紙の本
耳鼻削ぎ
2020/03/01 20:17
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代の我々から見ると、耳や花を削ぐという行為は残酷に見えるが、かつては死刑と懲役の中間の刑だったと言う説や、戦場での首の代用という説など、とても面白く読めた。
紙の本
中世の「未開」を象徴する耳鼻削ぎ
2019/09/24 19:07
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投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
品切れとなっていた同名書が、爪や指を取り上げた補論を加えて再刊されたもの。「早熟」の古代と「文明」の近世に挟まれた中世の「未開」を象徴する行為として、耳鼻削ぎを評価。その視野は、ユーラシア大陸にまで広がる。中世から近世への転換が、とても大きな意味を持っていたようだ。
紙の本
グロだけじゃない
2021/09/21 18:04
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投稿者:mt - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルは悪趣味だけど、中身は素晴らしい一冊。あとがきにもあるけれど清水先生の本はとにかく語り口が上手い。興味本位のような書き出しから、耳削ぎ・鼻削ぎの事例紹介、その歴史的な意味と変遷、そして中世から近世へと至る日本人の意識の変化まで上手くまとまっている。また補論として指切り・爪切りについての考察も加えられており、これも古代から近世に至るまで、日本人が身体にこめたシンボリズムの一端が窺える内容で実に面白い。グロだけじゃなくて奥行きのある良い本でした。
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
とても残酷で怖い刑罰ですが、耳朶によって刑罰の見方は違うのだろうか。絞首刑も将来残酷だといわれるのだろうか。
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【「ミミヲキリ、ハナヲソギ」の謎を解く!】なぜ「耳なし芳一」は耳を失ったのか。なぜ豊臣秀吉は朝鮮出兵で耳鼻削ぎを命じたのか。日本史上最も有名な?残虐刑?の真実に迫る。
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おもしろい。終わり。あ、終わってしまった。何しろこちとら歴史に関する知識の蓄積が浅いので、ほうほう、そうですか、と読み進むしかない。しかし解説で高野さんが書いている通り、著者の筆運びというか構成のうまさ、流れのうまさはある。ダメなノンフィクションは事実を羅列するばかりで流れがない。グルーヴがないから踊れない。
その点、この本は耳鼻削ぎの持つ意味合いが時代と共にどのような変遷を遂げたか、という軸をしっかり押さえつつ、ちょくちょく興味深いエピソードや史実とその解釈を出してくる。随所で紹介される史実にはこちらの想像力が及ばない部分があるけど、そこはざっと読み飛ばしても大筋はわかる。耳鼻削ぎの実態や、その意味合いの変遷なんて簡単にわかるはずないんだけど、この本の持つグルーヴが生み出す説得力は、読者を躍らせる。へー!知らなかったー!そうなんだー!そういうことだったのかー!と言わざるを得ない。
中世の日本における刑罰としての耳鼻削ぎは、主に女性と僧侶に課せられたものであり、死刑を減刑した場合に適用されることが多かった。一方、戦場での耳鼻削ぎは戦功の証だった。戦国時代に入ると、見せしめの刑罰として男性にも課せられることが多くなった。それが江戸時代に入って戦国の世が終わり、権力基盤が安定すると主に、刑罰としての耳鼻削ぎはなくなっていく。
刑罰が時代と共に変遷した結果として今の刑罰がある訳だし、現代でも話が通じる「耳なし芳一」や芥川龍之介の「鼻」なんかを持ち出してくる。遠い昔の野蛮な習俗と思いがちな耳鼻削ぎを行っていた中世が、自分にも繋がっていることを意識せざるを得ない。そもそも、今の基準で過去の習俗を残酷だと言ってしまうと、その時代を理解しようとするおもしろさを失ってしまうのではないか。補論として指切りの話が追加されているけど、「指切りげんまん」のように、中世から近世、現代へと受け継がれたものがあると思うと興味深くもあるし、ちょっと怖い気もした。
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・戦国時代より前は、女子供の刑罰として耳鼻削ぎがあった(極刑を減免してその刑となった。女の罪は男にそそのかされて犯されたという認識で、女性の地位がどうのという話では無いそうだ)
・戦国時代後期からは、首の替わりに手柄の証拠として使われた
・戦国時代後期~江戸時代前期までは、見せしめの意味で行われた
・それより後は無くなった
らしい。
手柄の証拠にするのに、耳だと2つあってダブルカウントや女子供の関係無い人のを狩ってくるということもありあまり証拠の意味をなさなかったらしい。
男だと言うのがわかるように、鼻をそぐ時に口までいっしょにっていうのが主流(髭を生やしていたから)。
でも、そもそも首を刈って、かつ腰につけて戦を続けるって結構邪魔になると思うのね。
だから、首を刈っているような時代は戦争における死者って大したことなかったのだろうね。
徴兵制になって、手柄がどうのっていうのが無くなって死者が激増したのだろうって考えられる。
https://seisenudoku.seesaa.net/article/472846346.html
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解説で高野氏が称賛しているように、キャッチーな話題で読者の興味を惹き付けながら史料引用と考察を重ねていく、著者の筆力が本作でも冴え渡っている。
耳鼻削ぎというグロテスクな話題から、日本中世~近世の文化を著述する手腕はお見事の一言。
柳田國男と南方熊楠といった二巨頭の論戦を冒頭に記すことで一気に引き込まれる。
中世の事例より、耳鼻削ぎは女性や僧侶に対して、死刑相当の罪一等を減じる宥免罪としての地位を持っていた。女性は一人前の判断能力がないと思われていたため、僧侶は聖界の人間のため。また日本中世の荘園での刑罰は、犯罪によって生じたケガレを除去することに重点が置かれたため、犯罪人は領域外へ追放するといった意味合いが強い。耳鼻削ぎを実際に行う人も、被差別部落民が担っており刑余の人間はそのままその民となっていただろう。
しかし、室町から戦国前期にかけて耳鼻削ぎは戦果を証明するための証拠であり、そのため鼻削ぎは髭の生えている上唇と一緒に削ぐことで正当な戦果と認められるといった作法まで生まれてくる。また、戦果証拠としてはあくまで首が本義であり、耳鼻は戦場と戦果認定のための中央権力が離れている場合に輸送の便のために執り行われた措置であった。そのため、各地の権力が収斂し戦場が大規模・遠隔で行われるようになる安土桃山時代に耳鼻削ぎの事例は増していく。それに付随して、耳鼻削ぎは宥免罪としてではなく、苦痛の見せしめ罪としての意味合いも付与されていく。
江戸時代も中期に入り徳川綱吉の生類憐れみの令により、「文明化」されていくと、耳鼻削ぎといった肉刑はグロテスクさと認識されるようになり、徐々に姿を消していく。
前近代のユーラシア大陸では、いち早く「文明」化した中国や朝鮮半島の王朝のみが耳鼻削ぎ刑を忌避し、それ以外の「辺境」的な地域にのみ耳鼻削ぎが残存し、女性のための刑罰という意味が付与されていたということになる。
こうした中国隣国型と辺境型という二類型でアジアの国々をみていったとき、日本社会は、古代において中国隣国型の国家体制をとりながらも、中世に入ると一転して辺境型の国家体制にシフトしたといえる。