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シーボルトの依頼で日本の風景と人々の生活を描いた、
川原慶賀の作品集。現在はシーボルトコレクションに含まれる。
オランダ・ライデン国立民族学博物館などの協力により、
慶賀作品200点余と関連図版・写真150点を収録。
・正月~浜遊び・・・寿ぎの人々、七草、節分、初午、雛祭りなど。
・ハタ揚げ~夏越の祓・・・花祭り、端午、ペーロン、祇園会など。
・七夕~菊見・・・お盆、精霊流し、浮立・郷くんち、月見など。
・くんち~迎春・・・傘鉾、湯立神事・流鏑馬・神事能など。
・人の一生・・・成長、結婚まで、嫁盗み、病と死、葬列など。
合間に、くらしの風景、旅・道の風景。
カラーとモノクロの画像、多数。
当時の国学者・野口文龍『長崎歳時記』の抄訳と挿絵、
オランダ商館長メイランの『日本』の文と、
シーボルト等、オランダ商館の人々が川原慶賀に依頼して
描かせた多くの絵とのコラボです。
長崎の、日本の、かつてあった風景や生活、
現在も受け継がれている風習を知ることが出来ます。
長崎の、日本の記録の絵なので、きれいに整えてはありますが、
当時の、江戸時代の人々の生活と暮らしの様子が生き生きと
色鮮やかに描かれています。細部に亘っての描き込みで、
服装や調度、仕事の道具、生活の中での神仏や諸宗教、
唐人との関わり、踏絵、当時の長崎の風景等がよくわかり、
資料としての価値も備わっていると感じました。
現在も開催される、くんちや精霊流しの様子。
生々しいけれど興味深い、人の一生での死から埋葬まで。
そして、文と絵のそれぞれの補足で、
更に分かり易くなっています。
付記:巻末の『長崎歳時記』全訳、産物と細工物、方言等も、
当時の情景を彷彿とさせて、更に良し。