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第二次世界大戦中のアメリカコック兵の奮闘記と書いたらなんだか軽く明るい話のように思えるし、最初はそんな雰囲気の出だしだったけれども読み進むうちに一人、また一人と仲間が死んでいってしまい読み終えたときはどんよりと心に重い気持ちが残った。
戦争もので明るくさっぱり終われるはなしなんてそりゃないわな。
軽い出だしだっただけに後半から立ち込める『戦争』と言う重いテーマが身に染みてくる。
明るい毎日も一瞬で打ち砕く。
親しい友もなにもかも、「もし」や「こうしてれば」なんて言う甘っちょろい考えは一切通用しない毎日。
そのくせ命をかけてまで一体何の意味があるのかも分からない戦い。
まったくもって戦争なんてなんの利益にもならん二度と繰り返しちゃいけないことだなと感じた。
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戦争中、兵士たちは過酷な状況の中でどう食事をとったのか。コックたちは何をどう調理していたのか?
そんな内容のノンフィクション、ドキュメントかなと思って読み始めたら、主題はそうじゃなくて落胆。
何回かやめようと思いながらがまんして読み進むうちにどんどんひきこまれて、最後の章で9回裏満塁サヨナラホームラン!重厚な読後感に浸ってます、。
戦争中に発生するミステリーの謎解きという単純な内容でなくて、そこに人間ドラマと緊迫感、悲惨さ、友情が見事にちりばめられています。資料を集め、多くの文献を読まれたことでしょう。著者の筆力に感服しました。
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え、ノルマンディー上陸作戦…から?
これはひょっとしたら苦手なジャンルの小説か?作者は日本人なのに、連合国側からの第二次世界大戦のヨーロッパでの攻防を…という内容にまずためらってしまいました。が…
戦争中だって当たり前だけど、食事はとらなきゃならない。というわけでの戦場のコックたちのストーリー。
一見、日常の謎を解いてゆくという手法ではありますが、やはりそこは戦場。読み続けるのが切ない箇所も多々あったのですが~
そして明かされ始める個々の人物の事情等々。こんなに心地よい涙を流したのは久しぶりでした。映像化が可能なら是非とも!
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日本人がDデイ以降のヨーロッパ西部戦線を舞台にかなり良質なミステリーを書いたと聞き及んだので、予約待ちして読んでみた。
戦争という非日常の中のプチミステリーを、特技兵(炊事をするコック)たちが解いていくという展開。小さなミステリー一つ一つを解いていく各章も面白いが、その背景にしっかり戦争を描けているのが良い。カッコ良さを排除して兵士という目線をこれだけしっかり読みやすく書ける筆者の力量はかなり高いと思う。
小さなミステリーが、伏線になって繋がるラストがまた素晴らしい。戦争なんてやったらアカン。ほんま絶対やったらアカン。ミステリーを通じてそのテーマがくっきりと浮かび上がるブレない筆が読んでいてたまらない。2段組み350Pはそれなりのボリュームだが、その文章量以上に読みごたえを感じ、感動よりももっと深いところで心を動かされた。
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≪Armed with Skillets≫
本を開けば2段組み.
ページを見れば350ページ.
でも,一気に読んでしまうほどのめりこんでしまった.
タイトル通り,主人公は戦場でコックを務める青年.
コックでも,戦場へパラシュートを使い降り立ち,銃を握らなければならない.
そんな気晴らしに始めた,謎解き.
そんな謎解きが気になって読み進めたけれど,「謎を解いている景色が終われば,いや解いている最中だって,いつだれが死ぬかもしれない戦場に彼らはいるんだな」と普通のミステリでは考えないことを考えた.
いつの間にか謎解きよりも,とにかく,彼らが生き残ってほしいということだけを考えて読んでいた.
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戦争の話は、ほとんど読まへんねんけど、すごくすごく良かった!
まるで翻訳本を読んでいる感じ。悲惨なことも起こるけど、悲壮感があまりなく淡々とした語り口が良かった。
戦場のいつ戦いが始まるのか分からない不安定な空気とか、一緒に戦ってきた仲間が死んでいくとか、身につまされた。
やっぱり戦争は、イヤだ。
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このミスで2位になった作品なので読んでみたのですが、ミステリとしての完成度の高さもさることながら、この若さにして第2次世界大戦をここまで書き込める力量にも脱帽です。改めて戦争の悲惨さを再確認させられました。
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祖母の影響で、コック兵となった19歳のティム。彼が仲間ととも戦う第二次対戦のヨーロッパ戦線と調理と謎解きの日々を連作形式で描く長編。
最後のページを読み終えたのに、なかなか本を閉じれず、そのまま読後感を味わっていたい本に、年に数冊出会うことがあります。
この本もそのうちの一つです。
人が人を傷つける事は多いけれど、その中でも、戦争は最も多くのものを傷つける。そして絶望をもたらす。
物語の中に、謎解きがあったりするけれど、やっぱり絶望の方が大きかった。
思ったより内容はハードだった。
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アメリカの片田舎の雑貨店の料理が大好きな素朴な青年が第二次世界大戦のヨーロッパ戦線線に空挺師団の隊員として参戦。食事を作りながら戦い、最後まで勝ち進んでいく。
