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本書は主にASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠如多動障害)を扱う。
対象とされているのは、小児よりも成人という印象を受けた。
これらの障害は、親のせい、養育環境のせい、しつけに何らかの問題があるせい、とされてきた。
いや、おそらく今でもそう思っている人は少なからずいるだろう。
しかしそうではないことは明らかになっている。
ただし、これらの障害がきっかけとなって、養育環境が整えられなかった可能性は十分にありえる。
早くから療育を始め、親もペアレントトレーニングを通じて子供への理解を深められればいいが、様々な事情からそれが困難であるケースだってある。
そうなると不適応からまた別の問題を引き起こす場合もある。
それが小児から成人への成長過程で起きるから、この障害は難しい。
しかし逆に言えば、「ADHD症状を患者本人が自覚することや投薬の効率によって、十分な改善を期待できる」(64頁)。
この言葉は励みになる。
いくらやっても変わらない、どれだけやっても届かない、何もかも投げ出したくなる気持ちを鎮めてくれた。
理解をしていても、いつもいつも寛容ではいられない。
それは私自身の性格的なものもあるが、実際に24時間共に過ごす家族にとっては本当に苦しいものだ。
子供のため、とわかっていても、支える側も疲弊している。
今後はそこにも焦点を当てたフォローが必要であろう。
はじめに述べたように本書が対象としているのは成人寄りだ。
歴史や事例を学ぶには有用だが、私自身が欲している情報(小児)とはややズレがあったことを付記しておく。
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数々の症例や事例を引用しつつ、論を進めている。ADHD(注意欠如多動性障害)とASD(自閉症スペクトラム障害)の共通点と相違点はとても参考になった。
同じ症状でも、ASDに由来するのかADHDに由来するのかで、対応も治療法も大きく違ってくる。場の空気がよめないのはASDであるが、対人関係に不得手なADHDの場合もある。人間との距離の取り方が下手な場合も存在する。
また単純にうつ病として診断されても、障害に由来することもあるので、また一概に語れないのが歯がゆい。
また後半ではサヴァン症候群や、いわゆる「アスペルガー障害」の報道のあり方、それのもとになった犯罪などがつづられている。この辺は「他人の気持ちが分からない」だけでアスペルガー障害であるという風評があるが、そうではない、などが主張されていた。
筆者はADHDやASDの治療として投薬を行っている。これが少し気がかりであった。内容はとてもよいのに、すこしこれで残念に思えた。投薬の副作用がやや問題になっていたはずである。
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ASDとADHDについて解説。ADHDよりもASDの解説がメインか。
特に目新しい知見が記載されているわけではないが、障害の内容や診断基準については詳しく記載されている。
ただ、想定される読者は、自分または身近な人が発達障害ではないかと疑っている人だと思われるが、自分または身近な人が発達障害であった場合にどう対処すればいいかはあまり記載されてないように思える。
本当に困っている人にとっては、その人がASD、ADHDだと分かるだけで気分的に楽になるかもしれないので、それでもいいのかも知れない
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非常に分かりやすい解説で為になった。うつ、ないしは他の精神疾患と診断されても実際はASD, ADHDの場合があること、また逆の場合もあることを具体的な症例をあげているのが参考になる。また、DSMー5や他の診断に至るまでの定義を表にまとめているのは、一般人向けての本としてとても有益だと感じる。アンデルセンや大村益次郎の例は純粋に興味深かった。ASDやADHDの原因、さらに治療方法の最新の海外の医学文献の紹介もあればよかったかなと思う。
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発達障害という疾患について、その中心的なASDとADHDを詳しく述べることによって説明されています。一つひとつ丁寧に書かれていて、この症状に対しての出来るだけ正確な理解をすることによって、世の中にはびこる偏見をなんとかしたい著者の趣旨が伝わってきます。症状の例が述べられていますが、それは一つだけ取ったら一般にもあることで、それが様々な誤解に結びついていることが良くわかります。複数に当てはまれば発達障害ではなく、発達障害だから複数の症状が出ているということに気をつける必要があるのだと思います。この症状に苦しんでいる方々や、それを支援する様々な活動と、世の中の関心の薄さからくる偏見や誤解。本書を読むことで、この方々に対する総合的な理解をすることができます。
