紙の本
上皇という切り口
2020/06/15 09:52
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
天皇の代替わりがあって、
上皇ということばが、歴史の中から現代に現れた。
それで、読んでみたんだけど、
題名通り、日本史の話だ。
それを、上皇という切り口から語っていくので、おもしろい。
途中、資料に基づいてきちんと論じているところは、
門外漢にはちょっと退屈だったんだけど。
現代の皇室への国民感情も
この人の歴史観で考えれば納得できる。
日本の歴史を久しぶりに概観した気がした。
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興味深い
2022/05/02 11:37
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の歴史の中で、上皇の存在について、いろいろな角度から分析されていて、興味深く読むことができてよかったです。
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「上皇」は日本独特の存在
2019/05/15 10:42
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投稿者:おくちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史上に上皇が登場した古代から現代まで、それぞれの時代における上皇の存在がどのようなものだったかを解説しています。
ただ、記述の分量はかなりばらつきがあり、著者の専門である中世は古文書を引用した詳細な解説が延々と続く一方、歴史上、最初に譲位した皇極天皇については、太上天皇を称しておらず、子や孫への譲位でもないので、最初の上皇とはいえない、と切り捨てています。しかし、生前に譲位してしかもその後再び即位したのは事実であり、この筆者の態度には首をかしげます。よくわからないから書けなかったということでしょうか。
豊臣秀吉に関する個所で、徳川家康を武力で抑えられなかったから、天皇を頂点とする朝廷の秩序を利用し、武家トップのタイトルである征夷大将軍ではなく天皇の機能を代行する関白を選んだのだろう、という説明はおもしろいと思いました。
この本を読んで感じたことは、天皇と上皇の関係は、今の社会でいうと、典型的な日本の会社によくみられる社長と会長(元社長)の関係のようだということです。社長と会長、どちらがえらいかと聞かれても、どちらもえらいということになるでしょうし、社長退任後も会長として権力を維持するかどうかはその人の個性、考え方によるところが大きいという点でも似ています。そういう意味では、上皇というのはきわめて日本的な存在なのでしょう。
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紛らわしい題名の本がある
2018/08/10 21:42
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
お得意の「間違いだらけ」とか「嘘だらけ」とかの書名をつけていないが、内容が「間違いだらけ」とか「嘘だらけ」とかが当てはまる程度なのに、自分の本の宣伝に熱心で、人様の研究を引き写しにしたような紛らわしい題名の本があるので要注意だ。
この本にしても「異形の王権」や「室町の王権」の影響を感じる。曹操は「漢王朝の皇帝を廃しません」が、曹丕が献帝から禅譲という形で簒奪しているし、ティムールが「王(ハーン)にならず王の下で実質的な権力」を握ったのは、彼がチンギス・ハンの血筋を引いていないから。もし彼が強引にハーンになったら、エセンみたいになっていたはずだ。ヘンリー8世がイギリス国教会を作り出したのは自身の離婚の為で、いわば御用教会だ。この本に出てくる世界史の例を日本史の中であてはめると、おかしな例を選んでいるみたいだ。信長が中国の歴史に知っていたとしても、有職故実に通じた貴族も同じだろうし、宣教師からヨーロッパの王朝が滅亡する時に皇帝もろとも根絶やしにされる、というのはビザンチン帝国の話だろうか?それなら信長が宣教師から「旧約聖書」に出て来る新バビロニアの王から鄭重に扱われたユダの王イェホヤキンについても聞いていたとしても、おかしくはなくなってしまう。信長が室町幕府を滅ぼしたとはいえ、反信長包囲網を築いた事のある足利義昭が天寿を全うした事が書かれている。秀吉の時代になってから、「命を奪う価値」がなくなったにしても、京から追放された時点では現実に脅威だったのではないか?
