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大切なもの
2017/01/15 14:20
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投稿者:あいん - この投稿者のレビュー一覧を見る
幕末の江戸城無血開城は、動乱の中の1シーンとして知識としては知ってはいても、その機微については、特に何も考えたことはありませんでした。まるで現代の住宅引渡しのように、形式的な手続きだけで引渡されたように勘違いしていました。浅薄です。
六兵衛という登場人物を通じて、武士(=人)の「矜持」を考えさせられました。「壬生義士伝」と併せて読めば、幕末動乱期の「動」と「静」を感じられる良書だと思います。
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大政奉還、江戸城無血開城。その時に、起きていた事。
2017/06/22 10:20
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投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
浅田次郎氏は本当に、こういう「歴史的事実の隙間」のような所から物語を奏でられるのが上手い。今回もようこんな物語を紡げたものだと心から感心し、楽しませて頂いた。
日本人なら誰でも、「たいせいほうかん」という言葉を、一度は聞いた事があるだろう。漢字で書けば「大政奉還」、250年以上も続いた江戸幕府が政治権限を朝廷に返した事。簡単に書いてもものすごい事態だという事が分かるが、つまり現代で言えば、今の国民主権で政党政治のような国のあり方が一切なくなって、全く違う国の運営の仕方が始まるというわけだ。近代日本史においてもっとも大きな出来事の一つといえる。また大政奉還の大きな特徴は、話し合いを持って成し遂げられた事。朝廷と幕府が戦を行って朝廷側が勝ったと言う訳ではなく、これからの時代には幕府制度は合わないのだという話しあいの元実現されたという、これは非常に意味合いが大きい。万一江戸の町が戦火で大荒れになり、戦後に荒廃しきったとしたら。列強諸国が乗り込んできて、侵略されていたという見方が強い。結果、今の日本は無かったと言われている。それを当時の偉人達は江戸城無血開城という形で成し遂げたわけだが。当然旧幕臣には腹に据えかねる者も多くいたわけで。「彰義隊」「上野のお山」「錦ギレ」なんて通り一遍の言葉は授業では習ったけれど、結局主役は人間。実際はもっと複雑で生々しい自体が起きていたのだ。
江戸城から旧幕臣が去り天皇が入城する、その時。一人の侍が江戸城に居座り続けた。上様の馬前を守る誉れ高き御書院番士の一人、的矢六兵衛がその人。何を目的としているのか黙として語らず、誰の説得にも応じずただそこに座り続ける。しかもこの六兵衛、どうやら人が入れ替わっている。皆が知っている的矢六兵衛とは似ても似つかぬ相貌。しかしそれも何も語らないのでどういう事なのかは誰も分からない。本来なら刃傷沙汰に及んだとしても叩きだすべきであるが、官軍の総大将たる西郷隆盛より、天皇がお住まいになる場所で一切の流血騒ぎはならないの命があった。だから周囲はなんとか城を出るように六兵衛をあの手この手で諭すのだけれど、当の六兵衛は居座りどころを変えつつも、一切城を出て行こうとはしない。さて一体何の為に六兵衛は座り続けるのか。いや大体、この六兵衛は、誰なのか。上巻は何せこのミステリアスな状況に終始する。このシンプルな謎を深める事に終始した事が、非常に好感だった。下巻はまたシンプルにその謎解きとなるのだろう、とても楽しみだ。
そういえば以前読んだ「壬生義士伝」では、主役だった新撰組吉村貫一郎の息子が、戦で何度も先陣を切って相手に斬りかかって行ったりと、突如自らの命を無駄にするような、傍若無人の振る舞いに出るくだりがあった。最後の最後にその理由が空かされて涙腺が大崩壊した記憶がある。あれに似た感触の本作品のこの上巻。下巻の種明かしが、本当に楽しみだ。
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黒書院の六兵衛 上(文春文庫)
2017/02/23 22:59
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投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
黒書院の六兵衛というタイトルで幕末の江戸城明渡の際のエピソードを題材にしている。御書院番士の的矢六兵衛と官軍方尾張徳川家徒組頭の加倉隼人を中心に、勝海舟や西郷隆盛も登場させ、正体不明の六兵衛が一言も喋らないで何のために忠義を通しているのか、上編だけでは判明せず下編に読み進むことをお勧めします。
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【江戸城に居座り続ける謎の武士の正体は?】江戸城明渡しが迫る中、てこでも動かぬ謎の旗本に、城中は右往左往。今も変わらぬ組織人の悲喜こもごもを描いた奇想天外の感動作。
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江戸時代の終焉。無血開城の裏で、些細な、しかし厄介な問題が発生していた。
御所院番士、的矢六兵衛なる、武士の手本のような所作を身につけた、無口な旗本が、官軍への城引き渡しを前に城内に座り込みを開始した。
問題はそれだけではなく、当の六兵衛の正体が謎だらけであることだ。
突如として官軍将校の職を押し付けられた尾張藩の御徒組頭の加倉井は、六兵衛を下城させるべく奔走するが…。
黙して端座し続ける六兵衛と、その周りであれやこれやと策を練る幕臣たち。一方で加倉井は女房たちも巻き込み、その正体を探ろうとする、二転三転の推理も面白い。
幕府の瓦解と新政府樹立の混乱の時代に生きた幕臣たちの胸中のリアルが描かれる。
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浅田氏の真骨頂(だと思っている)幕末モノ。
また、主人公の立ち位置が、身分上は官軍の立場ながら心情的には疑問を持つ江戸っ子、というとても絶妙なトコロ。
この時代を舞台にした作品、とくに滅び行く江戸の世の人々の矜持なんかを描かせたら、浅田氏の右に出るヒトはいないんじゃないかと思います。まだ半分しか読んでないけど。
関係者へのインタビュー形式の文章、浅田氏の得意のやーつですね。
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どこからこんな奇想が生まれてくるんでしょう?
