紙の本
桜風堂ものがたりの姉妹編です。
2018/11/07 22:44
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
「桜風堂ものがたり」は、星野百貨店の中の銀河堂書店の
お話でした。この作品は百貨店で働く人たちの物語で、
作者の中では同時並行で構想が練られていたように思います。
本屋さんネタが書きやすくて先にリリースされただけなのかも
しれません。
あとがきによると、百貨店を舞台にした物語について、三年前から
着想が始まっていたとのことです。それくらい、二つの作品の
世界観がつながっていました。
全部で五篇と、幕間一篇の連作です。
第一話は松浦いさな、長身の若いエレベーターガールのお話です。
そもそもエレベーターガールって会ったことはありますか。
昨今は見かけませんけど、話に聞いたことがあるという人も
多いのでは。昔は、高級デパートに本当にいたのです。
世代がばれちゃいますね。
旧式のエレベーターを使い続ける星野百貨店は、
なんだかノスタルジックな雰囲気に包まれています。
売り上げも大事ですが、それ以上に文化の発信拠点であろうとし、
従業員の誇りを大事にする、アナログなお店なのです。
残念ながら、数年前から大手の百貨店系列の資本参加を
受けています。それでも古い慣習にこだわり続けます。
しかし百貨店大不況のご時世。利益率の低さから大手は
経営から手を引こうとし、星野百貨店がなくなってしまうかもしれない
という状況に追い込まれています。
でも、この温かい灯を消してまでお店の存続を望むのかという
ジレンマが、物語のあちこちに見え隠れします。
エレベーターガールのいさなに、乗り込んできた小学生の男の子が、
魔法の猫のことを教えてと聞いてきます。いさなは面食らいます。
でも、この街で生まれ育った人の間では、常識のように伝わる
うわさ話なのです。
会うと、たった一つだけ願いをかなえてくれる猫。
星野百貨店で会えるらしい。
じわじわと忍びよる不況の陰で、働く人たちはどこかのほほんとしたまま、
ちょっとした不思議に包まれていきます。
ゆるり、ふわりとした作品でした。
ゆったり楽しめますので、気軽につき合える一冊ですよ。
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は、老舗で存在自体が文化財のような小さな美しい百貨店。そして、魔法を使うという伝説の白ネコ、古風な手動式エレベーターとエレベーターガール、店を彩るステンドグラスなど、設定は非常に魅力的な要素満載なのですが、読んでいて今一つ入り込めないというのか、私にとっては残念な一冊でした。
それが現実だとはいえ、肉親との別れのシーンも意外と多く登場します。
もっとファンタジックな方向でも良かったのではないかと思いました。
(なお、タイトルは素直に「百貨店の魔法」ではなく「百貨」?
意味が込められているのかもしれませんが読み解けませんでした。語感の問題でしょうか)
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ゆっくりじっくり読める日を待ってしっかり堪能。
期待していた以上に暖かいものが心にあふれてきて、外出先で読まなくて大正解。
読み終えて、その本をしっかり抱きしめたくなるなんて、そうあることじゃない。その中のみんなが、とてもとてもいとおしくて。
謎のコンシェルジュ結子は、軽やかに星野百貨店をしなやかに、泳ぐように動き回っているようで、みんなが実は魔法の白い猫なのでは、と空想するのも不思議ではないみたい。
だからこそ、結子目線の物語が圧倒的に胸にせまってくる。
色々な人から見た結子がきれいに1つにまとまって、ああ、と胸に落ちてくる。
星野百貨店は、きっと、大丈夫。
私が、いつかそこにたどりつけるまで、そこで待っていてほしい。
なんて、ね。
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優しくて優しくて優しくて、そして温かい。村山小説は真ん中に優しさのコアがあって、その周りをたくさんのいろんな優しさが包み込んでいる。だからどこからめくっても温かい優しさがあふれ出て来る。
悲しいけれどこの世界には多くの嫌なことが転がっている。憎しみや悪意や敵意に振り回されているからこそ、この物語の優しさに救われる。
誰かに裏切られたり傷つけられたり、あるいは逆に自分の中のある誰かへの黒い気持ちに気付いてしまったりするとき、そんな負の感情とのバランスをとるために私たちは村山小説を求めるのかもしれない。こんな嫌なことばかりある世界だけど、もう少しここにいてもいいかもしれない、とそんな気持ちにさせてくれる。自分の中にある優しさをもっと感じてみたい、って思える。
今回の舞台は百貨店。デパートじゃなく百貨店。小さくて古い百貨店。古いからこそそこにはたくさんの人の思いがつまっている。誰かの誰かへの思いと優しいまなざしが、金目銀目の白猫になって奇跡を起こしてくれるんだろうね。魔法や奇跡は、結局誰かの思いが起こしている、そんな気がする。
私も行ってみたいなぁ、星野百貨店。そして魔法を使う猫に会ってみたい。そして一つお願いをしよう。かなうかな。かなうといいな。
