紙の本
歯ごたえたっぷり
2018/08/06 12:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ら君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
深い考察を前に、歯が立たないかと感じながらも読み切りました。
現在活躍中の方々のエッセイな内容の薄いことを実感しました。
時には、この本のような読み手に挑戦してくるものを手にしなくては。
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開高健の本は始めて読んだが、この人は小説家なのか、ジャーナリストなのか。ハイブリッドなのだろうが、エッセイも読み応えある。
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面白かった。
過去に読んだものも沢山あったがこういう硬質のエッセイは読み飽きない。個人的には渓流釣り関係の話が好きだな。
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提出した原稿です。
「暗い空。激しい沖。風のこだま。黄昏の荒磯の晦暗。これらが冬の越前海岸とカニを構成しているのであるが、夜長を火鉢のそばで古書など読んですごしたかったら、オスの蟹の甲羅を炭火にのせ、その中身の“味噌“に少しずつ酒を入れて煮るとよろしい。お箸の先でかきまぜているとやがてトロトロの灰緑色のものができあがるが、ちょっとホロにがいところがある。酒の香ばしさが熱い靄となってゆらめいている。」(「越前ガニ」より/『開高健ベスト・エッセイ』収録)
ーー毎年この時期になると思い出す一節。身を縮めながら味わう温かい酒と海の恵みのほろ苦さ。読むと頭の中が蟹で埋め尽くされてしまう人も多いのでは。
このエッセイの後半に水仙が出てくる。「越前海岸は冬のさなかに水仙が咲くので有名である」――12月の開高忌にも飾られるその花は、小さな鈴のような花弁から甘く華やかな香りを漂わせる。花言葉は「私の元へ戻ってきて」。可憐で控えめな印象の水仙だが、実際それを手に取るとことのほか存在感がある。それは開高さんの魂を彼の地に呼び戻していたに違いない。
開高健の文章は、読者を越前海岸へと誘う。それは、これからやってくる長い冬が必ずしも暗く寂しいだけのものではないと教えてくれる。