紙の本
田舎の悪
2020/01/28 02:29
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投稿者:象太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
田舎にある悪を描いた作品。規模が小さな社会集団では、人間の悪は目に見えやすい。学校や村社会でこそ、いじめは露骨である。
主人公の歩は、都会でも地方でも暮らした転勤族の子で、中学生らしからぬ豊富な社会知識と論理的な思考力を持つ。でも、田舎の悪とその恐怖については物語の最後の最後まで気づかない。事態の傍観者でいるつもりでいて、実は鈍感であり、殺意を抱かれるに至る。読者も歩の視点で話を辿るので、結末の急激な展開に驚かされてしまう。
非常によく組み立てられた作品だと思いました。
紙の本
解決しない
2018/09/15 15:20
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投稿者:やましお - この投稿者のレビュー一覧を見る
どろどろと濃い。濃いなあ。
そして何事かは起きるのだけれど、結局何も変わらない。それは絶望でもあるし、まあそんなもの、と言ってみればそなんものである。そのへんのリアリティがこわい。クライマックスはさすがに大きく動く感じもあるけれど、解決はしない。そこがいい。
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第159回芥川賞受賞作。
青森の自然を感じながら読み進めるも、やはりこの方の専売特許である「理不尽な暴力」が追いかけて来た。怖い。
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第159回芥川賞
方言が少しある中でもかなり読みやすい。
商社マンの父親の都合で転校を繰り返している少年・歩。周囲への洞察力と適応能力に長けていると自負しどの街でも、そしてこの場所でも馴染めると信じていた。が…
よくある少年達の田舎の閉鎖的なあれこれを描いているのかと思いきや、暴力の果てにあるものがこう映像として眼に浮かぶ感じが不快だった。読みやすいから尚更暴力的な表現がスーッと入ってきた
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芥川賞受賞作品。「指の骨」も「朝顔の日」も感動したし、大好きな作品なんだけど、この作品は何だろう。
父親が転勤族で、静岡~東京~青森と転校してきた中学3年生の歩。だからなのか、空気を読み、回りにうまく溶け込むのが得意と自認している。今までにいじめの現場に居合わせたこともあるが、自らは手を下さないし、囃したりもしない。いつも淡々と、それでいてしっかりと自分の立ち位置を確保し、時が来たらまた転校していくから深入りもしない。その辺の世渡り上手な感じが逆にいけすかない。
田舎の、今年度限りで廃校になる中学校での逃げ場のない友人関係と、日々繰り返される苛めとも犯罪ともつかない遊びの描写に嫌~な感じが漂う。
最後の暴力シーンに至っては、なぜあれほど執拗で、容赦ない描写なのか。
「もう干魃も水害も蟲害もない。もう飢饉は起こらない。農民は何を求めると思うね?白飯と娯楽をよこせってね。」
田舎の鬱屈した若者たちの娯楽としての暴力を描きたかったのだろうか?
芥川賞、やはり理解不能だわ
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読了直後の「あれ?もう終わり?」という気持ちは、振返り考えるにつれて、じわりと薄れていく。
行き過ぎかと思った結末も、妙な現実味があって怖い。
物理的に強いものが、支配側につく。ありふれた子供の世界。そこに、気まぐれな暴力が加わる。
でも、より強いものがいて、その世界も一変する。
それも、弱い役割だったものに覆される。
一見、稔のうっ憤は理不尽に歩に向かったように見えるけど、実はそれも違う。
歩が仕組まれた勝敗を黙認した時、あきらかに加害側に身を置いていた事に気が付かされる。
因果応報かといえば、それも違う。大人たちが足りなかったか。そうとも思えない。
登場人物、どの立ち位置でみても、各々の役回りに落ち着いていただけのはず。
実は間に挟まれていた晃は、つらかったのだろうな。稔たらしめる稔の役割が、小さな反抗で崩されてしまうと、彼の立場がなくなってしまう。それを防いであげたかった。という事だろう。稔に自分自身を重ねることもあったろう。
なんという後味の悪さか。
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この感想を書くまでこの作品が芥川賞とは知らなかった。
どんな話か分からずに手に取ったが、田舎に転校した
ごく普通の少年の日常だと思いきや、田舎の長閑な風景
の中で歩が仲間となる少年達の日常がちょっとずつ不穏な
空気が歩を侵食し、長閑な風景が殺伐とした陰湿なイジメ
に変わって行く様が淡々と描かれている。
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今年の芥川。灰色のイメージ。
太宰の人間失格を読んでるような陰鬱な気分になるけど、文章は綺麗で、文学ってこんなもんなのかなぁという感じ。主題があまり好きではないというのもあるけど、僕にはまだわからない。
