「ほとんどない」ことにされていることとはなにか・・・
2018/11/25 15:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治から終戦に至る長い間、女性に参政権は無く、明治民法の家族法では、女性がひとたび結婚すれば、法的には「無能力者」とされ、一人前の人間であることを否定された。男性がすべて決定権を持ち、男性の所有物の扱いだったのだ。
戦後、新しい憲法の下で、男女平等となったと思った。教育などでも不平等を意識させられずにきた。しかし、高校を卒業すると、男性並みに頑張れば平等が手に入る。セクハラという男性の要求に我慢すれば平等に扱ってもらえる。男性並みに頑張るのは無理だから、専業主婦で2人で1人前の道を行くなど、「男性基準」での平等を手に入れようと、女性達はあがくようになる。
男性も女性も、それが平等とすり込まれている。女性の生きづらさという視点が社会的な意識に上らず「ほとんどない」ことにされている日本。
本書「『ほとんどない』ことにされている側から見た社会の話を。」のプロローグが、著者の家族が親しくしていた母子家庭の母の死から話が始まるのは象徴的だ。母子家庭こそ、「ほとんどない」ことにされている家庭だからだ。夫が扶養する家族のカテゴリーの範疇外。プロローグではその生活は詳らかでは無いが、男女平等では無い日本で、おそらく一番、困窮を極めるのが母子世帯だろう。
2018年は、財務省高級官僚のセクハラ、東京医科大学の女性差別入試などがあり、日本の性差別が改めてクローズアップされた。
世界でも、やはり「無かったことにされてきた」ことへの告発、#Me too運動が盛り上がり、今年のノーベル平和賞は世界中の紛争下で起きている性暴力との闘いが評価され、コンゴ東部で、性的虐待やレイプの身体的・精神的な傷に苦しむ女性らの支援に20年以上取り組んでいるムクウェゲ医師、2014年にイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に拉致され、3か月間性奴隷として拘束されたものの、逃げ出すことに成功しイラクの少数派ヤジディー教徒の権利擁護を訴えてきた活動家のナディア・ムラド氏に授与することが発表された。
ILO(国際労働機関)では、2019年にハラスメント・暴力禁止条約が制定される事になった。世界は「なかったこと」を暴き、ジェンダーに基づく暴力・ハラスメントをなくす方向に大きく動き出している。
本書は、2016年から2018年5月までの「なかったことにされてきた」事象を取り上げて、著者の視点から考察・告発したもの。
友達の友達が親からの虐待、彼からの暴力を受けていた話では、なぜ「サポートしなかったのか」との悔悟を告白する「手を伸ばさなかった話」。最初に持ってくる話として、「なかったことにしてはならない」決意をこめて、これからたくさんのことが語られることが予測される。
日常の些細な違和感、識者のコメント、芸人の淫行。25歳を女の分岐点のように宣伝する化粧品のCM、電車内での化粧はみっともないか、男性保育士への偏見,痴漢する人の心の中の問題などなど。「なかったことにされてきた性差別」があぶり出される。
先頃、俳優の東幹久氏が起用された内閣府のセクハラ防止ポスターが波紋を呼んでいる。「痩せてきれいになったんじゃない?」「今日の服かわいいね。俺、好みだな」。そんな言葉に対し、不快に感じた女性たち。しかし、東氏は「これもセクハラ?」ととまどう。このポスターを見る限り、セクハラの根本問題が示されないままなので、男性は戸惑うだろう。よく考えなければならないところを見誤ると、「これもセクハラ?」と思った人は、結局何にもわからず、どうしたらいいのかわからないままに終わってしまうだろう。そんな悩める男性にも、本書を読むことをおすすめする。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のブログをまとめた本だが、何度読んでも共感できる。
友人との会話での引っ掛かりや、何げなく見聞きした出来事から、性犯罪やDV、差別などジェンダーにまつわるもやもやを、言語化している。
読み進めるごとに著者の問題意識が具体的に伝わり、著者の言葉に勇気づけられる。やはり個人的なことは政治的なこと。違和感は言語化しなくてはならない。
「ほとんどない」側からの怒り、悲哀、呆れ
2021/03/31 20:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:3π - この投稿者のレビュー一覧を見る
悲しみとか呆れとかをかなり含んだ怒りといった風情。平易な言葉で豊富な事例が書かれている。ジェンダーに関してほとんどないことにされている側から見た社会の話のリアリティはある程度感じられるんじゃないかしら。その「ほとんどない」側にいる人にとっては共感しやすいような筆致だったと思う。
投稿元:
レビューを見る
もう見ているだけ、
触れないでいるわけにはいかないんだ。
空気を読むとか、周りに合わせるとか、
そんな生き方だった。
声をあげたりエモーショナルになることを、
ずっとないがしろにしてきてしまった
自分への責任も感じる、このごろに響く本でした。
惣田さんの絵も強くて大好き。
投稿元:
レビューを見る
偶然の出会いから、戦時中に、また現代に性暴力の被害にあった女性たちの存在は心にひっかかってきた。
この本も友人の紹介で手にとって読ませていただいた。
「許せない」と言う感覚を持ちながらも、無意識に自分が選んでいる行動や意見が、社会の常識に染まっている部分もあることに気づける本だった。
小川さんにはイベントでお会いし、性暴力被害をなくしていきたい、という強い想いに共感し、私もできることを探していきたいと思う。
投稿元:
レビューを見る
性暴力に関して書かれている本です。痴漢、セクハラ発言、性犯罪。今回はちょっと生々しい話もします。苦手な方読むのをお控えください
「誘うような恰好をしているから悪い。」んなあほか!お前に見せるために好きな服装できないとかないだろ!
