紙の本
又吉より良い
2015/10/05 06:04
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞は「火花」ばかりに注目が集まってしまったが、文章の上手さ、ち密さは、この人の方がはるかに優れている。「火花」がなければもっと…と思っていたら、段々、注目されてきた。楽しみな作家だと思っている。
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芥川賞の2作受賞は妥当だったか
2015/09/05 07:00
7人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第153回芥川賞受賞作。
この回の芥川賞は久しぶりにニュース性を持った内容となったから、2作品のW受賞ということは多くの人が知っているだろう。
新人賞という賞の性格からすれば、できるだけ多くの人に与えることは悪いことではないが、今までの受賞作あるいは芥川賞という社会性から見て、評価は一定の水準を維持しなければならない。
そういうことを思えば、果たして今回の受賞はW受賞とすべきほどの水準を2作とも持ち得たのだろうか。結論からいえば、又吉直樹氏の『火花』一作でよかったのではないか。
総合誌「文藝春秋」に掲載された芥川賞選評を読むと、同じ回の直木賞選考の高揚感がないのが残念である。そのせいか、選評そのものも面白くないのだが。
羽田圭介氏のこの作品は「介護問題」を扱った作品で、「死にたい」が口癖の祖父とならば楽に死なせてあげるのが孫の務めと日々自身の肉体改造に励む青年の物語。
そうい青年もいないわけではないが、「介護問題」を扱うにしては、漫画的だ。その一方で、口では死にたいと言いつつも、こそこそと生きようとする老人はあまりに類型化されている。
選考委員の一人高樹のぶ子氏はこの作品の「祖父と孫の接点は、煮詰まった鍋の底のように切実」と書いているが、私には何が「切実」なのか少しもわからない。
奥泉光委員のいう「素朴に心を揺さぶるような展開や描写がもっと欲しい」という意見に与するものだ。
しかし、このことにも注意しなければならないのは、「介護問題」を扱った小説だから「心が揺さぶられる」ことが必要だということではないことだ。
物語の構成として、この作品にはそれが欠落しているということだ。そういう重要な欠点を持ちながら、奥泉委員は「受賞作に、との声には反対しなかった」のは、どういうことだろう。
もう一度最初の問いに戻るのだが、果たして今回の芥川賞は2作品受賞の水準まで達していたのだろうか。
こういう時に石原慎太郎氏が委員であれば、どう作品を評価しただろう。そのことが気になって仕方がない。
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綺麗事でない現実のなかで、一気に読まされた。
2022/07/04 10:14
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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
介護、老い、第二新卒・・・様々なキーワードが、日常のなかで覆い被さってくる。
綺麗事でない現実のなかで、一気に読まされた。
バラエティの出演などで「又吉じゃない方受賞者」として?
個性的な一面のみ取り上げられることも多い筆者だが、現実を書き出し、えぐられる感じがした。
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いままで読んだことがある羽田さんの作品の中で、すごく読みやすかった。わたしの家にも要介護の祖父母がいるからかな。年代も近く、立場的なものも近いからかすごく感情移入した、健斗に。ちょいちょいぐっとくる台詞回しがあった。太り気味のでメンタリティーの低い彼女に、もっと、俺に優しくしてくれたっていいじゃない、彼女だろ。という箇所があるんだけど、わたしも3日前に恋人に同じようなこと言われたなーと笑。あーって思った。自分がしてる数々のひどいことは棚に上げて、会いたいセックスしたいをストレートに出し、それを断るとそういうこと吐いてくるのか、と。
ラストらへんが泣ける。お風呂でちょっと目を離した隙におぼれてしまった祖父。死ぬとこだった、と、あんなに毎日死にたい死にたい言ってた祖父からついで出た時、健斗はその一言に、一畳半ほどの脱衣所で平衡感覚を失い、おぼれそうになった。違ったのだ。こうして孫をひっぱり回すこの日とは、生にしがみついている。(p116)
芥川賞にふさわしいって思います。これこそ純文学。いい作品。
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結局爺さんの死への過剰介護も中途半端で、自分の就職が決まり家を出る主人公。
なんだか、飲みこめない話。
爺さんは、性欲も生への未練もある。
人には、「早く死にたい」ようなことを言い、自分では何もしたくない。
やればできる。
フリーターの彼女持ち孫が、爺さんの死への介助、
自分の筋トレ、
で、新たな自分の肉体、
自分の年とった時の肉体はいかに?
