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公房最後の長編とあり、かなり意味深でもある内容でした。
死をテーマに描写されていて、半分まではまあまあ笑って過ごせるが、後半からシャレにならない内容になり、かいわれ大根の行方は結果、主人公の生命であることが解説で分かりました。
かいわれ大根が萎びていけばいくほどに、主人公の場面の置かれている状況が、どんどん死へと近付いていく。
何故、かいわれ大根なのか若干不明ですが、たぶん生命力の強さかなと認識しました。
ラストの新聞記事で、バン!と謎が解ける、公房のトリック。
改めて嵌りました。
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読んでいくうちに、主人公にとっては何処までが現実で、どこからが現実ではないのか、分からなくなってきた。
でも、所々シュールな場面もあるし、色々なパワーワード的なものも出てくるので、全編を通して楽しく読むことが出来たし、何よりもユーモラスで読みやすかった。
とは言っても、安部公房作品は、砂の女とこのカンガルー・ノートしか読んだことはないが…
最後に現実世界で発見されて……と言う結末なのだが、この物語の中で起こっていることは、一体主人公にとっては何だったのだろう。どの時点からこうなっていて、どの時点で死んだのだろう。
何だかとても不思議な気持ちになった。
本当は脛からかいわれ大根なんて、生えて無かったんじゃないのか?でも、そうだとしたら最後の新聞記事は一体…何らかの理由で、廃駅の構内へ迷い込んでしまったのでは?全て(勤め先から何まで)主人公の妄想ではないのか?等々、考えてしまってこのままでは眠れなくなってしまう。笑
そもそも、かいわれ大根が脛から生えるって、とんでもなくシュールだなとか訳わからんと思うけど、読みやすさの陰には、実は「死」と言うものがテーマとしてあるらしく、そう考えると下水道以後は死後の世界?トンボ眼鏡の看護婦は何かのメタファーなのか?
もう一度読みたい。
1日あれば読めると思うし、気楽に手に取って読める本なので、是非読んで不思議世界を味わって欲しいですね。
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脛にかいわれ大根が自生するようになってしまった男が、ベッドと共に地獄巡りのようなことをする話。
不条理で前衛的でブラックユーモアのきいた悪夢が連続してあらわれるよう。
テーマは死らしいけど、そのへんは一回読んだだけではなかなかすんなりとは理解できなかった。
ただ、読む前は難解そうなイメージだったけど、読むだけならそこまで難しいわけでもなく楽しんで読めた。
68ページの大黒屋に入っていくときの格好の描写が面白すぎて笑った。
その格好を想像するとなかなかシュール。
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脛から、かいわれ大根が生えてくる。
自走するベッドに乗って死へと向かう話。
人想いに殺されず、惨めな気持ちにながら、だらだらと。
ガン特有の死の遂げ方。
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療養中に書かれた安部公房の最後の作品。
シュールレアリスム的であり、人生とは何かという自問自答が伝わってくる。
夢の中の夢。
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高校の教科書でしか触れていなかった安部公房。はじめて意識して読む。
文房具会社に勤める男。ある時、新製品の企画を出すように言われて、深く考えずにカンガルーのようなノートを提案し、採用される。その三か月後、脛にかいわれ大根が生えてくるというところから物語は始まる。あわてて病院に直行すると、硫黄温泉行きを命ぜられ、ベッドにくくりつけられて、自動的に動くベッドによって賽の河原にまで行ってしまうとい流れ。
なんというか笑ってしまう場面が多くて意外だった。
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安部公房最後の長編。
脛からかいわれ大根が生えてきた男が、夢と現実、そして死と生の環状線を走り出す。
個性的な登場人物たち。ユーモアあふれる表現。
それでいて死の臭いだけは常につきまとい、要所要所であらわれる「カンガルー」のフレーズも頭から離れなくなる。
パンクすぎる設定とストーリーでぐいぐい読ませる技はさすが。それでいて、考えさせられる読後感や諦めにもにた感想がどうしても生まれてしまう。
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きっとこの寓話の世界に比べたら、現実なんてバカくらいに単純で平凡なものなのだろう。大学の講義の合間に、あの広場のベンチで、ページをめくる指がスキップしていたのを今でも思い出す。 今ならぼくは、肘に豆苗を生やすだろう。
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天才。
これは夢か現実かわからなくなることが夢の中であるが現実の中で起こしている。
かいわれ大根やカンガルー、ベッドといった周りにあるものをあり得ないものと組み合わせて登場させる。それが癌を患わした自分と重ねているのか、それが小説だと主張してるのか。
人が死ぬときはそんなもんだと言ってるのかもしれないし自分の妄想で人は死ぬというのを言いたかっただけなのかもしれない。
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病床に伏した安部公房が、見た夢を記録したような断片的で脈絡のない文章。しかし、一貫して死について描かれているのは、やはり自身の死期を悟ってのことでしょうか。
個体としての死に向う中で、安部の高潔な精神と研ぎ澄まされた感性を垣間見ることができる作品。
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ところどころ意味はわからないものの、読みにくいということはなかった。結果的には著者の遺作になったものだが、テーマが「死」っぽいのは途中からなんとなく感じていたし、最後に何かもうそろそろ終わりそうだという雰囲気を感じることができた。
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もうぼくのことなんか忘れてしまったみたいだ。
胸がうずいた。
そうなんだ、他人の記憶の中で生きるのだって、
けっこう骨が折れることなんだ。
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ある日突然足に「かいわれ大根」が生えた。
病院へ行くと、医師から「温泉療法」を勧められ、彼を乗せたベットは目的地に向けて走り出した。
‥‥
起承転結とか秩序とか辻褄なんてものはなく、なんといえばいいのか。
ところどころ死に関連してる雰囲気が出ていて、この人どうなるんだろう?っていう疑問でずっと読み進めていた。
最後の結末を見ても、「そういうことか」とはならなかった。
2024年2月23日
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最初の出だしはかいわれ大根?!となりましたが、すぐこれは死の物語なのか…と話の中身は分かり易く、時々ふっと笑ってしまうタイミングが合って、読みやすかった。澁澤龍彦の『高岡親王航海記』、安部公房版ですね。
安部公房の半生全然知りませんが、これが自身の闘病生活を綴っているのだとすると(そのようにしか見えませんでしたが)、かいわれ大根とか言いつつ…とか、やはり排泄にまつわる辛さや、変わる視点・意識など、最後はこうなるのかとひしひしと思いました。ところどころで描写や文言がささって、ふっと笑うんだけど、笑った瞬間悲しくなってました。オタスケ オタスケ オタスケヨ オネガイダカラ タスケテヨの歌が本当に悲しくて…また読めないかもしれない、弱弱しさ・痛々しさが胸を打ったので。
ピンク・フロイドの曲を聞きながら
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安部公房全集29に所収のものを読んだ。読んだ、というか、訳が分からなくて飛ばし読み。
訳が分からない、は褒め言葉で、ものすごいぶっ飛んでいてついていけなかったということ。
なんだこれは。
会社の新製品開発提案箱に冗談のつもりで「カンガルーノート」という落書きメモを提出して採用されてしまった男の脛にかいわれ大根が密生する。
こわいー、脛がむずむずする。