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三十歳 みんなのレビュー
- インゲボルク・バッハマン (作), 松永 美穂 (訳)
- 税込価格:946円(8pt)
- 出版社:岩波書店
- 発売日:2016/01/15
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紙の本
すべて、という言葉の奥にある悲しみ
2016/10/24 16:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ましろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
子ども時代への追憶、生きることへの渇望、人間の精神とその行為についての果てのなさ、真実を求めてゆく思考の論理、誰もついてこられぬような孤独など、そこに横たわる心情の繊細な動きや人間の切実さ、滑稽さを感じる物語たち。とりわけ「すべて」での、置かれた関係への準備ができぬまま、冷やかなまでに観察する視点の中に、だからこそ滲み出る愛を感じて惹き込まれた。すべて、という言葉の奥にある悲しみ。そこに含まれた愛情を感じるほどに、そのすべてが切なくも苦しくも迫る。葛藤多き視点の詩的な語りは、心の在り様を立体的に魅せた。
紙の本
彼女にとってのソドム
2020/01/04 08:54
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
オーストリアは二つの世界大戦でひどい目にあった。第一次大戦で帝国は崩壊し、大インフレは学校の授業の題材にされた。第二次大戦ではナチスの協力者として糾弾される。そんな時代に育った若者の世界観はどういうものだったろうか。
パリからウィーンに帰郷した青年への試練は、自身の弱さや不運のせいのようでもあるが、たぶん少しづつ時代の相がずれてきていることに気づけないせい「三十歳」。
自分が子供を持つようになった時、そこに込める思いには、世界の厳しさが反映されてくる「すべて」。
実際、あの戦場から帰った者たちが、以前と同じに生活を営むことができるだろうか。それはどこの国の兵士でも同じはずだ。生きていく手段を見つけることで頭がいっぱいという様子をしていても、悪夢に襲われ続ける日々を過ごしているのかもしれない「人殺しと狂人たちのなかで」。
ある既婚女性が美しい少女に告白される「ゴモラへの一歩」。それは戦後の文化、風俗の爛熟の中の出来事であるが、男に尽くすことを目的としていたこれまでの人生が、尽くされる側になるという視点の逆転をもたらした。それは自分の位置の発見と同時に現れ、フェミニズムの萌芽であり、発表当時はそうと気づかれず、理論武装も組織もなかったかもしれないが、20世紀でも先駆的な意識だったのではないだろうか。ただ個人の内面を見つめていたらこの鉱脈に当たってしまったのか、作者の継続的な問題意識や、例えばボーヴォワールとかの背景があってのことなのだろうか。
ある殺人事件の裁判の途中で裁判官が真実なんてやめろと叫び出す「一人のヴィルダームート」。誰もかれもが真実について話し、自分の主張こそが真実だと主張するが、そんなものは誰にも分かりはしないのだ。人間には世界のごく一部についてしか知ることはできない。それでも誰もかれもが自分こそ真実を話していると言う。事件後の裁判官の独白によって、彼の身の回りから世界の状況まで真実についての疑いが指弾されるが、何ものにも影響することはない。
「ウンディーネが行く」ライン河の伝説の水の精だが、彼女のこれまで出会った男たちについての独白。つまりこれまで無数に見てきた男たちの身勝手な欲望、誠実な愛といったものを、まとめて語ってるわけで、これもウンディーヌという架空の存在を借りて女性の赤裸々の本音を語る。
まあ全部が全部、赤裸々づくしな作品ばかりなのだが、内面を見つめる行為を徹底した先で、時代の暗い部分や、受け入れられない部分があらわにされてくる、そういうことが読んでいて突き刺さってくる。
紙の本
詩人が書く小説
2016/08/13 16:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コピーマスター - この投稿者のレビュー一覧を見る
詩人が小説を書くとこうなるのだろう。濃厚過ぎて中々読み進められないが、じっくり読むと天才的な出来であることがわかる。
その中で「一人のヴィルダームート」は小説らしい面白さもある作品であった。ただしやはり「三十歳」がバッハマンの真骨頂であろうと思う。
紙の本
抑圧と自由の7編
2016/03/29 07:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者が描くウィーンの街並みは、全体的に重苦しい。戦争の爪痕や独裁者ドルフースの影が見え隠れする。言葉で自らを表現する小説家だけに、言葉を奪われることを何よりも恐れたのだろう。
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