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奥のほそ道 みんなのレビュー

2014年度ブッカー賞 受賞作品

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みんなのレビュー18件

みんなの評価4.7

評価内訳

  • 星 5 (11件)
  • 星 4 (3件)
  • 星 3 (1件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
15 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

重い…しかし、間違いなく傑作!

2019/10/28 16:09

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:燕石 - この投稿者のレビュー一覧を見る

重い小説だ。

 流れる時間は、現在から過去へ、そして再び現在へと行きつ戻りつする。決して読みやすくはない。しかし、途中から、文字通り「巻を措く能わず」、休日一昼夜で読み切った。日本語として、
全く違和感のない名訳ゆえかとも思う。

主人公はドリゴ・エヴァンス。七十七歳、医師、オーストラリア人。第二次世界大戦に軍医として出征し、捕虜となるが生還して英雄となり、テレビその他で顔が売れ、今は地元の名士である。妻と三人の子どもいるが、医師仲間の妻と不倫中。不倫歴は数知れず、正にとっかえひっかえ。
ドリゴは、20代の頃、日本軍の捕虜となり、「死の鉄道」として悪名高い泰緬鉄道建設に従事させられた。彼は、軍医として捕虜と強制連行された人たちを治療するとともに、捕虜中最上位官の大佐であったために、捕虜全体のリーダーとして日本人将校と交渉し、作業できる者とそうでない者を選別する役割も担わされていた。
念の為申し添えると、泰緬鉄道は、タイとビルマを結ぶ鉄道であり、その地形の複雑さと過酷な気候から、英国軍は「5年かかっても建設は無理だ」と建設を断念したが、日本軍は陸路確保のため、1942年から43年にかけて1年あまりで建設した。この狂った日程は、「スピードー」と呼ばれる昼夜ぶっとおしの苛烈な強制労働を捕虜やアジア人労働者に課し、何万もの人間を犠牲にして実現したものだが、戦後は、再びジャングルに埋もれている。
ドリゴは、期せずして部下たちから「理想の、強い指揮官である」との幻想を抱かれてしまい、自分自身が実際にそうした人物であるかどうかに関わらず、架空の強さを演じる必要に駆られていってしまう。彼に与えられたステーキが、喉から手が出るほど食べたくとも、部下に分け与える。無理な命令に対して、これまた無駄であると考えながらも抵抗してみせなければならない。

生還したドリゴは、身体は生きているが心は死んでいる状態で、戦争の英雄という役割を演じ、自罰的に行動する。そのことが、ますます彼の心を殺していく。戦争だけではなく、叶わなかった愛もドリゴを苦しめる。
従軍前に、エラという名家の婚約者がいる身で、自分の叔父の妻であるエイミーと熱狂的な恋に落ちてしまう。別れようという相手に、帰ったら結婚しようと電話で告げ出征したが、収容所で、叔父の所有する海辺のホテルが火事になり、その火事でエイミーが亡くなったとの報せをエラの手紙で知る。戦争が終わり、帰還したドリゴはエラと結婚するが、それから二十年後のある日、たまたまシドニーの街路でエイミーとすれ違い、彼女が生きていたことを確信し、彼女の死の報せが、今や妻となったエラの唯一の嘘であったことを知る。

こうして、『奥のほそ道』は、ドリゴ・エヴァンスの人生を、恋愛と戦争体験という二つの面から描くが、それのみでなく、収容中に死んだ多くの戦争捕虜たちの個性、俳句を吟じつつ、異様な興奮で斬首する日本軍将校の狂気、日本人からもオーストラリア人捕虜からも蔑まれ憎まれる朝鮮人軍曹等様々な異なる視点をも持ち込み、重層化している。

間違いなく傑作だ。

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紙の本

「彼女は死んだと思っていたが、いまようやくわかったー生きていたのは彼女で、死んでいたのは自分だった」悲しいことば

2020/12/28 22:30

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

もちろん芭蕉の「奥の細道」を英訳したもを読んだわけではなくて、この本の登場人物たちの多くがが俳句を(オーストラリア人の主人公・ドリゴも含めて)愛していたからこのタイトルになったのだろう。ドリゴがかつて愛していた、死んだと思っていた女性エイミーとシドニーのオペラハウスの近くですれ違った(実はエイミーもドリゴがある時期までは死んだと思っていた)、その時彼は「彼女は死んだと思っていたが、いまようやくわかったー生きていたのは彼女で、死んでいたのは自分だった」と感じた。悲しいことばだ、今の結婚生活は周りから見れば何不自由ないものに見え、ドリゴ自身も周りからは何不自由ないプレイボーイと認識されているのに。あの時、こうしていればああしていればと後悔しているのは私だけではないようだ

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紙の本

戦争文学の傑作

2019/01/05 19:01

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る

大戦中に日本軍が完成して「死の鉄道」とさえ言われる泰緬鉄道。それに従事したのは戦時捕虜たちで、この作品ではオーストラリア人捕虜たちが、マラリアや赤痢などの伝染病も蔓延する不衛生で劣悪な環境、ろくな資材も機械もないまま無謀な建設計画のもと「天皇」の名のもとに過酷な労働を強いられる。捕虜を指揮する日本人将校たちは俳句を詠んだりステレオタイプな悪とはちがった側面も与えられるが、そんな人間が躊躇うことなく捕虜を犠牲にしていく。第3章にあたる「露の世の露の中にてけんくわ哉」ではそうした凄絶な場面が連続して言葉もなく、善悪の向こう側で迫真の言葉を連ねる。壊疽したジャック・レインボーの過酷な手術、ダーキーが過酷なリンチの後で便所に溺れ死ぬ場面。残酷さが世界の深遠を垣間見せる。戦後の世界での「彼ら」の姿も描かれドリゴをはじめにした捕虜たち、虐待した日本将校のナカムラや、植民地から監視兵としてその現場に居合わせたために理不尽にも処刑される朝鮮人。歳月がたつにつれて、あれほどの苦しんだ戦地の記憶さえも薄れていってしまう。しかし捕虜たちに安らぎはなくやるせなさが際立つ。戦場の地獄とのその戦後の娑婆の生活の対比の効果は目ざましい。それに戦地が過酷であるだけに、時折日本人がつぶやく俳句の余韻。記憶に残る傑作だ。

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2018/08/21 13:57

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2018/07/05 20:59

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2018/09/30 15:32

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2018/10/11 07:01

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2019/02/17 14:41

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2019/02/19 16:25

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2019/04/09 15:52

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2020/04/04 16:54

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2020/08/20 23:22

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2021/02/10 17:28

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2022/09/30 22:36

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2023/11/22 14:59

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