紙の本
離れがたい親子の物語。 無償の友情の物語。 そして、すべてを貫く師弟の物語である。
2022/11/27 15:55
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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
父権五郎の死をきっかけに、長崎から大阪へやってきた喜久雄。
二代目花井半次郎の息子俊介とともに、歌舞伎界の寵児となっていく。
ただ芸を磨くために。
もっと、うまくなりたい。
もっともっと、極めたい。
そんな二人の願いに立ちはだかるように、これでもかと宿命の嵐が襲いかかる。
策や要領などは通用しない。
逃げる訳にも行かない。
ひとたびは敗れ去ったかのようにみえても、喜久雄は不死鳥のように何度でも這い上がってきた。
いつまでも、舞台に立っていたい。
幕を下ろされるのが、怖い。
だから何があっても、前に進み続ける。
手紙から、携帯電話へ、そしてインターネットへ。
時代がいかに変わっていこうとも、変わらないものがある。
離れがたい親子の物語。
無償の友情の物語。
そして、すべてを貫く師弟の物語である。
歌舞伎の知識がゼロだったとしても。
圧倒的に引き込まれて、読むのをやめることができない。
そして、歌舞伎が見たくてたまらなくなる。
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一気に読めた
2019/10/30 21:46
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投稿者:はるはる - この投稿者のレビュー一覧を見る
歌舞伎は一度見ただけだが、この本は上下巻とも一気に読めた。不満をいえば、恋愛模様がさらっと書かれていること。しかし、芸の上達にしか頭にない主人公には、確かにどうでもよいことなのかもしれない。映画みたいなラストも気に入らないけれど、それらを割り引いても面白かったのは確かです。
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その先に見えるもの
2018/10/22 19:45
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投稿者:真太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
喜久男の人生後半は、良き友でライバルの俊坊との再びの別れ、娘のこと、そして初孫と人生浮き沈みのなかでも、とにかく芸の道はまい進中。他は何もいらぬと昔願掛けをしたことの自身への報いが、人間国宝となる。
そこから安住へと向かうと思われた喜久男の幕引きは、らしいとしか言いようがない。犠牲にしてきたものの上に立つ、孤高の我が身はその人にしかわからないもの。
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吉田修一「国宝」読んだ https://publications.asahi.com/kokuhou/ つまんなかった涙。映像化を意識したような作りでものすごく表層的というかそれこそドラマのノベライズみたいでこれが小説として書かれる意味はないと思う。人をちゃんと書ける作家なのに今回は役者サーガを描くことに執着しちゃったのかな(おわり
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半二郎がどうなるのか、気になってグイグイ読み進む。テレビなどで活躍されてる歌舞伎役者の顔を思い浮かべながら、あっという間に読み終わった。
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今まで自分が知っていた吉田修一とは全然違う。作者名を伏せて読んだら多分誰の作品なのか私は当てられないと思う。こんな引き出しがあったなんて、吉田修一、これからもまだまだ読み続けるよ。
いやそのまえに、『国宝』だ。歌舞伎って知らないようで知ってるようで知らない不思議な世界。
最近、歌舞伎役者はよくテレビにもでるし、そのプライベートや妻たちのあれこれも目にすることは多いのだけど、それでもやはり「梨園」というのは秘密のベールに包まれた世界のようで。
歌舞伎の世界はなんとなくハイソで高級なイメージがあるけれど、実は割と泥臭く家庭的だったりもする。そして意外と極道との共通点が多い。表と裏、光と影、聖と邪、と相反するように見えて、身体が資本、「家」を何よりも大切にする、(実でも疑似でも)「親」への忠義を守る、「子」を決して見捨てない、遊ぶ時にはカネに糸目をつけずとことん遊ぶ、そして己の信じた道をひたすらまっすぐ進む。そんな反対のようでよく似た世界を走り抜けた男たちの物語に、心が熱くならないわけがない。
極道から梨園へ、喜久雄がその大きな転換を乗り切り「国宝」と呼ばれるまでになったのには本人の素質や努力ももちろん彼を支えた周りの人間の力の大きさたるや。常にそばにいた徳ちゃんは言うに及ばず、彼を受け入れた二代目、そしてなによりおかみさんの力。実の息子と同じように、いやそれ以上に息子の座を奪った喜久雄を見守り育て支えたその情の深さ。この物語の芯にあるのは誰かを受け入れそばにいて守る、その力だと思う。
一見排他的に思えるこの世界の懐の深さにとにかく驚いた。そして自分が歌舞伎を支えているのだという矜持。
この世界の物語を読むと、「命をかけて」、という言葉の薄っぺらさを思い知るだろう。
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朝日の連載で読みました。長崎の侠客の家に生まれ父親を殺された主人公が、高度経済成長の昭和から平成の最後まで時代を駆け抜けながら、歌舞伎の世界で国宝に上り詰めるまでの一代記、大河ドラマとなっています。これまで個人的に歌舞伎には全く関係せず生きてきましたが、いわゆる梨園の世界というものに触れることができる内容でした。吉田修一としては新しい文体、新しい内容にチャレンジした作品なんだとは思いますが、正直、小説としての面白さは感じられなかった。
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上巻の青春編の方がワクワク感があり面白かった。しかし最後まで一気に読ませてしまう筆力は流石。歌舞伎を生で見たくなった。
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2018/9/25-9/30
発行日に読了したのは初めて。(いつも古本ばかりなので)
思い出の一冊になりました。喜久雄の誰も踏み込めていない領域にまで入り込んだ役者としての究極。それは本当に突き進んで詰めて行ったからこそ行ける境地であり、凡人には不可能。ヤクザな世界からここまで来れたきっかけやモチベーションは何だったのだろうか?というのが今も気になっている。
それにしても徳次、いいね!彼も弁慶役として、彼自身がミミズクとして最後まで喜久雄を支えていたこと、粋に感じた。
そして千五郎の優しさ。喜久雄の役者と義理からの行動から、手を差し伸べた千五郎の啖呵が素晴らしかった。千五郎に惚れたよ、オレ。
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技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、その頂点に登りつめた先に何が見えるのか?