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本書は前書きで、対人関係が苦手な人は健常者もいますよ、とごく当たり前の指摘をしており、その点からこの本は発達障害の優れた解説本ではないか、と私は判断した。 発達障害の概念がそうでもないのに使われており、正しい発達障害の道案内の本と言える。
私は、不注意が今でも多く、言われても、何度繰り返しても続くから、やはり、注意欠如多動性障害である。他に、衝動性が高い。暴行罰金刑10万もある私は実は前科一犯。
本書によると、発達障害の人は、海外では、のびのびできた、というように書かれている。 やはり、日本は、発達障害の人が不得意な、同調圧力が強いんだよ。
発達障害に関する解説書では最適だと僕は考えます。オススメですね。
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ASDとADHDのちがいなど。
シネステジア(共感覚)ってどんな感じなんだろう。文字や音に色を感じるって、ひとによってその色は違うのだろか。
就職して初めて症状に気づくパターンが多いとか。
凶悪事件と病気の関係など、世界の深さと救いのなさ、リアリティとファンタジーの混沌にもんもんした。
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読み終えてまず感じたのは、実にこの発達障害というのは難しいということ。
この人にはこの問題があるから、こう対処する…課題に対する適切な一対一対応というのができれば望ましいが、発達障害がうつ病を併発して表れることなどもあり、それはプロの医師を持ってしても難しいようだ。
本書では様々な事例が紹介されており、今後様々な人と接する上での視点を多少は得られたように感じる。私は子育てを控えており、また、大学職員である。発達障害を持つ学生へのケア、対処はよく問題となる。そういう意味で、読んで良かった一冊であった。
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今まで読んだ発達障がい系の本でいちばん分かりやすくすらすら読めた本かもしれない。アスペルガー症候群で重要なのは「何かへの異常なこだわり」であり、たとえば人付き合いが苦手とかコミュニケーションに関わることだけではアスペルガーと言えない、という話は参考になった。あと、たぶん自分、ADHDだわ。子どものときに教室を立ち歩く癖があって、時間を経るにつれてその癖がすーっとなくなっていった症例に見事に当てはまるので、多動なのは間違いないと思う。
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■自閉症の特徴(カナー)
・他人との感情的な接触の欠如
・自分で決めた事柄を同一に保とうとする欲求や反復的なこだわり
・言語の障害
・知的な遅れ
・物の操作に取りつかれる
・高いレベルの視空間スキル,機械的記憶
・魅力的で知的な風貌
■「自閉性精神病質」アスペルガー(今日のアスペルガー症候群という概念の出発点となるもの)
・この子供たちは,一様に思考と体験に特別な独創性が認められる
・大人たちのすることを殆ど無視し殆ど学習せず,自分自身ですべてを作り出す
・悪い行為を楽しみながら,まさに挑発的に,自分の悪い行為について報告する
・両親や同胞や友人に対する温かさや責任感・愛情に満ちた態度が見られない時でも極めて極端な強迫的なフェティシズム(異性物品愛好家)のような物品への愛情を示したり動物に対して献身的な愛情を示す
■ADHDの人は注意力が常に散漫なわけではなく興味を感じる特定の対象に対しては,むしろ過剰な注意,集中力が向けられることもある。好きな事柄には徹夜して取り組むケースも多い。
■ADHDの不注意にはいくつかの側面がある。
・特定の事柄に注意を持続する「持続性」の障害
・周囲の様々な事柄に注意を配分する「分配性」
・必要に応じて注意の対象を切り替える「転換性」
に問題があることが多い
■ADHDの人は成人になっても,忘れっぽさ,集中力不足,自らのスケジュールを管理するのが困難であることなどがよく見られる。その結果,一部のADHDの人は対人的な交渉や接触でミスを繰り返し,対人場面を避けるようになりやすい。
■職場におけるADHDの問題の一つとして,すぐに取り組むべき仕事があるにも関わらず,周辺に関心が向いてしまい,肝心の業務を忘れてしまうことがある。その一方で興味が向かった大賞には過剰なまでにのめり込み,かなりの成果をもたらすこともある。
■不注意の症状のため,きちんと上司などの話が聞けていない例も多い。また衝動性のため,相手の話の途中で抑えられなくなり,話をかぶせることも起こりやすい。相手の話を最後まで聞かないことで対人関係の悪化を招くこともある。
