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裕福な家庭に養子として引き取られ、日本で暮らすシリア生まれの女の子、アイが主人公の物語です。
アイの苦悩は、7年前に内戦に関する本を読んで以来、私が毎日考え続けていたことと同じでした。
平和な日本に生まれたのは、自分が選んだわけでも、努力をして得たわけでもない。もしも紛争地域で生まれ育っていたら、今頃私は難民になっていただろうか?殺されていただろうか?家族や友人は?
ご飯を食べている時、仕事をしている時、家族といる時、友達といる時、お風呂に入っている時、寝る時、ふと日常の幸せを感じると「不公平だよね」という思いも同時に付いてくる。
助けたい。でも今の私には何も出来ない。それなのに、状況を想像して悲しんだり心配したりするのは偽善だろうか、傲慢だろうか……。
アイが出した答えに、私も納得しました。
こういう事に関心のない人の心を掴むような劇的な何かがあるわけではないので、物足りなさを感じたり、入り込めないと感じたりする方もいるかもしれません。でも、今後こういった内容のニュースを見る度にこの本を少し思い出して、今までよりほんの少しでも真剣にニュースを見るようになる人が増えたら、とても価値のある小説だと言えると思います。
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読み終わって「ちぐはぐ」を感じた。
主人公は養子で日本に住むシリア生まれの女の子アイ。世界で戦争や自然災害で亡くなる大勢の人たちのニュースを見るたびに心を痛ませる。もしかすると自分だってそうなったのかもと思いながら。でもアイは日本でお金のある親の庇護のもと、結婚しても優しいご主人のもと何の苦労もしないまま生活をしているのだ。一方で悲しんで一方で緩い生活。そこに「ちぐはぐ」を感じた。
でも視点を変えれば、それは自分にも誰にでもあてはまる「ちぐはぐ」ではないだろうか。ニュースに心痛めながらもどこか遠いことの話と思う部分があるのではないだろうか。悲しんでもお腹はすく。食べる、寝る。そしてまた他のニュースで世界を知りながら普通に生活をする。アイに共感できないときもあったが自分も同じように「ちぐはぐ」なんだろうなと読後考えてしまった。
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一気に読めた。
主人公はシリアで生まれ、アメリカ人の父親、日本人の母親の養子として裕福に、そして愛情たっぷりに育てられた。
私は養子にどうやって選ばれたの?誰が選んだの?本当は選ばれるはずだった別の誰かがいたんじゃない?その子はシリアでひどい目に合ってるんじゃない?
主人公のアイはどんどん内向していく。
なに不自由ない生活で、欲しいものを買ってもらえ、美味しいものを食べる。
そんな環境に罪悪を感じる。
「自分」の輪郭がボヤける。
そんなアイを救ったのは友人だった。
筆者は何を伝えようとしているのかな?って思いながら読んだ。そんなに深く考えなくていいのかもしれないけど。
世界中で戦争や事故や災害が起こり、多くの人間が死んでいく。
そんなニュースを見るとヒドイ!可哀想!って思う。裕福で安全な場所から…。
それはすごく傲慢なことだと思ってしまう。そして、ひとり心をいためたとしても、何も変わらないんだという無力感。だんだん、そんなニュースをスルーするようになる。ツライから。どう捉えたらいいかわからないから。
でも、ひとりひとりが亡くなっていった人たちのことを思い、想像し、苦しむことは無意味なことではないんだよ、と教えてくれる。そんな小説。…だと思った。
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「この世界に、アイは、」
アイのような気持ちで日々を過ごすってどんな感じなんだろう。
自分の悩みがちっぽけに思えてくる。
同時に世の中に関する知識のなさに愕然とする。
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凄かった。圧倒されました。一人の少女が自我を求める気持ちの奔流に、巻き込まれるような気持ちになりました。アイは生まれの複雑さや繊細さ賢さのせいで過度に「不幸の渦中」を求めたけれど、誰の中にも渦中はあって、それを慮る想像力の有無を問われている。アイにはミナという強力な心の支えがあったけれど、それを持たない人々はまさにこういう作品によって気づかせてもらう部分が多いのかもしれない。気づいたこと学んだことを活かしたい。人生半分生きた自分にも、まだ「自分」は捉えられていないのだと実感しました。傑作。
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2017年8冊目。本屋大賞のノミネート作品。
西加奈子さんは初読み。事情を抱え、少女から大人の女性になっていく危うさと眩しさ、葛藤と自立を、生々しいまでに表現していた。
自分と世界の中に様々な「アイ」を想像できた時、見つけられた時、人は新たな生を受けたように、真に自分の人生を歩み始めるのだろう。
ラストシーンは苦しいのに温かい。
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アイとは“i(私)”であり“identity"なんだろうなと勝手に解釈する。