あまりに特殊な歌舞伎の世界、歌舞伎役者の業に感心はしたけれど、登場人物たちに感情移入はできなかった。ただ、もしこの作品を映像化するならば、ラストシーンは傑作となるに違いない。
(B)
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伝統芸能は代を繋ぐこと自体がとても大切である一方で最も難しく、厳しいことだと思う。まして、芸をさらに深く掘り下げ、極めていくその様は単にストイックという言葉では言い切れない。むしろ壮絶といった方がいいかもしれない。
人それぞれ出自があるが、それは自分の意志では決められない。しかし、その後の生き方は自分で決める事ができる。
只々正直に自分の役目を全うしようとする三代目花井半次郎の生き様が美しい。
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喜久雄の歌舞伎に対する、愛なのか、執着なのか、欲なのか、とにかく強い気持ちが泣けてくる。喜久雄が歌舞伎の高みへと駆け抜けた一生が美しすぎて怖い。国宝になるってこういうことなのかな…。俊介も徳ちゃんもいなくなって、ひとりになってしまう喜久雄。でも喜久雄の周りにはちゃんとみんないて、みんなが喜久雄を見ていて、見守ってるのに、喜久雄はさらに先に進んでいく…。歌舞伎としか向かい合っていないような喜久雄。人間国宝ってすごい。
歌舞伎についてなんとなくの知識しかない私でも歌舞伎の世界や題材、話の筋がわかりやすくて、読みやすい。登場人物は多いけど、みんなキャラがしっかりしてて、混乱することはないし、久々に出てくると、私まで「久しぶり!」と言いたくなるほど各キャラに愛着がわく。
とくに徳ちゃんがほんとにいいキャラ!最後に登場してくれて、嬉しかった!!おかえりー!ってなった。
喜久雄の心にずっと父親が死んだあの雪の日の赤が焼き付いていて、そこへ向かって歌舞伎をしていたのかな。悪魔に心をうって、歌舞伎の魔物になったのかな。とか最後の喜久雄が舞台から降りて、外へ出ていくシーンを読みながら、美しさと恐怖を感じた。
徳ちゃんに会えてたらいいけど、ダメだったのかな。
本当にいい本だった。今年1番。
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極道の家に生まれた喜久雄と梨園の家に生まれた俊介。全く違う2人が歌舞伎の世界でライバルとして友として高め合う。芸に全てを賭け、同じ道を、時に別の道を行きながらそれぞれの芸を磨き舞台で魅せる。自分を追い込み全身全霊で表現するその姿は圧倒的に美しい。ひとつのことを極めようとすることの喜び、孤独、恐怖。そういったものの先にある誰もみたことのない景色。美しく、悲しく、残酷な世界のなかで2人が追い求め見つけたもの、たどり着いた景色、場所。ラストシーンは圧巻だった。
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初読。図書館。上下巻とも一気に読ませる。歌舞伎役者たちの人生の浮き沈みにこちらの心も浮き沈みし、役者の業に翻弄される。ラストシーンを通勤電車の中で読まなくてよかった。号泣だった。阿古屋が歌舞伎座前の道路に踏み出す情景が映画のように浮かんできて、芸の狂気の中にいる役者が哀れなのか幸せなのか、その腕をつかんで引き止めたいような、いっそこのまま車の前に押し出してしまいたいような、とにかくただただ涙が流れるラストだった。
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語り口は新鮮であり、演技の表現も面白かったが、歌舞伎を知らない自分にはやや冗長に感じた。
父に捧ぐということで、ラストの主人公がまさにゾーンに入ってくような表現には、作者のリスペクトが伺えた。
映像化したら歌舞伎流行るかな?