紙の本
現代と関連させて論述
2018/09/17 14:33
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
正長の徳政一揆、嘉吉の徳政一揆、その後の徳政などを検証しながら、徳政の変質を追う。現代との関連という意識が随所にうかがえる。都と地方の関係、土倉の盛衰、信用や絆を超える個人の欲望など、興味深い論述の連続だった。終章では、内藤湖南の歴史観を批判して、視座の高さと広さの必要性を強調する。
電子書籍
価値観の転換
2020/04/11 22:36
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
徳政令といえば日本史の授業で聞いたことあるくらいの知識だったが徳政令を通して地域社会が疲弊していく中で中世人から近世人へ価値観が大きく転換していく様がよくわかる
紙の本
室町時代
2019/03/19 06:19
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
室町時代を経済的政治的に徳政令を通してわかりやすく解説している。この時代の通貨や法令などの状況など世相も絡めて説明していることが丁寧にできている。
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<目次>
はじめに
第1章 中世とは何か~債務破棄が徳政と呼ばれた時代
第2章 正長元年の徳政一揆、室町幕府を飲み込む
第3章 法と法のシーソーゲーム
第4章 室町の格差社会
第5章 過剰負荷社会の誕生
第6章 「大法」に飲み込まれる人々
第7章 接触する法と社会
第8章 「裁定者」の誕生
第9章 分断される一揆
第10章 徳政に侵食される社会
第11章 貸借・土地売買と徳政
第12章 シーソーゲームの終わり
終章 「新しい人」の登場~文明の転換期としての戦国時代
<内容>
意外と大部である(310ページ)。ただ、「徳政令」をキーワードに中世から近世へと転換していく室町社会を活写している。室町時代は混沌とした時代だとは思っていたが、なるほど貨幣経済の発展に社会が付いていけず、そこが「徳政」の生まれる訳があったようだ。授業で使うには専門的すぎるが、高校の日本史教師はこのレベルを知っておいた方がいいのではないか?
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中世全般の金融、財政、社会構造、政治を丁寧に紐解いていて、しかも具体的な事例が挙げられているので抽象論で迷子にならず、読み応えがあるのに最後までわかりやすかった。
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徳政令という中世の「野蛮な」債務者救済方法が、金融事情や政治情勢に変遷に伴って、意義も救済者も変化していき、次第に地域の絆も蝕んでいき、忌み嫌われる対象になっていく過程を描いています。
室町時代から戦国時代の、経済、財政に関して、全く知らなかったので、興味深く読ませていただきました。
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中世とは何か―債務破棄が徳政と呼ばれた時代
正長元年の徳政一揆、室町幕府を飲み込む
法と法とのシーソー・ゲーム
室町の格差社会
過剰負荷社会の誕生
「大法」に飲み込まれる人々
接殖する法と社会
「裁定者」の登場
分断される一揆
徳政に侵食される社会
貸借・土地売買と徳政
シーソー・ゲームの終わり
「新しい人」の登場―文明の転換期としての戦国時代
著者:早島大祐(1971-、京都府、日本史)
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これ面白いです。
徳政令を中心に、日本の社会の変遷;特に政治と経済について説き明かす。金融システムや契約制度の萌芽も中世(室町期)だったことがよく分かる。
人間が自然をコントロールできないからこそ、徳政令だったわけだけど、社会が進展し経済システムや金融制度を確立していこうって時にシステムを壊すような借金棒引き=徳政令はまずいわな。一方で徳政令があるせいで、それを回避するための複雑な契約制度が生まれたってのには笑っちゃう。昔も今も人間の考えることは変わらないね。
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徳政令が、鎌倉時代の武士の借金を免除するものから
農民が一揆で借金をなくすために要求するものになり
最終的に兵士の略奪を追認するものになる過程を追った本
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鎌倉末期から戦国末期にかけて出された徳政令だが、その中身と受容状況は時代を反映して変わっていった。当初は純粋に徳のあるものと思われていたが、最終的には忌み嫌われるものになった。
