には『宇宙のみなしご』ご最高傑作だが、こうして短編を綴ってこれからも最高の物語を生み出してほしい。映像化も多いけど、映像化できない程の深淵なる物語をまた望んでいる。
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10編の作品を収録した短編集。
状況も、登場人物もバラバラの短編ですがそのいずれにも共通しているのは、どこか身近に感じられる登場人物たちの心情や語り口、少しの毒とユーモア、
そして読み終えた後鮮やかに登場人物たちへの思いや、作品からみえる風景が反転することだと思います。
収録作品は、どれも劇的な場面を描いているというわけではありません。たとえば、
工事による停電に悩まされる二人の女性が文句を言いに夜の街に繰り出す「夜の空隙を埋める」
伊勢丹に訪れた女性を描く「クリスマスイヴを三日後に控えた日曜の……」
フリーライターの女性の仕事上の一つの後悔を描く「竜宮」
国際線のフライトの着陸間際、最後まで見られなかった映画をめぐって話が展開する「ラストシーン」
正月に実家に帰ってきた息子と母を描く「母の北上」
女性作家が”ひげ人形愛好会”に出席する表題作「異国のおじさんを伴う」などなど。
そうした短編たちから感じるのは、文章の上手さや日常を小説に昇華させてしまう、森絵都さんの視点の確かさ、そして、
人の愚かさや愛しさ、心情の変化やドラマが優しい視線で日常から抽出されていることだと思います。
小説の主流はやはり長編なのですが、こういう短編集ももっと読まれてほしいなあ、と読み終えて思いました。
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【短篇小説の素晴らしさに驚いてください】心に残る一行と、さりげない毒と、胸を震わせるカタルシス……。いま最高の短篇小説の名手が、人間の愚かさと愛しさを描きます。
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森絵都のショートをいつも完璧なストーリーだと感じます。もうどこも削る個所がないのではないかと感じます。無駄だと思っていた個所も最後の一行で生きてくる。どの話も暖かい思いに浸れます。
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短編集。読みやすく概ねユーモラス。
なんてことのない日常の誤解や気付きが語られる。
母の北上 が好み。設定も内容も。
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森絵都さん本人が短篇がうまくなりたいと思い、10年は続ける試みで現在も継続している作品集。
ブラックユーモアと人の持つ温かさが同居する、作者らしい一面がうかがえる物語10篇である。
お気に入りは「ラストシーン」。男の人生がラストの台詞に集約されて深い余韻を残す。私の最近好きな言葉が、イマジカbsの広告コピー「映画は人生でできている。人生も、時々映画でできている。」だが、そうだよなあ…。
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一時期ハマっていた作家さん。
ということもあって、ちょっと期待しすぎたかな…?特別な環境である必要はないけれど、切り取り方もストーリーも、今ひとつ、普通に感じた。前半のものが特にそう感じたので、全体的にそういう印象になってしまった。後半の4つは結構好きだけど。2014/11/23
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『風に舞いあがるビニールシート』『架空の球を追う』に引き続いての短編集。どの作品もひねりがあって面白いけど、森さんの作品としてはまあ普通かなあ。(もちろん高い水準の中での話です)
個人的にはクリスマスイヴの話が一番好き。割と軽めの話が並ぶ中で「竜宮」はちょっと異色。『情婦』はいつか見てみたい。
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森絵都は短編もいいなぁ。一つひとつは短い話なのに、登場人物の心情が凝縮されてる。「ぴろり」が特に好きだった。
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読み初めはなんだか、このストーリー展開になれないせいか、たいしたことないなあ、としか思えませんでしたが、3編を過ぎたころから、面白く読めました。一冊読み終わった後、あまり面白いと思えなかったものを読み返したら、うん、面白い。
つまりは、この雰囲気になれるかどうかなんだろうな、と思いました。
帯にネコのマスコットが本を読んでいるカットがあり、「ひげ人形愛好会から招待状が!?」と大きく書いてあったので、ひげ人形って猫のマスコット人形かと思いました。
ひょっとしたら、短編小説の典型、と言えるのかもしれません。
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10の短編。藤巻さんの道/夜の空隙を埋める/クリスマスイヴを三日後に控えた日曜の…/クジラ見/竜宮/思い出ぴろり/ラストシーン/桂川里香子、危機一髪/母の北上/異国のおじさんを伴う。
解説に「人々の心が動いた刹那を丁寧に掬った」短編集とありまが、まさしくです。様々な年代の男女を主人公に、様様な気付きの刹那が描かれます。例えば「藤巻さんの道」。とても魅力的で有能で家庭的に見えた女性が片付けできない人であることを知った男性がとった行動。気付いた直後の動きがハッとさせられるほど鮮やかで、その後の明るさを感じさせる作品が多く、楽しませてもらえました。
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森絵都さんの短編集のあたたかい雰囲気が大好きで、また手に取ってしまいました。母親のお茶目な頑固さ、藤巻さんの艶めかしさ、小池さんの包容力、停電の闇の隙間から見えた人生の機微、ヒヤリと差し込まれるミュンヘンでの喪失感。どれもがリアリティがあり、そして美しく、優しく、時おり哀しい。読んでいる刹那、ぽんとどこかに灯りがともりそうな、そんな1冊です。
好きな作品を1つ挙げるなら、やっぱり伊勢丹かなあ。どこか馬鹿馬鹿しい狂想曲を最後にくるりと転調させる、その鮮やかさに脱帽です。
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へんてこりんな話が多いけど。
でもまあいっか。
それぞれの人のちっぽけな毎日にもストーリーがありドラマがある。
そういうことが伝えたいのかな。
生きてるのって悪くないよね、みたいな。