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貧困に加えて違法な石炭採掘による環境破壊に押しつぶされる地域を舞台に女性弁護士の成長を描いた作品。
2022/02/26 09:20
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
貧困に加えて違法な石炭採掘による環境破壊に押しつぶされる地域を舞台に女性弁護士の成長を描いた作品。高給ではあるが遣り甲斐のない机上書類仕事に疑問を感じていた若手女性弁護士は僻地の貧困にあえぐ住民たちと身近に接していくうちに、これまで避けてきた法廷弁護士という役割に生きがいを見出していく。表題の『汚染訴訟』から石炭会社を相手にした熾烈な法廷闘争劇を想像して読み始めたのだが、貧困や石炭会社による環境破壊や汚染による健康被害などはあくまで舞台背景であり、真のストーリーは若手女性弁護士でありそれを導く地元の熟練弁護士たちである。改めて原作表題を見ると“GRAY MOUNTAIN”、つまり作中に何度も現れるグレイ兄弟の昔の所有地だった「グレイ山」である。原作表題の方が本書の内容を的確に表現していると感じた。
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炭鉱町にてボランティアしている弁護士の成長物語。
訴訟合戦の開始かと思いきや、主人公が都会での再就職を諦め、炭鉱町での弁護士家業を選択する成長物語でした。
ということで、訴訟や法廷での駆け引きが描かれない分、物足りなさがあったものの、依頼人に寄り添う弁護士の本業に目覚めていく物語としては良い結末でした。
できれば、継続案件のその後を見たいものです。
それにしても、日本語のタイトルはミスリードだな。
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著者得意の予定調和的な内容かと思ったが、意外とプロットは複雑で、人物造型もいわゆるステロタイプ的なものではなかった。若干退屈な部分があることは否めないが、リアリティの感じられる作品だと思う。
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あれ?終わり?
軽い読み物。
出張前に空港とか駅の売店で買って読み始めると移動時間はあっという間に過ぎること間違いなし。しかし読み終わるとホテルの部屋に置き去りにされる。
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辣腕弁護士ドノヴァンの身に信じられない悪夢が降りかかる。サマンサはホームレスとなった母子を救い、老女の遺言状作成を手伝うかたわら、ドノヴァンの弟ジェフと共に、石炭会社の不正を暴く決定的証拠を安全な場所に運び出そうとするが、闇の手は彼らの作戦を阻もうとする。法廷経験ゼロの若い女性弁護士が成長していく姿を描きながら、米社会の闇も抉るスリル満点のリーガルサスペンス。
胸がすくような結末ではない。でも、これはこれで○。若い弁護士の成長物語は読ませます。
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壮大なドラマを展開しておいて、これからという時に中途半端に終わってしまった!
いち女性の人生の決断を描くドラマだったとは、法廷サスペンスを期待したのが間違いだった。
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見習い弁護士が大きな訴訟にじわりじわり巻き込まれていく。ぐいぐい引き込まれて、読み進めていくとラストは、そっちの方向か~、という感じでしたが、最後まで面白く読めた。
石炭採掘による環境破壊の参考URL
http://tenbou.nies.go.jp/navi/metadata/39443
https://ourworld.unu.edu/jp/lessons-for-appalachias-post-coal-economy
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地道に作品を書き続けるグリャシャム。シドニー・シェルダン張りの超訳という暴挙に曝された初期の何作か以外は全部読むことにしているので、少し溜まってしまった読み残しに手を付ける。
本書は、リーマンショックを受けてアソシエイトの整理に大わらわとなったマンハッタンの巨大法律事務所の朝で幕を開ける。
主人公は珍しく『依頼人』(スーザン・サランドン主演の映画も名作『グロリア』ばりに良かった)以来となる女性である。しかもキャリア3年。訴訟経験なしだが、家庭環境はまるで法曹界サラブレッド。
多くの弁護士が職を失う中で我がヒロインも泣く泣くニューヨークを後に、アパラチア山麓のウェストバージニアの田舎町で一年間の無償奉仕を選択する。クレイジーで荒っぽい大歓迎を街の変り者から受けた後、この町がじわじわと滅びに向かっている事、多くの人が救済を必要としていること、その原因となっているのが、山を切り崩しての石炭の露天掘りを強引に広げる巨大会社、彼らが使う金権法律事務所の輩たちにあるとこがわかってゆく。
ヒロインが加わった女性ばかりの相談所には毎日のように石炭会社の貧しい被害者が飛び込んでくるので、それらの一件一件でそれぞれに短編作品を作れそうな勢いだ。そしてこのど田舎性こそが実はグリシャムという作家の魅力でもある。
都会よりも南部の田舎町に舞台を置くことの多いこのリーガルサスペンスの巨匠は、実は『ペインテッドハウス』など、サスペンス外のホームドラマなどで南部に暮らす少年たちの逞しくも胸踊るアメリカンな傑作小説を書いてもいる。
本書は、石炭会社との大きな闘いを主たる大訴訟のターゲットとして据えてはいるが、実は女性弁護士が自己の発見と人生の選択をしてゆく成長小説としての魅力の方が読み応えも作品価値と遥かに大きく、古くからのグリシャム読者としては相当に嬉しい一作なのである。
一方で、町には既にヒーローとも言うべき若き弁護士の姿があり、鉱山訴訟の本命はむしろ彼によって進められてゆくのだが、この作品には大きな驚くべき折り返し点がある。
上下巻の厚さに100ページ程の差があり、値段も各巻異なるのが珍しく、読書前から気になっていたのだが、それはこの折り返し点の存在があるためだ。これを境にヒロインの運命は確実に変化を余儀なくされてゆき、訴訟そのもの以上に、彼女の価値は膨らんでゆく。
どんな選択をするのか、どのように準備して、どのように変わって行こうというのか。良き小説作品が持つべき魅力を確実に備えた信頼のグリシャムワールド、健在なり!
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大きな山場がほしかった。訴訟が複数あったので、一つひとつが淡々と進んでいく。もう少しドラマチックな方が好みですね。
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原題 GRAY MOUNTAIN
Dūra lēx sed lēx.ですね。
(You can't spell illegal without legal.の方が好きですが)
タイトルの〝gray〟にはいろいろな意味が込められているように思えます。ネガティブなものばかりですけど…。
それゆえ、サマンサの最後の決意にはとても清涼感があって、終わりとしては好きです。
それにしても、アメリカの訴訟社会(というか文化?)って大変だなぁ…。