元々は農家の季節性、種籾と収穫の時期的量的な差異を埋める地方的なものであったが、室町の京都の中国の銅銭を用いた貨幣経済の発達と、放埓な政権を支えるために金融的要素が増してくる。延暦寺の息のかかった土倉が京では過半を閉めるようになる。また足利義持以降は政権基盤が弱くなり、各地で騒乱が勃発するようになると軍事的基盤を支えるため、牢人たちの略奪を追認する形の徳政令が生まれる。そうなると人々の信任は崩れ、経済の循環が阻害されるようになり、徳政令が忌み嫌われるようになり、また軍事的動員を自らの権力、政策によって行うことが富国強兵につながった信長、秀吉の頃には見られなくなっていく。
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人々が徳政令の評価を変えていった流れが書かれた本。
徳政令を巡る騒動を残っている資料を基に解説しながらどう世の中が変わっていったのかが書かれている。
当初は債権者の社会的立場が低かったり、利子が容易に元本以上になっていたりした時代には”徳政”であった法も、時代とともに債権者をないがしろにし過ぎたらにっちもさっちもいかなくなったり、あまりにも乱発されたり、悪用ともいえる上手く立ち回る人間が出てきたりした結果、徳政になりえず社会を乱すだけになっていくにつれて評価も変化してしまう様が解説されている。
相殺の精神とでも言うべき、一つの論拠を基に話を進めるのではなく自分の主張を通すために相手の論理と相殺するための自分の論理を持ち出す、また相手もそれを受けて話を進める文化だったり、徳政令を巡って地域や組織に根付いていた「信用」が毀損されて社会が不安定化する様など興味深い話だった。
あと、いつの時代も財政難は政策を迷走させるのだなとw
ただ、副題の「なぜ借金は返さなければならないのか」は的外れな気がする。
当初は徳政令が受け入れられていたし、現代でも借金の減額なりが求められることがあるわけで、返却そのものが絶対的な正義ではないし、本書の内容でもそのようには読み取れなかった。
大事なのは継続性と信用の担保であり、返す返さないのどちらが正しいかは状況次第なのだろうと思う。
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キャッチーなタイトルの割に、もはや超ガチな歴史学術分析書なんですが(笑)。
初めて歴史学の本を読んだよ、という意味では、自身のなかで、なかなかニューだった。
一応、書きぶりは、一般読者向けになっている。専門用語の詳細な説明もある。
基本的には面白く読んだし、構成の仕方はさすがなかなかうまい感じは受けたが、
ところどころ使われている比喩がああまりうまくない気がしたのと、句読点の付け方がどうもちょっと読みにくい気がしたのと(趣味の問題もあるかもしれないけれども…)は、やや気になった。まぁ、小説ではないので、文のうまさを求めても仕方ないのですが(^^;)。
本編は、徳政令の歴史上の変遷を追いかけていて、そんなピンポイント視点を持ったことがなかったのでなかなか面白かったけど(しかも、何気にそれを取り巻く社会環境も大きく変化していってて面白い)、実は本編最後のappendix的な部分の内容が少し面白かった。「天下」が意味するところが戦国時代辺りをけいきあに変わった、とか。(観念的(宗教的)な全国支配、天下=高さ→実質的、実効性のある全国支配、天下=広さ)
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当初は求められていた徳政令が、やがて忌避されるようになっていく――つまり借金は返さなければならないというのが常識になるまでの過程が描かれている。徳政令は次第にその性格が変容し、世の中の諸関係において「信頼関係」を崩壊させて、社会を混乱に陥れていく――中世から近世への移り変わりを徳政令をテーマに描いた目から鱗の一冊。
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【徳政令が出たという情報は、共同体の利益以上に個人の利益追求衝動を刺激した。私利私欲が仲間同士の信頼を侵害しはじめ、その結果、利息附替銭という便利な経済慣行を混乱させるに至ったのだ】(文中より引用)
中世日本における劇薬とも言える「徳政令」。大規模な徳政一揆の内幕を探りながら、徳政令とその需要の変容に迫った作品です。著者は、京都女子大学の教授を務める早島大祐。
徳政令という劇薬の副作用が社会の信用や信頼を食い破っていく様が描かれてお見事。特定の政策というのはその前後の流れに置いてみないと効果の評価が難しいんだなと感じました。
思った以上にスリリングな結末でした☆5つ
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信西が行った徳政なるものを知りたくて借りた本でしたが、ようやく百頁まで読んだものの、徳政の言葉が持つ「元の世界」というキーワードが出てこないので停滞している・・・そのうちに図書本なので期限が来ました
(延長できない!次の予約者がいました・・・いるんだ)
法整備されていないのに、日本は前例を尊び、鎌倉時代のルールで21年経過したら借金は破棄というのを室町になっても、大法なる微妙な言葉に重みが出てきて社会にひとつの安定をもたらす(不思議な国)
「そんなの聞いてないね、いつ、どこで、どうして基あったの、オイラの事と関係ないじゃん」って言える気もする(´・ω・`)
笠松先生の「徳政令」借りるか