西さんの本を読むのは「サラバ」に続いてまだ2冊目だけれど、世界観というか自己肯定感というか共通するテーマが根底に感じられた。他の作品もそうなのだろうか。
この本を読んで、以前にNYで知り合ったネパール系アメリカ人の女性から聞いた話を思い出した。
彼女の妹も、もちろん生まれも育ちもアメリカ。医師の資格を持ち、NYで揺るぎない生活を送る未来があった。しかし自分の中にぽっかりと空いた穴(彼女はemptinessと表現した)を埋められずネパールに渡ったと。
おそらく、多民族国家や、大陸においては養子にかぎらずとも自分の出自、アイデンティティについて考える人は多いのだろう。
日本が特殊なだけで。
そう言った意味で、このようなテーマをストレートに投げかける西さんは今までにない新しい作家という気がしてならない。
ぜひ若い人に読んでほしい。
自分を見つめることは世界に目を向けること。
いい作品でした。
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アイは愛で満たされ、i自信は虚数だけど、数学者は美しさを存在確認をさせてくれる役割を担っていて、世界は戦争やテロで命を失ってしまう人で溢れているけれど、それ以上の愛する気持ちも満ちているし~~~もう、何をどう伝えたいのか、言葉を尽くしても表現できない。
もう、どのページを開いても涙が出てくる。また凄い本に出会ってしまった。
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主人公、ワイルド曽田アイは、1988年、シリアで生まれた。
そして、ハイハイを始める前に、アメリカ人のダニエルと日本人綾子の養子となった。
アイは、「愛」であり「I」。
高校の初めての数学の授業で、教師が言った。
「この世界にiは存在しません。」
この言葉は、アイにずっとついてまわる。
時には安らぎになったかもしれない。
時には絶望の言葉だったかもしれない。
アイが、世界中の事件や紛争や災害に心を痛める気持ちも、安全なところにいることに苦しむ気持ちもすごくよくわかった。
傲慢にならないようにしないといけない。
それが、当事者たちの気持ちを傷つけることになっては絶対にいけない。
でも、考え続けなければいけない。
想像することをやめてはならない。
「ふる」を読んだ時と同じような読後感。
悲しみや苦しさ、でも祝福されていること。
Iとyouとミナ(皆?)。
なんか全てのものがウズマキになってワーと押し寄せて、包まれる感じ。
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シリア生まれで養女ということで自分がただ生きているというだけでなく,豊かな条件の中で生きているということに罪悪感を持ち続ける少女アイ.彼女が記録し続ける死者の羅列に,世界中の悲惨な出来事と犠牲者が思い出されて,読みながら考えさせられました.
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選ばれ、生き残ってしまった自分。
そんな風に考え自分の恵まれた境遇でさえ
苦しみとしか感じられない、アイ。
でも実際自分に不幸が降りかかったとたん
逃れたい、自分だけは助かりたい
そう思ってしまう自分も許せない。
こんな風に考えてしまうのは若い
ってことなのかもしれない
時間が解決することってあるし
歳をとって
自分に折り合いをつけられるようになると楽。
でも、それでいいのか、自分。
って顧みた一冊。
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何故かなあ
すごい世界が強く語られてるんだけれど
共感できなかった
世界の悲劇に心を響かせているアイがとても遠かった
私がお気楽だからかなあ
それと西加奈子さんの絵が好きではないんです
強すぎるのかなあ
≪ 広い視野 強靭な想い 優しさと ≫
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今年の本屋大賞候補作品。「アイは存在しません」と言われたある日から、自分の恵まれた境遇と、この瞬間にも事故や戦争、天災等で命を落とす人が何人もいるんだという事実に罪悪感を感じることと自身の存在を問うていく。数学教師の言葉が重くのしかかり、自分を肯定できないアイの心情は深く心に突き刺さるかのようだった。自分を認めてくれるミナ、ユウ達の存在がアイにとって、自身を肯定できる方へ、殻を破り、前を向いて進むきっかけとなっただろうと思う。存在が否定されても、自分は一人の人間として存在すると包容する二人が目に焼き付く。
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最近手に取った、西加奈子さんの「i」。
まだ読んだ数は少ないが、このひとの物語は生への欲にあふれているような気がする。出てくる誰もが、世界とつながっていたいって、ひたすらに叫んでる。
アイは脆い部分もあるけれど、他人や自分と向き合う強さをきちんと持っていて、とても人間らしくて好きだと思った。
カバーを外すと、綺麗な青地に堂々とした「i」の文字。カバーは目を惹く鮮烈な色彩を放っているが、その内側は対照的にとてもシンプル。装丁も美しい一冊だ。
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2人の異なる立場の心情描写が素晴らしかった。理解はできないが大切にしたい人を思いやる強さにグッときた。