など、発見は多々あり。
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読後感としては、”気の毒”である。
老人と介護する孫の、2つの軸で主人公の一人称によるストーリー。
誤解を恐れずに言えば2者はスクラップ(去りゆく世代)とビルド(繁栄して行く世代)であり、
介護問題のミクロな現場感を描いたある意味社会派なテーマだ。
性の扱い方に対して、若干の違和感というか、
生々しさといやらしさを感じました。
分量的には読みやすいのかもしれません。
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対比がはっきりしている小説。
→https://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-12067899154.html
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マツコが出ているテレビ番組で作者の羽田さんが出演されていて、何となく見ていた夫がかなり気に入り(羽田さんを)応援する意味を込めてこちらを購入。で、便乗して読みました。ちなみに芥川賞のもう一人、又吉さんのは未読です。
純文学って苦手なんだよなーって思いながら読み始めましたが、思ったより文章が読みやすくてすらすらっと読了。
無職の青年と死にたがり老人との攻防戦ってあったから、無職=どうしょうもない青年って図式が成り立っていたら意外ときちんとした主人公でびっくりした。
5年間の会社員時代を経ての無職やからか、考え方が割としっかりしてる。だからか読んでいてもイライラしなかったような。
そして、老人の方言がうまい気がする。九州弁知らないけど。母親(老人にとっては実の娘)と祖父の関係性もかなりリアル。確かに父と娘ってこうなることあるかもなぁ。
ちょっと残念なのが、彼女との別れのシーンがなかったこと(本当にフェードアウトだったのかもやけど、もうちょっとはっきりしたのが欲しかった。でもイマドキの子はあんなんなんかな?)と、祖父の変化がもうちょっと明確にしてほしかったかなぁってところ。
たぶん、祖父は主人公が思うほど死にたがってもなかったし、要介護3から5にするための主人公の尽くし方によって逆にどんどん生きる気力を見つけた……ってことなんだろけど、ピザの下りとか介護士さんへの色目とかいきなりすぎたような気が。
でもまぁ、あまりスポットライトが当たらない「介護」と「転職(再就職)」というテーマで書かれたのはかなり貴重やと思うので、☆4で。
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(2015/10/22読了)
高評価が私にはわからない。やっぱり芥川賞とは相性が良くないみたい。
可笑しみが漂うのは少しわかるけど。。。
既読の作家さんだと思ってたけど、初めましてだった。アンソロジーでも読んでないみたい。
ずっと以前に2作チェックしてあるので、読んでみて、羽田作品との相性を確かめようと思う。
(内容)
「早う死にたか」毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。日々の筋トレ、転職活動。肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して…。閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説の誕生!第153回芥川賞受賞作。
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ーーー「じいちゃんが死んだらどげんするとね」ーーー
第153回芥川賞受賞作。
介護と尊厳死がテーマの本作、とても読みやすかった。
究極のやさしさは、ある種の狂気と紙一重なのかもしれない。
なにかを信じこんだ人間が発する強い感情の怖さみたいなもの。
目に見えない、でも確かに存在するものを文章に、小説に載せることが巧みだと思う。
著者のデビュー作、『黒冷水』から通じる、仄暗い人間の心理みたいなものが、この作品にも一貫してあるなあと、懐かしく感じた。ひさしぶりに読み返したい。
介護する側、される側、どちらにもある負のイメージを、わりとポップに表現しているとおもう。
これ、書き方によってはほんと、不幸のどん底みたいな話になってしまいかねない。
そうしないところが、バラエティで垣間見せた著者のユニークさからきてるとわかるとストンと腑に落ちる。
最近観たという、白黒の音速を超える映画の話はちゃんと本作にも反映されていた。
たくさん売れて印税はいることを願っています!
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2015.8.9読了
長崎弁が所々中途半端に間違えていて読書欲を削いだ。
自分の境遇と主人公が重なるところが多いから共感しやすいかなと思ったけど、
そうでもなくストーリーが無機質なような、少し冷たい感じがして好感が持てない。
(私の好み合わないだけだと思う)
同じ芥川賞作品の火花と比べると、理詰めの話の展開に温かみや人物背景のリアリティに欠ける印象を持った。介護問題というシビアなテーマだから厳しさを前に出す作風にならざるを得ない部分はあったかもしれないが。
その人が形骸的に「死にたい」といっているだけなのか、
心の叫びとして「死にたい」といってるかの見分けはなかなか難しい。
時間の瞬間瞬間で本当に「死にたい」のかという真実は変わり続ける。
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楽にさせたら早く逝けるから甘やかす主人公と甘えるな!のお母さん
じいさんがうざい 主人公は天然 お母さんは怖いけど筋が通っている
中途半端に助ける親戚 だらしない彼女 筋トレじいさんが性欲 風呂場で死にそうに やっぱり死にたくなかったのか… ラストがいい
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2015/8/10
28歳無職の健斗と、「早くじいちゃんなんか死んだらいい」が口癖の祖父。
若い世代は年金を払い損だと思っていて、老人は死にたいといいながらも生にしがみついている。弱る祖父よりも自分は未来がある、と祖父を心の支えにしていた様が苦しかったな。
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無職、怠惰な日常生活、体力・精力無く体調不良の主人公は、まさにスクラップ状態。死にたいが口癖の要介護老人の祖父もスクラップ状態。と、思いきや実は結構深慮遠謀だったのか、というところが深読みさせて面白かった。主人公がそんな祖父に関わっていく過程が、実に生き生きした描写で、ちょっと笑わせてくれたりするのも魅力的。祖父との関わりの中から主人公がいつの間にか生きるチカラを得ていくようで、これがビルドなのか。祖父も孫との関わりからビルドされていくかのように。
ラストは小説の終わりだけど、健斗と祖父は生きていく道の途上、To be continued
人と人がどんな形にせよ関わり続けることが、生きていくことなのかな。老人介護を背景に重くなりがちなところ、何だか突き抜けてる感があって好きな作品です。
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面白いか面白くないかとかいう本ではないと思う。在宅高齢者と再就職活動中で不安定な孫、高齢者の在宅看護の難しさと誰が看るのという問題。困ったことを抱えながら皆生きている。これからも、問題は解決しない、きっと色々あるだろうと思わせる終わり方。日常を描いているが、新鮮だった。いつ看られる側、看る側になるかもしれないなと思いながら読んだ。