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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
沢木耕太郎といえばスポーツ選手や男性を描くという先入観があったので、藤圭子を書いたのが意外でした。バーでお酒を飲みながらの会話という形も新鮮で、藤圭子をあまり知らなかったのですが、興味深かったです。藤圭子が亡くなった時の宇多田ヒカルのコメントがあまりにも悲しく、また愛に溢れていたことを思い出し何とも言えない気持ちになりました。
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完全に、インタビューを再現したノンフィクション。7杯ずつのジントニックを飲みながら、饒舌になっていく藤圭子と、インタビュアーの筆者が、彼女の引退までの人生を掘り下げていく。
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沢木さんが藤圭子にインタビューをしていて、ずっと発行せずにいた事も驚きだが、藤圭子さんが、吉行淳之介さんと面識があったと言う事はもっと驚いた。
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沢木耕太郎の野心と純粋な好奇心が生んだ、貴重なふたりのインタビュー。
あとがきまで読んで、ノンフィクション作家という仕事の面白さを知った。
藤圭子の言葉は、ひとつひとつが瑞々しくて、
心を開いていて、
インスタグラムでフォローしてるモデルの女の子たちの投稿を見ているような気分に。
きっと、今だったら藤圭子もインスタやるのかな。
引退の真相を知ることよりも、
時代が、半強制的に頂上に引っ張り上げてしまった女の子に、想いを馳せる時間でした。
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読み始めた途端にグッと惹き込まれる、それは私が沢木さんの文体が好きなためだと思っていました。でも違ったようです。この本は全て会話文だけで書かれています。
写真は何かを構図と時間で切り出して見せるもの。写真家の腕とはどう切り出して見せるかです。そういう意味ではノンフィクションも同じ。対象のどこをどのタイミングで切り出してみせるか、その視点の旨さが沢木さんの作品に私が浸ってしまう理由のようです。
この作品の対象になった藤圭子さんに思い入れはありません。自殺されたことも忘れていたくらい。若くて人形の様な顔つきで、容貌に似合わぬ潰れ声で怨念のこもった様な歌を無表情に歌う。その姿が強く印象に残ってはいますが。あとはなんだか色んなスキャンダルにまみれていたこと、宇多田ヒカルのお母さんだということくらい。
そんな藤圭子の引退寸前のインタビューを作品化したものです。
ドサ回りの浪曲師夫婦のもとに生まれ、少女時代からステージで歌っていた。そんな特殊な環境に育ったがため世智を身につけることが少なく、そのせいか硬質な精神を持った少女。大人になって、次第に世智を身につけながらも頑なさを失わない。そういう藤圭子さんを沢木さんは純粋でバイタリティのある人として、その姿を見事に切り出してみせます。それは本当に見事に。
30年後に自殺されるのですが、それは身につけた世智と頑なさとの折り合いがつかなくなったせいか、それとも他の要因があったのか。そんな事が気になってしまいました。
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最近の宇多田ヒカルは藤圭子にとても似ている。そうか、似ているのは外見だけではなかったのだな。大袈裟に言えばこれが藤圭子のインタビューなのか娘のそれなのかわからなくなるほど。デビューから結婚、引退(休業)まで決まっていたかのように同じような道のり。歌にも恋人にも真っ直ぐ向き合って故に力が切れるのも早かった。どちらも嫌いになったのではなく、彼女なりの続けられないという筋の通った理由があった。藤圭子・可愛くてカッコよくて不安定で真面目、とても魅力的な女性だと思う。ゴシップではこの後?沢木さんと恋愛関係になったと目にした。本当にそうだとしても別に驚かないかな。この摑みどころのない感じ、確かに好きになっちゃう。宇多田ヒカルは読んだかな。沢木さんも読んで貰いたいと書いていたけれど、うん、是非読んで貰いたいな。素敵なお母さんですヨ。
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思い立ってレビュー書こうとしてるから、日数編集してなくて1日にめっちゃ読んだことになってるw
まあよい。
宇多田ヒカルさんが気になり始めた頃、まさかの沢木さんがお母さんとの対談を書いていた!ということで読み始めた話。会話形式だからサクサク読めました。
沢木さんの本の良いところは、彼の書いた本と本の間にちょっとした絡みがあること。
この話だったら、深夜特急の最後、日本に帰ろうとした時のフライトで藤圭子さんに実は会っていた!てな感じ。
沢木さんて自分に関わりのあった人についてノンフィクションを書こうとしているのかな。
ただのインタビューを文章にしたら、一つ一つの本がそれだけで完結してしまうけど、こういう話を読むと人生は続いているし繋がっているんだなぁとしみじみしますね。
読んでみて思ったのは、内容もよかったけど、話しながら少しずつ藤さんが沢木さんに心を開いている感じが良かったなあ。藤さんは元々恵まれない境遇の人で、歌手として成功しても人と関わる中でなかなか幸せをつかむことが難しかったんですね。幸せって難しいよね…。
でもそんな藤さんだけど、このインタビューの時は心安らかだったんではないかなあと思う。
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1979年,藤圭子の引退を前にしてホテルニューオータニのバーで行われたインタビュー.一切のト書きなしで二人の対話だけで構成される.私は藤圭子が活躍した時期は子供で,歌っている姿は知ってはいるが子供にわかるような歌ではなかったし,それほど人物に興味があったわけではないが,この本には強く心がひかれ,一気に読んだ.
最初の方で沢木が「すぐれたインタビューアーは,相手さえ知らなかったことをしゃべってもらうんですよ」と言っているが,藤圭子はインタビューアーである沢木に徐々に心を開いて,最後はいままで誰にも語らなかった過去や,感情の微妙な襞まで言葉にしようとしている.