南北朝の合一より「四十年前」とあるから、正平の一統の破綻の時点で南朝の軍事力が存在しなくなったようだが、現実には尊氏・義詮父子や直義のように南朝に下った足利直冬党の存在があったから、室町幕府に南朝まで手が回らなかったのではないか。足利義満が征夷大将軍になった頃なら、懐良親王の征西府が支配していた九州を除くと南朝の脅威がなくなったとは言えるだろうが。
天皇と武家の関係をアッバース朝のカリフとスンニ派の諸王朝に例えた本があったが、むしろそちらの方が合いそうだ。そして、イスラームに改宗していないフレグによって滅ぼされた。
あまり納得出来るような内容ではないが、似たような題名の本と違って、著者が自分で考えて書いている。
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ふむふむなるほど、という一冊。歴史的には政治的権力の担い手としての上皇がいる方が当たり前であり、摂関政治とも共存して(というより混じり合って)いたこと、一方、天皇は権威の源泉として存在していたこと、それであるがゆえに、武家政権の権威づけとしての天皇が活用され(秀吉と家康の例はわかりやすい)、武家政権の完成形となった江戸時代を最後に上皇が存在しなくなったこと、などが私の理解です。天皇退位に伴い、新天皇との関係が気になるところ。本書を敷衍すると、結局権威の源泉は一人、という気がしますが。
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<目次>
まえがき
第1章 「ヤマト」の時代~平安朝
第2章 上皇による専制~白河・鳥羽・後白河
第3章 専制からシステムへ~承久の乱がもたらしたもの第4章 朝廷と幕府~御嵯峨上皇の院政を例に
第5章 古文書から読み解く院政~官宣旨から院宣へ
第6章 上皇による徳政の変容~両統迭立期から南北朝だ第7章 存在を脅かされる天皇・上皇~バサラ・義満・信長
第8章 権威としての復活
終章 近代天皇制の中で~終身在位する天皇
<内容>
来年の4月で「平成」が終わる。そこで問題視されてきた天皇の退位。近代の「皇室典範」では「終身在位」が全て。その中で「上皇」となるわけだから、大いなる問題だった訳だ。この本は、その「上皇」を歴史的に分析したもの(本郷さんの専門の一部らしいし…)。なかなか示唆に富むことが書かれている(気づかなかったこっちが勉強不足なだけだが…)。院政の始まりである平安末期は、システムとしては未熟で(当たり前だが)、システムができるのは鎌倉後半。どんどん天皇・上皇の意味付けが低下した戦国期を経て、秀吉のあたりから再浮上し、江戸時代の「国学」の台頭から「尊王攘夷」となり、明治期は「立場上トップだが、政治参加しない」のが天皇の位置づけだった。
現在の「女系天皇」が意味するものも理解できたが、近い将来に「男系」のみでは破綻するのは必至なことも分かった。
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上皇という切り口でみた日本通史。誰が時の権力者なのか、その源泉は何か?平氏、源氏、足利氏、豊臣氏、徳川氏の天皇との距離の取り方。九条道家の権力奪取の構想、後醍醐になぜ異形の人が集まったのか、織田信長の時が天皇制最大のピンチとか、読みやすく、読んでいて興味深い叙述がたくさんありました。
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来年、上皇が江戸時代以来、久しぶりに天皇家にお出ましになる。平安時代後期に隆盛を誇った上皇が一般的によく知られているが、本書は古代からの上皇の系譜から日本史をとらえなしたもので、新しい視点を得たことが新しい問いかけとなっている。
元々は天皇だったのに、上皇になるととたんに世俗性を帯びて自由度が高まる。日本における皇位継承の認識は、「天皇」に権威による超越性を求めるのだが、上皇になると超越から降りてきて、権力化するのである。
今後、天皇家の継続も危ぶまれるところにあって、この認識システムが何か貢献できるところがあるだろうか。
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上皇の歴史を紐解く一冊
『上皇の日本史』著者の本郷和人先生は、大河ドラマ「平清盛」の時代考証も担当されました。
まず、前書きで、「地位」か「人」かということを述べています。
皇帝や王様はその国で最上位の権限をもちます。だからひとたべ皇位・王位を獲得した人は、死ぬまで地位を手放しません。「終身在位」が当たり前。「地位」こそが「人物」を正当化するからです。
(中略)