江戸無血開城のさなか、御書院番という大旗本株を金で買った六兵衛が、天皇を迎える準備が進む当時の江戸城でもっとも権威ある西の丸御殿でただひたすら無言で居座り続けた物語。
六兵衛の正体もその想いも最後まで明かされません。
壬生義士伝を思い起こさせる六兵衛をめぐる人々への問聞きの会話体は浅田さんの真骨頂ですが、当時の世相は描くものの六兵衛の前身を暴くことなく。
上下二巻。下巻の評価は下がっているようです。。
何時か明かされると思った六兵衛の正体がついに明かされなかったことの失望感があるようですが、私はまあこれも良しかなと思います。
むしろ、ただひたすら無言で居座り続ける六兵衛の威風がどんどん高まっていくのに対し、彼の始末に困る名人元勲たち、西郷、大村、木戸といった面々が妙に小物に見えて行くのが可笑しくて、よくまあこんなストーリーを思い付くなあと感心しながら読んでいました。
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幕末の「江戸城開城」という時期を背景とした、少し不思議な物語である。そして、何処となく「時代劇の姿をした寓話」というような雰囲気も漂う…
往時の感じで「平凡な男」という風な、主要視点人物の隼人の平穏な日常が破られる辺りから物語が起こり、奇妙な男の不思議な行動に振り回されて行く。どういうことになって行くのか?「幕末奇譚」という感じだ。
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(上下巻共通)
いまいち、感情移入をすべき人が見当たらない印象。
当事者の考え方はわかるんだけれど、売りがわからないっていうかね。(^^;
最後の武士の矜持を主題とみるべきだとは思うんだけど、どちらかというとドタバタ喜劇的な感じもするしなぁ。
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全2巻。
江戸城明け渡しが間近に迫った幕末、
官軍のにわか先遣隊長として
江戸城に送り込まれた身分低き主人公。
そこで見たのは喋らず動かず座り続ける一人の侍。
明け渡しまでに此奴をどかせと命じられるも、
どこの誰だか詳細不明。
この侍は誰なのか。何のために座り続けるのか。
謎が謎を呼び、笑って泣ける、
個人的にここ数年で一番の傑作。
これはすごい。
何がすごいって浅田次郎すごい。
しばらくブクログ休んでたけど、
これは書かねばと思い久しぶりにログイン。
正体不明・目的不明の侍を巡り、
周りの人間が散々に振り回されながら
勝手に事件を大きくしていく滑稽な喜劇。
言葉で説明するとそれでしかないんだけど、
読者もそれに巻き込まれ、
主人公たちと一緒に驚き、ドキドキ、涙する。
よくもまあこの構成で最後まで読ませれるもんだ。
ミステリーだし感動話なんだけど、
客観的に整理するとコメディでしかない。
キツネにつままれた気分。
特にラスト、
どんな風に物語をたたむのかと思いきや、
力業で最後まで読者をだまし続ける。
なんでこんな構成でこんなに泣けるんだろう。
浅田次郎恐るべし。本当にこれにつきる。
人は選ぶかもしれない。
特に女性は「なんで?」が残るかもしれない。
でも、時代物に詳しい人ほど騙され、
物語の狂乱に巻き込まれそう。
時代物好きには是非読んでもらいたい。
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29年1月23日読了。
皆んなのレビューを読むと評価はすごく高いが、私にはあまり合わなかったようだ。上巻最後辺りから、ようやく内容に気分がのってきた。殺伐とした幕末にあっては、どちらかというと長州征伐とか、戊辰戦争などの争乱や暗殺にどうしても目が向きがちだが、一個人の江戸城居座りが主題とは。小さな事実が大きな波乱を起こすかも?下巻の展開に期待!
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『ゴロウ・デラックス』で紹介された浅田次郎氏の「黒書院の六兵衛」読了。
幕末の江戸城引き渡しにおける悲喜劇。
無言のままに居座る六兵衛という男が何者なのか、なぜそこに居座り続けるのか。周囲のドタバタ感が六兵衛のどっしり感と反比例して面白い。 また周囲の心理描写も素晴らしい。
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江戸城明け渡しに至るドタバタひと騒動の切り口が何ともはや奇怪な(笑)。六兵衛は何を思うてただただ岩のように居座るのか。人々の口を借りて六兵衛の正体に迫るだけで、物語も岩のように動かぬ上巻。下巻はどうなる?想像もつかないが、そこに感動は控えてるのだろうか?
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江戸城の明け渡しが迫るなか城に篭城してこでも動かない旗本が・・・。この謎の旗本に城中は右往左往。組織人の悲喜交々を描いた奇想天外の作品。下巻が楽しみ。
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「君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい」と、学校の先生に言われたらしい著者の、本領発揮ともいうべき傑作。
大政奉還による江戸城明け渡しが決まったにもかかわらず、宿直部屋に端座し動こうとしない六兵衛。
しかも彼は、六兵衛を名乗るものの、それまでの本人とは全くの別人。
彼はなぜ居座るのか、彼は何者なのか?
ミステリアスな六兵衛に、興味は尽きない。下巻が楽しみ。