この本を読んで,私の子供の頃はまだ身近にあった貧しさとか,厳しい差別とかいろいろなことを思い出した.そしてこういうことを時々思い出すのはとても大事なことのように今の私には思える.
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沢木耕太郎の藤圭子へのインタビュー。全編会話だけという形が見事。緊迫して、美しい会話。「一瞬の夏」も大好きだけど、こちらも素晴らしい。藤圭子という女性の明晰さを強く感じた。
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30代前半の僕にとって藤圭子は、宇多田ヒカルの母親という認識以上のものは無く、この本を読むまではどのような歌を歌っていたのかすら知らなかった。
1970年代の芸能界を歌と共に生き抜き、そして自ら芸能生活を終わらせる決意をした藤圭子。
沢木耕太郎の巧みなインタビューにより、本人すら気付いていなかったような本当の自分の気持ちが引き出されてゆく。
そもそも人は、簡単に言語化できる程に自分の気持ちなんて理解していないし、こうしてバーでお酒を飲みながら訥々と語ることが気持ちの整理には一番最適なんだと感じた。藤圭子の人生を知る上で、とても秀逸な作品だと思う。
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「銀座堂書店」。職場の近くにある朝日新聞販売店が併設している、小さな本屋さん。雨降りの昼飯時に覘いたら、一番目立つ位置に沢木耕太郎の新刊『流星ひとつ』があった。
沢木耕太郎、やっぱり凄いや。
『キャッパの十字架』からそんなに時間が経っていないと思ったら、1979年に書き上げたものだった。
引退を表明した藤圭子への「インタビュー」を書き起こす形で、この本は構成されている。沢木さんはこの作品でノンフィクションのまったく新しい書き方を追求した。「時代の歌姫が、なぜ歌を捨てるのか。その問いと答えを、彼女の二十八年間の人生と交錯させながら、いっさい「地」の文を加えずインタビューだけで描ききる。」
この作業は彼の最初の新聞連載・長編ノンフィクションの『一瞬の夏』と同時作業として進行した。
だが、ある迷いが沢木さんにこの本の出版を躊躇させた。この思いを理解した新潮社の担当も立派だと思う。反人権雑誌「週刊新潮」を抱える会社にして、なお出版人の良心を持った人々がいることもひとつの感激だ。
当初『インタビュー』という書名で発刊予定だったこの原稿は、1979年暮れに『流星一つ』と題名を変え、たった一冊だけ製本されて藤圭子に贈られ、作品としては葬られた。
そして、今年8月22日朝、藤圭子は自宅マンションから飛び降り、自ら命を絶った。
沢木さんは藤圭子の娘・宇多田ヒカルの「コメント」を読み、藤圭子が精神の病に苦しんだ末の自殺であることを知る。その説明で世間は納得しただろう。
「しかし、私の知っている彼女が、それ以前のすべてを切り捨てられ、あまりにも簡単に理解されていくのを見るのは忍びなかった。」
沢木さんはあらためて手元に1部だけ残っていた『流星ひとつ』のコピーを読み返した。
「ここには、『精神を病み、永年奇矯な行動を繰り返したあげく投身自殺した女性』という一行で片付けることのできない、輝くような精神の持ち主が存在していた。」
この沢木さんの「後記」を読むだけで、感動にふるえる。本文を読むのがこわいほどだ。
人の死を眼前に、輝きを増す真実がある。『愛の流刑地』での『虚無と熱情』の扱われ方を思い出す。
「一杯目の火酒」から「7杯目の火酒」そして「最後の火酒」まで、8つに章分けされた300頁の長編、全部「-------」「・・・・・」の会話だけで構成されている。
今夜も眠れそうにないな。台風の夜に徹夜を覚悟する(~~;)
自動代替テキストはありません。
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宇多田ヒカルの母としてしか知らなかった藤圭子。全編、会話のみの構成でも、率直な言葉でグイグイ読める。
読む前はほとんど知らない人だったわけで、言ってみれば知らない人のお酒の席の会話を400ページも読んでられるのは、インタビュアーの力もあるし、語り手の言葉もあるし、引退した理由という純粋に物語としての力もあるわけで、インタビューとして成功しているのでは、と思った。
「真っ直ぐで清潔な魂」、もしくは著者の言葉を借りると「水晶のように硬質で透明な精神」は憧れる部分もあるが、生き抜いていくには大変だっただろうな、とも思う。
2019.7.6
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沢木耕太郎と藤圭子のインタビュー本。
余分な解説一切なしに、完全に対話形式で話が書かれている、。
しかも40年も前に書かれたものとは思えないくらい新鮮な読み物。
これがまた読んでいて飽きない。
藤圭子が誰なのかよく知らない人には、読む機会がないと思うが、
50代以上の人には、へぇーと思うことであろう。
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テレビで見た藤圭子は、お人形さんのように綺麗で無表情で、その独特な歌声も相まって、小さい頃の私には異様に思えたこともあった。
この本の中の藤圭子は、表情豊かで感受性が強く、魅力的な女性。彼女が彼女らしく生きていた証である素敵な一冊。
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優れたインタヴュアーは、相手さえ知らなかったこと、意識していなかったことをしゃべってもらうんだ。相手がしゃべろうと用意していたこと以外の答えを誘い出す。そういった質問をして、そういった答えを引き出すのが一流のインタヴュアーと言える。
本書は、本当にインタビューだけで構成されている。会話だけなのだ。それでも、ありありと藤圭子の表情などが思い浮かぶようだ。語り口調も、藤圭子の素が出ているようだ。本書を読むと、藤圭子の歌が聴きたくなります。手術前の。