■ADHDでは不注意によって会社の日報の提出を忘れるということがよくある。一方,ASDにおいても同様のことが見られるが,これは日報を出すという行為は社会的に重要であるという認識が欠けているために生じる。つまりASDの人は,常識的には必要な場合においても,自分が重要だと考えないことについては無視してしまいやすい。
■発達障害の当事者は何度も同じようなミスを繰り返すことが多い。
・ADHDにおいては不注意症状の反映であるとともに,目の前の「刺激」を優先して本来のタスクをおろそかにした結果
・ASDにおいては,その行動についての重要性や必要性を感じていない場合,ミスを繰り返しやすい
■「話し出すと止まらない」「話がとぶ」ということもしばしば経験する症状である。
■サヴァン症候群の3群
・第1「断片的才能」は,スポーツ関連情報やナンバープレート,地図,歴史上の事実,誕生日,電車やバスの時刻表などに没頭して驚くべき記憶力を示すものであるが,そこに創造的な内容は含まれない。
・第2「有能サヴァン」は,音楽,美術,その他の特定の領域における卓越した能力を持ち,高度で著しい特徴がある。
・第3の「天才的サヴァン」は,並外れた能力を示す極めてまれなもので,その能力は障害のない人においても非常に著名なものとみなされ「天才」と呼べるもの。
■アスペルガー症候群の生徒は以下のような特徴的な言動をとることが多く「変わりもの」とみられることが多い。
・毎回同じことをし忘れる,目にしても気が付かない
・話し出すと止まらない,話がとぶ
・順番,会話に割り込む
・必要以上になれなれしい
・懲りない
■アスペルガー症候群でみられる反復的な行動パターンの例
・同じようなやり方で無目的な動きを繰り返す(手のひらをひらひらする,物の匂いをかぐ,ぐるぐる回る など)
・自分自身の身体を叩く
・物の置き場所にこだわる
・鍵を繰り返し確認する
・ものを食べる順番にこだわる
・特定のテーマやものに熱中する
■アスペルガー症候群の診断には次の2つの症状が必要である。
・第1は「対人的コミュニケーションの障害」
・第2は「常同的,強迫的な行動パターン」
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名探偵シャーロック・ホームズ。
映画「風立ちぬ」の堀越二郎。
ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の津崎平匡。
「少し変わったところがあるが、特定の分野におちて驚異的な能力を発揮する天才タイプ」として、アスペルガー症候群の人たちが好意的に取り上げられている。
ここ数年「発達障害」という言葉は、ポピュラーなものになった。
だがその反面、誤解も多い。
裁判で採用された精神鑑定ですら、臨床の専門家の著者などから見ても明らかな誤りであるケースが散見されるという。
少年事件における被告人の刑罰減免のために「発達障害」という病名が濫用されている実態があるのだと。
毎回同じことをし忘れる、目にしても気づかない。
話し出すととまらない、話がとぶ。
ものの置き場所にこだわる。
著者は、昭和大学烏山病院長として、発達障害の人のためのデイケア、リワークプログラムに取り組んでいる。
一筋縄ではいかない状況なかで、トライ&エラーを繰り返し、生活の中で感じる「生きづらさ」への対処、どのように本人の個性を生かした生活をしていくかを検討するのが目標だという。
本人も、家族も、周りの人々も、そして行政、医療関係者が、実態を正しく捉えて対処していくことが肝要なのだと。
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同じ発達障がいを論じても、著者の一冊目の場合は概論になりがちで、これもその中の一冊でした。内容がしっかりしているだけに、次の本に期待です。
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ADHD, ASDについてたくさんの事例を交えて傾向を詳しく説明。自分自身も傾向がある気もするし、生きていて周りで発達障害の傾向がある人に出会うことも当然あるので知っておくことにとても価値があると思う。書き方も客観的で説明がうまく好感が持てる。
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ASD,ADHDそれぞれのこと、共通点・相違点、犯罪との関連など、新書としてよくまとまっており、わかりやすい。
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「発達障害」と呼ばれる症状のうち、特にASD(自閉症スペクトラム)とADHD(注意欠陥・多動性障害)を取り上げて論じた書である。症状そのものの解説に加え、世間的な「発達障害」に対しての誤解や偏見への反論に、かなり多くの頁を割いている。