これに対して日本は異なるのです。「世襲」の観念が強固である。世界のどこの国でもどこの地域でも、世襲は強力な原理として機能しますが、日本はとくにその傾向が強い。そのため、「地位」よりも「人」が重視されます。
「人」を正当化するのは第一に血統であり、家柄です。「地位」が人に権限を付与するのではなく、大きな権限を創りあげた「人」がしかるべき地位を選び取る、という順番になります。
実は天皇を退いた人、上皇という位は日本にしかありません。他の国では前皇帝、前国王とは呼ばれても、それに当たる地位は無いのです。
しかし、「地位」より「人」を優先した日本では、上皇という独特の地位が誕生しました。
本書では、ヤマト朝廷の大王(おおきみ)の時代から始まり、奈良時代、天皇・上皇の誕生、平安時代の摂関政治を経て院政期、武士の台頭、鎌倉時代の承久の乱、乱後のシステム化されていく上皇、室町時代には足利将軍に取って代わられて行き、戦国時代には天下人の権威を飾るための存在になって行く。江戸時代には、太平の世で儀式に関する需要が高まり皇室の存在が思い出されるようになるも、光格上皇を最後に上皇の位は途絶えます。
このように、上皇という位の変遷を見ながら、日本の歴史が語られています。
現代の上皇
大河ドラマの影響で上皇という存在に興味は持っていたけれど、古代から今に至るまでの上皇の歴史について触れたのは初めてでした。最初の頃は上皇自身が権力を奮っていたけれど、武士が幕府を開いてからは武士に権力を奪われ、そのうち皇位の継承まで介入され…、今では皇室そのものが政治から遠ざけられています(天皇親政の復活などは望んでいませんよ。念のため)。
私は、陛下がお気持ちを表す前から「第二の人生としての上皇」というポジションがあってもよいのではないかと思っていました。天皇の公務は激務だと言われています。災害が起きれば被災地に行くし、そうじゃない時でもスケジュールがかなり詰まっているようで、もう次世代に譲ってもよいのではないかと。そう考えていたのです。
ただ、実際にお気持ちを表し、退位(譲位)が現実的になってから、上皇の位の復活は有識者会議などでもかなり渋られていたように思えました。
私としては、「堅いこと言わずにスパッと決めてあげなよ〜。保元の乱なんて1000年前の話じゃん」などと思っていたのですが、本書を読んで、渋られていたのがなんとなく分かりました。
上皇というと、歴史を踏まえればどうしても権威が連想されてしまうからです。
今回の譲位が皇室典範改正ではなく、特例法による措置にしたのもその辺りを考えてのことでしょ���。
しかし、それでも、平均年齢が1000年前とは比べ物にならなくなった今、政治や権威などとは切り離した「第二の人生としての上皇」の位をどうにか作って差し上げられたらと、私は切に願っています。
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天皇の歴史は「上皇の歴史」だった! 200年ぶりの譲位を前に、今こそ知っておきたい、上皇についてをすべてを徹底解説。
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【二星潤先生】
平成から令和に時代が変わり、江戸時代以来、約200年ぶりに「上皇」が誕生しました。歴史的に見れば、譲位した天皇を「上皇」と呼ぶことは普通ですが、今回、「上皇」と呼ぶことを決める際には、いろいろな意見があったようです。なぜ歴史的には自然な呼び方である「上皇」を使うのに、ためらいがあったのか。その答えは「上皇」の歴史にあります。
この本は、「上皇」の登場から現代までを分かりやすくまとめてあります。長い歴史を持つ「上皇」の歴史を知ることは、今後の日本における「上皇」だけでなく、「天皇」のあり方を考えるヒントにもなるはずです。令和という新しい時代を迎えた今、是非読んでみてください。
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奈良時代から現代までの天皇・上皇の歴史を振り返る。藤原摂関政治とその後の院政、幕府との力関係、南北朝が分立したときなどわかりやすく解説。平成天皇が生前退位され、上皇となった今だからこそ読みたい一冊。詳細→
http://takeshi3017.chu.jp/file8/naiyou28102.html
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「上皇」は英語訳がないんですね!
つまり、英語圏には王が退位したあとは権力をもたない、ということ。
他にもイロイロと内容たっぷりでしたが、冒頭に記載されていた、これが一番驚きました。
日本の権力構図はわかりにくい。
特に鎌倉時代後期の北条家と将軍家。