「おとなしく従順になった。自分が強くなったように感じた。」恐怖で動けないってことあるだろ!命の危機感じたらだれだって静かになるわ!
加害者側の心理も抜粋等で書いてあります。
「これはレイプではなくただの性行為だった。そう思い込むことができればこれ以上傷つかずに済む」
過去に、性行為を拒んだら「じゃあ、口で」としょんべんと汗と独特のにおいのする性器を口元に押し付けられたことがあります。押し付けられて苦しいし、怒りはわいてくるし。でも「ただの性行為」と思っていました。でもこれは私の合意を得ていないという時点で暴力と思っていいんだと腑に落ちました。
道端で知らない人から、一緒に飲んでいたらその場でいきなり性器を見せつけられたことも、本屋で立ち読みしていたら痴漢にあったこともありますが、それは「暴力」と自分で認識していますので今はそこまで苦しくありません。
ですが、自分が「ただの性行為」と思っていた事柄を「暴力である」と考えがシフトしたのはこの性器を口元に押し付けられたことです。一回だけではありませんし、一人の人間相手の話でもありません。
今もあの口元の感覚と匂いがふと頭をよぎって苦しくなります。暴力と自覚してからあの時の感覚がより一層リアルにフラッシュバックするようになりました。
実際レイプ(セックス)されたわけじゃないんだからそれくらい。と思うかもしれないけれど、はっきり言って嫌な記憶です。
嫌な記憶がよみがえってからというもの、街中でカップルを見るのも恋愛映画、恋愛漫画を楽しむこともしんどくなっています。記憶がフラッシュバックしてしまいます。
それだけリアルの詰まった本でした。女性の方だけではなく男性にも読んでほしいです。
投稿元:
レビューを見る
テンポがあるので読みやすい。ブログの文章らしい文体で、普段こういうテーマに触れない人でも気兼ねなく読めそう。
投稿元:
レビューを見る
久しぶり小説以外を。次の予約が入ってる本なので1日で読んだ。社会問題大切な視点が描かれていると感じた。フェミニスト。以前、社会学者の上野千鶴子さんの本良く読んだり講演聞いてみたりした時期ありそのことを思い出した。タイトルがいい。スカート切られた。通勤電車の誰かにやられたんだろう。どこかの暗闇でストレス溜め込んで憂さ晴らしか。の冒頭を親を殺された・財布を盗まれた・だと違和感に気づく人は多いと思う。主観から客観への移動がどこか他人事。など、いろんな視点で勉強になった。何不自由なく暮らしているはずが知らず知らずのうちに権利を侵害されていることの怖さ。フランスのジャーナリストが、いろんな国の過酷な状況の人たちを取材してきたけど、日本の女性の取材をして私は初めて泣いたという。身近では、会社の流しの片付けに男性が入ってないのに男尊女卑を感じる。
投稿元:
レビューを見る
タイトルに惹かれて思わず購入。期待以上に考えさせられる内容だった。男性の自分からすると「うわっ、そんなことまで気にしなきゃいけないのか」と思ってしまうことがあったけど、言い換えれば「そこを乗り越えなきゃいけない」んだと感じた。男性から見たらおかしな話でも、実はその考えは男尊女卑の枠組みの上に成り立っているかもしれない。そして、そのことに無自覚な振る舞いは時に人を無意識に悲しませることになる。
男女問題は難しいなあと思うけれど、乗り越えるべきイメージが多少なりとも掴めたような気がする。良い本でした。
投稿元:
レビューを見る
リコメンドから特に意識せずに手に取った本書。読んでから性暴力とか性被害について、考えないようにしていた自分に気がついた。作者の言うように、その方が楽だし、生きやすいから。でも、痴漢被害も含めると、性被害にあったことない女性なんて少ないのではないだろうか。少なくとも首都圏で満員電車に乗って学校に通っていたことのある女性は。私はそれを「よくあること」として処理して被害を受けたと考えないようにしていた。声に出している人たちを遠くから見ていた。それが加害者にとって1番都合の良いことだと気がつかずに。
思えば、20代の頃は男尊女卑と叫んでいる人たちをカッコ悪いと思っていた。もっと言えば、彼女たちをヒステリックなおばさんだと思っていた。自分は社会に入りたてでおじさん達から可愛がられていたから。チヤホヤされることを尊重されていると感じていた。今考えると恥ずかしい。おじさんたちは私たちをちっとも尊重などしてなかった。対等になど見ていなかった。
声を上げなくてはならない。少なくとも声をあげる人を貶めてはならない。
