紙の本
信頼障害仮説
2021/12/19 22:23
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投稿者:十楽水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
依存行為の是非を問う前に、なぜその人は依存症になったのか、どんな生きづらさを抱えていたのかと疑問を持つことができたら、もう少し生きやすい世の中になるのではないか。その人の生育歴に着目し、心理的孤立と信頼障害こそが人を依存症にすると論じる著者のメッセージに一度触れてみてもらいたい。
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アディクション治療において、患者さんの見方や対応について、これまで言語化されなかった事を言語化され、自身の臨床経験をまとめられることで説得力のある提起を行っている本である。依存症者は「『人』を信じられずに、アルコールや薬物といった『物』やギャンブルや買い物といった『単独行動』しか信じられない」という「信頼障害仮説」である。その成り立ちとして、「明白な」生きづらさを持った者と「暗黙の」生きづらさを持った者で依存対象が違い、そのことを理解するためにも生育歴を丹念にたどることの重要性を強調される。またアディクション支援では既に常識になってきた動機づけ面接についても丁寧に説明される。ミラーとロルニックの面接の5つのヒントは明日からでも使える技法である(P87)。また自助グループへのつなぎ方や最終的な援助方法として「ひとりの援助者との信頼関係を原動力として次の援助者へとバトンをつなぎ、次々と連鎖的にアディクトが頼れる援助者や仲間、窓口が増えていくことが安定的な成長とアディクションの再発予防に不可欠である」(P176)というのも日々の日常臨床の実感である。このような本が自分が若い時に欲しかったというのが実感である。
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覚書
アディクションの反社会性衝動性と生育歴の生きづらさとの対応関係
孤立と無力感がアディクションと密接な関係
過剰適応と心理的孤立
アディクションの良い面悪い面
日常生活のながれ行動パターン
周囲の人の心配をどう理解
本人の価値観や人生の目標
正したい反射が発生しているからかみ合わない
薬物のやめ方ではなく過剰適応のやめ方
信頼障害としてのアディクションの発症と成長過程
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「アルコールや薬物を一時的に使いながらも依存症にならない大半の人と、そのまま依存症になってしなう人とは何が違うのか」という問題提起からはじまる。
人生早期から逆行体験があるとハードドラッグ群(覚せい剤や多剤使用)、過剰適応を続け根本的なところで他者を信頼できないとソフトドラッグ群になる、という2つの群に分けたところが納得感が高い。
ところで本題にはあまり関係しないが、小児期に喘息や川崎病などの慢性疾患がソフトドラッグ群に多かった、というデータは興味深い。少なくとも喘息やアトピー性皮膚炎は、不適切な養育環境がリスクになりうる。ただ川崎病、これは多分関係ないと思う。
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みんなに薦めたい。
学校の先生、警察官、政治家などになる人は、必読してほしい本。
「失敗が許されないところに成長もない」
この一文がすごく心に響いた。
失敗するのが嫌だから『やらない』という選択をしてきたから、いつまでも成長できなかったんだと気づけた。
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依存症者に対して依存行為をやめさせようとするのは、泳ぎ方を知らない人が海で溺れないよう浮き輪につかまっているのに無理矢理引き剥がすようなものという例えがなるほどと思った(正確に記憶できていないのでこのようなニュアンスとだけ思ってもらいたい)。なんらかの経験を経て信じるよりどころがなくなった人がたまたま溺れないようにしがみついた浮き輪。その浮き輪から手を離せるように本人や周囲の人間が安心できる環境を作っていくことが依存症脱却へつながることを知った。
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#読了 覚醒剤などの依存性のある物質を使っても、依存症を発症する人としない人がいる。これまで脳障害によって説明されていた依存症を「信頼障害」という観点から説明した良著。わかりやすい。
幼少期に一身等以内の身内との分離体験(離別や死別)や、過酷な生育歴を持つわかりやすい生きづらさを感じている人ほど生活の破綻しやすいアディクションに陥りやすく、一見すると社会に適応し成功しているような人が陥りやすいアディクションも存在するようだ。納得いく説明だった。
「過剰適応」という言葉が印象的だった。私も心当たりのあるもので、読んでいて身につまされることが多かった。意外と、誰しも依存症と隣り合わせの生活してるんじゃないかな?
以前、自傷行為も一種のアディクションとして説明する本を読んだが、それとリンクするような内容で更に理解が深まったように思う。それと、違法薬物を使用する人に対する認識は改まった。
違法薬物に限らず、ストーカー行為なども刑罰だけでなく、医療に繋げてあげてほしい。
知らないことだらけだなぁと、こういう本を読むといつも思う。知っているだけで、少しはアディクトや生きづらさを感じている人に優しい世の中になる助けになれば良い。
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アディクトの回復とは人に相談する事
アディクトの意思の弱さ
裏側のどくとくの暗黙の生きづらさ
生育歴
(1)幼少期から飽きっぽく、衝動的な性格
(2)親の養育放棄や不安定な家庭環境
(3)薬物を使っている仲間との交流
(4)薬物を入手しやすい学校環境
(5)貧困
(1)暴言や暴力
発達障害 注意欠如・多動性障害 ADHD
(2)〜(5)は環境因子 共通点は養育者との愛着関係
学校 授業 部活についていけなくなり 薬物を使うような不良の交流場所が唯一の居場所 貧困の為に頻繁に転居を繰り返したり、勉強するより、働いてお金を稼ぐ事を優先せざるを得ない子供との共通点は孤立
家庭生活、学校生活、地域生活をもつことができず、家庭、学校、地域でも孤立している子供が薬物乱用
家族はいつも助けてくれるとは思わない
みんなが注意しても危険は回避できない
警官の注意を守っていても危険は回避できない
教室で先生の説明をよく理解したいとは思わない
もう少し、自分を尊敬できたらといいと思う
いつも自分は失敗するように思えてしまう
家族と話すのが好きではない
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一気に読んでしまった。幼児的万能感と依存症ビジネスの相性の良さにやりきれなさを感じていたところに、辿るべき道を教えてもらえた気がする。
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新しい依存症への考え方。
人生でいくつもの生きづらさを経験し、他者を信頼できなくなってしまった人たちの、孤独への最後の対処方法。
広めていきたいです。