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この切なさがいい
2017/03/09 22:46
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
認知症の母親がもっと絡んでくる介護系小説かと思ったら、全然違った。最近予測がよくハズレル。しかしこの「外れ」は大正解。北海道、根室の雄大でありながら物悲しさが漂うミステリー。登場人物が多いので追っかけるのにちょっと苦労した(私は名前をすっ飛ばす癖がある)。行きつ戻りつもあるところから、すこーんと突き抜けたように相関図が見えてきた。こうなればもう怖いものなし。最終章、いろいろな謎が一気に解決に向かうのはやっぱり気持ちがいいものだ。岬の名前が物語の切なさをこれでもかと押し上げてくる。実在するなら行ってみたい。
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【密漁、マフィア、拿捕……桜木ノワールの原点がここに!】釧路で書道教室を開く夏紀。認知症の母が言った謎の地名に導かれ、自らの出生の秘密を探る。しかしその先には、封印された過去が。
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釧路で母と書道教室を営む夏紀。軽い認知症の症状を見せ始めた母が呟いたルイカミサキという地名に母の秘密があるのではないかと思い立ち、偶然の出会いに導かれるようにして根室の涙香岬を訪れる。
一方、夏紀の訪問によって苦い出来事を思い起こした教師の徳一は、当時の後悔を胸に、ある謎を解き明かそうとしていた。
一人の女性の出生の秘密を軸に、信念と強い意志を持って生きた人々をちりばめながら、過去の過ちに対する懺悔と再生を描く。
どうしようもなく暗く救いのない事件や出来事を描きながらも、最後は薄明かりに包まれるような読後感がさすが。
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母親の過去を知ろうとする女と、失意のうちに職を辞して父と暮らす男が忘れられていた事件の呪縛に囚われていく。サスペンス劇場ばりの筋立てだが、人物造形のうまさで読み応えあるハードボイルドになっている。
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桜木紫乃の文章はどこか優しく、悲劇であっても後を引かず読後感がとてもいい。男女の恋沙汰の物語かと思いきや、サスペンスのように展開していきハラハラとさせられる。北の大地の物悲しさをベースに登場人物たちが謎を紐解いてゆく。物語は意外な結末を迎え、それまで鉛色だった空が青空に変わるように感じた。涙香岬を一目見てみたくなった。
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桜木紫乃の真骨頂である。男女の想いはもちろんのこと、いくつもの親子の姿が凝縮されている。サスペンス風にドラマが進んでいく中で、それぞれの後悔、哀惜、失望が色濃く映し出されていく。胸の痛みが取り除かれることはなく、過去は交差しないままに未来は日常を紡ぎ続ける。ただ風景を切り取った最後の2行にとんでもなく心を揺さぶられる。まさに風葬なのだ。この感情を呼び起こせるこの小説は名作である。
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はじめての桜木紫乃。自分が北海道在住ということもあり、北海道の道東を舞台にしているところに興味が湧き手に取りました。
人間関係が少し入り組んでおり、どの登場人物も何というか、さらさらとした感触で、最初は人物像や世界観をつかむのに戸惑いましたが、文章も同じくさらさらと、綺麗に爽快に流れて行くので、自然にストレス無く読めました。
展開は途中である程度はわかってしまうのですが、ラストはとても良く、全体的に淡く綺麗な物語でした。
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複数の視点から物語が進み、徐々に話が絞られ核心に迫っていくスタイルの小説。書道教室を営む夏紀が、認知症の母の涙香岬というつぶやきをきっかけに、自分の生い立ちを探り始めるストーリーが主軸になっている。北海道東端の物悲しさが全体に漂った桜木さんらしい小説であった。たびたび視点が変わるので、通勤時にチョビチョビ読むのにはふさわしくない小説であった。
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ホテルローヤルからの2冊目。桜木さんのストーリーは登場人物たちの重い過去や謎がテーマであるにもかかわらず、風景を見ているように美しく語られる。風景画のようで、次を早く知りたいとページを繰る手が止まらない展開。読了後は明るい明日を信じたくなる。
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最高である・・・・・・
シリアスでありグイグイと引き込まれていく。
この感覚はなんなんだ・・・・
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一気読みせず、数日空いて読んだりしたので、あれどうだっけ?とひっくり返したりしてしまったせいか、いろんな人物の視点だからか、落ち着かない感じだった。
全体的にドラマか映画を観ているように読んだ。
そうつながるのね、となるまでに、人間関係を考えながら読むのが面白かった。
物悲しい空気が流れているお話ではあるが、最後は救われる終わり方であろうか。
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一気に読みました。
北海道の美しい風景の中でつづられる日常生活ですが、
それぞれが抱える悩みや家族を思いやる気持ち。
ラストまで目が離せませんでした。
読了後の感覚は、なんとも言い表せません。
桜木紫乃さんには、いつも圧倒されます。
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「ルイカミサキに行かなくちゃ」認知症を発症した母の呟きから、自分の出生の秘密を知ろうとする娘。
海で亡くなった女子生徒を救えなかったという苦い思いを、定年後の今も抱えている元中学校教師。
一つの歌ひ引き寄せられ二人が出会うとき、釧路と根室、ふたつの地を結ぶ因縁が明らかになる。
拿捕、諜報船、抑留、遊郭・・・桜木さんの描く北の町の過去はいつも辛く、哀しい。
生徒を救えなかったけれど最後まで教師を貫いた父と、教え子に自殺され、教師であり続けられなかった息子。
書道教室を営む母と、それを受け継いだ娘。
それぞれの親子関係が切ない。
ラストシーン、涙香岬で何も知らされず海に花を手向ける娘が愛おしい。真実を知ることが幸せだとは限らないということかな・・・
桜木さんらしい、哀しくて、重くて、寒くて、深い充実の作品で、最後は、少しの光が射して読後も悪くない。
久々に堪能しました。
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美しい文体で流れるような風景を感じる作品 内容はめずらしくはないが、清らかな読後感を久々に感じた。大切にしたい本
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自分の出生を知りたくて、認知症になった母が呟いた岬の名前を頼りに、新聞の投稿短歌にその岬を使った作者に連絡を取った夏紀。
その出会いが彼女の出生にまつわる事実を掘り起こす。
そこには様々な悲しみや恐怖等が入り雑じった過去があった。
今までの桜木作品では一番面白かった。
2018.2.27