紙の本
神国日本の匂い
2017/09/08 15:33
6人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
神話を歴史的文書史料の地位にまで引き上げた「孤高を保つ選ばれた民」は、昔は「迫害された民」であったが今は「迫害する民」になっている、ということ認識してほしいものだ。
紙の本
ユダヤとイスラエルという民族的・国家的タブーに迫った驚異の書です!
2020/04/17 09:53
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ユダヤ人の、そしてイスラエルにおける集団的アイデンティティを根底から突き崩す内容で、刊行当初、世界各国で大反響を巻き起こした一冊です。同書の中で著者は、「2000年の長きにもわたる追放と離郷、そして約束の地への帰還といったユダヤの物語をもとに建国されたイスラエルは、歴史的な正当性をもっているのか?そもそもユダヤ人とは何者か?」という問題提起をしています。そして、膨大な史料を精緻に読み起こし、「ユダヤ民族の神話と出自は近代の創作である」と暴露し、しイスラエルに対し再出発を迫っていきます。なかなか迫力をもってタブーに迫った驚異の内容となっています。
投稿元:
レビューを見る
特に政治的な何かに関心がある読者ではないので、何となく買った本。
中東情勢や政治的なアレコレは置いておいて(そういうことを云々するレビューはAmazon辺りでとっくに書かれているだろうし)、本書を読むと、『宗教』や『伝承(伝説)』というものは、時に『呪い』ともなり得るのだな……と感じる。
投稿元:
レビューを見る
タイトル・サブタイトル等から察せられるように、小坂井敏晶氏の『民族という虚構』のようなテーマで、「ユダヤ人」に限定して極めて詳細に「民族アイデンティティ」を解剖しようという本である。
アーレントの『全体主義の起原』第1巻との比較も考えたが、これとは視点がちがう。
要するに近代西洋において出現した「ネイション」概念が世界の核心として跋扈し、ユダヤ民族を自認する人々がみずからの民族の「物語」(シオニズムなど)を創作するのである。
従って近代以降において、古代以来の歴史が製造される。そこには、物語に回収させるためかなり無理のある歴史解釈が繰り返されており、ほとんど「歴史修正主義」そのものだ。
そうして著者は現在のイスラエル国家の意義を批判する。確かに「ユダヤ人の物語」にとらわれすぎたイスラエルの国内体制は、民主主義国家とは言えないだろう。
本書はすこぶる詳細に記述されていてボリュームある読み物として面白かった。
「ネイション」概念についてはさらに検討してみたい。
投稿元:
レビューを見る
以前読んだ「聖書考古学」(中央文庫)に、モーゼも居なかった、ソロモンの栄華も存在しないだろうとあった。高地に住んでいたカナン人が低地の民に対抗するため、自らをユダヤ人と自己規定していたのだろうという。
しかし、新発見というわけでもなく、実は知られた事実であるらしい。考古学者の本なので断定的な記述はないし、虚構の歴史が生まれた経緯にも踏み込んでいないのが、稍々物足りなかった。
さて、中々分厚い本書。最初はネイション論。耳馴染みのない言葉だが、イスラエルやヨーロッパでは以前から使われている概念らしい。ネイションは宗教、教育から、また人々のナショナリズムから作りあげられる。我が国においての性急なナイション造りとその悲劇を思い起こす。
カナンに住むユダの人々には追放された歴史も第二神殿の破壊もなかった。
ヘレニズム時代にはモーゼの宗教(?)はギリシャ哲学より説得力があると広がり、ローマ帝国時代のハスモン朝でも積極的な布教がされたとある。
イベリア半島がイスラムに征服されていた時は、イスラムとユダヤは共闘関係にあった。
カスピ海近くにあったハザール国はユダヤ教の国。独立を保つためにキリスト教もイスラム教も選択できなかったとその理由が明かされる。
細々した事実の積み上げが、追放され、放浪するユダヤの民という神話を否定する。
イスラエル国家のネーションが優生学的なユダヤ民族論やユダヤ民族に守られた遺伝子があるとする狂信に基づくと事細かに論証される。
そして、パレスチナの人々を排斥し、西岸を侵略し、イスラエル国内のパレスチナ人に平等な人権を与えていない体制なのに、民主国家だと強弁している矛盾を糾弾している。
それでも本書がイスラエルで出筆され、出版された事実。そしてイスラエル国内のパレスチナ人の発言力が高まっていることに僅かな期待を持ちたい。
読み辛い本だが、この事実を多くの人が知って、イスラエルに外圧が掛けられないものだろうか。
頭の狂ってる米国大統領は無視して、日本人はアラブやパレスチナの味方をするべきだと思う。
そしてイスラエルもパレスチナ人の人権を認めて、まともな国になったら、世界はかなり平和になるのではと夢想している。
投稿元:
レビューを見る
原書名:Matai ve'ekh humtza ha'am hayehudi?(重訳)
はじめに―記憶の堆積と向き合って
第1章 ネイションをつくりあげる―主権と平等
第2章 「神話=史」―はじめに、神がその民を創った
第3章 追放の発明―熱心な布教と改宗
第4章 沈黙の地―失われた(ユダヤの)時を求めて
第5章 区別―イスラエルにおけるアイデンティティ政策
著者:シュロモー・サンド(Sand, Shlomo, 1946-、オーストリア、西洋史)
監訳:高橋武智(1935-、東京、フランス文学)
訳者:佐々木康之(1935-、フランス文学)、木村高子(翻訳家)
投稿元:
レビューを見る
ユダヤ人の起源 歴史はどのように創作されたのか
(和書)2011年01月21日 22:26
シュロモー サンド ランダムハウス講談社 2010年3月26日
asahi.comの柄谷行人さんの書評で知りました。
ラブキン『トーラーの名において』を合わせて読んでみました。
ネーションと他者、普遍宗教と国家というものを根底的に批判していてとても参考になりました。
自由というもの、そして相互性というものを考えるために良かったです。
資本と貨幣、商品交換、労働力商品について考えてみたい。ユダヤだけではなく人間全てについて考えることができる。
投稿元:
レビューを見る
難解。馴染みがなさ過ぎて理解が追い付かない。ただ、長い歴史があり色んな考えを持つ人がいたというのは分かる。それが現在のイスラエルという国とどう繋がるのか、そもそもイスラエルという国への理解が浅かったと知れて良かった。それから副題の創作されたという部分もとても興味深い。