そう言うことに気づかされた良書。
投稿元:
レビューを見る
読んでみたら、以前読んだことのある本だった。この本の内容が、うそ、この頃ってこんなに遅れていたの!?って信じられなくなるような時代に早くなるといい。私はできる範囲で声をあげていきたい。痴漢を捕まえたこと、間違っていなかったと思える。
投稿元:
レビューを見る
フェミニズムに関心が出て来たので、何かしっかりと事例を踏まえてコメントしている本が読みたいなあと思って手にとった。「男性の裸を見たいというきもちがわかない」というような主旨の一連に、学校でやっと友達ができたくらい救われたきもちになった。自分も特にLGBTの傾向があるわけではないのだが、男性の体を見ることに抵抗がある。それが生まれもってのものなのか、社会的に女性の裸体があまりにも自然に飾られていることにあるのか、わからない。全体的には性被害を中心にしたエッセイ?のまとまりで、さまざまな事例をすこし苦しく思いながら読んだ。
性暴力に関する法律、もっと厳しくなってほしい。体格差は明らかなのに、どうしてこんなに「同意」のあるなしを示すために、女性側が必死で抵抗しなくてはいけないんだろう。暴力を訴えても暴力と認めてもらえないんだろう。そして訴えること自体で辱めをうけたり。意識を変えていくことも勿論大切だけど、とにかく法律が動くことが必要だと思った。こういったことから社会的な女性の立場も徐々によくなっていくはず。
投稿元:
レビューを見る
読みながら、度々怒りで震えた。
今までも度々見聞きしてきたことではあるが。
先日娘をレイプしていた父親に無罪判決が出たばっかりだし、本当に世の中変わらない。
痴漢されたと言えば、お前みたいなブスが(あるいはババアが)されるわけねえだろ。恐ろしくて抵抗できなかったのに、抵抗しなかったのは合意してたからだろ、とかさ。
警察に訴えるとき、女性あるいは若者の場合、歳上の男性と行った方が話をきいてもらえる、とかさ。人権問題だと思う。
女性が声を上げるだけで叩かれる日本で、著書のような活動を続けるだけでも大変なことだと思う。
とりあえず、若い人(中高生くらいから)に男女問わずこういう本を読んで欲しい。頭が柔らかいうちでないと入らないから。
政治家の発言(失言と捉えられているが、本人は思っていることを言っただけ)でもわかるけど、老人の考えを変えさせるのは難しい。日本の問題は老人が多く、権力を握っているのも老人(ほとんど男の老人)だってこと。少子化は国力を下げるだけでなく、進歩や柔軟性を失う。
まあ、このままでは先進国とは言えないよ。お粗末すぎて。
教師や保育士が過去に性犯罪を犯していないか徹底的に調べた方がいいのはもちろんだけど、そもそも先生と子どもを二人きりにさせないことが大事。いつも別の先生が近くで見ているだけで防ぐことができる。教育現場に、特に保育の現場に人が足りないことが犯罪の温床となることを、政治家はわかっているのか。政治家がまず読め。
考えると暗くなるが、とりあえず若い人にすすめてみたい。
著書には、心無いバッシングをする人があるとは思うけど、この活動を続けていただきたいです。
投稿元:
レビューを見る
>>不公平を指摘すると『面倒くさいヤツ』認定される。散々ひどい目に遭わされて、絞り出した声を『そんな言い方じゃ、誰も味方にならないよ』と言われる。そんなことが、これまで何度繰り返されてきたのだろう
まさに、面倒くさいヤツ、になりたくなくて言わないでいることがたくさんある。それは男女不平等に基づくものだけではないけれど。日本の社会自体が、声を上げることに不寛容だと感じている。
投稿元:
レビューを見る
本当に良い本だった。普段はジェンダーの学問本というのか、教科書っぽい本というのか…をよく読んでいるんだけど、これは話題も新しいし読みやすいし、なんというか「わたしが書いた…?」と思うくらいどれもうなずけることばかりで、首がちぎれそうになりながら読んだ。「THE 学問」みたいな本ほどソースがしっかりしてるわけじゃないけど、だからこそとっつきやすい部分もあるんだろうな。
性被害に関するところは本当につらかった(いつもジェンダーの本はつらくなりながら読みがち)。
痴漢加害者側の心情、鮮烈で驚いたな…。股に無理やり指を入れて気持ちいいわけないじゃんと思うんだけど、そういう思考回路なんですね。
これは手元に持って何度も読みたい本だなと思った。友だちや彼氏にも読んでほしいな。