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芥川賞受賞作品ということで手に取りました。
東京から田舎町へ引っ越しをしてきた中学三年生の歩。
男の子の視点で慣れない土地での生活と学校生活を
中心にして描かれています。
芥川賞受賞作品らしく四季折々の自然や生き物などの描写が
とても細かく描かれていると思いました。
細かな色合い、繊細な生き物の動き方などが目の前で
繰り広げられいるようでした。
転校してきただけでもよそ者扱いをされる土地柄でもありますが、
歩の場合は思春期ということもあり更に特別な扱いもあり
この場所に慣れるには本当に苦労しているなというのが伺われました。
なるべくクラスの友達に馴染もうと試行錯誤していたのに、
それを逆なでするようなクラスメイトがいたりして
いつの時代、何処に行っても同じだなと思ってしまい、
そんなに転校生というのは特殊なことだと思うことが不思議でならなく、
悔しい思いがしました。
物語に何か特別な仕掛けがあるというわけでもないですが、
どこか不気味な雰囲気がじわじわときて、
まるでミステリー小説でも読んでいるかのような感覚になりました。
そして学校生活にも慣れてクラスメイトたちとも何とか
上手く付き合っていた頃に終盤の出来事は衝撃的でした。
読了後には何だかやりきれなさや虚しさなど
もやもやとしてしまいました。
その後の歩がとても気になってしまいました。
田舎という閉塞感のある場所のせいか、
全体的に不穏なムードが独特の世界感があり、
さらに思わず目を背けたくなるような暴力的な描写が
特徴的だと思いました。
一つ一つの言葉に重厚感があり
文章力があるというのが分かり、
芥川賞受賞作品ということを納得させられた作品でした。
これをきっかけに他の作品も読んでみたいと思います。
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田舎の独特な伝統に対して、諦めて受け入れていく思考と受け入れられない感情を持つ主人公の葛藤は非常に共感できて、入り込む事ができた。
風景描写も圧巻で、田舎の空気感、匂いなどが伝わってきて、リアルに体験している感覚になった。
キャラクターも個性的で1人1人にしっかり奥深さと闇を感じられた。
ラストシーンも手に汗握る展開で一気に読んだ。
個人的にはその先のストーリーが欲しいなと思ってしまった。いわゆる田舎の悪習が繰り返されてしまう事に対して諦めを感じざるを得なくて、好きではなかった。
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むむむ、、、この本はなんなんだろう。
小さい時、転校した田舎を思い出したが、なんなんだろう。入りこめるがそこからが、何回読めば、、、
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第159回芥川賞受賞作。転勤族の父、青森に引っ越してきた中学3年生、歩。ひたひたと感じる悪、最後に圧倒的な暴力。青森の風景、数少ないクラスメートとのやりとり、遊び、文化、無駄なく、緊張を孕んででよく書かれている。読んでて決して気持ちの良いものではないけれど流れは素晴らしい。緊張感持続で読了。純文学だねえ。
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田舎の閉鎖されたなかで過ごす中学生の話。呆気なくエスカレートする暴力。逃げ道のない閉鎖性。イジメの連鎖と恨みの方向性の不思議。転校生である主人公はその連続性からいずれ逃れられるが、土地に縛られた同級生たち、殊に稔は永遠の連鎖に囚われている…嫌な気持ちにしかならなかった。
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第159回芥川賞受賞作
転勤族を父に持つ「歩」は中三の時、東北地方の田舎町の中学校に転向する。
そこは、生徒数も少なく来年には廃校となる学校だった。
どんな小さな田舎の学校にもいわゆる「いじめ」は存在する様で、そこでも陰湿な「いじめ」が行われていた。
昨今の「いじめ」事件を報道等で見るにつけ、この問題はおそらく、たったと一人のろくでもない奴がいるかいないかなんだと思う。
普通の人間は、「いじめ」なんてしたくもないし、当然されたくもない。
ところが、たまたまそこに居た人間の屑の様なクソガキが主導し、それに従わないと、自分自身が「いじめ」の対象になってしまうので、仕方なく「いじめ」る側に回ってしまう。
そこで強く反発すれば良いのだけども、誰もがそんなに強くはない。
実は、ここに出てくる首謀者の「晃」も結局は小物で。
もっと悪い奴が他にいる。
どうしたらこんな奴が居なくなる世の中になるんだろう。
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頂き物。読みやすくてささーっと読んだけれど読了して「うーん?」って感じです。起承転結の転で終わっているような印象。最近このタイプの終わり方を目にすることが多くなっているような気がします。現実生活は起承転結とはならずに続いていくけれど本はスッキリ「結」があるのが好みです。