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紙の本
オスマン帝国通史の決定版
2019/01/20 18:21
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーク - この投稿者のレビュー一覧を見る
オスマン帝国600年の通史が300頁ほどの新書に収めるという筆者の力技に圧倒されつつ楽しく読んだ。
個人的には「近代」が押し寄せる中で、既存の体制をいかに変革し対応していこうとしたのか、その過程が非常に興味深かった。イスラムと「西洋」とを融合しそれなりに運営していたにも関わらず、戦争の荒波の中で脆くも崩れ去った大帝国の最期はあまりにもあっけない。
紙の本
オスマン帝国への入門書
2022/03/13 20:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kusukusu - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界史の授業では聞いたことがあったものの、その初期の歴史についてはほとんど知らず、聞いた内容もヨーロッパ列強に押されるようになった19世紀以降のものがほとんどだったので、1冊でオスマン帝国の通史について学ぶことができる貴重な本だと思い購入。特に帝国が社会的、文化的に、円熟期を迎えたのが、従来考えられていたような、15~16世紀ではなく、対外的には劣勢になりつつあった18世紀であったというのは、自分が知らなかったことで、とても興味深かったと同時に、ヨーロッパ諸国との戦争に敗れながらも国内的には繁栄できたのかという疑問も湧いてきた。また、厳格なイメージの強いイスラム法を、帝国内の実情に合わせて柔軟に運用したり、国内に居住していた多民族に配慮しつつ政策を行っていたが、19世紀以降の民族自決の流れの中でその政策が行き詰まり、帝国の崩壊に繋がっていった過程なども、多くの例を挙げて説明していたので非常に分かりやすかった。
1つだけ気になったのは、文中の熟語にかなり難解なものが度々出てきたこと。本筋にはあまり影響がなかったのでまだよかったですが…
紙の本
起伏に富んだ600年
2022/02/14 20:34
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投稿者:いて座O型 - この投稿者のレビュー一覧を見る
さすがに600年も一つの体制が続くのは無理があるのか、オスマン帝国という名称は同じで、帝室も続いてはいるんだけど、革命に匹敵するような体制転換が何度も行われていて、興味深かった。
最後のほうは、国としてのまとまりさえあいまいになってはいくんだけど、3つの大陸が交差する混乱の地に、長く存続した意義はあるなと感じた。
紙の本
著者の労作に敬服
2021/04/19 00:27
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
近著『オスマン帝国英傑列伝』を読むにあたって、本書を参照することが度々あり、この二冊はやはりセットで読むべきだと思った。
あとがきで著者が述べている通り、帝国の修史官たちが代々書き継いでいったいわゆる「年代記」風のスタイルを踏襲しつつ、その抑えた筆致から溢れ出る「オスマン愛」というものに正直打たれた。
中公新書は、よくこの限られた紙数にこれだけの情報を盛り込めたと感心する作品が多いのだが、本書は600年という長い期間にわたる一つの王朝の変遷をコンパクトかつ過不足なくまとめており、以前読んだ『ビザンツ帝国』に勝るとも劣らない労作だと思う。
トルコ民族の歴史は古く、6世紀に現在のモンゴル高原で「突厥」という一大遊牧帝国を作り上げたのが、そもそもの起源だ。中国の南北朝から隋・唐にわたってその運命に大きく関わり、やがて分裂・移動しながらなんと現在のアナトリアにまでやってきたという生粋の遊牧民族なのである。
その性質を色濃くのこした初期の指導者たちから、コンスタンティノープルを征服して東西に睨みをきかせる一大帝国となり、数々の軍事的成果をあげ西洋諸国に恐れられる存在になる。やがて領土が広がるとともに、統治機構は複雑化し、スルタンさえも諸勢力の前には廃位されるという危機の時代を迎える。
そして文化の花開く18世紀をへて、列強と対峙する19世紀になだれ込む。
スルタンに絶対の忠誠を誓うカプクルたち、キリスト教国を恐れさせたイェニチェリ、首都に攻め上ってきて、スルタンを交代させるほどの力をもったアーヤーンたち・・・。
とにかく飽きさせないその歴史の流れをぜひ多くの人に知ってもらいたい。
紙の本
トルコ帝国の真実が明かされる
2019/12/15 23:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本においてはオスマン帝国は残忍な侵略者というイメージで語られることが多かったのではないか。それも嘘ではないが言わばヨーロッパ側・キリスト教側から見た一方的な偏見であり、なぜあれほどの広い版図を数百年も維持できたのか、強大な軍事力と無尽蔵の富の源は何だったのか、を突き詰めるべきだろう。無論それを新書一冊ごときで語り尽くすのは不可能だが、本書は歴代スルタンの事績を中心に可能な限りそれに近づいた。実際のトルコはエトゥルール号事件の影響で親日国という一面もあり、本書はそのトルコを知るためにぜひ読むべき一冊と言える。