戦いの中で事件を解決したり、仲間との友情を育んだり、戦友の戦死に喪失感を感じたり、敵兵を殺した自分の罪悪感と戦ったりする。
戦争に翻弄される人間の姿を暖かく、冷徹に描いた傑作。
昔読んだマッシュを思い出した。
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第二次世界大戦末期、かの有名なノルマンディー上陸作戦から始まる怒涛の戦闘。隣の兵が当たり前のように命を落としていく生死の壁が極めて薄い日々の中、それでも人は腹が減り食事が心身をいやし、そして謎が生まれて解かれていく。
生き生きとした人物描写と鮮やかな謎の提示と解決、読みやすくてきぱきして、そして情緒にも満ちた巧緻な文章。そんな、著作が2冊目だとは思えない手練れた重厚な内容は、そもそも戦争のさなかを生き抜く兵の物語でありながら、意外なほど読みやすくて驚きます。
けれどもあまりにもあっけなく人は次々と死にゆく状況は悪化するばかりで主人公たちばかりでなくこちらも疲弊する思いを抱くのも確か。
戦争は何もかもがあまりに無慈悲で残酷で、失ったものは大きすぎるし多すぎる。それに相対していた日々を終え、目指していた平和の場に戻ってきたはずの主人公の茫然とする様子が深く、心に響きました。
それにしてもいったいどれだけの資料をどんな風に咀嚼していったんだろうとも思います…。
戦争小説としてではなく、読み手が楽しめるように心配りがされたミステリとしてとても上質に仕上がっているだけに、余計なことながらそう思わずにはいられませんでした。
きっとまたじっくり読ませてくれる作品になるだろうと思うので、次作を(ゆっくりと)楽しみに待ちたいです。
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美味しいものを食べた日も、仲間と笑いあった日も、ちょっとした謎を友たちと共に解決した日も…そして友が壊れた日も…たくさんの命が呆気なく消えていく。あぁ、これが戦争かと改めて思い知らされた。幸せと思った瞬間さえ業火の手の内なのだ。本書は戦争の悲惨さの間に仲間たちとの友情や、彼らが生み出す美味しいもの、そして少しの謎解きが挟み込まれ、その度に安心するとパタパタと目前に息しない人たちが転がっていく。そのコントラストに胸が軋み、戦争の恐ろしさがさらに身に重くのしかかった。終盤ティムがレシピをひたすら読み上げる場面が素晴らしい。
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第二次世界大戦で戦地で兵士の食事を提供する特技兵のティム。見た目からキッドと呼ばれている。戦地にいるコックの視点で語られた戦争の話は新鮮だった。破壊と殺戮の戦地で、兵の命をもたせる食事の担うティム。人を殺すために人を養うという行いが、余計に戦争の愚かさを際立たせる。
さて、この作品では、脇役のエドがいい活躍をする。戦地で不思議な出来事があるのだが、そのものが謎をエドが解くのだ。最初の謎は、仲間の兵士がパラシュートを集めている謎。余っているパラシュートを渡すとアップルシードルと交換できる。この作品では謎は戦争中でありながら微笑ましいエピソードとして読める。これがだんだん戦争中に相応しい謎となり、幽霊話まで行き着く。だんだんと戦争の狂気を読者に感じさせる仕掛けだ。
全体的には緊迫した戦地での殺し合いを悲惨に語るのではなく、コックという人を生かす役割の人が、人を殺したり、ユダヤ人収容所の痩せ細った人を描写することで、恐ろしいほどの生と死の対比をしている。謎解きは戦地の悲惨ではない日常を描きながら、いつの間にか狂気の世界に導くための小道具のように読めた。生と死を強烈に感じさせる本作品は、さくさくと読めるし楽しいシーンもたくさんある。だけど、そこには死と狂気の世界があることをきちんと主張している。
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深緑野分のミステリー長編。Armed with Skilletsという英題や表紙に使われている絵も実は素敵な作品。
ストーリーは、第二次世界大戦中のアメリカ、若きコック兵たちの友情と成長をテーマに、部隊で起こる不可解な事件を解決するというミステリーの要素を入れた戦争小説。テイストは、柳広司のジョーカーゲームにも近いか。
アメリカ兵がドイツとのノルマンディー降下作戦から話が始まる。主人公の通称キッドは、新人兵から、周りの死を乗り越えて成長し、生について考えて行く。でも、コック兵として頭角を表し、その腕で兵達の士気を上げて行く。コック兵として作るものって何だろうなという興味もあるが、詳細さ記載と表現で、戦争中に食を支える仕事の重要さも感じることができる。サスペンス自体の部分はそれほど多くなく、人物描写や、戦争そのものを描くことで人間関係の難しさを際立たせる。極限状態でどういう判断をするのかという戦争の惨さ、その中で兄弟とも呼べる仲間に出会ったこと。こうした背景がドラマに厚みを持たせている。
このミスの2016年第二位に輝いた作品。ハリウッドで映画化でもできそうなストーリー展開だ。
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ノルマンディー上陸作戦、「プライベートライアン」の映像が浮かんだ。
戦争物なのか?と思いましたが、戦時の中で起こるミステリーを解いていく感じでしたね。
最初は軽い感じに思いましたが、だんだん、最前線に駆り出されたり取り残されたり、戦友が死んでしまったり心を病んでしまったり…意外と重かったです。
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一人の青年が大した主義主張もなく第二次世界大戦でドイツと戦ったストーリー。
ミステリーもよく考えられていて読み応えがありました。
それにしても人はどうしてこんなに簡単に死んでいくのでしょう!
ハリウッド映画で見たことのある映像が思い浮かびますが
活字の持つ力を改めて感じさせられました。
映画より ずっと怖い!