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紙の本
ラブストーリーというよりヒューマンストーリー。
2017/05/13 09:29
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:moon - この投稿者のレビュー一覧を見る
よく面白かったのか?と聞かれるが、この小説は面白い面白くないというより「好き」ですね。フィーリングが合うということなのかもしれないです。
人によっては凡人かつ弱い人間の物語で主人公が嫌になる人もいるのかもしれませんが私はそんなに悪い人間には思えないんです。成功者や強い人間には理解しにくいのかもしれない、というか理解しようとしない。挫折を繰返し経験したものにとっては永田の行為や想いは身に覚えがあることばかり。分かっているけど毒を吐くことがやめられないし八つ当たりもするし自己嫌悪にも陥る。
世の中どうしても強いものが評価され弱いものが省かれる。その者が這い上がろうとすると何も知らないものが勝手に決めつけて首を絞める。主人公はダメ人間の部類だけど守ろうとした気持ちは否定してほしくないです。
どこにでも転がってる人生。だからこそ必要な小説。ここに一人救われた弱者がいることを知ってほしいです。
紙の本
面白くはないけど、文句なしに凄い。
2017/05/22 22:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
演劇にのめり込む尖った変人永田と、東京に夢を描く純粋な沙希の同居生活を描いた作品。前作「火花」の時にも思いましたが、「身近で自分よりも上位の存在を僻む惨めな自分」の描き方にどうしようもなく共感させられてしまいました。自分が無駄に削れていくのが分かるのに止められない感じとか。
前作は天才と凡人をテーマにした作品で普通に面白かったですが、今回は誤解を恐れずに言えば決して面白い作品ではないと思います。ただし、男女の付き合いを描いた作品としてこれほどリアルに嫌な気持ちになる本を読んだことがありません。付き合っている相手に対する傲慢さ、卑屈さ、勝手さ、甘え、苛立ちを煮詰めたような凄みがあります。
そういう意味で評価が割れるとは思いますが、そんな地獄の日々の向こうに又吉さんなりの結末を用意してるし、前作の最後の解散コントを彷彿させる良いシーンがありました。思い返せば辛いことの方が多い日々でも、いつか自分の血肉になるはず。読みながら勝手に救われた気持ちになりました。この本はそういう本です。
紙の本
なんだかんだ印象に残る
2017/10/14 23:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:TORA - この投稿者のレビュー一覧を見る
「火花」が、かなりインパクトがあったので、
今回の「劇場」も読む前から期待値は高めでした。
読んでいる途中は、
主人公があまりのダメ人間で、
読むのが辛いというかイライラするというか・・・
でも終盤はかなりのめり込んで読みました。
主人公が夜な夜な恋人に会いに行くシーンなんか、
これまで体感したことのない胸の締め付けられ感がありました。
あのシーンは、地の文もほんとに最小限、
台詞も細かくて、そのページを開いた瞬間の雰囲気も段違い。
ハッと息をのみました。
とにかくなんだか切ない話です。
もう一度読むのは、しばらくいいかなーと思うけど、
手元には残しておきたい本です。
電子書籍
青春劇と機関銃
2017/10/11 22:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コピーマスター - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説を読んで考えたことが二つあって、その一つは、又吉直樹という作家がどういう作家なのか、もう一つは、これは果たして恋愛小説なのかということである。そしてその問は詰まるところ一つのことであることに気附く。無類の文学好きタレントとして知られる又吉直樹が、これまでの文学の流れの上に自らの作品を位置づけようとしていることはいうまでもない。演劇、文学、関西弁という熟知した素材をモチールのも私小説の王道路線である。では何を書こうとしたのか、それは、或る青春というものではないかと思う。少なくとも“関係”の成就で中締めとなる恋愛小説ではないことは間違いないだろう。昨今の小説が描き過ぎてもはや無意味な記号と化しているそれはそもそも描かれていないのだから。ではここで問題とする青春は何をもって終わるかというと、現在を一つ一つ積み重なっていって、その先に、それが一斉に過去になったときに、意識的に振り返って、その契機は半ば強制された必然によるかもしれないが、過去が美しい輝きを放つとき、人は青春の終わりがおとずれたことを知るのだと思う。トルストイの剽窃ではないが、恋愛はどれも似たものだが、青春はいずれもそれぞれに青春であることに又吉直樹はあらたに作品を世に出す価値を見出したではあるまいか。この青春の特異点に向けてコツコツと準備作業をする爆弾製造者が又吉直樹という男なのかも知れない。いや、さにあらず、彼のこだわりはテーマにあらず、突然のように始まるクライマックスと、直情的で濃厚な言葉を機関銃のように繰り出して、打って打って打ちまくることで読み手の度肝を抜く独特のスタイルこそが彼の作風であるであろうとか、やはりたった二作の小説だけで断じるのは時期尚早であることは否めないので、次作を読んでからゆっくり考えることとしたい。こんな外縁をなぞるような詰まらないレビューになって申し訳ないが、本作は『火花』と共にトーテモ満足度の高い小説であったので五星紅旗。これは私個人としての評価である。又吉直樹の作品はオモテっ面が厳めしい。こういう前衛は、読者がコケオドシだと受けとるリスクは避けられない。中には評価の低いレビューもあろう。でもこれ読まない理由にはしないで貰いたい。
紙の本
私は満足しましたよ
2017/07/12 05:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『火花』で第153回芥川賞を受賞した又吉直樹であるが、その後なかなか作品を発表することがなかった。
そして、ようやくこの春に発表したのが、原稿用紙300枚の長編小説となるこの作品。
作品が出ないから、色々な憶測を言われただろうが、こうして発表されると『火花』以上の出来に、多くの読書人はほっとしたのではないだろうか。
もちろん、又吉直樹が一番ほっとしただろうが。
この作品は恋愛小説といっていい。
演劇の道を志す永田という男と彼を支える沙希という女性との出会いと別れが描かれているのだが、どうにも古めかしい恋愛模様である。
現代の若者もまだこういう、70年代流行った「神田川」の四畳半フォークのような、恋愛をしているのだろうか。
読む側とすれば、その年齢層によって受け止め方は随分違うのではないか。
例えば「彼女の純粋で無垢な性格が憎いのかもしれなかった。その優しさに触れると、自分の醜さが強調され、いつも以上に劣等感が刺激され苦しみが増す」なんて、まるで又吉直樹の好きな太宰治の自画像ではないか。
それとこれも気になったのだが、この男女のセックス描写が描かれていない。
同棲までしている男女だから性の交わりがないはずがないが、又吉が巌とその描写をしない。
セックスを過大に描く必要なないにしても、永田と沙希の関係であれば、それを表現することで恋愛の深みや傷がもっと出たはずだが、又吉はあえてその道を選ばなかった。
もしかしたら、又吉直樹という書き手は古風すぎる作家かもしれない。