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何となく三谷幸喜の有頂天ホテルを思い出した。
老舗の小さな百貨店で働くスタッフの小さな奇跡が周りの人を幸せにしていく。その一つ一つの奇跡が繋がっていく。
ファンタジー要素が少し苦手だったが、きれいな物語でした。
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あなたに故郷の思い出が詰まった場所はありますか。
1人で、家族と、友達と、特別な誰かと訪れた場所。初めて何かをした場所、何度も繰り返し通った場所、とても印象的な出来事があった場所。それはお店だったりレストランだったり公園だったり遊園地だったりするかもしれない。
自分はどうだったかと振り返ってみると、初めて自転車に乗れるようになった日行った場所は隣町の古本屋で、小学生のとき夏休みに毎日通ったのはできたばかりの図書館で、高校時代毎日寄り道していたのは県内最大規模の新刊書店だった。なるべくして書店員になったのだなあと呆れかえるばかりである。
さて、この作品にそんな「故郷の思い出が詰まった場所」として登場するのが風早の街の『星野百貨店』です。
就職して初めてこの街を訪れた人、幼い頃にこの街を離れ戻ってきた人、ずっとこの街に住み続けている人など、それぞれの事情を持ちながらこの百貨店で働いている人たちの願いと奇跡を描く連作短編集です。
この星野百貨店には「願い事をなんでもひとつ叶えてくれる魔法の猫」がいるらしい。
もしも本当にそんな猫に出会えたら・・・?
すべてのエピソードを通して読んで、共通して感じたのはこれは「再会と再生の物語」であるということです。
生き別れの家族と再会し再び一緒に暮らせるようになった人。過去の後悔の場面に立ち戻って前を向けるようになった人。憧れの人に出会って自分の魅力に気づけた人。
出会えたら願いを叶えてくれるという白い猫は再会のきっかけをくれるだけです。過去を変えたり自分を変えたりはしてくれません。そこから自分の願いを叶えるために行動を起こすのはその人自身。けれどきっかけさえあれば前に進む力はそれぞれの人が持っているのです。
この構図は舞台である「星野百貨店」にも当てはまります。不況で存続の危機にある百貨店は「百貨店が大好きな女の子」と再会したのだから、きっと再生できる。白い猫の奇跡で前を向いて進めるようになった従業員たちと同じように、未来に続いていくのではないか。そんな希望を抱かせる物語です。
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時代の波に抗しきれず、「閉店が近いのでは?」と噂が飛び交う星野百貨店。エレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品売り場のフロアマネージャー、テナントのスタッフ、創業者の一族らが、それぞれの立場で街の人びとに愛されてきたデパートを守ろうと、今日も売り場に立ちつづける――。百貨店で働く人たちと館内に住むと噂される「白い猫」が織りなす、魔法のような物語!
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風早の街に古くからある星野百貨店が舞台である。建物にも年季が入り、決して近代的とは言えないが、昔からの電灯が脈々と受け継がれているような、愛着のある重々しさがある。街の人たちに愛され、もちろん従業員たちにも愛されている星野百貨店なのだが、もう先がないという噂が飛び交うようなこのごろである。そんなときに、新しく作られたコンシェルジュとしてやって来た芹沢結子は、ちょっぴり不思議な存在ながら、誰からも愛され、なんとなく懐かしさをも感じさせられる女性である。彼女はいったい何者なのか。そして、金と銀の瞳を持つ不思議な白猫の噂とともに、百貨店で働く人たちや、子どものころからお客として来店していたひとたちの、それぞれの深い思いが描かれていて、星野百貨店の存在の大きさがうかがい知れる。どこを読んでも、人のまごころのあたたかさに涙を誘われ、とてもしあわせな心地にさせられる。外では読めない一冊でもある。
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【収録作品】第一幕 空を泳ぐ鯨/第二幕 シンデレラの階段/第三幕 夏の木馬/第四幕 精霊の鏡/幕間/終幕 百貨の魔法
著者らしい、心温まる話。日々の努力を馬鹿にしない生き方やささやかな夢を見る力を肯定してくれる。
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見たものの願いを一つ叶えてくれる猫がいる百貨店。内装も働いている人たちも、とても素敵な百貨店でした。
願いを唱えながらも、前を向き、一歩を踏み出そうとする様子は、読み手の背中を押してくれる作品でした。
伏線も見事に回収されていて、百貨店の再建もとても気になります。どのように再建されるのか…続きを読みたくなりました。
この著者の方の作品はいつもあたたかさと優しさや愛情がたくさん詰めこまれていているなあと思います。
