紙の本
嵯峨野の静かな情景
2017/10/24 21:51
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投稿者:ミエル - この投稿者のレビュー一覧を見る
嵯峨野花譜は大覚寺の花僧胤舜が、花を生けることにより登場人物たちの心を解き、運命を手繰り寄せる物語。タイトルと大覚寺を考えて嵯峨御流の物語かと思えば全く違う。嵐山全体が借景の短編時代小説。通勤時間に読んだら心洗われるかも。全体的に物悲しい。
紙の本
花を活けるように人を活かす
2017/08/25 07:26
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は文政13年(1830年)、と聞いて徳川時代のどのあたりかとぱっとはわからない。
関ケ原の戦いが1600年で大政奉還されたのが1867年だから、徳川幕府の終焉も間近の頃である。
京都の大覚寺の伝わる華道未生流で修行する少年胤舜は時の幕府老中水野忠邦の隠し子として描かれている。そのことの事実はわからない。
ただ、葉室麟のこの連作集ではそのことで父と子の姿を花に喩えて描かれていく。
水野忠邦といえば天保の改革を実行した人物だが、この作品では自身の政志向が多くの敵を生み、ゆえに隠し子である胤舜もあるいはその母も命を狙われることになる。
そのつど、胤舜は花に教えられ、やがて周りも人も気づくほど大人へと成長していく。
つまり、この作品は胤舜という一人の少年の成長物語といえる。
短篇連作のようでありつつ、実は一篇の長編小説だとも見える。
そのあたりは葉室の巧さといっていい。
そうであっても、私は一つひとつの作品を堪能した。
それというのも、一つひとつが花で描かれているからだ。
冒頭の作品が白椿、次が蝋梅、そのあとは山桜、梔子(くちなし)といった風に、それぞれの作品でこれらの花が見事に活けられていく。
まさに華道は花を活かす、活花である。
人を殺める、そんな陰謀もありながら、この作品の世界は静かだ。
そこに葉室麟の成長を見る。
荒らしいことを静かに描くとは、なんとも大人の書き手であろうか。
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【私はまだ、悲しみも喜びも知らない…少年は花を活け、生きることを学ぶ】若くして活花の名手と評判の高い少年僧・胤舜は、ある理由から父母と別れ、京都大覚寺で華の道、人の道を学びつつ成長を遂げていく。
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初出 2015〜17年「オール讀物」の10話。
活花の名手と評判の大覚寺少年僧の物語。とはいうものの、実は父である老中水野忠邦に見捨てられ生母と生き別れとなった来歴のために起こる事件の数々。
母と名乗らない生母から昔を忘れる活花を依頼され、死んだ弟を弔う活花を依頼した若妻が自害し、大奥勤めの公家の娘から花比べを挑まれて身辺に迫る危機を告げられると、すぐに忠邦に恨みを持つ者に誘拐され、曾祖母と名乗らない曾祖母から活花を依頼され、生母を匿う尼僧から生母に合わせる口実に活花を依頼され、水野忠邦がお忍びで京に来たので会い、忠邦を恨む公家に殺されかけ、忠邦を恨む元老中が誘拐した生母を救出し、忠邦の子と知る上皇から宮中立花会で褒詞を賜った。
なぜ老中になるために側室や子を捨てるたのかさっぱりわからないのと、今ひとつ活花の心が響いてこない。葉室燐の作品としては少々期待はずれ。
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時は江戸後期、文政。京の大覚寺の若き僧で活花の名手である胤瞬の成長を10話で綴る連続短編集。
装丁の絵もすてきですが、各話の前にその花をイメージする挿画があり、それもすてきです。
大覚寺のいけばなといえば嵯峨御流ですが、たぶんそのいけばなをモチーフとしたであろう表現が出てきます。池坊もチョロッと出てきますよ。
水野忠邦の話も出てきて、江戸時代はこんなに大変だったんだなと改めて思いました。本音と建て前に苦しむのはやはり男の性なのでしょうか。
葉室さんの本らしく、虚実がうまく融合して面白い本に仕上がっています。
おすすめ。いけばなが好き、興味があればぜひ読んでください。
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最近読む葉室さんの作品は、お茶や花等のその道を極めた人の話が多いような気がします。 本作も老中水野忠邦の隠し子、胤舜が活花の修行により、人の生を考え成長していく話です。清々しい話ですが、もっと心の奥に突き刺さるような話をこれから沢山読みたかったです。葉室さんのご冥福をお祈りします。
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老中 水野忠邦の子 胤舜
訳あって、京都の大覚寺の花務である未生流の不濁斎広甫に預けられ、僧形で華道への精進の日々を過ごしている。
彼の父、母への思いを軸に、花を活ける事で心を成長させていく・・・かな
其々の花に掛けたエピソードがとても素敵。
心で活ける・・・アレンジメントにも通用しそうです。
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老中・水野忠邦の隠し子である、少年僧・胤舜が活け花を通して成長していく連作短編10話。
病の母、父との確執など、悩み多き胤舜の繊細な感性が光ります。
葉室作品ではお馴染みの和歌も所々に添えられ、雅な気持ちにさせてくれます。
読んだ後に、嵯峨野に行きたくなりました。
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江戸時代の京都が 舞台の
少年僧が 花を活けるお話でした。
父親不在の生活から
ある日 母親もいなくなり。。
そんな中でも 僧になり 心穏やかに お花を活けていくかと思いきや 色々な ドラマが 展開しました。
京都の風情ある 雰囲気をかもし出して
話が進みます。
悲しいけど 読み終って なんとなく 心が 温かくなるような本でした。