今回も読み終わったあと、穏やかな気持ちになり、あたたかくなりました。
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とても優しくてあたたかく、懐かしい気持ちになれるお話。
あぁ、そうだ、子供のころ、よそゆきのお洋服を着て、親に連れられて、百貨店に行ったなぁ、という日を思い出します。
今は、あの頃に連れて行って貰った百貨店は、改装を終えたり改装中だったりするけれど、ずっと大好きだったレトロな内装の一部は、移築されたりしていて、あれを見つけた時には、涙が出るほど嬉しかったなぁ、という気持ちまで思い出しました。
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夢があってほっこりできて、ホロホロ泣ける素敵な本でした❤︎
働く人を大切にしているから、働く人も会社を大切にしてて、大事に守ってるから、こんなあったかい気持ちになれるお話が出来るんやろーなと思いました。
こんな素敵な会社があったら、ぜひとも働きたいっっ‼︎笑
魔法の猫に出会えたら私は何を願うかなぁ。
思い浮かばないって事はそれなりに充実してるからかなぁ。
この本をツイで紹介してくれた本屋さんに感謝❤︎
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不況の煽りを受けている百貨店で働く人々、
創業者の一族などとそれぞれの目線で
過去に消えてしまった夢や二度と逢えない人が
この百貨店で夢のような時間に遭遇するという物語。
どの登場人物にも秘めた願いがありますが、
それが不思議なことにこの百貨店を中心にして
過去から未来へと続いて誰もが笑顔になれ希望へと繋がるという
読んでいても心が洗われるような思いがする空間でした。
そこには必ず館内に住んでいると噂されている「白い猫」が
現れるというのがまた御伽噺のような楽しさがありました。
私の幼少の頃は百貨店、いわゆるデパートと呼んでいましたが、
休みの日になるといつもより少し身綺麗な服装をして
ご褒美にデパートに行ってお子様ランチを食べたり、
屋上の遊具施設で遊んだり、誕生日にはここでプレゼントを買ったりと
特別な時に特別な場所に行くという今とは違った豪華なイメージがありました。
そんな思い出のあるデパートなので
この百貨店も何処か懐かしい気がして、
改めて百貨店の良さを思い出させてくれた気がします。
特にこの作品での百貨店は小さな商店街から徐々に大きくなり、
地元に長年愛されている百貨店なので余計に思入れが強くなりました。
このような人の心を豊かにし、お客様の為に楽しませてくれる素敵な
百貨店は良と思うので、不況の煽りで厳しくてもいつまでも地元の人の為に長く続いて欲しいと思ってしまいました。
どの物語も心優しく、温かみのあるものばかりでしたが、
終幕 百貨の魔法の祖父の言葉は感動的で印象深かったです。
ひとの生は砂時計の上になっているようなものなんだ、
足下の砂はさらさらと落ちていく。
思い出も、記憶も、交わした言葉も、
みんな砂のようにどこかに落ちてしまう。
中略
マッチの火のような小さな灯りでも、
誰かの凍えるてのひらを温めることができたら
そんな人生が送れたらと思うんだよ
2017年本屋大賞にノミネートされた「桜風堂ものがたり」と舞台が同じになっている姉妹作になっているというので手に取りました。
「桜風堂ものがたり」ほどの心を揺さぶられるものはあまり無いですが、
村山さんらしい独特な世界感がとても良く表れていて、
静かな時間の流れを感じながら、
疲れた心をほぐしたい時にお勧めな作品だと思います。
大人になっても魔法の話というのも
時には楽しく童心に返るので良いかとも思います。
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子どもの頃のデパートは
休みの日に、家族でおしゃれをして出かける場所だった。
親の買い物につきあったあと、
最上階のレストランでお子様ランチを食べて
おもちゃ売り場でおもちゃをひとつだけ買ってもらう。
私はそんな思い出を持つ最後の世代かもしれない。
不思議なことが次々と起こる風早の街。
この街にある老舗デパートにも
やはり幸せな奇跡がたくさん起きていました。
この作者の物語を読むと必ず、
子どもの頃の幸福な読書体験を思い出すのですが
今回も、デパートの思い出と共に
そんな記憶がよみがえって来ました。
毎回物語のどこかに、思い出の起爆剤のようなものでも仕込んであるのかしら。。。
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街の小さな百貨店で起こるささやかな魔法が素敵。
街に大事にされ、そこで働く人も集う人も大切な思い出がそこにはある。
少女だった彼女も成長し、そこにある思い出を大事に百貨店を継ごうとする。
見守る人も温かく心が満たされる感じがした。
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昭和だなぁ。しみじみ思う。
人情のあった時代。
今は社会も自分も合理性を求めている。
だからこの物語を読んでとてもホッとする。